[東京駅 〜 あれから数週間]
雨の東京駅。第一話の冒頭にあったような、朝の出勤風景が描かれています。ただ、今回は地面に落ちている新聞には、あけぼの保険倒産の見出しが…;
ナレーション『あけぼの保険が倒産して数週間が過ぎた。人々はもう、そのこと
をを話題にはしなかった。よくある倒産劇の1つとして、すぐに
忘れられていった。
しかし、当事者にとって、それは、一生忘れることの出来ない、
大きな事件であった』
そんな東京駅の光景の中、駅を出て、そのまま足早にタクシーに乗り込む和装女性の姿があった…。
[孝太郎のアパート 〜 春江さんパワー]
その女性はそのまま孝太郎のアパートまでやってくる。入り口のドアをノックして;
春江 「孝太郎さん、私だけど・・・孝太郎さん?」
そこに、買い物から帰ってきた尚美ちゃんが女性の姿を見つける;
尚美 「お母・・・さん???」
春江 「尚美さん?」
尚美 「あ、はい。はじめまして。いつもお世話になっています」
春江 「いいえ、こちらこそ・・・。あ、そんな挨拶は後にして」
尚美 「あ、そうでしたね」
二人は部屋に入る。尚美はベッドにもぐっている孝太郎に声を掛ける;
尚美 「孝太郎???孝太郎、お母さんが心配して見に来てくれたわよ」
尚美が声を掛けても孝太郎はベッドから出てこようとはしない;
尚美 「孝太郎・・・」
それ以上、孝太郎に何も言えない尚美。孝太郎のことを心配した尚美が孝太郎の母親 春江を呼び寄せたのだった(という設定らしい)が、それでも孝太郎はふさぎこんだままでいる;
尚美 「最近、ずっとああなんです」
春江 「一体、何があったの?」
尚美 「あけぼの保険が倒産して、それからいろんなことが起って…」
尚美ちゃんの回想。先週のラスト、オフィスに顧客が押し寄せてきたときの光景が描かれてます。孝太郎は課長としてヨイショで頑張るも効果無く、男に床に叩きつけられてしまう。そして、「おい、お前ら、その辺にあるものを持ってけ」と、オフィスに押し寄せた人たちが、オフィスの備品を荒らし始める・・・(っていうのも強引な描き方だよなぁ。債権者が押し寄せたきた訳じゃないんだからさ…。うむ…)。
その後、孝太郎は個別の顧客に対して、順番に頭を下げて回ります。
一反商事では・・・
孝太郎「このたびは本当に御迷惑おかけしました」
秋田 「どうなるのよ、うちが振り込んだ保険料?!ちゃんと返してくれるんだ
ろうね?」
孝太郎「ええ…。その件につきましては、只今各方面と協議中で御座いまして」
秋田 「そんないい加減な答えじゃ困るんだよ」
孝太郎「仰る通りでございます。私もそんないい加減なことじゃ困ると、上の者
に話しているところで…」
また、孝太郎の担当していた顧客、野宮製鉄所では;
小笠原「そんな言い訳は聞きたくないんだよ」
孝太郎「あ、もうしわけございません。ですが詳しい事情を・・・」
小笠原「とにかくさ、こっちはあんたを信用して契約したんだから、会社がどう
なろうと、あんたの責任で何とかしてよ」
孝太郎「あの、そう言われましても、私にはそのような力はございませんし…」
さらには、あれほど親しく話をしていたオットセイ運送でも;
森岡 「いいから、もう、帰ってくれ」
孝太郎「あ、あの…、ちょっとお待ち下さい。あの、確か、今日は奥様との結婚
記念日でしたよね。森岡様は奥様を大事にしていらっしゃってて、私は
いつも感激しておるんです」
森岡 「だったら何なんだ」
孝太郎「あ、お二人の永遠の愛を祈って、ささやかながらプレゼントです」
孝太郎がそう言って差し出した包みを、森岡は地面に叩きつける。中に入った陶器(湯のみかな?)がこなごなに割れてしまう;
森岡 「あのな、今までお前のヨイショは楽しかったけどな、今日みたいな時は
笑えないんだよ…」
孝太郎「・・・」
そう言って立ち去る森岡。孝太郎のヨイショはここでも何の役にもたたず、これ以上、何も言えずに力を失い、手にしてたカバンを地面に落とす・・・
再び孝太郎のアパート。尚美が引き続き、春江にその後の話を続けている;
尚美 「毎日、毎日、あちこち出掛けては謝ってばかりで、孝太郎、もう、限界
だったんですね・・・私、何一つ力になってあげられなくて・・・」
春江 「あなたは悪くないわよ」
尚美 「でも・・・」
そして、おもむろに立ち上がり、台所にある手鍋に水を入れる春江さん。
尚美 「お母さん??」
そのまま孝太郎の枕もとまでいき、頭からそのなべの水をぶっ掛けます(あ、ごろうちゃんの髪が・・・(笑))。思わず跳ね起きる孝太郎;
孝太郎「ちょっ。な、何すんだよ!!!」
と、言ったか言わないかのタイミングで、春江さんのビンタが孝太郎に炸裂っ!
尚美 「(@o@)」
孝太郎「お袋?」
春江 「何がお袋だ。全く、情けない!尚美ちゃんがこんなに心配しているのに、
昼間からゴロゴロして…」
(こんなことろで、"ゴロゴロ"という言葉に反応した私って変?)
