[あけぼの保険 第一営業部オフィス 〜 白石の悪夢]
いつもの朝のオフィスの光景・・・ではなく、当然、第一営業部には課長の席が置かれ、そこにはキザっぽいメガネをかけた孝太郎が、でーんと座っている。
尚美 「おはようございます、桜井課長」
孝太郎「おはよう、杉田君」
尚美 「名刺が出来上がりましたよ」
孝太郎「おっ、どれどれ・・・。(名刺を取り出して) お〜〜〜」
ナレーション『人間に肩書きなど必要ない、そう思う人もいるだろう。しかし、
肩書き一つで、態度も給料も、そして背負う責任も変わる。
それがサラリーマンと言うものである』
孝太郎が課長となり、立場の変化に伴い、営業部のみんなも、孝太郎に対する接し方も変化しています;
小田 「桜井課長、お茶をどうぞ」
森元 「頼まれていたコピーできました」
孝太郎「ありがとう」
由紀江「桜井課長、伝票に印鑑御願いします」
孝太郎「ああ、印鑑ね・・・じゃぁ、これで」
と、[課長]の文字の刻まれたまんまのはんこを押す(すっごいハンコだねぇ(^^;))。
由紀江「ありがとうございあます」
真紀子「桜井課長、先日の報告書できあがりました」
孝太郎「(渡された報告書を確認して)よしと。
じゃぁ、これ、5部コピーとって、あとはファイルにまとめて」
真紀子「はいわかりました」
というように、真紀子までが孝太郎の指示に従って仕事をしちゃってます。ただ、白石だけがその空気に馴染んでいないようで;
孝太郎「ああ、ちょっと白石君いいかな?」
白石 「ん?」
孝太郎「君がまとめたこの営業計画書なんだけどね」
白石 「うん」
孝太郎「これじゃぁ、君、ダメだよ」
白石 「は?」
孝太郎「まだまだ詰めも甘いし・・・ふふふふふ、これじゃぁ、時代遅れだな」
白石 「何言ってるんだよ。このプランのどこが時代遅れなんだよ?」
孝太郎「とにかく、やりなおしだ」
白石 「じょ、冗談じゃないよ。大体、お前に何が分かるんだよ!!!」
孝太郎「(机を叩いて)何だね?その言葉遣いは?」
白石 「えーー」
孝太郎「そうやって上司に対する礼儀もなってないから、同期の私に先を越され
るんじゃ〜ないのか?」
白石 「桜井、お前・・・」
孝太郎「桜井じゃない、桜井課長と呼びなさい!」
孝太郎に反抗的な態度を示す白石に、周囲の同僚たちも白い目を向ける。白石君、孤立?(笑)
白石 「はい、いや・・・ああ・・・(仕方なく)すいませんでした、桜井課長」
孝太郎「(耳に手をやって)はぁ?全然、聞こえませんねぇ、そんなんじゃ」
(すっごい嫌な感じ↑(^^;))
白石 「すいませんでした、桜井課長!!」(←自棄)
と、最後は土下座までして孝太郎に謝る白石でしたが、次の瞬間には自分のデスクで目が覚めて;
白石 「あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
と一人絶叫。・・・孝太郎の偉そうな態度は、やっぱり白石の夢の中の話だったのね。ああいう孝太郎君、夢だけで終わらせるのはちょっと勿体無かったかな?(苦笑)。白石君、差し支えなければ、またこういう夢を見てね(無理だって…)
由紀江「どうしたの?ねぇ、大丈夫、すごい疲れた顔してるけど・・・」
白石 「え?」
由紀江「それにすごい汗」
白石 「いや。昨日の夜、飲みすぎたかな?(周りを見て)桜井は?」
由紀江「まだみたいだけど」
との由紀江の言葉と同時に、勢いよく笑顔&元気いっぱいでオフィスに駆け込んでくる。もちろん、先ほどの白石の夢の中の孝太郎とは別人格・・・っていうか、こっちが「正」ですね。
孝太郎「みなさーん、おはようございまーす」
一同 「おはようございます」
そして、オフィスの一人一人にテンポ良く挨拶をしながら;
孝太郎「おはよっ、おはよっ、白石君、おっはよーっ」
と、スキップなんかしながら白石の背後を駆け抜ける孝太郎。冒頭のキザな孝太郎とのギャップがまた可愛いかも(*^^*)。そして、課長席にカバンを置たか置かないかのタイミングで、額に汗をかいた白石が直立不動で孝太郎に挨拶。
白石 「はい。おはようございます、桜井課長!」
孝太郎「どうしたの?」
白石 「えっ?」
孝太郎「や、やめてよ、課長だなんて」
白石 「いや、でも、そのぉ・・・」
孝太郎「どうしたの?」
白石 「やっぱりその・・・」
と、先ほどの悪夢から抜け切れず、あたふたの白石君。白石君のキャラクターって、こんなんでいいのか?
