[あけぼの保険 第一営業部オフィス 〜 週末]
今日は金曜日。就業時間終了のチャイムが鳴る:
社内アナウンス:只今、午後六時になりました。
本日、金曜日はノー残業デーです。
全社員、速やかに退社して下さい。繰り返します・・・
真紀子「それではお先に・・・」
全員 「お疲れ様でした」
アナウンスと同時にオフィスを出て行く真紀子。完全に姿が見えないことを確認してから、「終わったー」、と喜ぶ女子社員たち。井原のように奥さんが怒っているから家に帰りたくないと言う社員も中にはいるようですが(笑)、大方は一週間の仕事が終わったことを喜んでいます。
そして、尚美ちゃんは、一人お仕事してまして;
中根 「ねぇ、本当に行かないの?」
尚美 「ごめん、来週こそは付き合うから」
全員 「えーーー」
中根 「仕方ないわね。食事が終わったら例のピアノBARに居るから」
森本 「気が変わったら携帯かけて、駆けつけること」
尚美 「わかった」
と、女子社員たちが出て行くのを見送る;
尚美 「遅い。孝太郎、早く帰ってきて・・・」
と、尚美ちゃんが残業をしているのは、お仕事だけが理由でもないようです。
日も暮れて、周囲が暗くなった時間帯。尚美はなおも残業中。ファイルの片付けをしようとしたところに、孝太郎と白石が帰ってきます;
白石 「いやー、働いた。もうこんな時間だよ、サービス残業もいいところだ」
孝太郎「(尚美を見て) あ、尚美、まだいたの?待ってなくて良かったのに…」
尚美 「孝太郎、ちょっと来て」
孝太郎「あ、ちょっとこれ、片付けてからいくから」
尚美 「いいから来て!」
孝太郎「ななな、何、どういうこと?」
尚美も手にしたファイルをしまうことも忘れ、そのまま孝太郎をオフィスの外に強引に連れ出そうとします。その二人を、白石が二人を呼び止めます;
白石 「あ、あのさ・・・二人って休みの日って、何してんの?」
二人 「えっ?」
白石 「いや、一緒にいるんだろ?」
尚美 「ええ、まぁ・・・」
孝太郎「ふふ、別に大したことやってないけど・・・どうして?」
白石 「いや、普通は、何してんのかな、と思ってさ」
孝太郎「まぁねぇ、大体そうだな…映画観て、その後、食事して…って、そんな
感じかな?」
尚美 「うん、お天気がいいと、近くの公園、散歩したりとか、ねー」
孝太郎「そうそうそうそう」
白石 「ふーん、散歩ってそんなに楽しいわけ?」
孝太郎「楽しいよ!!公園に行ってね、こう、ふざけてバトミントンしたりとか
ねー。あ、たまにフリーマーケットとかも見たりとかして」
二人 「ねー」
白石 「面白いんだ、そういうことが…」
孝太郎「白石君、何やってんの?休みの日は?」
白石 「おれは、プラモやってる」
尚美 「え゛っ?プラモ?」
白石 「そう!この間、幻の安土城、完成させたんだよ、リアルだぜー。
あ、今度見に来るか?なぁ、そうだよ、忘れてたよ〜」
と、一人プラモ話で盛り上がる白石を見て、孝太郎はポツリと一言;
孝太郎「僕もマネしよー」(なんか、この言い方、好きだわ(^^;))
そして、素直に白石の言葉に同調して;
孝太郎「ね。いいよね、そういうのってやっぱりこう完成させる楽しみっていう
のがね」
と、話を続けようとしますが、尚美はそれどころではなく;
尚美 「何言ってるの!?(--;)。孝太郎、ちょっと早く来て!急ぐんだから!」
孝太郎「えっ、白石君・・・」
と、結局、孝太郎はカバンを置く間もなく、そのまま引きずられていきます・・・(^^;)。
[あけぼの保険ビル 屋上 〜 ]
会社の屋上にやってくる二人。
孝太郎「え〜〜〜っ(絶叫)。お、お、お父さんに会うの?」
尚美 「そ、そんな声出さないでよ。私だって切羽詰ってるんだから!」
孝太郎「(焦って)いやだって、そんな急に言われてもさ」