尚美 「そんな無理言わないで下さい」
春江 「無理じゃないよ。この子は甘えてるんだ。ほら、さっさと顔洗っておい
で!」
孝太郎「・・・」
春江 「早く!!」
孝太郎「あ、はい!」
孝太郎、お母さんに頭が上がらないようで、素直に応じる孝太郎君がツボでした(苦笑)。
そして、タイトルとCMをはさみ、続き。孝太郎はちゃんと顔を洗ったようで、ベッドから起きてきて、春江さんから説教を受けています;
春江 「全く、情けない…。会社が倒産したからって命までとられる訳じゃない
だろう?人の生き死にに関係ないことは、あんまり真剣に悩まないって
お父ちゃんだってそう言ってたじゃないか!」
孝太郎「そりゃ、そうだけどさ・・・」
春江 「取引先の人が怒るのは当たり前だよ。みんなお金が掛かったことなんだ。
それもそこらから沸いて出たお金じゃない。働いて稼いだお金だよ」
孝太郎「わかってるよ、だけど…、今の、ね、僕には何もできないわけだから…」
春江 「誠意を持って話すしかないだろう?」
孝太郎「話したよ。だけど、以前と違って誰も話を聞いてくれないしさ」
春江 「お前の心に嘘があるからだ!」
孝太郎「嘘?」
春江 「会社の潰れたのは社長のせいだって思ってるだろう?」
孝太郎「いや、まぁ・・・」
春江 「今の人たちはみんなそうなんだ。会社がつぶれりゃ社長のせい。社会が
悪けりゃ政治のせい。自分には責任が無いって言うのかい?」
孝太郎「・・・」
春江 「はっきり言うけどね、会社が潰れたのはお前のせいだよ!」
孝太郎「えっ?!?!」
春江 「お前はあけぼの保険の社員だ。しかも、課長という責任のある地位じゃ
ないか?」
尚美 「あ、でも、課長の身分じゃ・・・会社全体のことは・・・」
春江 「じゃぁ、何で社長にならなかったんだ?」
孝太郎「社長?」
春江 「そうよ。会社が危ないのは少し前からわかってたんでしょ?だったら、
自分が社長になって会社を救うぐらいの気概があったっていいじゃない
か!」
孝太郎「いやいや、そんなの無理だよぉ」
春江 「孝太郎、お前、子供の頃、何て言ったのか覚えてないのかい?『いつか
大人になったら社長になるんだ!』・・・そう言ってたじゃないか!!
お前ならなれる!」
孝太郎「僕が?」
春江 「私がお前にウソを言ったことがあるかい?」
孝太郎「(首振って)ううん」(←素直で可愛い(*^^*))
春江 「でしょう?あなたは社長になれる器なのよ。
それなのに、こんなところに閉じこもってちゃダメじゃない。元気出し
なさい!」
孝太郎「そうだよね・・・あ、そうだよね!うん、僕、頑張るよ」
春江 「そうだ」
孝太郎「うん」
春江 「それでこそ、お父ちゃんの息子だ!」
全員 「(笑)」
尚美 「孝太郎」
孝太郎「尚美・・・ごめんね、今まで心配かけて・・・」
尚美 「ううん。よかった」
春江 「よかった!」
嵯峨先生@催眠の場合は、冬眠してから元に戻るのに1年もかかったのに、孝太郎の場合は春江さんのビンタ1発とは・・・恐るべし、孝太郎のお母さん・・・(苦笑)。それにしても、孝太郎はヨイショが得意かもしれないけど、母親とはいえ、ヨイショされるとすぐに調子に乗っちゃうんだねぇ。そこがいいところなんだけど。
[元あけぼの保険ビル前 〜 ]
あけぼの保険ビルの玄関口。天気も曇り空で、どんよりとした雰囲気。
あけぼの保険ビルの社名の入った石碑(何ていうのだ、あれ?)が取り外し工事がされている。その様子を黙ってみている孝太郎他のあけぼの保険主要キャスト+その他大勢たち(^^;)。
真紀子「ごめんなさいね、何の力にもなれなくて。グローバルライフが撤退する
のをひっくり返してみせる、なんて格好いいこと言ってアメリカ行って
きたけど、結局、何もできなかった」
孝太郎「仕方ないですって。きっとこうなる運命だったんだと思います」
工事が終わり、その他大勢はその場を立ち去り、主要キャスト(孝太郎,尚美,白石,由紀江,真紀子)が暫く立ち去らずにいる。
真紀子「白石君は再就職先が決まったんだって?」
白石 「ええ。○×△?インシュアランスなんですけど」
真紀子「いい会社じゃない・・・由紀江さんも一緒?」
由紀江「いえ。私はしばらくバイトです。留学するお金でも貯めようと思って…」
真紀子「そう、がんばって」
由紀江「はい」
真紀子「桜井、あんたは?」
孝太郎「ああ、いや、僕はまだ。ハローワークに行こうとは思ってるんですけど」
真紀子「杉田は?」
尚美 「私は、しばらく実家の手伝いを」
真紀子「そうか・・・みんなそれぞれにスタートするのね」
孝太郎「緒方部長は、いつアメリカに戻られるんですか?」
真紀子「アメリカには、もう、戻らないわ」
孝太郎「え?」
真紀子「グローバルライフは辞めたの」
孝太郎「辞めた?」
真紀子「正確に言えばクビになっちゃったの。あけぼの保険を再建できなかった
から」
孝太郎「だって、社長・・・津村社長、どうしたんですか?」
真紀子「あの男はねぇ、どっか消えちゃったの」
白石?「じゃぁ、部長が全ての責任を押し付けられたんですか?」
真紀子「仕方ないでしょ、誰かが責任取らないと・・・」
真紀子「そういえば、徳川さん、来てないの?」
尚美 「それが倒産した後、一度も顔見せてないんです」
真紀子「そう・・・どうしてるのかしらね」
孝太郎「きっと、頑張ってますよ、徳川部長も。だから僕らも頑張りましょう?