そこに、尚美もやってきて;
尚美 「おはようございます、桜井課長」
孝太郎「ありがとう、杉田君。ははははは・・・」
と、椅子にふんぞり返り、机に脚なんか載っけたりして、課長っぽく(じゃないよね?(^^;))やってますが;
尚美 「何それ?全然、似合わない」(笑)
孝太郎「えっ、何か、課長っぽくない?」
尚美 「全然ダメ」
孝太郎「そうかな?」
と、朝のオトボケ時間はここまで。真紀子がやってきて;
真紀子「桜井!」
孝太郎「あっ」
真紀子「何遊んでんの?」
孝太郎「(起立)あ、おはようございます」
真紀子「みんなも、ほら、会議始まるわよ!」
との命令に、孝太郎は、顔の近くで小さくガッツポーズを作り笑顔で
孝太郎「はい!」
っていう孝太郎のちょっとした仕草&表情がたまらなく可愛くもあり・・・(^^;)。
そして、会議室。真紀子以下、主だった第一営業部員が集合している。
真紀子の口から、社長がしばらくの間、アメリカに出張、その間は真紀子が取り仕切るとの報告があり、以前のように真紀子の権限で会議も進みます。
真紀子「まずは桜井!」
孝太郎「はい」
真紀子「あなたは各営業担当の人間と一緒に、課長就任の挨拶を兼ねて、お得意
様廻りをしなさい」
孝太郎「はい」
真紀子「白石は桜井のフォローをするように」
白石 「僕がですか?」
真紀子「何か問題?」
白石 「いや。でも、どうして僕が桜井のフォローを?」
真紀子「桜井はあなたの上司なのよ?フォローするのは当たり前のことでしょう?」
白石 「・・・」
真紀子「わかった?」
白石 「はい」
渋々承知の白石君。
[あけぼの保険ビル前〜 ]
孝太郎と共に出かける白石。二人並んで、あけぼの保険ビルから出てきます;
孝太郎「いやいやいや、参ったね。部長もさ、ほら、強引だからさ。まぁでも、
あまり気にしないでやろうよ」
白石 「白々しい・・・(--;)」
孝太郎「えっ?」
白石 「大体、何でお前が課長の座を引き受けるんだよ?」
孝太郎「何で???引き受けちゃいけないの?」(←あっけらかん)
白石 「俺はお前が断ると思ったね!」
孝太郎「そんな・・・。『正々堂々と勝負しよう』って、白石君だって言ってた
じゃない?」
自ら口にした言葉を思い出し、反論できない白石;
白石 「そりゃ、確かにそう言ったけどさ・・・」
孝太郎「白石君こそさ、何で断っちゃったの???」
白石 「それは・・・だから・・・色々あるんだよ!」
孝太郎「何、色々って?」
白石 「お前に説明しても分からないよ」
孝太郎「またそうやって格好つけちゃって」
とか何とか語りながら、二人は出かけていったのでした。
[あけぼの保険 第一営業部 コピー室 〜 ]
そして、尚美ちゃんと由紀江の関係はといえば、コピーをしている尚美のところに由紀江がやってきてコピーを依頼する。
由紀江「これ、コピーしてくれる?」
尚美 「そこに置いといて下さい」
由紀江「急いでるんだけど・・・」
尚美 「こっちも急いでるんで・・・」
と、孝太郎が課長になったことで、こちらも微妙にギクシャクしています。
由紀江「あんたね、桜井君が課長になったからって、自分も偉くなったと思って
るんじゃないでしょうね?」
尚美 「何を言ってるんですか?」
由紀江「桜井君が課長になれたのは、白石君が辞退したからなのよ。分かってる?」
尚美 「分かってますよ。白石さんがビビって辞退しちゃったんでしょ。
いざというときに出るんですよね、本当の男らしさってヤツが」
由紀江「あったまきた」
と、強引にコピーを割り込もうとした由紀江と尚美の2人が、そのコピー原稿の引っ張り合いになり、その用紙が真紀子の顔に向けて吹っ飛んで;
真紀子「(--;)。何やってんの?!」
真紀子「下らない事で内輪もめなんかしてないで、さっさと仕事する!!」
と、お叱りを受けちゃうわけやね(苦笑)。
[一反商事 応接室〜 ]
最初の挨拶廻りの先は白石が担当している(?)一反商事。相手会社の担当の部長と面会した孝太郎は、できたばかりの名刺を差し出してご挨拶;
孝太郎「この度、課長になりました桜井孝太郎です。よろしく御願いします」
秋田 「(同じく名刺を差し出して)はい、秋田です。
へぇ、課長さん…じゃぁ、君(白石)の上司じゃないか」
白石 「ええ・・・まぁ」
秋田 「でも、年上には見えないなぁ」
孝太郎「ええ。あの…白石君と僕は同期入社でして・・・」
秋田 「おお、同期入社か。(白石に)君、先を越されたんだね。
この白石君を差し置いて課長になるぐらいだから、こちら、かなり優秀
だってことだね」
白石 「・・・」
孝太郎「いえいえ。これも白石君以下、優秀な同期に恵まれたお陰でして・・・。
あっ、特に白石君にはいつも大変、助けられております」
秋田 「おお、なかなか謙虚だねぇ。君、気に入ったよ!」
孝太郎「ありがとうございます」
と、ウケの良い孝太郎を、複雑な心境で眺めている白石。
[野宮製鉄所 工場〜 ]
次に二人がやってきたのは、野宮製鉄所。ここでは現場で顧客にご挨拶。
小笠原「そうかぁ、ついに課長になったのかぁ。いやぁ、めでたいねぇ」
孝太郎「ありがとうございます。それもこれも、こちらとのお付き合いのお陰で
して・・・」
小笠原「何言ってるんだよ、お互いさんだよ。でも嬉しいからさ、御祝儀代わり
に新しい契約、頼んじゃおうかな?」
孝太郎「本当ですか?ありがとうございます」
小笠原「そんな。いいんだよ」
白石 「・・・(@o@)」
と、孝太郎君、あっさりと契約ゲット!
[オットセイ運送 〜 ]
川沿いにある倉庫という感じの場所。孝太郎はオットセイ運送の森岡部長と共に、荷袋を配送トラックに積む作業を手伝ってます。もちろん、そのときの掛け声は;
孝太郎「ヨイショぉ〜」
だったりする(^^;)。でも、孝太郎君というより、吾郎君がやると、腰が入っているのかいないのか、って感じで、何だか笑ってしまうのは私だけでしょうか?(どう見たって、荷物、軽そうなんだもん…(苦笑))
孝太郎「ヨイショぉ〜」
森岡 「ああ、いつも悪いねぇ」
孝太郎「何を仰います」
と、孝太郎は黙々と作業を続ける。盛岡はぼーっと突っ立っている白石を見て;
森岡 「君、君、課長さんが手伝ってるんだから、君も手伝いなさいよ!」
白石 「あ、あ、はい・・・」
と、白石も仕方なく協力。孝太郎が;
孝太郎「ヨイショぉ〜」
と張り切っているのをまねて、同じく荷物を持ち上げようとするが、全然、歯が立たない;
白石 「よ、よぉ」
森岡 「だめだなぁ・・。力仕事やったことないでしょう」
(笑)。でも、こういう白石のキャラクターの方が、むしろ吾郎君のキャラクターにダブって見えちゃうんですけどねぇ。もしかして、白石君のモデルって、吾郎君?!(^^;)
孝太郎「あっ、白石君、無理しなくていいよ。ヨイショぉ〜」
白石 「・・・」
そして、積荷作業が終わり、川べりに腰を下ろし、一服している孝太郎と白石に、盛岡は缶コーヒー(かな?BOSSじゃなかったよね?(苦笑))を差し入れする;
森岡 「お、飲めよ(缶を放り投げる)」
孝太郎「ありがとうございます」
白石 「ありがとうございます」
森岡 「お前が課長ねぇ・・・そんな時代になったのかね?」
孝太郎「・・・(^^;)」
森岡 「あ、いや、こいつがな、初めてうちに来たときはさ、まだ何にも分から
ない若造でな。俺、気に入らないから追い返してしまったんだよ。結構
執念深くてな。荷物の積み込み手伝うから契約してくれって言うんだ」
孝太郎「あはは(笑)。あのときは、無茶言ってすいませんでした f(^^;)」
森岡 「(笑)。でも、嬉しいねぇ・・・。分かった、御祝儀だ!!