尚美 「もう逃げられない」
孝太郎「絶対?」
尚美 「絶対」
孝太郎「いや、そんな・・・」
尚美 「明日とあさって、孝太郎の予定どうなってる?」
孝太郎「ああ、ちょっと待って・・・」
カバンから手帳を取り出す;
孝太郎「えー、あっ、そうだ。明日、まず午前中に、お袋食品の常務の奥さんの
ためのチケットとり」
尚美 「チケットとり?」
孝太郎「うん。いや、なんか宝塚の大ファンみたいでさ。東京公演のチケットは
すぐ無くなっちゃうからって、朝早くから劇場の窓口で並ばなきゃいけ
ないんだ。あ、それからペガサス物産の社長の自宅で、庭の手入れがあ
る。あ、それから・・・」
尚美 「日曜日は?」
孝太郎「日曜日は・・・(手帳をめくる)」
尚美 「日曜日の夜7時半、横浜なんだけど、大丈夫そう?」
孝太郎「横浜?」
尚美 「(頷いて)家のお父さんがね、いつも仕事で使っている会席料理のお店、
もう、予約したって」
孝太郎「えっ?」
尚美 「ごめんね、家のお父さん、ヒトの都合とか全然聞かないで、時間も場所
も勝手に決めちゃう人なんだよね」
孝太郎「(頭をかかえる)尚美・・・尚美のお父さんってさぁ、確か・・・」
尚美 「何知りたい?仕事、性格?」
孝太郎「どっちも」
尚美 「お祖父ちゃんのあとを継いで、工務店を経営している。声が大きくて、
せっかちで、仕切るのが得意中の得意でね〜。とにかく、あのペースに
巻き込まれたら大変なんだから〜。私の学生時代なんか、男の友達から
掛かってきた電話なんてね、お父さん勝手に『尚美はいませーん』って
言って、全部切っちゃうの。私、みんなに言われてたなぁ『尚美のお父
さんって、まるで番犬みたいだね』って」
孝太郎「番犬?(崩れて)そんな・・・」
(↑同じ台詞で嵯峨先生を思い出しちゃったけど、全然
重みが違うよね〜(笑))
尚美 「孝太郎?」
孝太郎「(立ち上がって)ねぇ、合った瞬間にさ、殴られちゃったりしないかな?」
尚美 「あ、それはないと思うけど」
孝太郎「いや、否定してよ!殴られちゃうってこと?」
尚美 「ごめんね。でもね、私も孝太郎と、うちのお父さんが会ったときの展開
って全然、読めないんだよねぇ。。。」
孝太郎「ええ・・・?!(不安)」
尚美 「でもね、根は悪い人じゃないのよ・・・。会ってくれるよね」
と、そこまで脅されると、なかなかすぐにハイとは言えないよねぇ(苦笑)。孝太郎君、まだうじうじしてます;
孝太郎「まぁ一度、ちゃんと会って、挨拶しなきゃなぁ、とは思ってたんだけど
さ。何でこんな急に」
尚美 「ほら、この間、私、お見合いしたでしょ。あれから急に私の将来のこと
気になりだしたみたい。『尚美はどんな男と付き合ってるんだ』って。
『今度、きちんと会わせろ』って」
孝太郎「ああ、そっか・・・」
尚美 「ねぇ、いいでしょ。御願い、ねぇ?御願い・・・」
孝太郎「(勇気を振り絞って) 分かった!!覚悟するよ!」
尚美 「よかったー。ありがとー。じゃぁ、私、日曜日の朝早く、孝太郎の家に
行くから」
孝太郎「うん」
尚美 「がんばろうね、がんばろうね、がんばろうね〜」
と、孝太郎の手を取って、孝太郎を励ます尚美ちゃんですが、手に持っていたファイルの存在も忘れていたようで、落としちゃってます。そのはずみでファイルがバラけてしまって、屋上中にファイルの書類が散乱しちゃってます(おいおい(^^;));
孝太郎「ああ、あ、ちょちょちょちょ」
尚美 「ああー、ああー」
孝太郎「あっちあっち。あっちいっちゃう」
二人して、飛び散った紙片を集めて回ってます(あたふた(汗))。
ナレーション『日本のサラリーマンにとって、かつて、休日が真の安息日だった
ことがあっただろうか?断言しよう、バブル狂乱の時代も、構造
不況真っ只中の2002年においても、サラリーマンに休日がまとも