(真紀子に)ね?」
真紀子「・・・」
孝太郎「(他の三人にも)ね?」
全員 「・・・」
誰も孝太郎の呼びかけには応えず、孝太郎自身もうつむいてしまう。
そして、その様子を物陰から辛い表情で見ている徳川さん。あ、怪しすぎるぞ!!(^^;)
[居酒屋 松っちゃん 〜 ]
そして、数日後。久しぶりに松ちゃんでデート中の(?)孝太郎と尚美ちゃん(^^;);
尚美 「え〜〜〜っ!?ハローワーク、まだ行ってないの?」
孝太郎「うん」
尚美 「何で?」
孝太郎「うーん。いや、実はね、会社作ろうかなぁ、と思ってさ」
尚美 「は?」
孝太郎「ほら、この間、お袋、行ってたろ、お前は社長になれるって。だったら
自分で作った方がいいんじゃないかな、と思って」
尚美 「あのね、孝太郎・・・」
松永 「いいねぇ、それ!グッドアイデアじゃん!!」
孝太郎「でしょ、でしょ!?」
松永 「うーん。今の世の中ね、大きい組織に頼ってちゃダメ。独立精神だよ」
孝太郎「そうそうそう、さすがマスター、分かってるねぇ〜」
尚美 「あ、いや、でも、会社作るのって難しいんでしょ?」
松永 「いや、それほどのことはないよ。この店だって一応、会社だからねぇ〜」
尚美 「ええ、本当に?」
孝太郎「あれ、もしかして・・・社長??」
松永 「もちろん」
孝太郎「あはは(笑)。どーりでね、ただの居酒屋のマスターとは違うと思ってた
んですよねぇ〜」
(↑お調子者的発言(^^;))
松永 「あのね、正式名称『有限会社 松ちゃん』って言うんだよ、うん。
ここを一号店として、全国にチェーン展開するつもりでございます」
孝太郎「すっごいですねぇ、そんな壮大な計画があったんですか?」
松永 「そうだい」
孝太郎「御見それしました。いや、改めて尊敬いたします」
松永 「ああ、どうもどうもどうもどうもどうもどうもどうもどうも…」
と、調子よく盛り上がる孝太郎と松永だったが、尚美ちゃんだけは冷静に;
尚美 「それ、いつの話ですか?」
松永 「えっ」
尚美 「いつ、そのチェーン展開とやらをするんですか?」
松永 「うん、まぁ、そのうちね。いろいろね、準備も必要だし」
尚美 「その前に、おもての看板直した方がいいと思います」
松永 「うん、それもやらないとね、うん、あはははは」
孝太郎「はははは(笑)」
乾いた笑いをする孝太郎と松永(苦笑)。そして、孝太郎は心配する尚美に、優しく告げる;
孝太郎「尚美、そんな心配しなくてもさ、結構、何とかなるもんじゃないかな。
だって、どんな会社だって結局、人がやってるわけだしさ…。マスター
みたいな社長もいるわけだし」
尚美 「うん、その点は少し安心したけど」
松永 「そうそうそう・・・って、おいおい」(←ひとりノリ突っ込み(笑))
尚美 「でも・・・何か心配」
松永 「まぁ、一人でやるのは無理だよなぁ・・・」
孝太郎「そうか。あけぼの保険のみんなに話してみよう!」
尚美 「みんなに?」
孝太郎「うん、そうそう。白石君とか由紀江さんとかに。みんなで会社やったら、
何か楽しそうじゃなーい?」
松永 「いいね、いいね」
孝太郎「でしょうー?」
松永 「おお」
孝太郎「マスター、ああ、いや社長、お替わり!」
松永 「社長、社長、社長、社長、社長がついでやる、うん」
調子のいい孝太郎と松永の会話についていけず、ますます頭を抱える尚美ちゃん。
[某喫茶店 〜 ]
さて、翌日、早速、孝太郎は同士を集めるべく、まずは白石にアタックしています。
白石 「会社作る??」
孝太郎「ふふふふ、いいアイデアでしょ?」
白石 「本気かよ」
孝太郎「それで、白石君にも協力して欲してもらえないかなー、と思ってさ」
白石 「協力って??」
孝太郎「一緒にやろ?」(←軽いぞ、孝太郎!!!)
白石 「え゛ーーーーーーっ」
孝太郎「あ、いや、こういうことって、一人じゃできないと思うのね。で、一緒
に苦労できる人っていったら、やっぱり白石君しかいないんじゃないか
なぁ、と思ってさ」
白石 「そんなの無理に決まってるだろー」
孝太郎「あ、でもね、その場合はもちろん白石君が社長だからね」
白石 「そんなことを言ってんじゃないよ。今のこの日本で新しい会社を興すの
はどれだけ大変なことか分かってんのか?」
孝太郎「・・・」
白石 「苦労するだけだぞ」
孝太郎「もう苦労したよ・・・」
白石 「?」
孝太郎「あけぼの保険が倒産して嫌なことがたくさんあった・・・。裏切ったり
裏切られたりして、仲良くしていた取引先や仕事仲間とも言い争ったり
してさ。今まで一体、何のためにやってきたんだろうって・・・。
今、会社を興すのは大変なことだって、僕にも何となく分かるよ。
(↑って、なんとなくかい!)