来期に大きな仕事が入るからよ、保険の契約、お前んとこへ頼むよ」
孝太郎「ありがとうございます」
森岡 「あ、いいっていいって」
と、そんな孝太郎をポカーンと見ている白石君。
[あけぼの保険 第一営業部 オフィス 〜 ]
オフィスでは、同僚と肩が触れて、カリカリしている由紀江さん。
[街中の橋の上で 〜 ]
得意先周りもひと段落し、2人で帰路につく孝太郎と白石。
孝太郎「いやー、参ったなぁ。3つも契約取れちゃったよ」
白石 「信じられない!」
孝太郎「えっ?」
白石 「あんな簡単に契約取れちゃうなんて、俺には信じられないよ」
孝太郎「どういうこと?」
白石 「いや、だって、俺がいつも付き合っている取引先はさ、具体的なプラン
無しでは決して約束しないんだよ。
それを、御祝儀だからって契約しようって、俺には信じられないよ!」
孝太郎「まぁ、みんな、長い付き合いだしさ」
白石 「そういう日本的なやり方が、今の日本経済の破綻を招いたんだよ」
孝太郎「本当にそうかな?」
白石 「ん?」
孝太郎「いや、まぁ、みんなそういう風に言うけどさ。もはや日本的なやり方では
通用しないとか」
白石 「今はグローバルな時代だぜ。世界を相手にするには、日本が変わらな
きゃダメめんなんだよ!」
孝太郎「いや、まぁ、白石君はそういう風に言うけどさ、僕は…世界を相手にした
ことはないしさ」
白石 「お、お前はな」
孝太郎「それに・・・僕、日本人だしね」
白石 「そりゃ、俺だって日本人だけどさ」
孝太郎「まぁ、でもさ、仕事が取れたわけだし、それはそれでいいことだよね?」
白石 「そりゃそうだけどさ」
孝太郎「(白石の顔を覗いて) (^^)?」(←だから、この表情に弱いんだよ、私は)
白石 「ああ・・・」
と、孝太郎なりの持論(?)に、何も言い返せない白石君。そこにタイミングよく、孝太郎の携帯電話(着メロはやっぱり『ヨイショ!'02』)が鳴る;
孝太郎「はい、もしもし・・・・あ、徳川部長?!・・・えっ???」
[居酒屋 松ちゃん 〜 ]
その日の夜。松ちゃんの店の中は、孝太郎の昇格祝いのために、派手派手な飾りつけが行われていますが、店の中は松永とタカシ以外は尚美ちゃんただ一人;
松永 「えっ、今日誰も来ないの?」
尚美 「ごめん」
松永 「何で?」
尚美 「誰も誘わなかったから」
尚美いわく、白石だけでなく営業部全体がしらけてしまって、孝太郎の昇進祝いをする雰囲気ではないと言う。
そこに、突然、真紀子が現れる;
真紀子「ああ、すぎた。やっと(店が)見つかったわ・・・」
尚美 「緒方部長?!(驚き)」
真紀子「全く、桜井の説明の仕方が悪いから、随分と迷っちゃったわよ…」
尚美 「どうしたんですか?」
真紀子「今日、ココで何かお祝い事があるんでしょ?桜井から電話があったの。
なんとか都合をつけて来てくれって。だから、急に言うから、会食一件
キャンセルしちゃったわよ。しっかしまぁ、話に聞いていたけど、随分
安っぽい店ねぇ」(久々聞いたね、この言葉(^^;))
松永 「何だって?!?!」
真紀子「あらいやだ。(窓枠に)埃が…。(タカシに向かって)ちょっとあなた、
こういう所もちゃんと掃除しなきゃダメよ。
で、あなたがマスター?今日のメニューはどうなってるの?」
尚美 「あの、部長、実はそのことなんですけど・・・」
と、他には誰も来ないということを尚美が真紀子に言おうとしたところに、またまたタイミングよく、孝太郎登場;
孝太郎「ああ、尚美」
尚美 「孝太郎!」
孝太郎「ああ、よかった間に合った・・・」
真紀子「桜井、早かったわね?」
孝太郎「緒方部長、来てくださったんですか?!」
真紀子「うん」
孝太郎「ありがとうございます。あ、それから、これ、持ってください」
と、孝太郎は手にした紙袋から、クラッカーを取り出し、みんなに配る;
真紀子「ん?何、これは?」
孝太郎「もうすぐ来ますんで・・・」
真紀子「誰が?」
孝太郎「徳川部長です」
一同 「えっ?」
孝太郎「あ、来たきたきた。ああ、みんな並んで…」
徳川が店に入ってくる。それをクラッカーを鳴らして迎える孝太郎。尚美たちも、とりあえずそれに従う;
孝太郎「おめでとうございます!」
尚美 「(訳も分からず)おめでとうございます!」
徳川 「いやー、嬉しい!ありがとう!桜井孝太郎、バンザイ!」
孝太郎「バンザイ!」
徳川 「バンザイ!」
孝太郎「部長、よかったですね〜、おめでとう御座います!いや〜」
と、孝太郎と徳川の2人でバンザイして盛り上がる・・・でも、もちろん、他の面々は事態を全く把握できておらず;
真紀子「徳川さんの何がおめでたいの?」
尚美 「さぁ?」
それでも、周囲を無視してよかったよかった・・・とお互いに言ってる二人(^^;)。
少し落ち着いて、全員、テーブルに着席している。ここでようやく、孝太郎はみんなに事情説明する;
孝太郎「実は今日、徳川部長に、新しい会社で営業部長の辞令が出たんですよ。
ね?」
徳川 「いや、そうなんです。それで、桜井に連絡したら、今日、こいつの課長
昇進パーティをやから、一緒にお祝いしましょう、って言ってくれて。
な?」
孝太郎「こんなにめでたいことはないですよね、徳川部長?」
徳川 「そうだな、桜井課長(笑)」
孝太郎「(笑)」(←幸せいっぱいの表情)
尚美 「それでは乾杯しましょう・・・乾杯の音頭は、緒方部長から」
真紀子「私?」
尚美 「やっぱり、こういう状況だと・・・ね」
孝太郎「御願いします」
真紀子「仕方ないわね」
孝太郎「あっ、でも、英語のスピーチだけはやめてくださいよ。僕ら分かりませ
んから」
一同 「(笑) あはは」
真紀子「そんなこと言われなくったって、分かってるわよ」
孝太郎「失礼しました」
そして、その場で立って、簡単なスピーチを始める真紀子;
真紀子「ゴホン(咳払い)。え〜、冷静に考えると、こんな場所でこんなメンバー
を相手に私は何をやってるんだろうと、我が身を嘆きたくもなりますが、
まぁ、いいでしょう。
この2人が、部長、そして課長になったことが、本当に幸せなことなのか、