にあった試しが無い。
桜井孝太郎にとっても、それは例外ではなかった…』
と、ここで『ヨイショの男』のタイトル+CM・・・今回、CM突入が早い・・・(笑)
[孝太郎のアパート 〜 なぜか3人の朝食]
そして、問題の日曜日。尚美ちゃんは朝から孝太郎のアパートに来て、朝食作り。青いハート柄のパジャマを着ている孝太郎君との朝食・・・;
尚美 「今朝のメニューは、カマスの塩焼き、青ねぎ味噌添え、大根おろしとシ
ラスのゆず風味、塩もみキャベツと和風ドレッシング和え、そして納豆
と・・・」
徳川 「青海苔も入ってる」
と、なぜか徳川さんと一緒の食事に;
尚美 「はい?」
徳川 「さすが尚美ちゃんだねぇ。納豆には青海苔、これは基本中の基本だよね」
尚美 「(小声で)孝太郎?どうして徳川部長代理がいるの?」
孝太郎「いや、郵便受けに新聞を取りに行ったらさ、いたんだよね。どうも僕が
朝、出てくるのを、ずっと待ってたみたいでさ」
尚美 「私が聞いているのはそんなことじゃなくて、何で孝太郎の所に来たのか、
ってこと」
孝太郎「さぁ・・・?????」
徳川 「かますご、上手く焼けてた。遠火の強火でさっとあぶってあるし、この
キャベツの漬物も塩加減が絶妙だねぇ・・・」
尚美 「あの、徳川部長代理?!」
徳川 「あっ、徳川さんでいいよ。私はもう、あなたの上司じゃないんだからさ」
尚美 「じゃぁ、徳川さん」
徳川 「はい?」
尚美 「どうして日曜の朝に、元部下の家で、こんなくつろいで朝ご飯を食べて
るんですか?」
孝太郎「いや、それはいいんだよ、尚美」
徳川 「ごめんね、ちょっと寂しくなったもんでさ」
尚美 「は?」
徳川 「なめこの味噌汁には、赤出汁が絶妙だねぇ…。と、ごちそうさまでした。
ああ、食べた食べた食べた。はは、よいしょ(と横になる)」
尚美 「だから、どうしてこんなにくつろいでるんですか!!!!」
徳川 「会社辞めてから、毎日ガ日曜だからさ、恭賀日曜だってこと、忘れてた
んだな、これが〜。ははははは(笑)」(すごい感性だわ…)
孝太郎「構いませんから、ゆっくり休んでいって下さい」
と、相変わらずの孝太郎のお天気な発言に、机をバンと叩いて切れる尚美ちゃん;
孝太郎「ちょっちょっちょっと」
と、台所の方に尚美ちゃんを連れて行き、なだめようとする孝太郎;
孝太郎「ほら、奥さんとさ、子供に逃げられて、寂しいんだって。ね、分かるで
しょ?」
尚美 「・・・」
孝太郎「いつまでもここにいる訳じゃないんだから。ふら〜とやって来て、また
そのうち、ふら〜と帰っていくからさ」(甘いとは思うけど…(^^;))
尚美 「で〜も〜」
孝太郎「それよりさ、今日は・・・ねぇ、尚美の両親と会う訳だし・・・その方
がよっぽど大事でしょう?」
尚美 「孝太郎、緊張してるの?」
孝太郎「ああ(うなずく)」
そして、尚美ちゃん、気合を入れなおして、孝太郎の押入れを開き、服装選びを始めようとします;
尚美 「今日、何着てく?ちゃんとアイロンあたってるかな?ん?どうしたの」
孝太郎「ん?」
尚美 「スーツないよ」
孝太郎「えっ?」
と、孝太郎も一緒に押入れを覗いていますが、普段来ているようなスーツは一着も無く、普段着や、そうでなければ派手目のジャケットだとか、先日のマジックをしたときの衣装だとか(そのままもらっちゃったのね…(^^;))が入ってます;
尚美 「だってホラ、これは冠婚葬祭用のフォーマルでしょう。で、これは去年
の忘年会に、ほら司会をやったときに着たジャケットでしょう?」
孝太郎「いやいや、そんなことないでしょ。・・・あっ、あれだ!」
尚美 「なに?」
孝太郎「半額キャンペーンだ」
尚美 「何それ?」
孝太郎「駅前のハッピークリーニングがさ、半額キャンペーンやってて、スーツ
