資料3
獨歩行
 『日本科学古典全書』第十巻(1944) 「獨歩行」より金銀の製錬個所(p.398-404)を抜粋
凡例
 [青字]は、割書。

大吹所
 三 鏈石粉成吹之上、簀戸金山吹銀并銅仕立方手續

一 水筋取揚方
馬の尾の粉元汰、并ざくの粉こま宵突銀溜置候分、一口限り板に而汰直し候得は、板の手前え寄候もの金氣に付、能々汰詰鐵氣を去候ため磁石を以掻廻し、取揚器物に移し[此手段を筋を揉と申候]元筋と唱申候。
惣而磨引候度に中突銀取揚候節も、是又汰直し筋取揚候儀右同様に御座候。是を磨筋と唱へ元筋と打込申候。
汰物之内、元汰中突銀とも荒き方を手引磨之石磨[則、銀磨之類。]に而挽返し、細かになし筋取揚候儀も御座候。
n
水筋と唱候儀は追て取揚候筋、吹立迄其儘差置候而は錆出候に付、器物に水を入浸し置候故申習わし候儀に御座候。

一 筋金吹方
水筋百目
此吹入鉛五百目
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惣而溜置候水筋を器物より取揚紙に包、水を絞り小吹床に[鍛冶の鐵を鍛ひ候節、吹解き候ほどのごとく仕掛け、土中を少し掘、須灰を(炭の扣粉をいふ)へな土の濁水に和し塗堅め、相向ひ候壁のうしろに鞴を仕付る、本途床屋に而大床と唱候場所同様に御座候。]火を入、先つ鉛を吹解し、其上え紙包之儘水筋をのせ、炭を廻りに積、吹子を静にさし、火起り候節止め、暫蒸置自然と燒き堅り候時、再應くさし候得は、鉛の湯の中え吹下り候に付、能解け候時分見計ひ、火を刎、床蓋[藁にて釜敷のことく組候もの、圖末に出す。]をして、みご箒に而水を打て冷し、下り地[始に吹解候鉛を地と申、其中え吹卸し候ゆへ、下り地と唱申候。]取揚灰吹床え相渡申候。
灰吹之仕方[床の補理方、末の灰吹の廉に記す。]灰に而[筋灰又はをも灰と唱、別段製申候。]中窪に爐を作、[木に而土器のことく作る、多分は椀の古きを外をすり丸め、爐作と唱申候。]下り地を入、みご箒に而水を打、炭火を掛け鞴に而吹解、湯に成候節、湯色之見え候様渡鐵をかけ、其上え火を繕ひ鞴を静に指候得は、鉛并悪氣とも灰にしみ、金計りに成[此時銅を少し差し候を、山をさすといふ。]候時、よく吹居へ湯色曇なく澄渡候をかぶると唱へ申候。扨火を刎て少し冷たる時、みご箒に而水を打取揚、裏に附候爐滓[鉛の灰にしみ塊り候を申候。]を去り、兼而鐵鍋に鹽を盛り燒置、其中え埋め火をのせ、暫時有之取出、水に鹽を少し入て洗候得は、黄色に成申候。是を面筋金と唱へ申候。
水筋目形に御座候得は、[大概貳拾目程より以下。]大床に而卸候儀は不仕、灰吹床にて蒸燒吹にいたし、解候時、前條灰吹之手續に而面筋金に仕立申候。是を水おろしと唱申候。
筋金吹立之節、出候爐滓は重而筋金大床におゐて吹立候時、鉛之代りに[都而爐滓百目に付鉛七拾目に成代る。]吹入、順繰に跡吹立に附廻申候。
右面筋金目形を改筋金所え相廻候得は、筋見之もの目利之上、本目百拾匁[付本金本目則位四十五匁]迄に相叶ひ候得は、相極有目之内歩缺[筋金百目に付壹匁歩五分缺]取之、相殘候を正目形と定め、筋金所役封印いたし相返候に付、其儘吹分所え引渡申候。



一 汰物燒方
一と竈燒入百貫目。
惣而口々取揚候元汰物こみ面中突銀摺物板先中打等一口限り[馬の尾、上さくこま杯と廉分け之儀に御座候。]大盥に入、水氣を去り、よく交合握り堅め[一つの目形凡三四百目程。]扨、竈の[飯を炊候大釜を掛ける竈のことく大に而塗立、高さ四尺、四方三尺五寸程。]中に薪を積、炭火を入、其上え握り堅め候汰物を積重[眞中を除き風の廻り候様いたし]上に炭并鏈を入候明き叺を掛て蒸燒に仕、火氣醒候時、鐵杓子に而掻出し、眼形を改[燒缺二割程尤性合に寄不同]溜置吹立申候。
汰物貫目少く候得は、小竈に而燒、彌かなるは、しちりん[土に而製す、圖末に出す。]に而、目形貳貫目程を一燒に仕候。[しちりん燒には炭計り相用ひ、薪は遣不申候。
筋金氣多く籠候歟、鉛氣多之汰物は燒入不申候。[生汰物に而吹立申候。