それは私には分かりません。今の日本で出世することは決していいこと
ばかりではありません。そのかわりに背負う責任の方が大きいからです。
しかし、この2人を見ていると、実に幸せそうです。ですから、まぁ、
私が2人に贈れる言葉は1つしかありません・・・おめでとう」
孝太郎「ありがとうございます」
徳川 「ありがとうございます」
真紀子「じゃぁ、乾杯!」
[バーとその帰り道 〜 ]
同夜。いつも白石が行ってるバーで、白石と由紀江が飲んでいます。だた、今回は格好よく決めているではなく、白石は完全に泥酔中。
白石 「くそー、こんなんだったら、課長の座を辞退するんじゃなかったよ!」
そのまま店を出ても、道に落ちているバナナの皮で滑って転倒する白石。そのまま道端に座り込んでしまいます。そんな白石を由紀江は;
由紀江「みんなわかってるわよ。本当は誰が一番課長に相応しいかって。だから
そんなに自棄にならないで」
と慰める。ただ、白石自身は、課長を辞退したことは自分自身が決めたことだから、それは関係ないことだと言う。だけど・・・
白石 「ちゃんとやってけると思ってたんだよ。
あいつがさ、桜井が課長になっても、ちゃんとやれるって、そう思って
たんだよ。でも、イザそうなるとさ、何か色々気になっちゃってさ…。
アイツ、今、何やってると思う?徳川さんが転職先で部長になったから
お祝いしてるんだぜ」
由紀江「徳川さんが?」
白石 「俺も誘われたんだけどさ、とても行く気になれなくてさ。もう、自分が
情けないよ・・・」
そうやって弱みを見せる白石を見て、由紀江さん、思わず抱きしめちゃったりして…;
白石 「ちょっと、ちょっと・・・」
由紀江「いいから」
白石 「ちょっと?」
とにかく、いい感じになったみたいですね・・・(苦笑)。でも、白石君のこういう部分をちゃんと描いてるっていうのは、いいですね。
[孝太郎のアパート 〜 尚美ちゃんと春江さん]
そして、一方の孝太郎も完全に酔っぱらってます。尚美ちゃんに負われて、なんとかアパートに到着;
尚美 「まだよー、重いな〜。電気つけよう・・・靴脱いで、靴」
孝太郎「脱ぐ脱ぐ脱ぐ・・・」
と、とりあえず家に上がる。
孝太郎「あらっ、部長は?徳川部長は?」
尚美 「帰ったわよ」
孝太郎「何だよぉ〜。朝まで一緒に飲もうと思ってたのにな…」
尚美 「家族が待ってるからって・・・」
孝太郎「家族?」
尚美 「うん。実家から戻ってきてくれたんだって」
孝太郎「ああ、そう、ああ、それはよかった。よかった、よかった」
そのまま孝太郎は幸せ気分のまま(^^;)ベッドの中に倒れこむ。丁度、そこに部屋の電話が鳴る・・・;
尚美 「あれっ、孝太郎電話、電話電話」
孝太郎「誰?」
尚美 「誰って・・・」
孝太郎「うーん。ちょっと尚美、尚美ちゃん出て・・・」
仕方なく、尚美が孝太郎のかわりに電話に出る;
尚美 「もう・・・(--;)。はい、もしもし」
春江 『あっ、その声は尚美さんね』
尚美 「?」
春江 『孝太郎の母です』
相手が孝太郎の母親だと気づいて、緊張する尚美ちゃん。正座までしちゃってます。
尚美 「あ、はい。あの、あ、孝太郎さんはですね、今、ちょっと今、寝てます
けど・・・。って言っても、変な意味じゃなくて・・・あの、その…、
お酒をちょっと飲みすぎてしまいまして・・・。あ、ちょっと、今すぐ
起こしますね」
春江 『あ、いいの、いいの、いいの、いいの、たいした用事じゃないから…』
尚美 「あ、でも・・・」
春江 『尚美さん』
尚美 「はい?」
春江 『いつも孝太郎がお世話になってるみたいで、本当にありがとう』
尚美 「ああ、いえ、そんな」
春江 『一度お会いして、ちゃんとお礼を言わなくてはと思っていたんですけど
遠くに住んでいるものですから、ごめんなさいね』
尚美 「いえ・・・そんな・・・私こそ、孝太郎さんにお世話になってます」
春江 『ところで、孝太郎が課長になったって聞いたけど、本当なの?』
尚美 「はい、本当です」
春江 『でも、あの子に課長なんかできるのかしら。何か心配で・・・』
尚美 「大丈夫・・・ですよ」
幸せそうな表情をしてクッションを抱きかかえたりしながら眠っている孝太郎(ああ、この表情に今回はやられちゃったよぉ〜。幸せそうな孝太郎の表情を見ているのが幸せ(ハート))を見て、尚美は言葉を続けます;
春江 『本当?』
尚美 「最初は色々大変だと思いますけど、きっと、いい課長さんに
なると思います」
春江 『そう、尚美さんにそう言ってもらえれば安心だわ。
・・・これからも、孝太郎をよろしくね』
尚美 「はい!こちらこそ!!」
[あけぼの保険 第一営業部 オフィス 〜 ]
翌日のオフィス・・・たぶん、比較的早い時間帯;
真紀子「損保?徳川さんの新しい会社って『くれない損保』なの?!」
孝太郎「はい、そうですよ」
驚く真紀子とは対照的に、平然と応える孝太郎。真紀子の部長席の前にある課長席に座っている孝太郎は、くるりと椅子を180度回転させて、真紀子の方に振り向きます。
真紀子「『そうですよ』ってあなた…。じゃぁ、商売敵の営業部長になったこと
をお祝いしてあげたわけ?」
孝太郎「ああ、そういうことになりますね・・・」
真紀子「あなたらしくていいけど、でも、仕事の時は甘い顔しちゃだめよ」
孝太郎「もちろん、わかっておりますとも!」
真紀子「じゃぁ、今日も挨拶まわり、しっかりね」
孝太郎「行ってきます」
そうして席を立ち、デスクに座っている白石に声を掛ける;
孝太郎「あ、白石君、そろそろ行くけど・・・」
白石 「はい、いいですよ、課長!」
孝太郎「!」
白石 「!」
孝太郎「じゃぁ、行ってきます」
白石 「行ってきます」
そのまま2人はあけぼの保険ビルから駆けながら出てくる。そのまま左右に分かれて・・・ってオイオイ(^^;);
白石 「おい、おい、おい!!!」
孝太郎「え?」
白石 「今日は”しらさぎ建設”だろ?」
孝太郎「うん」
白石 「(方向は)こっち!」
孝太郎「あっ、あ、そうか。そうだそうだ、ごめん」
と、小ボケの孝太郎。そのまま駆け足で、なぜか白石を追い抜いて、必死に走っていきます;