全部出しちゃった」(おいおい、それぐらい考えて出せよ〜)
尚美 「いつ戻ってくるの?」
孝太郎「えーと、出来上がるのが今日の6時過ぎ、つってたから、あれっ御両親
と会うのって7時半?」
尚美 「間に合わないじゃな〜い」
孝太郎「ああ、ねぇ、これ、しゃ、シャツでもいいんじゃないかなぁ…。ほら、
今日、日曜日だからぁ、多少カジュアルでも」
尚美 「だめよ。お母さんはともかく、お父さんは服装にうるさい人なの!外見
の乱れは心の乱れだって、いっつも言ってる」
孝太郎「(ため息気味に)ああ・・・」
尚美ちゃんは、急に朝食の後片付けを始める;
尚美 「あの、私たちこれからすぐ、出掛けますんで!」
徳川 「ああ、そう。いってらっしゃい。夕飯は、私、適当に冷蔵庫開けて作る
から。どうぞ、ごゆっくり」(って、夕方までおるんかい!)
尚美 「(不機嫌そうに)孝太郎、行くよ!」
孝太郎「えっ、どこに?!」
尚美 「いいから、さっさと着替えてよ!!!(--;)」
孝太郎「(尚美の剣幕に負けて素直に)・・・はい」
[洋服店 〜]
まずは親に会うための洋服を買いに出かけた二人。試着室で、尚美の選んだスーツを合わせてます(ってことで、結局、孝太郎の”私服”は見れず仕舞なのねん(涙));
着替え孝太郎君 その1:濃紺のスーツ。ネクタイも青&薄いブルーのシャツをあわせてます
孝太郎「どう?」
尚美 「うーーーーん。孝太郎こそ、着てみてどう?」
孝太郎「(ポーズを作って)僕は何でも似合う男よん」
(こういう台詞を吾郎君に言わせるとは・・・(苦笑))
尚美 「(孝太郎を無視して、店員に)すみません、ちょっとねぇ…さっきのより、
着丈が長いような気がしてねぇ。あと、色ももうちょっと渋い感じの方
がいいと思うんですよ…」
店員 「お似合いですけどねぇ・・・」
孝太郎「あはは(照れ)」
着替え孝太郎君 その2:ベージュ系のスーツにピンクのネクタイ&淡いピンクのシャツ。ちょっと前は広めにあいてます
孝太郎「これでいいんじゃないかな?」
尚美 「この襟が気になっちゃうな・・・」
孝太郎「・・・」
着替え孝太郎君 その3:茶系のスーツ。黄色のネクタイにグリーン系のシャツ
孝太郎「これにしよう。ね、いいよ、これで」
尚美 「ちょっと後ろ向いてくれる?うーん、ピンと来ない」
店員 「お似合いですけどねぇ」
孝太郎「♪」(←ヨイショに弱いやつ)
尚美 「背中に哀愁が無いのがちょっと気になっちゃうのよねぇ」
孝太郎「・・・(--;)」
着替え孝太郎君 その4:さきほどよりも濃い目の茶系のスーツ。ブルーのシャツと、ピンクのネクタイを合わせてます。
孝太郎「まだかなぁ」
尚美 「やっぱり一番最初に着たのにします」
店員 「はい」
孝太郎「はぁ・・・」
と、ようやく決まってそのまま座り込む孝太郎;
尚美 「何やってるの孝太郎?まだこれからよ!!!」
と、今度は尚美はそれに合うネクタイとシャツを探しに行っちゃいます(^^;)。
私服は見れなかったけど、次から次へと、いろんなスーツの着せ替えをやって頂いて、これもファンサービスと思っていいのかしら?(笑)。
[レストラン 〜 休日もヨイショ]
ランドマークタワーの見える海辺のレストラン。スーツ選びが終わって尚美とようやく昼食ですが、孝太郎君、完全に疲れきってます(結局、ノーマルに、グレー系のスーツ、紺と白の縞模様のネクタイを選んでます)。
尚美 「うーん、やっぱりチャコールグレーの方が良かったかなぁ…」
孝太郎「はぁ?」
尚美 「まぁ、いいか。何食べるぅ?」
孝太郎「ああ、もうなんか食欲ないよぉ」
尚美 「えっ?ダメだよぉ、ちゃんと食べないと、もたないよ」
孝太郎「尚美、好きなのたべな」
尚美 「じゃぁねぇ・・・生ハムとのリコットチーズのルーレと・・・