でも、同じ苦労するんだったらさ、そっちの方がいいよ。
それに(^^)、何か楽しそうじゃない、みんなで会社作るのってさ。ね?」
白石 「楽しいだけじゃ乗り切れないよ…。悪いけど、俺、新しい会社、順調に
やってる。誰か他のやつに当たってくれ」
白石は冷たく言い放ち、席を立つ。
孝太郎「白石君・・・」
[真紀子のマンション前 〜 ]
出かけようとしている真紀子を捕まえ、孝太郎は会社を作る話を持ちかける。白石に断れれば次は真紀子さん、ってことで、真紀子の家にまで押しかけちゃってるのかな、孝太郎は(^^;)。
真紀子「会社作るのは悪くないけど、でも、今はタイミングが悪すぎるわ」
孝太郎「タイミングですか?」
真紀子「そう。第一、資金はどうするの?あなた貯金なんかあるの?」
孝太郎「ああ・・・それはみんなで持ち寄って」
真紀子「そういうって危ないのよねぇ。上手くいってる時はいいけど、上手くい
かなかったとき、誰が責任を取るのか明確じゃないでしょ?」
孝太郎「なるほど・・・。あの、折角ですから、緒方部長も一緒にやってもらえ
ませんかね?」
真紀子「私が」
孝太郎「はい、その場合はもちろん、部長が社長でいいんですけれどもね?」
真紀子「残念ながら無理だわ。トーレンカンパニーの経営顧問の話が来てるの。
今日もそこの会長と会食なのよ」
孝太郎「ああ、さすがですね、部長・・・」
真紀子「相談には乗ってあげられるけど、あんまり無理しない方がいいわよ」
と、やっぱり真紀子さんも孝太郎の軽い考えは却下し、そのままタクシーに乗り込で行ってしまう。
[バー 〜 ]
孝太郎が最後にアタックしたのは由紀江さん。バーで働く由紀江さんのもとにまで押しかけてきて、カウンターに座る孝太郎。
由紀江「いらっしゃいま・・・桜井君?!」
孝太郎「ふふふふふ(笑)。いやー、由紀江さん格好いいね、その服、その髪型、
そのスタイル・・・そしてその・・・笑顔?」
由紀江「(照れ笑)」
孝太郎「僕が白石君だったらねぇ、思わず日本経済を語りたくなっちゃうね」
(↑左手を振って語る白石君の真似っこ)
由紀江「何しにきたの?」
孝太郎「あ、実は、折り入って話があってさ…」
由紀江「会社を作る話?」
孝太郎「うん。何で知ってんの?」
由紀江「白石君から電話があったの」
孝太郎「えー♪、白石君やる気になってくれたんだ!」
由紀江「桜井のバカな話にのせられるなってさ」
孝太郎「あらま」
なんてバカな話をしているものだから、由紀江はうっかりグラスを落としてしまう。店長らしき人に、白い目で睨まれる。
孝太郎「ねぇ、由紀江さんの方からさ、何とか白石君の方を説得してくれないかな?由紀江さんが一緒にやろうっつったらさ、白石君だったら、ほら、こうやってあの・・・『(手を振って)しょうがねーな、俺が手伝って やる か』、とか言ってくれそうじゃない?」
由紀江「そんなこと言う訳ないでしょぁ?」
孝太郎「何で?」
由紀江「何でって・・・そんな夢みたいな話・・・」
孝太郎「夢見たいな話じゃダメかな・・・」
と、話を続けようとしますが、再び店長に、由紀江は嫌な顔をされてしまい;
由紀江「さっさと帰った方がいいわよ。この店、高いんだから」
と、話を切り上げざるを得なくなる孝太郎君。またまた振られてしまいます。
[夜道 〜 ]
尚美と二人、とぼとぼと夜道を歩く孝太郎。
尚美 「どうしたの、元気ないね?」
孝太郎「うううん、そんなことないよ」
尚美 「あっ、分かった。白石さんや由紀江さんに反対されたんでしょ、会社作
るの?」
孝太郎「うん」
尚美 「やっぱり・・・」
孝太郎「そんな大変なことかな?…だってさ、今あるどんな会社だって、最初、
誰かが作ったわけだし。それが僕だって構わないわけだよね?」
尚美 「そうだけど・・・」
孝太郎「やっぱり尚美も無理だと思ってるんだ?」
尚美 「あ、そうじゃないよ。そうじゃないけど…、つまり何て言うか・・・、
孝太郎が会社を作って社長になるなんて、正直、想像できないの。でも、
誰の言うことを信じるかっていったら、それは白石さんや由紀江さんの
言うことでもなくて、ましてやよく知らない政治家や評論家の言うこと
でもなくて、やっぱり私は孝太郎の言うことを信じたいから
・・・だから私には頑張って、ってそれしか言えないよ」
孝太郎「ありがとう」
そのまま唇を重ねる二人。
尚美 「(笑)」
孝太郎「(笑)」
尚美 「頑張って、孝太郎」
孝太郎「うん、頑張るよ」
そして二人は仲良く手をつないで歩き出す。うんうん、この二人のほんわかムードはやっぱり好きさ(♪)
[夜のオフィス街 〜 ]
徳川は部下を連れてとあるビルから出てくる。
その部下と別れ、帰ろうとすると、別のビルから出てくる津村の姿を見つける。津村は美人秘書を連れ、にこやかな表情をしている;
秘書 「明日の会食ですが、何か希望はありますか?」
津村 「久しぶりに、しゃぶしゃぶでも食べるか?」
徳川は、そんな会話を続ける津村に接近する;
徳川 「津村!」
津村 「おやおや、徳川さん」
徳川 「何がしゃぶしゃぶだ」
津村 「え?」
徳川 「あけぼの保険が倒産したとき、お前は一人で外国に逃げたそうじゃない
か!!それなのに、こんな会社の社長になりやがって」
津村 「君、人聞きの悪いことを言っちゃいけないよ。倒産したのは、私のせい
じゃない。あれはね、そもそもね…」
と、自らの責任を微塵も感じていない津村に、徳川は思わず胸倉をつかむ;
津村 「何をするんだ」
徳川 「いいか、あの時お前はあけぼの保険の社長だ。最低限の責任はあるはず
だろ」
徳川はさらに津村に詰め寄ろうとするが、ボディーガードに阻まれ、引き離される;