白石 「おい!おい!待て!!」
孝太郎「早く!」
白石 「ちくしょー」
と、追いかけっこの2人(^^;)。いい感じで和解できたみたいだねぇ〜。
一方で、オフィスの給湯室でも・・・。使用済みの食器を持って、尚美が先に洗物をしている炊事場にやってくる由紀江;
由紀江「白石君と話したんだけどさ、つまらない喧嘩、もうやめようって。会社
で色々とあるのは仕方ないけど、それで私たちの仲まで壊れちゃったら
バカらしいでしょ?」
尚美 「由紀江さん・・・」
由紀江「今日もあの二人、外回りでしょう?帰ってきたらみんなで食事会しない?」
尚美 「食事会?」
由紀江「うん、田舎から大量においしい牛肉を送ってきたの。一人じゃ食べきれ
ないし、すき焼きでもしよう!」
[しらさぎ建設 社長室 〜 ]
さて、そのしらさき建設。社長室に招き入れられて、社長の栗田さんと面会をしています;
栗田 「お待たせしました・・・」
孝太郎「あ、社長、おはようございます。お久しぶりで御座います」
栗田 「どうも」
孝太郎「実は、今日お伺いしましたのは、私、先日の人事で課長になりまして」
栗田 「何か、そうらしいね」
孝太郎「はい」
栗田 「おめでとう」
孝太郎「ありがとうございます。これからもよろしく御願いします」
栗田 「うん、こちらこそ」
孝太郎「あ、御紹介します。こちら、僕と同期入社の白石英二君です」
白石 「白石英二です。よろしく御願いします」
栗田 「栗田です。よろしく。さぁ、どうぞどうぞ掛けて下さい」
孝太郎「白石君、実はこちらの会社は僕が始めて一人で仕事を頂いた会社なんだ。
だから、社長さんも新入社員のみなさんも、顔馴染みなんだよね。
社長、そして、そろそろいつもの火災保険の切り替え時期なんですが…
このたび新しいプランをお持ちしましたので、社長さんに是非見て頂き
たいと思いまして…。(書類を差し出して)それで、今までとは違う所
をご説明致しますと・・・」
栗田 「桜井君、実は…言いづらい話なんだが、君の所と契約を継続するべきか
迷ってる」
孝太郎「えっ、何でですか?」
栗田 「いや、最終決定に至った訳じゃないんだが、もう一社検討しようとして
いる会社があるんだ」
孝太郎「あっ・・・それはどこの会社ですか?」
栗田 「くれない損保だ」
孝太郎「くれない損保?!」
[しらさぎ建設のビル前 〜 ]
孝太郎と白石がしらさぎ建設のビルから出てくると、丁度、そのくれない損保の徳川が正面からやってくる。
白石 「おい、見ろ」
孝太郎「徳川部長・・・」
孝太郎と徳川の視線が合い、そのまま徳川は二人に近づいてくる;
徳川 「栗田社長に会ってきたのか?」
孝太郎「ええ」
白石 「どういうことですか?!桜井の取引先から仕事を取るなんて、酷いじゃ
ないですか!!」
徳川 「まだ、決まった訳じゃないよ」
白石 「でも!」
徳川 「私も新しい会社の営業部長になったからには、会社のために仕事をしな
くてはならない」
孝太郎「それじゃぁ・・・本気で僕の仕事を取るつもりなんですか?」
徳川 「そうだ、桜井!お前も課長になったんだから、俺と勝負してみるか?」
孝太郎「・・・」
徳川 「それとも、俺に負けるのが怖いのか?!」
孝太郎「・・・」
白石 「・・・」
そのまま徳川は二人の脇を通り過ぎ、しらさぎ建設のビルに入っていこうとする;
白石 「徳川さん!ちょっと待てよ!!!」
孝太郎「白石君、いいよ」
白石 「でも・・・」
孝太郎「部長!」
その孝太郎の言葉に、足を止める徳川;
孝太郎「ここの仕事は、絶対に渡しませんよ!」
徳川は振り返って孝太郎を一瞥し、そのままビルに入っていく。
ここでの孝太郎君、格好よかったね(*^^*)。番組的には、ここもヨイショで立ち向かうのが正しいあり方なのかもしれないけれど、ちゃんと孝太郎の格好よさも描いてくれて、格好よかったぜい!
[あけぼの保険 第一営業部 オフィス 〜 ]
夜。孝太郎と白石が二人で残業をしています。
しらさぎ建設から戻ってきた孝太郎と白石は、くれない損保に負けない保険プランを提案しようと、改めて検討を始めたのだった。
BGM:ヨイショ! '02 主題歌が流れると、気分が盛り上がるわ〜
白石はファイルの山を孝太郎のデスクに置く;
白石 「これ、俺がいつも使ってる契約書の雛形なんだよね。参考になると思う
んですよね」
孝太郎「ありがとう」
逆に、孝太郎は書類の一つを白石に見せて;
孝太郎「白石君、これ、今期迄の契約書なんだけど、白石君の目でチェックして
もらえるかな?」
白石 「ああ、わかった」
孝太郎「その製造者責任に関する部分なんだけど、もっと細かく条件を設定した
方がいいかな?」
白石 「ああ、これか?」
と、二人、一致協力して仕事をしています。そこに真紀子さんがやってきて;
真紀子「二人とも残業?」
孝太郎「はい」
白石 「はい」
真紀子「私、もう出なきゃいけないんだけど、何かある?」
白石 「部長、オーストラリアの保険業界に知り合いいますか?」
真紀子「うーん、いなくもないけど」
白石 「じゃぁ、これ相談に乗ってもらいたいんですけど。あっ、この会社なん
ですけど、オーストラリアとも取引始めるみたいなんですよ」
真紀子「わかったわ。じゃぁ、あとで電話入れるから」
孝太郎「よろしくおねがいします!」
真紀子「がんばって」
由紀江「お疲れ様です」
と、真紀子が出て行くのと同時に、今度は由紀江がやってきます;
由紀江「残業?」
白石 「うん」
由紀江「何か手伝うことある?」
白石 「これ日本語になおして」
由紀江「OK」
孝太郎「由紀江さん、助かるよ」
由紀江「任せて…」
白石 「桜井、これ、どういう意味?」
孝太郎「あれっ?!」
と、何か孝太郎のミスが見つかったのかな?ちょっとお間抜けなキャラも好きさ(^^;)。
続いて、尚美ちゃんが大きな荷物を持ってオフィスにやってきます。
仕事を続ける孝太郎&白石&由紀江ですが、なぜか白石は落ちづかず、由紀江さんのお腹は鳴り、孝太郎は眉毛ぴくぴく、鼻もぴくぴく、ふたたび眉毛ぴくぴくさせ、視線が仕事とは無関係の方向に向いています。その視線の先では、尚美がすき焼きの準備中;