と尚美がメニューを見ながらあれこれ品定めをしていると、少し離れたテーブルで子供が泣き叫ぶ声が・・・。その方向に視線を移す孝太郎;
孝太郎「あれっ、?あれ・・・河上社長じゃないかな?」
尚美 「誰?知ってる人」
孝太郎「ほらほら、あの、テレビのコマーシャルで、あのカワウソ君の」
尚美 「ああ、ああ、あの、カワウソ不動産の」
孝太郎「そうそうそう。そこの社長だと思うんだけどさ・・・。あっ、そうだ、
一回、パーティ会場で、名刺交換したんだよね」
尚美 「どうしたの、」
孝太郎「いや、ちょっと挨拶してくるだけだよ」
尚美 「いいよ、見なかったことにしようよ、ね。むこうだって、ほら、仕事関
係にはあまり見られたくない状況だと思うし…」
と、一度は尚美ちゃんにたしなめられるものの、ヨイショ男の血が騒ぎ、尚美がメニューに視線を戻した隙に、席をはずす孝太郎;
孝太郎「社長!あっ、河上社長、お久しぶりでございます」
河上 「?」
そのまま、すかさず泣き叫んでいる河上社長の孫のケンタ君の方に視線を移し
孝太郎「おやおやおや、格好いいネクタイしてるねぇ、君…。お兄ちゃんのと、
ちょっと交換してくれないかな〜?ちょっと貸して貸して貸して。あっ、
こうなってるんだ。あ〜便利だなぁ。ちょっと、僕にもさせてくれよぉ」
と、ケンタ君のネクタイ(ゴム式)をつけようとすると、そのゴムが頭に引っかかって…;
孝太郎「あれ、あら、あら、あらららら」
と、おどけて見せる孝太郎の姿に、それまで泣いていたケンタの顔から笑顔がこぼれる。
孝太郎のおかげでケンタの機嫌もなおり、次の瞬間には、孝太郎は尚美ちゃんも一緒に河上社長のテーブルで、一緒に食事をしています。社長自ら孝太郎にワインを注いだりして;
河上 「さぁさぁさぁさぁ、どんどんあけて」
孝太郎「ありがとうございます!」
河上 「いやー、むすめに孫の世話をおしつけられちゃってねー」
と、河上社長も上機嫌;
河上 「いやー、全く。孫に泣かれたら打つ手無いからね。お陰で助かったよ」
孝太郎「いやいやいや。私の方こそ、社長のお役に立てて光栄です」
尚美 「・・・」(←やっぱり不機嫌)
河上 「そうだ、次の土曜日に家が主催するチャリティのゴルフコンペがあるん
だがね、君、ゴルフは?」
孝太郎「あ、まだまだ練習中で、コースに出る度胸なんてとてもとても」
(↑相変わらず調子のいい発言)
尚美 「打ちっ放しだって行ったことがないくせに・・・」
孝太郎「あ、もしよろしければ、社長のキャディーをやらせてもらえませんか?」
河上 「やってみる?」
孝太郎「はい。あっ、何やら社長のゴルフの腕は、プロ顔負けだそうじゃないで
すか!今度、是非、御教授願います!」(←まだまだお調子者)
河上 「あはは(笑)。そうかそうか、さぁさぁさぁ(酒を勧める)」
ケンタ「え〜。おじいちゃんのゴルフ、下手くそだよ。また乗せられちゃって」
河上 「・・・」
孝太郎「・・・。ケンタくーん、健太君のおじいさまは、お仕事では厳しい人で
有名なんだよー」
ケンタ「おじいちゃん転がすのは簡単だって。ゴルフ上手いって褒めれば、何で
もやってくれるって、ママが言ってた!」
孝太郎「・・・」
河上 「・・・(--;)」
気まずーい空気になったところ、もちろん、空気を変えるのは孝太郎のヨイショしかないわけで;
孝太郎「いややややややや、お爺様に似て、利発なお孫さんだこと!これは将来
が楽しみですねぇ。どこの企業も後継者に悩む中で、カワウソ不動産は
万々歳じゃないですか〜」
さらにそのままの勢いで、孝太郎はカワウソ不動産のCMソングを歌い始める;
孝太郎「『♪ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃちゃ リフォームするならカワウソ君