津村 「君はあの時、あけぼの保険の社員じゃはなかった。何が君に関係あると
言うんだね?」
徳川 「社員たちがどれだけ苦労したか、わかってるのか?!」
徳川が必死に食い下がろうとするも、そのまま津村は車に乗り込み、走り去ってしまう。
徳川 「何とか言ったらどうなんだ!!津村ーっ!!」
[孝太郎のアパート 〜 ]
翌朝。今朝も尚美ちゃんは孝太郎のアパートにやってきてます。いつものように朝ご飯なんかを作ってると、玄関の扉をノックする音が:
尚美 「はーい、はいはい。緒方部長!!」
真紀子「杉田!あ、桜井はいる?」
尚美 「え、あ、はい。今、シャワー浴びてますけど」
真紀子「そう。じゃぁ、ちょっとお邪魔させて頂いていいかしら?」
と、全く普通に孝太郎の部屋に上がってくる真紀子さん。でも、尚美ちゃんの方は、あまり部屋の中は見られたくないようで、部屋に置かれた鏡台を必死で隠そうとしています。
尚美 「えっ?ちょ、ちょっと(あたふた)」
真紀子「あら、何?」
みんな二人の仲は知ってるのに、まだ頑なに隠そうとしているのね・・・(苦笑)。
真紀子「何やってんの?」
尚美 「ええ、今、朝食を作って・・・」
真紀子「ああ。あんたたち結婚するの?」
尚美 「あ・・・、あ、まだそんな・・・」
と、そこに
孝太郎「ああ、気持ちよかったー」
真紀子「あら、桜井。おはよう」
孝太郎「あれっ、緒方部長?!?!何でここにいるんですか?!」
真紀子「あんた、まだ本気で会社作るつもり?」
孝太郎「ええ。あ、まぁ、そのつもり・・・ですけど」
真紀子「そう。じゃぁね、これ、読みなさい」
孝太郎「はい?」
真紀子「最低限、ここに書いてあることぐらいは勉強しなさいよ」
孝太郎「あ、ありがとうございます」
真紀子「それじゃぁね」
孝太郎「え、あれ、部長、ちょっと、それだけですか?」
真紀子「そうよ」
と、用事を済ませて、真紀子はあっさりと部屋を出て行く。顔を見合わせる孝太郎と尚美ちゃん。
[トーレンカンパニー会議室 〜 ]
真紀子はトーレンカンパニーの重役らしき人と話をしている。だが、相手の男性の表情は、決して真紀子を歓迎しているようには見えない。
男性 「先日、あなたから提示された条件についてなんですが、うちの条件と合
わない部分が多いんですよ」
真紀子「どういう点がでしょう?」
男性 「主に待遇面ですね」
先日、真紀子に経営顧問を依頼した会長の意向と、実際の会社の意向とは違うため、真紀子を雇ういしはないようで、「緒方様のようにですね、国際感覚溢れる人材はわが社にも是非必要だと思うんです。ですが時期尚早と申しますか・・・」という建前だけの言葉を並べられる。
真紀子「わかりました、このお話はなかったことにしましょう」
これ以上話しても無駄だと悟った真紀子は、退席しようと席を立つ;
真紀子「一つ申し上げますと時期尚早だという人間は、100年経っても同じ事を
言ってますよ。失礼」
会議室を出て、手にしたトーレンカンパニーの書類をゴミ箱に棄てる真紀子。
[バー 〜 ]
一方の由紀江は、一所懸命にバイトをしているものの、どうも馴染めずにいる。例えば、グラスを割ってしまうと、「また割ったのかよ。もと総合職だとか何だか知らないけど、あんた、料理とかしたことないだろう。女はそれじゃぁなぁ・・・」などとあからさまに皮肉を言われる。黙って割ったグラスを片付ける由紀江さん。
[とあるビルのロビー 〜 ]
新しい会社で、先輩の男性とともに、営業に出ようとする白石。しかし、一緒の男性は不機嫌な様子で白石に当り散らしている;
男性 「おい、白石遅い!何やってるんだ」
白石 「はい、すいません。はい、すいません」
男性 「全くどうして間違った数字のままファックスしてしまったんだよ!」
白石 「私は確認した方がいいと申し上げましたけど」
男性 「僕のせいだと言うのか?」
白石 「そうじゃないですけど」
男性 「お前なぁ、今度の取引が成立しなかったら僕の査定に響くんだからなぁ。
わかってんのか!!」
白石 「はい」
男性 「車の手配は?」
白石 「私がするんですか?」
男性 「そうだよ、当然だよ」
白石 「これだから中途入社は嫌なんだよ!!!」
白石もやはり、新しい会社で理不尽な扱いを受けていることに満足を得られずにいる。
[喫茶店 〜 ]
先日、孝太郎と白石が会っていたのと同じ喫茶店(白石の会社のビル内のお店かな?)で、白石と由紀江は二人っきりでお茶をしています・・・といっても、デートという雰囲気にしては白石の表情が若干、暗め;
由紀江「どうしたの?」
白石 「うん?」
由紀江「なんか、ずっと黙ってるから・・・」
白石 「うん」
由紀江「会社で何かあった?」
白石 「なぁ、桜井が言ってたこと、どう思う?」
由紀江「会社を作るるってこと」
白石 「ああ」
由紀江「ああ・・・夢みたいな話よね」
白石 「そうだよな。でも、あいつ、本気みたいだったぜ。昨日も俺のところに
口説きに来てさ」
由紀江「・・・まさか、バカなことしないよね?」
白石 「バカか・・・ああ、俺がバカに馬鹿なことしたっていうのは、高校の
卒業式サボって、海に行ったことかなぁ」
由紀江「ええ、意外!何でそんなことしたの?」
白石 「バカな友達にそそのかされてさぁ」
由紀江「バカな友達ねぇ・・・」
白石 「そんとき見た海って、すっげー綺麗だったんだぜ!」
静かに微笑み合う二人・・・
[居酒屋 松ちゃん 〜 ]
孝太郎と尚美ちゃん、二人揃って、真紀子に渡された会社を作るための参考書で勉強中;
孝太郎「ねぇ、マスター?」
松永 「ん?」
孝太郎「有限会社と株式会社って、どっちがいいんですかね?」