尚美 「はーい。そろそろいいですよ!!!」
孝太郎「おお、待ってました!!!やった、美味そうだねぇ、これは」
白石 「おお、美味そ、美味そ」
由紀江「おいしそ〜」
と、3人が尚美がすき焼きの準備をしているテーブルにいっせいに着席(^^;)。
尚美 「それでは、いただきま〜す」
孝太郎「いただきまーす」
由紀江「いただきまーす」
と、みんな速攻で卵を溶いて、すき焼きを食してます;
白石 「会社でこんなことをやるなんて、不思議な気分だな」
尚美 「だって今日はね、すき焼きやろうって由紀江さんと話してたのに、二人
とも残業だっていうから」
由紀江「でも、さすが尚美よねぇ。まさか鍋まで持ってくるとは思わなかったわ」
尚美 「だって、やっぱり出来たてを食べた方がいいじゃないですか?」
由紀江「そうね」
孝太郎「そりゃそうだよね」
尚美 「ね?」
と言いもって、孝太郎を取った孝太郎に、なぜか白石がクレーム;
白石 「おい、それ俺のだよ!」
孝太郎「えっ」
白石 「肉、食べようと思ってせっかくこっちに避けておいたのにさぁ…」
孝太郎「だってさ、肉に名前なんか書いてないじゃない。何言ってるの?」
白石 「ダメだよ・・・」
由紀江「喧嘩しないで、まだいっぱいあるんだから。じゃぁ、肉追加〜」
尚美 「あ、ちょっと待って下さいよ。肉ばっかりダメですよ。野菜もちゃんとね
バランスよく食べて下さい」
孝太郎「そうそうそうそう」
白石 「いらない、いらない、野菜いらない」
孝太郎「白石君、怒りっぽいからね、野菜、野菜、野菜、肉の
リズムで食べた方がいいんだよ」
で、白石のとり皿に、強引に野菜を放り込む孝太郎。優しいねぇ・・・(^^;)。
白石 「野菜いらないよ、俺、嫌いだって!」
尚美 「ダメですよ、野菜食べないと!」
などと、お芝居だかなんだかわかんない楽しい雰囲気だねぇ〜。
時計は10時23分・・・尚美も仕事を手伝い、4人の残業はまだまだ続きます;
孝太郎「白石君、ちょっといいかな?」
孝太郎は白石に声を掛け、パソコン画面を見せる;
孝太郎「ここの数字なんだけど、こんなもんでどうかな?」
白石 「ちょっと厳しいんじゃないか?」
孝太郎「でも、徳川部長だったら、これぐらい弾いてくると思うんだよね」
白石 「そうか、そうかもしれないなぁ」
孝太郎「とりあえず、これでぶつけてみよう」
白石 「うん」
そのまま時間は経過し、深夜1時28分。一心不乱に仕事を進める。
さらに、時計は3時53分。かなり眠い時間帯で、こっくりこっくり転寝をしてしまっている孝太郎君。はっとわれに返り、顔をはたいて再度、気合入れ。
[しらさぎ建設ビル正面 〜 ]
夜が明けて・・・次の一日〜つまり二人にとって決戦の日が始まります。
いよいよしらさぎ建設に対してのベストなプランも完成し、再びしらさぎ建設にやってくる孝太郎と白石君。徹夜していたのに着替えをしているということは、一度、自宅に帰ったのかしら?(^^;)。
とはいえ、天候は小雨。ビルの前に立ち、手にした傘を居合抜きして;
孝太郎「ヨイショぉ!」
と、気合を入れる。一方の白石君も、孝太郎に負けず劣らず…、ってこっちの方がプロなんだけど(^^;);
白石 「ヨイショぉ〜!」
と、ちゃんと腰が入ってますね(^^;)。好きだなぁ、こういうお遊び。とっても得した気分だわ。
孝太郎「おおお〜〜〜〜〜。さすが白石君、違うねやっぱり(^^;)」
さらに傘(刀)を納めるポーズも白石君の場合、もちろん堂に入ってます。
孝太郎「行こう」
白石 「よし」
二人はしらさぎ建設ビルに入っていく。
[しらさぎ建設 社長室 〜 ]
再び社長の栗田と面会する孝太郎と白石。栗田は二人の持ってきたプランに目を通し、そして、その書類を置く;
栗田 「うん」
孝太郎「いかがでしょうか・・・今回はこちらの白石君と一致協力して、我が社
としては最善のプランをお持ちしたつもりです」
栗田 「そうみたいだね。細かい所まで本当によく考えてある。素晴らしいよ」
孝太郎「それでは社長・・・」
栗田はゆっくりと立ち上がる;
栗田 「このプランには何の問題もない。しかし、今回は、徳川さんのところと
契約させてもらうよ」
孝太郎「・・・。なぜですか?」
白石 「徳川さんのところと、どこがどう違うんですか?」
栗田 「契約のないように関しては遜色の無いものだ。いや、海外マーケットに
関する部分は、こちらの方が優れているかもしれない」
孝太郎「社長、御願いします。この契約は、失いたくないんです。だって・・・
こちらの会社は僕が初めて…、初めて一人で仕事をさせてもらった会社
なんです、ですから・・・」
栗田 「桜井君、それは違うよ」
孝太郎「?」
着席して栗田は話を続ける;
栗田 「もう5年になるか…。確かに私は営業マンとしてひとり立ちしたばかり
の君と契約した。しかしそれは君を信用したからではない」
孝太郎「え?」
栗田 「君の上司である徳川さんに、強く頼まれたからだ。『こいつを一人前に
してやりたいんで宜しく御願いします。足りない部分は自分がフォロー
します…』って、そう頭を下げられたんだ。もちろん、君はよくやって
くれた。今や一人前の立派な営業マンだ。しかしね、徳川さんは新しい
会社で苦しんでいる。だから、彼のところと契約してやりたいんだ」
孝太郎「・・・」
その栗田の言葉に、孝太郎は言葉を失う。
[居酒屋 松ちゃん 〜 ]
白石 「いや、俺は納得いかないよ」
しらさぎ建設から契約を断られた二人は、そのまま松ちゃんにきて飲んでいた。
白石 「プランとしてはうちの方が上だって、あの社長も認めてるんだから…。
だったら、うちと契約するべきだよ」
孝太郎「・・・」
白石 「まぁ心情的なことは俺も分からなくはないけどさ、でも、経営者として
は間違った判断だよ」
孝太郎「・・・」
孝太郎は何も言わずに座ったままでいる。
白石 「おい、桜井、何とか言えよ。お前、悔しくないのかよ?!あんなに一所
懸命作ったプランをだよ。あんな理由で向こうに持っていかれちゃった
んだぜ」