♪任せて安心 カワウソ君』 はい、みなさん、御一緒に!」
河上夫人「まぁ、お上手ねぇ・・・」
孝太郎「『♪リフォームするならカワウソ君 任せて安心 カワウソ君
カワウソ君 カワウソ君」
河上 「あははははは(笑)」
と、再び和んだ空気が生まれるが、尚美は相変わらず不機嫌で、ワインを一気にがぶ飲みしてます・・・不幸だねぇ。
[あけぼの保険 第一営業部オフィス 〜 もう一組のカップルは…]
その頃、あけぼの保険のオフィス入り口では、休日出勤してきた由紀江さん、コンパクトを見てチェックを入れ、気合を入れてます;
由紀江「よし」
由紀江はオフィスに入り、お目当ての白石を見つける;
由紀江「あれっ、白石君?」
白石 「ああ。どうしたの?」
由紀江「ちょっと気になる仕事があって。週明け監査も入るから整理しておこう
と思ってね。(白々しく)白石君は?」
白石 「向こうから国際電話が入ってくることになっててさ、電話待ち・・・」
由紀江「休みの日なのにさ、お互い大変だよねぇ。(白石の机のファイルを見て)
これ、全部チェックするの?よかったら手伝おうか?」
と、さり気なーく自らをアピールしてる由紀江さん。
[レストラン入り口 〜 ]
レストランの出口で、車に乗り込んだ河上社長御一行様を見送る孝太郎君と尚美ちゃん。
孝太郎「社長、ご馳走様でした」
河上 「じゃぁ、コンペで。招待状はうちの秘書からいくようにするから」
孝太郎「楽しみにしておりますから。奥様も、どうぞ何なりと。来月のお茶会の
受付け、喜んでやらせて頂きますので」
河上夫人「ありがとうございます。どうぞよろしく」
河上 「それじゃぁ」
孝太郎「失礼しまーす。(手を振って)ケンタくーん」
そのまま車が出て行く。
孝太郎「お疲れ様でした〜」
孝太郎と同じく、とりあえず頭を下げる尚美ちゃん。
孝太郎「ああ、よかったー。社長、お孫さんと楽しくお食事出来て、喜んでおら
れた」
尚美 「それはそれは、結構なことで・・・(--;」
孝太郎「え?」
尚美 「御願いだから、うちのお父さんと会ったとき、こんな調子いいの、止め
てよね!!」
といって、先に歩いていってしまう尚美ちゃん。慌てて孝太郎は尚美ちゃんの後を追って駆け出します;
孝太郎「・・・。いや、分かってるって。ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ほら、まだ
時間があるからさ、二人っきりになれる所、行こうよ、ね?」
尚美 「う・る・さ・い!(←完全に怒ってる)」
孝太郎「二人っきりになろ!ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ」(かなり可愛い(*^^*))
尚美 「(゚゚;)バキ☆\(--;) バシ」
と、孝太郎君が近づいてきても突き飛ばす尚美ちゃん。
孝太郎「あいてててててっ (>_<)」
それでも懲りずに;
孝太郎「二人っきりになろ〜♪」
尚美ちゃんにまとわりつく孝太郎が、可愛い…(*^^*)
[遊園地 〜 ]
遊園地にやってきて、ちょっとはデートらしくなってきた二人(最初にジェットコースターの映像が映されたけど、吾郎君が乗るわけないよねぇ…(苦笑))。・・・だけど、尚美ちゃんは先ほどの孝太郎の行動が気に食わず、決して楽しいデート風景にはなっておりません(^^;)。それでも、ちゃっかりゲームで勝ち得た商品のピンクのぬいぐるみ(何だ、これは?)を手にしているところを見ると、尚美ちゃんは楽しんでいるようにも見えるけどねぇ…(^^;)。
その後、待ち合わせ時間までにまだ少し時間があった二人は、観覧車に乗ろうと、順番待ちの列に並んでいます。尚美ちゃんは手にぬいぐるみ、孝太郎は手にポップコーン;
孝太郎「やっぱさ、休みの日には遊園地で観覧車でしょ。尚美、食べないの??