松永 「どっちがいってことはないけど、そもそも資本金が違うからなぁ」
孝太郎「ん?」
松永 「お前、お金あんのかよ」
尚美 「ねぇ、ねぇ株式会社の資本金って、1,000万からって書いてあるよ」
孝太郎「い、1,000万?!(@o@)」
と、そういうところの勉強から始まるわけやね・・・この調子だと、会社作るの、先は遠いよねぇ・・・(苦笑)。なんていうタイミングで、白石と由紀江が店にやってくる;
白石 「ああ、いたいたいたいた。お、桜井。桜井」
孝太郎「白石君!」
尚美 「由紀江さん!?」
白石 「ああ、マスター元気?」
由紀江「はい。マスターこれ。シャンパン、お店からくすねてきちゃった」
松永 「これ、どんぺりじゃないの?大丈夫?」
由紀江「うん、もうやめるんだもん、あんなみせ」
松永 「は?」
白石 「おれもやめるんだ、今の会社」
孝太郎「え?」
尚美 「どうしたんですか、二人とも」
白石 「俺たち決めたんだ」
由紀江「(笑)」
白石 「いっしょにやろう!」
と、ついに白石は孝太郎に協力することを申し出るのですが、肝心の孝太郎は;
孝太郎「やるって、何を?」
だって。やっぱり鈍感なんだから・・・(苦笑)。
白石 「会社だよ、会社」
孝太郎「本当に」
尚美 「えーーー?」
白石 「いや、俺もそろそろさ、人生の勝負をかけるときかなぁ、と思ってさ」
由紀江「私も」
白石 「それにさ、お前一人じゃ、危なかっしくてさ」
由紀江「うん」
孝太郎「ああ、白石君ありがとう。由紀江さんもありがとね。いや、二人が来て
くれたらさ、ほんと助かるよ。うん」
白石 「それでさ、俺も色々とプランがあるんだけどさ、聞いてくれよ」
孝太郎「なになに」
白石 「聞いてくれよ、な」
と、早速、孝太郎にプランを話そうとする白石。でも、その前に、松永が由紀江が持ってきたシャンパンを開ける。
一同 「おお!!」
松永 「まぁ、とりあえず、乾杯しようよ」
孝太郎「そうだね。じゃぁ、グラス、グラス」
と、乾杯の準備をすすめていたところ、どんぺりの香りに誘われたのか(違うって)、真紀子さんも店にやってきます。
松永 「あれ、緒方部長、いらっしゃい」
孝太郎「部長!」
真紀子「桜井、私が渡した本、読んだ?」
孝太郎「あ、いや、まだ、半分ぐらいですけど・・・」
真紀子「そう、じゃぁ、あとは私が実践的に教えててあげる」
孝太郎「え?」
真紀子「会社・・・一緒にやりましょ」
孝太郎「本当ですか?」
真紀子「あんたたちだけじゃ、心配だから」
(↑って、みんな素直じゃないねぇ〜(^^;))
白石 「それ、すげー」
尚美&由紀江「おお!!」
孝太郎「緒方部長、ありがとうございます!!」
真紀子「よろしく」
孝太郎「こちらこそ・・・よろしくい御願いします」
尚美 「よかった」
会社設立に向けて、真紀子が加わり、4人は拍手。そして、松永がグラスをみんなに配り;
松永 「おめでと、おめでとう。乾杯しましょう!」
孝太郎「それじゃぁ、僕たちの会社設立に向けて頑張りましょう」
白石 「おう」
全員 「かんぱーい!!!」
[津村の会社前 〜 ]
同じ日の夜・・・なのかな?秘書と共に会社から出てきた津村を、徳川が呼び止める;
徳川 「あれから、お前さんのことを、調べさせてもらったよ・・・。あけぼの
保険が倒産する直前、お前は会社の資産の一部を自分名義に書き換えた
ろ?!」
津村 「言いがかりはやめろ」
徳川 「言いがかりかどうか、出るところにでようじゃないか。お前さんには、
何としても、社長としての責任をとってもらうからな」
そのまま、津村と徳川はもみ合いになり、ついには徳川は津村を殴る。助けを呼ぶ津村の叫びに、会社ビルの警備員がかけつけ、思わず徳川は逃げ出してしまう(って、別に逃げやんでもいいやん!)。
[孝太郎のアパート 〜 ]
翌朝。孝太郎の狭いアパートに4人も集まって(笑)、会社作りに向けてプランを練っている。
孝太郎「どう?」
白石 「みんなが出せる金集めてみても、株式会社っていうのはしんどいなぁ」
孝太郎「じゃぁ、有限会社」(じゃぁ、って…(笑))
白石 「いや、でもどーせなら株式の方が・・・」
孝太郎「でも、最初からあんまり無理しない方がいいんじゃない?」
尚美 「緒方部長ならもう少し出せるんじゃない?」
孝太郎「いや、部長をあんまり頼るの止めようよ」
由紀江「ねぇ、何やる会社か、決めたの?」
孝太郎「まだ」(←即答かい!)
由紀江「それを先に決めなきゃ!」
白石 「俺たちの経験生かすなら、保険の代理業務だろう?」
尚美 「え〜。この際だから違うことやろうよ」
白石 「例えば?」
尚美 「お花屋さんとか?」(^^;)
白石 「お店屋さんごっこやってるんじゃないんだぞ!」
孝太郎「でも、お花屋さんのチェーン店とかあるもんね?」
尚美 「そうそう、それそれそれ」
白石 「いや、そうだけどさ・・」
由紀江「でも、どーせやるなら、今までに無い事業の方が面白いんじゃない?」
尚美 「今までに無い事業って?」
孝太郎「いや、だから、それを考えるんだよ」
白石 「でもちゃんと、儲かる話じゃないと」
由紀江「インターネット関連はどうかな?」
孝太郎「ああ、だめだめだめだめ、僕、そういうの苦手だから」
尚美 「じゃぁ、インディーズレコード会社」
由紀江「ああ、それ私乗った!」
白石 「そういう夢見たい話じゃなくて、もっと堅実に仕事しないと」
尚美 「だったらどこかに勤めてた方がいいじゃない」
尚美&由紀江「ねぇ?」
孝太郎「それもそうだねぇ」(孝太郎までそういうことを言うか〜(^^;))
白石 「・・・」
白石君、今度もまだまだ苦労しそうだよね(苦笑)。