孝太郎「うん・・・でも、あんな理由ってことはいと思うな」
白石 「え?」
孝太郎「白石君、悪い、先、帰るね」
元気なく、席を立つ孝太郎。こういう孝太郎は初めてだよね・・・。
白石 「え、おい」
孝太郎「ごめん」
白石 「おい、いやちょっと、桜井!何で!桜井!おい!!」
松永 「放っておけって」
白石 「でも・・・」
孝太郎はそのまま店を出て行った。
[孝太郎のアパート 〜 ]
落ち込んだままアパートに帰ってきた孝太郎。それを尚美が迎え入れる;
尚美 「あっ、孝太郎、お帰り」
孝太郎「ただいま」
尚美 「さっきからずっと待ってるの。ビール出しても手つけないで」
孝太郎「?!」
孝太郎が自分の部屋の奥に目をやると、徳川がかしこまって正座していた。
孝太郎「徳川部長?!(駆け寄って)部長…何やってるんですか?」
徳川 「桜井、すまない m(_ _)m」
孝太郎「ちょっと、どうしたんですか。止めて下さいよ、部長、どうしたんです
か?」
徳川 「しらさぎ建設の仕事、俺が奪うことになってしまった。申し訳ない!」
孝太郎「いや、そんな止めて下さいって。部長、部長!…止めて下さいよ」
徳川 「しかしな・・・」
孝太郎「部長・・・あの・・・栗田社長から聞きました」
徳川 「ん?」
孝太郎「部長が陰から、僕のことをフォローしてくれてたって。だから僕と仕事
をしたんだって。でも、あの時、僕は初めて自分ひとりで仕事を取って
きたんだと思って、浮かれて騒いで、何も気がつきませんでした・・・。
いやー、本当にバカでした」
そして、改めて;
孝太郎「・・・部長」
徳川 「ん?」
孝太郎「ありがとうございました m(_ _)m」
徳川 「桜井・・・」
孝太郎「部長」
徳川 「俺の方こそ、俺の方こそ・・・ありがとう m(_ _)m」
孝太郎「そんな、止めて下さいよ」
徳川 「ありがとう」
孝太郎「まぁ、今回は、こういう結果になってしまいましたが、この次は絶対に
負けませんからね」
徳川 「お前も言うじゃないか」
孝太郎「部長みたいなのにね、そう何度も負けてたら、僕を育ててくれた上司に
申し訳ないですから。この上司が、徳川って名前でしてね。あ、部長と
同じ名前ですねぇ。あ、こりゃ偶然だ。何でだろう?。おかしいなぁ。
えへへ(笑)」
徳川 「相変わらず、調子のいいヤツだな(抱きっ)」
孝太郎「いや、部長、痛いですよ」
と、そんな二人を見て、尚美がビールを持って会話に加わる;
尚美 「さてと。じゃぁ、冷たいビールでも飲んで、乾杯しましょう!ね?」
孝太郎「部長、脚、崩して下さいよ」
徳川 「ああ、ありがとう」
孝太郎「調子いいっすかね?σ(^^;)」
そして、お互いビールを注いで;
尚美 「それでは、カンパーイ」
孝太郎「乾杯!」
徳川 「よし、乾杯だ!」
と、こっちはひとまずハッピーエンドを迎えたようですね。
[あけぼの保険 第一営業部 オフィス 〜 ]
数日後。会社に向かう一台のリムジン・・・これはもちろん、社長の津村の専用車。この車があけぼの保険に到着する。車から降りた津村は、とても不機嫌な様子で、そのまま営業部のオフィスにやってくる。
孝太郎「社長、お疲れ様です!」
孝太郎の言葉も無視し、自らの席に向かう津村;
真紀子「随分、早いお戻りですねぇ。いかがでした、本社の方は?」
津村 「・・・(--;)」
真紀子「何かありました?!」
津村 「・・・」
真紀子「社長?」
津村は机を激しく叩き;
津村 「諸君に悪い知らせがある。グローバルライフは
日本から撤退することになった!!」
一同 「えっ?(@o@)」
あまりの突然の津村の発言に、一同、凍りつく。
[あけぼの保険 第一営業部 オフィス 〜 ]
オフィスでは、なぜかテレビが置かれ、ニュースでグローバルライフの日本撤退の報道が流れている。全員、テレビから流れる女性アナウンサーの言葉を黙って聞いている。
女性 『アメリカの保険会社グローバルライフ社が、日本市場からの撤退を発表
しました。今年の4月からあけぼの保険を吸収合併し、その再建に向け
努力していたアメリカのグローバルライフですが、あけぼの保険の業績
の伸び悩みやアメリカ本社の株価の下落などを受け、再建を断念し、日
本のマーケットからの撤退を決定しました』
[居酒屋 松ちゃん 〜 ]
孝太郎,尚美,由紀江、そして白石の4人がカウンターに一列に並んで飲んでいる。もちろん、全員の表情は暗い;
由紀江「グローバルライフが撤退したら、うちの会社どうなっちゃうんだろう?」
白石 「他に後ろ盾になってくれる企業が現れればなぁ。まぁ、難しいかなぁ」
由紀江「じゃぁ、やっぱり倒産?!」
白石 「上の連中がどう動くか、それ次第だな・・・」
孝太郎「・・・」
そんな雰囲気を変えようと、孝太郎は少しおどけて見せる;
孝太郎「はぁ〜あ〜あ〜あ〜。折角、課長になれたのになぁ。新しい名刺だって
作ったのになぁ、僕」
松永 「え、新しい名刺あるの?」
孝太郎「こちらになりま〜す♪。ほらほらほら、ここに”課長”って書いてある
でしょ?」
松永 「本当だぁ。すっげーじゃん」
白石 「お前な〜、そんな小さなことはどーでもいいだろー」
孝太郎「あ、よく言うよ。白石君だってあんなに課長になりたがってたクセに」
松永 「そうだそうだ!」
白石 「あのな、今はあけぼの保険という船が沈みかかってるんだよ。次の船長
が誰になるかって、争っている場合じゃないだろー」
孝太郎「あ、知ってる知ってる、その映画。ほら、船の先端で、あの・・・こう
やって、やってるやつでしょ?」
と、映画『タイタニック』の真似をしてみせる孝太郎;
尚美 「それ、話全然違うけど」
孝太郎「え〜何で?一緒に映画行かなかった?」
尚美 「孝太郎、ずっと寝てたでしょ?」
孝太郎「えっ、そうだっけ?」
白石 「いいだろう、そんなこと、どーでも」
由紀江「いいわねぇ、二人はお気楽で・・・」
尚美 「あっ、ちょっと。お気楽なのは、孝太郎だけ。私は違いますよ。一緒に
しないで下さい」
孝太郎「(飲んでたビールを置いて)ん?ひどいね、尚美。ま、マスター、何か
言ってやってよ」