ポップコーン、好きでしょ?(自分も一口食べて)食べなよ」
孝太郎に、ポップコーンを差し出され、尚美は無言で一口食べる。そして、孝太郎も同じく、2つ3つ4つ、口にしてます(←なんだかこういう仕草が可愛いのだわ…(*^^*))。孝太郎は尚美の顔を覗き込んで;
孝太郎「おいしい?」
尚美 「べーつに」
孝太郎「・・・」
と、ここで、遠くに一組の家族連れを見つける孝太郎;
孝太郎「あれっ、あれ、佐々木ガラスの常務じゃないかな?あっ、そうだ。常務!
佐々木常務!!!私です。あけぼの保険の桜井です。お久しぶりでござ
います」(また、尚美ちゃんを逆撫ですることを…(^^;))
尚美 「ちょっと。孝太郎ー」
孝太郎「あ、常務!こっちです!常務!!こっちですよぉ〜、常務!!」
尚美 「やーだ、恥ずかしいからやめてよ!」
佐々木「(近づいてきて)おお、君か〜」
孝太郎「いやー、そろそろね、常務がいらっしゃる時間帯だと思って、順番を取
って待っておりました」
尚美 「・・・」
[あけぼの保険 第一営業部オフィス 〜 もう一組のカップルは…2]
引き続き、二人でいい感じで仕事をしている白石と由紀江。これもこの二人なりのデートの形なんだろうか?(苦笑)
由紀江「あっ」
白石 「何?」
由紀江「ココ、書き込み、抜けてます」
と、尚美に書類の不備を見つけてもらった白石は、その処置をするために、業務課の手塚に電話で連絡を取る;
白石 「(電話に)うちの優秀な部員が発見してさ、ちょっと確認してくれないか?」
と、その言葉を聞いた由紀江は、心の中で、『優秀な部員って私のこと?休日出勤してよかった〜』と、単純に天にも昇る気分になってます。さらに白石に「お礼に晩飯おごるから、何食べたいか考えておいてくれ」と言われて、『きやー、食事に誘われちゃったぁ〜〜〜〜』と、ますますハイテンションになり;
白石 「そうだ、品川のホテルでプロバンスフェアっていうのをやってるみたい
だけど、覗いてみる?」
何て言われたら、由紀江さんは『えーーー、ホテル〜・・・・ホテルって・・・』と、ここからどんどん想像力はエスカレート!!!