そんな相談をしていると、たまたまつけてたテレビから、立てこもり事件の報道が流れます。って、孝太郎の家にテレビなんてあったんだ・・・初めて知ったわ(苦笑)。
『番組の途中ですが、現在立てこもり事件が起きている模様です』
『先程、午後1時頃から東京大田区平和島の物流倉庫ビルの屋上に
男が立てこもっています。それでは現場からの中継です』
と、映し出された映像は下着姿の徳川さん。ビルの屋上から今にも飛び降りそうな状況で、「バカなことはやめなさーい」と、警察の人の声も聞こえます。
孝太郎「徳川部長?!?!?!」
とってもドラマ的な展開だねぇ(苦笑)
[倉庫ビル 〜 ]
テレビを見て、すぐさま徳川が立てこもっている倉庫ビルに駆けつける孝太郎たち4人。途中、真紀子とも合流しまして、
ビルの屋上にやってきます。とはいえ、当然、警察には止められるわけで、その間から、徳川に向かって叫ぶ孝太郎。
孝太郎「部長!!部長〜!!!」
徳川 「桜〜井!!!」
徳川と孝太郎が知り合いだということで、孝太郎は中に通してもらい、屋上の柵を乗り越えて、徳川の方に近づいていきます(って、高いところでの演技、大丈夫、ゴロー君?(^^;)。ドラマを忘れてそっちが心配になっちゃったわよ、私…(苦笑))。
孝太郎「部長、そんなところにいたら、危ないですよ」
徳川 「来るな!!!・・・来ないでくれ・・・」
孝太郎「部長・・・」
孝太郎は一旦、近づくのを止めて、停止します。
徳川 「俺は、お前に誤らなければならない」
孝太郎「何言ってるんですか?」
徳川 「お前が課長になって大変な時なのに、お前の仕事を横取りしてしまった」
孝太郎「だって、そのことはもう・・・」
徳川 「あけぼの保険が倒産したのを聞いて、俺は、自分が情けなくなった。
お前との約束も、死んだ社長との約束も守れなかった・・・」
孝太郎「部長の責任じゃないじゃないですか!」
徳川 「せめて、逃げた津村社長の責任を追及したかった・・・。でも、それも
失敗した・・・」
孝太郎「・・・」
徳川 「もう、生きてる意味も無いよ」
孝太郎「何言ってるんですか?奥さんやお子さんがいるじゃないですか!」
徳川 「妻とは離婚した」
孝太郎「えっ?」
徳川 「子供は妻に渡したよ」
孝太郎「・・・」
徳川 「俺も、年だよ。この先、大して良いことも無いだろう。だから、後悔は
無い」
覚悟を決めて、地上を見下ろす徳川さん・・・でも・・・;
孝太郎「いや、そんなの嘘ですよ!いいことなんて、たくさんありますって!」
徳川 「お前にはそうかもしれないが、俺にはもう」
孝太郎「(首を横に振って)今朝、今朝尚美が作ってくれた朝食は、ひじきご飯と
かぼちゃんの煮付けで、それはもう、飛び上がるぐらい旨かったですよ。
そしてアパートを出たら、隣の家の朝顔が咲いていて、嗅いでみたら、
とてもいい香りがしました。いつも吼えられる角の豆腐屋の犬が、今日
はなぜだか、しっぽを振って近づいてきたし、それに、今日は白石君と
銀行に行くんで、部長に以前頂いたあのアルマーニのネクタイを初めて
おろしたんです。ほら、これです。似合うしょう?…僕、アルマーニの
ネクタイなんて初めてだったんで、特別の日のために、ちゃんととって
おいたんです」
と、とっても感動するシーンなのに;
徳川 「桜井・・・すまない・・・それは偽物だ」
って、おい!この緊張した場面で、それかい!?(笑)
孝太郎「え?」
徳川 「大阪に出張で行ったとき、バッタ屋で買ったんだよ」
孝太郎「・・・(^^;)」
徳川 「俺は、そういう男だ、忘れてくれ!」
孝太郎「・・・」
そして、徳川は手を離し、足が滑って、そのまま落下!!!
・・・かと思ったら、ちゃんと孝太郎が徳川さんの片手をキャッチするわけやね。そして、落下をなんとか食い止めながら、孝太郎君はなおも徳川さんに語りつづけます;
徳川 「放せ!!!」
孝太郎「いいことなんてたくさんありますって!!!
僕は部長と出会えたし、部長は僕と出会えた
・・・・それっていいことじゃないですか?」
徳川 「・・・桜井・・・」
孝太郎「部長・・・」
孝太郎の言葉に、徳川も頷き、前向きに生きる決意をする・・・。だけど;
孝太郎「・・・重いです・・・」
ってことで、完全なヒーローものならここで助け上げるのでしょうけど、あいにくと孝太郎では徳川さんを持ち上げることは出来ず、そのままズルズルと手が滑っていき;
徳川 「ああ・・・助けてくれ〜」
と、そのとき、屋上の柵で落下を食い止めていた孝太郎の足から靴が脱げ、孝太郎もろとも屋上から落下(スタントだったけどね(^^;))。その光景を前に目を覆う尚美たち。・・・次の瞬間、地上を見ると孝太郎と徳川は救助用のエアマットに包み込まれていたのでした;
孝太郎「部長!助かりましたよ!ほら、ほら、見てください。何ともない、ほら、
部長!!!!!」
そして、周りを見渡し改めて徳川を見て;
孝太郎「ああ、よかった〜部長ぉ〜!」
と、抱擁。同じく徳川も;
徳川 「怖かった〜」
と絶叫・・・おいおい、自殺しようとした人が、そんな感想でいいのかい?(苦笑)
孝太郎「よかった〜。助かりましたよぉ」
ちなみに、屋上では残された尚美ちゃんたちも歓喜の声を上げてます。尚美と由紀江は互いに「よかったぁ」と抱き合い、そして、白石君も:
白石 「やったやったやった〜!!!ああ、死ぬかと思った、やった〜!!」
と叫びながら真紀子に抱きついて、白い目で見られる始末・・・う〜ん、白石君、ついにはこういうキャラクターになっちゃったのねん(苦笑)。
[株式会社 桜井 〜 ]
数週間後・・・
とあるおんぼろビルに駆け足で入っていく孝太郎。そのビルの一室(但し、机があるだけ)で、真紀子,白石,尚美,由紀江、そして徳川が待っています。どうやら新会社がようやく動き始めたようです;