松永 「俺は尚美ちゃんの味方だよ!」
孝太郎「あ、あら、あら・・・(;o;)」
尚美 「ほーら」
孝太郎「あら」
と、何とか空気は和んだようで・・・(^^;)。そこに孝太郎の携帯電話が鳴ります(着メロはふりば?!)。
孝太郎「あれっ。ちょっと待ってて。はい、桜井です」
真紀子『ちょっと話があるんだけど・・・』
孝太郎「あ、緒方部長」
真紀子『出てこれる?」
孝太郎「わかりました」
[あけぼの保険ビル前 〜 ]
真紀子に呼び出され、会社までやってくる孝太郎。真紀子は孝太郎の姿を見つけ、かるく手を挙げて、合図を送る;
孝太郎「部長、どうしました?」
真紀子「これから、アメリカに行くの」
孝太郎「アメリカ?」
真紀子「グローバルライフの本社から急に呼び戻されて」
孝太郎「あ…。あ、そうですよね、部長、元々、向こうの会社の人ですもんね…」
真紀子「私、少し動いて見るわ」
孝太郎「?」
真紀子「グローバルライフが撤退するのをひっくり返せるかどうか・・・まぁ、
難しいと思うけど、でも、せめてもう少し猶予が欲しいって頼んでみる
つもり」
孝太郎「そうですか。ありがとうございます」
真紀子「これから大変なことがたくさん起きると思うけど、あなたならきっと、
乗り越えられると思うわ。頑張ってよ!」
孝太郎「はい、頑張ります」
真紀子はうなづき、孝太郎の顔を見て;
真紀子「いい顔つきになったわよ!(^-^)」
孝太郎の肩を軽く叩いて激励し、真紀子はそのまま待たせていたタクシーに乗り込む。
孝太郎「では、お気をつけて。いってらっしゃい」
もちろん、出ていった車に頭を下げ、「ありがとうございました」と。
孝太郎「(静かに)よし」
[孝太郎のアパート 〜 ]
○日後・・・;
朝起きて、朝刊を眺めている孝太郎。その新聞には「あけぼの保険倒産」の見出しが載っている。
深く息を吐き・・・そして、スーツを用意し、Yシャツに袖を通し、上着を着用し;
孝太郎「ヨイショ〜!」
孝太郎君、戦闘モードに突入!・・・かな?
[あけぼの保険 第一営業部 オフィス 〜 ]
あけぼの保険倒産のニュースを見た顧客が、大勢、なぜか第一営業部に押しかけている。「社長出せ!」「責任者を出せ!」という顧客たちと、それを必死に抑える白石や由紀江、その他の社員たち;
白石 「皆さん落ち着いてください、社長は今日はココに来ません!」
由紀江「お話は聞きますから、静かにしてください」
でも、このシチュエーションは無理があるよね〜。そもそもここの会社のセキュリティーはどーなってるんだ?(苦笑)。
その大騒動の中、孝太郎はオフィスにやってくる;
孝太郎「おはようございます」
オフィスの入り口で、そのまま深々と頭を下げる。オフィス内の騒動が一瞬、収まり、全員、孝太郎の方に視線を向ける。孝太郎はゆっくりと顔をあげ;
孝太郎「(^-^) ニコッ
あけぼの保険第一営業部 課長の桜井孝太郎で〜す。
どうもどうも、皆様。ご苦労様でございます、ご苦労様でございます。
あ、お疲れ様でございます。どうもどうも、どうもどうも・・・」
そのまま孝太郎はいつものヨイショの腰の低い体制でちょこまかと、そのまま自らの席に向かう。
孝太郎「私が、第一営業部の責任者でございます」
男1 「お前みたいな若造が、責任者の訳がないだろう?」
孝太郎「はい。以前、部長だった徳川は、既に退職しています。ですから、この
第一営業部で役職がついているのは、課長である私だけでございます」
男1 「じゃぁ、お前が本当にこの場の責任者なのか?」
孝太郎「左様でございます、トニーサービスの星野様」
男1 「えっ(驚き)。俺のこと、知ってるのか?」
孝太郎「以前、当時の部長の徳川と何度か食事に連れて行って頂きました。その
ときに聞かせて頂きました星野様の詩吟…。いや〜、いまだに忘れられ
ません。叙情豊かで、なおかつ透明感溢れるしなやかなそのお声に、私、
いたく感動しました。いや〜、本当に素晴らしいです」
男1 「あ、そうか・・・」
孝太郎「はい」
と、一人目は上手くヨイショでクリア。続いては;
孝太郎「あ、これはこれは、クラマ建設の若松様」
男2 「おお!俺も会ったことがあるんか?」
孝太郎「もちろんでございます。まだ私が新人の頃ですけれども、釣りのお供を
させて頂きました。その時のサオの振り方の見事なこと!もう、目にも
留まらぬ早業で、自由自在に操るその腕前!!感服致しました。
いやいやいやいや、あれはですね、いわゆる一つの、芸術です!」
男2 「いや、あはは、そりゃぁ大げさだよ!」
孝太郎「もう、まぶたに焼き付いております」
男2 「調子いいんだから…」
孝太郎「何を仰います。この桜井孝太郎、真実以外は口にしません」
と、二人目もクリア。そして、3人目は孝太郎の肩を叩く巨漢の男性が相手;
孝太郎「これはこれはこれはこれは・・・。クワガタ工業の山本様。あのときの
チークダンス、忘れられません、はい」
男3 「そんなことはどーでもいいんだよ!」
と、予定外に山本に突き飛ばされちゃう孝太郎君。
孝太郎「(@o@)」
男3 「俺もお前のことはよく覚えているよ」
孝太郎「あ、ありがとうございます」
男3 「何かっていや、ヨイショする、やたらと軽い男がいるってな!!」
孝太郎「(^^;)」
男3 「そのお前が課長かよ?そりゃ、会社が潰れるはずだよ!」
孝太郎「いやー、随分、キツイお言葉で・・・」
男3 「にやついてんじゃねー!」
と、ついにはむなぐらを掴まれ、そのまま持ち上げられる孝太郎。
孝太郎「あいたたたた、あいたたたた、あいたたたた、あいたたたた、
あいたたたた、あいたたたた・・・・・(延々続く)」
ナレーション『あけぼの保険は倒産した。その修羅場の中で、桜井孝太郎の
ヨイショは何の役にも立たなかった』
って、それじゃぁ、あかんやん!(^^;)。とはいえ、本当に孝太郎のヨイショは全く効果なく、孝太郎はむなぐらを掴まれた状態からそのまま床に叩きつけられる。
尚美 「孝太郎、大丈夫?!?!」
ナレーション『立ち上がれ、桜井孝太郎!お前が立たなければ、誰が日本を
救うと言うのだ!!』