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「ビブリオバトルに備えたが」

阿部 毅(編集者)

 GATACON2020が開催されたらビブリオバトルで紹介しようかと思っていたのは、『南総里見八犬伝』曲亭馬琴/白井喬二訳です。

 日本を代表する伝奇幻想小説であり、タイトルは誰もが知るところですが、実際に読んだという人は少ないのではないかと思います。かなり長いし原文は現代語でないからしょうがないのですが、特にNHKで放映されていた人形劇「新八犬伝」を見ていた人はあの番組のあまりの面白さゆえ読んだ気になってしまっているのではないでしょうか。てな論調で、原作にはこんな面白いところがあって、白井喬二の名調子の現代語訳はつるつる読めて、もうサイコーと紹介しようとしていたのですが、驚いたことに原作では玉梓の怨霊はほとんど出ず、人形劇にあった幻想的な躍動感よりも象徴的な謎解きが重視される内容でこれはこれで面白いのですが、白井センセー、最後の方は抄訳になっているみたいで、うーん紹介しなくてよかったかもと思ったのでした。