孝太郎「おはようございます!」
白石 「遅い!」
孝太郎「いや、遅れたのには深い事情が御座いまして」
白石 「何いってるんだ、今日が仕事始めだぞ!」
尚美 「まぁまぁ、いいじゃないですか。それより、みなさん、来て下さい」
そして、尚美は事務所の一角に置かれている大きな包みをみんなに見せる;
由紀江「何これ?」
尚美 「うちのお父さんからのプレゼントだって。じゃ〜ん」
白石 「うわ〜、すげ〜」
と、尚美が開けた包みには、『株式会社 桜井』の文字の書かれた看板。さっそくそれを壁に掲げてみます。
孝太郎「よし」
白石 「株式会社 桜井」
徳川 「いよいよスタートか」
真紀子「それじゃぁ、まず、社長のご挨拶からね」
孝太郎「あ、そうですね、御願いします、社長」
徳川 「社長はお前だろう?」
孝太郎「ああ、そうでしたね」
由紀江「もう、しっかりしてよね」
真紀子「ほら、さっさと前に行って、挨拶する!」
孝太郎「はい!」
徳川 「よ、桜井孝太郎!」
尚美 「格好いい!」
そして、全員が拍手をし、孝太郎は照れながらスピーチを始めます。
孝太郎「いや、えーと・・・あの・・・本当に何を言ったらいいのか分からない
んですけれども、ただ一つ言えることは;
この会社は絶対に成功するということです」
全員 「ええ???(@o@)」
孝太郎「なぜなら、皆さんが社員だからです。
美貌とスタイル、そして、ほれぼれとするぐらいの強ーい意志を備えた
アイアンレディこと緒方真紀子さん。
豊富な知識と、それを仕事に生かす実行力を持ち、入社以来、僕の目標
だった白石英二君。
冷静な分析力と健全な向上心、そして、その裏に熱〜〜い女心を持った
立花由紀江さん。
公私共に僕を支えてくれている、いつも笑顔の杉田尚美さん。
そして仕事ではもちろん、私生活でも僕にいろいろ教えてくれた、人生
の師匠でもある、徳川康弘さん」
徳川 「しびれっぞー」
・・・(^^;)
孝太郎「こんな素晴らしい社員がいるから、社長の私がやることなんて何もあり
ません。ですが、折角ですから、みなさんに一つだけ御願いがあります。
もし、これから先、仕事で嫌な人と出会ったらその人をジーーーっと
観察してみて下さい。しばらくすると必ずいいところが見つかります。
例えば、鼻の形がいいとか、喋り方がかわいいとか、歩く姿勢がいいと
か・・・どんな人でも必ずいいところが1つや2つはあります。そして、
そのいいところを見つけたら、そこを好きになって下さい。
どんな意地悪な人でも、一度好きになったら、案外気のいい人だったり
します。そうすれば今まで敵だった人間も、いつの間にか仲間になって
いたりします。
そうして仲間を増やしていけば、必ずこの会社は成功します。
そして皆さんは絶対に幸せになれます。
・・・そう僕は信じています。みなさん、一緒にがんばりましょう!!」
全員、拍手。
孝太郎「(^-^)」
ちょうどそのタイミングで、一人の男性がオフィスに入ってくる
井原 「あのー、あけぼの保険第一営業部からお花が届いていますが・・・」
尚美 「あれー、もしかして、井原さん?!」
井原 「どうもー♪」
井原はその後、その花屋に就職し、そこで孝太郎たちの新会社の話を耳にしたというので、祝いにやってきたのだった。そして、井原だけでなく、他のあけぼの保険第一営業部のみんなも久しぶりに集合する;
「会社設立おめでとーございます!」
孝太郎「みんなきてくれたんだ。ありがとう、ありがとね」
第一営業部のみんなは、それぞれ順風満帆とはいかないまでも、実家の酒屋を継いだり(吉村さん)、派遣OLをしたり、結婚をしたり・・・無色だったり(^^;)、それぞれ新しい生活を始めているようです;
孝太郎「どーですか、みなさんが集まったということで、株式会社桜井と、今後
のみなさんの発展を祈って、一本締めといきませんか?」
孝太郎「よーっ」
簡単な発足式も終わり、真紀子、白石、由紀江、徳川の4人は、関係先の挨拶,新規顧客の開拓などのために、早速出かけていきます。4人を見送る孝太郎。そして、オフィスには後片付けをしている尚美ちゃんが残っています。
孝太郎「さてと・・・僕はお世話になった人のあいさつ回りに行ってこようかな」
尚美 「うん」
孝太郎「あ、そうだ、オフィスの備品なんだけどさ」
尚美 「もう注文したから、午後には届くと思う」
孝太郎「これも追加しておいてもらえるかな?」
と、胸の内ポケットから、一枚のメモを取り出す。メモを渡した孝太郎は、少しずつ出口の方に向かって後ずさりしつつ、メモを読み上げる尚美の様子を伺っている;
尚美 「えっ?ヘルスメーター1つ、低周波マッサージ機2つ、ダイエット茶7つ
・・・婚約指輪1つ?!」
孝太郎「最後の一つは、杉田尚美さんに 渡しといてくれ」
と言い残してオフィスを出て行く孝太郎君。
尚美 「ああ。ちょっと、ちょっと」
慌てて孝太郎の後を追う尚美ちゃん。ビルの入り口まで降りてきて、先を歩く孝太郎の背中に向かって叫びます;
尚美 「どういうことよ、婚約指輪って!!!」
しかし、孝太郎はそれには答えず、ただ、笑顔で
孝太郎「いってきまーす (^-^)/~」
と、大きく手を振り、外回りに出掛ける孝太郎。若干、呆れ気味の尚美ちゃん。
尚美 「もう・・・(笑)。
がんばれーっ、桜井こーたろー」
ナレーション『桜井孝太郎は社長になった。
時に2002年7月・・・後の世の経済学者はこう言っている。
”この日こそが日本経済復活の第一歩であった”と…。
頑張れ、桜井孝太郎!日本の夜明けは近い!』
孝太郎「ヨイショ!!」