一 大吹仕法
燒汰物三拾貫目。
此吹入鉛六貫目
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兼而取揚候燒汰物、右貫目を一吹と定、大吹床え[補理方深さ七尺程、土中え堅横共貳尺五寸程之箱樋を圦、其兩口より風之道通ひ候様いたし、(一方は石垣杯有之所に而極之口を顯し風を入る)其上を深さ三尺に六尺四方程、堅炭を圦、須灰を敷、扨徑貳尺横三尺深壹尺五寸程に、須灰をへな土と燒土之粉と交候濁水に和し、中窪に爐を作り、其爐の上をへな土に燒土の粉を合後之壁え取付、そり橋を掛しごとく覆ひ、(鰐口と名付、吹解時湯の面を裂敷吹、且火を除候而も早く醒不申ために御座候。)扨、鞴を貳挺仕掛け、(圖末に出す)]持運ひ莚を敷打あけ鐵鎚を以碎、先つ床の中え炭火を起し鉛を入、其上え汰物を追々繼掛け鞴を烈敷さし、折々大び又は湯廻し等に而[いつれも鐵に而仕立る、圖末に出す。]廻し、能吹解候節火を刎、柄長きわら箒に而水を打、柄實を[鉛の滓土砂の氣等吹解け、湯之上に皮のごとく覆ひ候を申候。]とり[上は面をどぶからみと云、どぶかきとて木切を大びの先に打付候ものに而取、其次をつらからみといふ大びに而とる。]床の前に仕付有之候水船に引込、冷し杓子に而碎、猶、湯の上え掛返し、炭を繼再應吹解、始のことく柄實を掻[此柄實取計片次にしるす。]湯の肌え見へ候柄實を赤湯と唱、[銅氣籠候分、湯の色赤く相見え申候。]別に除置、[是又取計方次に記す。]跡に殘候湯を床の脇に鑄形を拵置、[須灰とへな土の濁水に而ぬる、其形大土器のことし。]湯汲に而[圖末に出す]汲込、床蓋をして水を打冷し、湯折取揚[大概四枚に相成る湯に吹下し候と申意に而、湯折と唱申候。]灰吹床え相渡申候。
汰物吹立之節、からみを片掛返し吹候儀に品に寄、貳度いたし候儀も御座候。
汰物吹より出候赤湯柄實百貫目に鉛六貫五百目を加へ、一床に吹入、三度掛返し湯折取揚け申候。其先之からみ赤湯どぶつらとも打合、是又百貫目に鉛五貫目を加へて右同様にいたし、湯折取揚如斯からみ吹以上四度[品に寄五度]いたし候得ば、[次第に吹先からみ分、鉛加へ方を減申候。]百貫目に而出來銀拾匁程に相成候迄吹詰申候。
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四度目からみ吹より出候赤湯からみを除置、銅皮と唱へ、其先之どぶからみ計吹返し、是又其度に出候赤湯からみ打合溜置皮燒いたし、[皮燒方末に記す]追而吹入申候。
銅氣多之汰物は吹込之鉛を地銅とて銅を合せ[燒汰物百貫目に付鉛七貫目地銅貳三貫目程。]是又同様之手順に而、湯折取揚け南蠻床え、[此譯末に記す]相廻し銀銅吹分申候。

一 小吹様
燒汰物五百目
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此吹入鉛四百貳拾匁
燒汰物大吹に掛申分、口々之内[馬の尾ざくこま土]五百目つゝ取之小吹床[先に相記候筋金吸入候床]に而吹立申候。此吹方床の中え須灰をへな土の湯水に而和し窪くぬり、先炭火を起し鉛を吹入、夫より汰物を掛て火を繕ひ、鞴をくさし吹解候節火を刎、みこ箒に而水を打、大びに而柄實を片[初をつらからみ、其次をKからみ、間(あい)からみ、赤湯からみ、と順に片申候。]冷し、細かに鐵鎚を以碎、殘候湯の上に炭火と共に掛て鐵を少しさし、[古き鍋杯の破れ柄実を烈敷卸し候もの故用申候]彌吹解候節、始のことく柄實を片[此からみを小吹仕候儀、末に記す。]相殘候湯に、床蓋をして水を打冷し下り地取揚灰吹床え相渡申候。
小吹之節出候柄實貳貫目に鉛七百目を合せ吹立、[四度程吹返申候]是又下り地取揚灰吹床え相渡申候。[此柄實吹より出候からみ同性之汰物吹立候節、大吹床え相廻附吹に仕候。]小吹之節出候汰物之埃がらみ屑、其外炭之粉等皆々床の脇に桶を[据桶と唱申候]圦置候而掃込、追而のみ掃之節取揚申候。

一 皮焼并同吹方
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省略

一 南蠻絞并甑絞
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省略

一 灰吹仕方
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灰吹床[補理方横四尺、奥行三尺に三方壁に而仕切居、前は口を高さ三尺明け、其上を壁ぬり揚げ、屋根に煙出しを付る、床の中七間に徑壹尺五寸ほどの鍋を居、其中え灰に而爐を作り候様仕かけ、左に小吹子を居、右の手元に灰滓桶とて小き桶を圦る。]之中え灰を入、[爲引灰と申、別に製す]爐作りを以、中窪に爐を作り、扨大吹床之湯折小吹様之下り地南蠻床甑床の乗鉛何に不限壹枚つゝ[目形大概二貫五百目以下]置、上よりみこ箒に而水を打しめし、炭火をかけ、小鞴に而吹解し湯に成候時、火を追々に取除、渡し鐵を渡し、湯面の見へ候様火をのせ、灰を少し宛火箸に而すくゐ掛け、湯の廻を不崩様丸く作り候得ば、鉛は灰にしみ込、湯色曇なく相成候節[かぶるととなへ]火を刎、水を打、鋏に而取揚、爐滓打落し候得ば、山吹銀に相成申候。跡に相殘候鉛の灰にしみ塊り候を、爐滓と唱へ都而汰物がらみ吹立之節大床前に繰廻し、チの代り遣ひ、相殘候得は翌年え附廻し申候。灰吹之節、火箸に附候灰と鉛氣交り候分、并爐滓屑等灰滓桶え掃込溜置、追而床前掃除いたし候灰埃一同水に洗ひ取揚候を灰滓と唱へ、追而柄實之節、爐滓之代り大吹床え相廻申候。
右山吹銀目形改、吹分所え引渡申候。

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