とあるホテルのロビー、ドレスアップして由紀江が待っていると、白石がやってくる;
白石 「行こうか?」
その白石の言葉に、ついていくかどうか、想像の世界とはいえ逡巡する由紀江さんに;
白石 「好きだ。ずっと好きだった・・・」
『きゃ〜〜〜(絶叫)』と想像の世界で雑居うする由紀江さんでしたが;
白石 「手塚も一緒でいいか?」
由紀江「えっ?(硬直)」
まぁ、お約束のパターンやね(^^;)。
そこに真紀子部長までオフィスに登場し、由紀江さんの二人っきりの休日は、ここで潰えたのでした(ちゃんちゃん)。
真紀子「あなたたち、今日は何?」
白石 「最近、契約が立て込んでて、デスクワークは土日しかできないんですよ
ね」
真紀子「そう」
由紀江「部長はどうしたんですか?」
真紀子「明日から監査が入るでしょう。どうしても確認しておきたいことがあっ
たものだから」
由紀江「そうですか・・・(がっかり)」
真紀子「どうかした?」
由紀江「いえ・・・」
[遊園地 〜 ]
外は急に雨降り模様。
そんなこんなでようやく観覧車に乗り込んだ孝太郎と尚美。とはいえ、やっぱり尚美ちゃんの機嫌は良くありません(そりゃそうだよねぇ・・・)。たとえ孝太郎君が;
孝太郎「うわー、綺麗だね。海がキラキラしてるよぉ。あれ、”ゆりかもめ”が
飛んでるよ。ねぇ?」
尚美 「・・・」
孝太郎「あれっ?・・・。いや、実はさ、この素晴らしい景色は、尚美のために
僕が準備したんだよ」
なんて言った所で、外は雨。雷の音まで響いてます。これって、マジで雨降ってるよね・・・(^^;)
尚美 「・・・」
孝太郎「おーい、そんな怒った顔している尚美ちゃんは、可愛くないぞ!
(ぬいぐるみを使って、尚美に)つんつん、つんつんつんつん」
尚美 「またー。調子いいんだから・・・(^^;)」
孝太郎「ああ、笑った笑った。」
尚美 「それはいいけど」
孝太郎「うん」
尚美 「時間、大丈夫そう?」
孝太郎「うん、丁度いい頃だと思うけど・・・」
尚美 「そう。いよいよだねぇ」
孝太郎「ああ・・・そうだ。思い出した…。ああ、また急にドキドキしてきた。
尚美のお父さんに何聞かれるかな?」
尚美 「そんな、考えてもしょうがないよ」
孝太郎「まぁ、それはそうだけど…」
尚美 「とりあえず、今はキスとかしとく?」(←すっごく自然に言うよね(^^;))
孝太郎「えっ?」
尚美 「ね?」
孝太郎「いや、ごめん。悪いけど、そんな気分じゃない・・・よね・・・」
尚美 「そんな心配しなくても、ダイジョウブだって。私も一緒に行くんだよ?」
孝太郎「まぁ、そりゃそうだけどさ・・・」
尚美 「何とかなるから、元気を出して!」
孝太郎「・・・」
尚美 「?ね、大丈夫だから。しよう、しよう」
と、なぜか孝太郎はキョロキョロ周りを見渡して・・・いざ・・・という肝心なところで、尚美の携帯が鳴る;
尚美 「ん?何だろう?」
孝太郎「あっ。御両親からじゃない?やばい、どきどきしてきた」
尚美 「(電話に出て) はい、もしもし。・・・。えっ?部長ですか?」
真紀子曰く、尚美が金曜日にチェックをしたA125ファイルの伝票が一枚抜けているというのだ。電波の加減で、一旦、携帯が切れる;
孝太郎「なんて?」
尚美 「明日監査が入る伝票なんだけど、データには打ち込んであるんだけど、
現物が1枚足りないらしいの」
孝太郎「で、いくらの伝票?」
尚美 「2,300万」
孝太郎「・・・」
孝太郎が何も言えないでいると、再び携帯が鳴る;
真紀子『どこにいるの今?とにかく、すぐにこっちに来て頂戴!』
尚美 「あの・・・・監査があるのは午後からですよねぇ?」
真紀子『それがどうかしたの?』
尚美 「伝票のある場所は検討がついているので、明日の午前中に探せば、見つ
かると思うんですぅ」
真紀子『何甘えたことを言ってるのよ!とにかくすぐにこっちに来なさい!』
とだけ伝えると、電話を切る真紀子。
観覧車を降り、階段を駆け下りる尚美。その尚美を孝太郎は必死に追いすがるように後に続きます。非常事態につき、尚美よりも、むしろ、孝太郎の方が焦ってます;
孝太郎「なぁ、でもさ、これから東京に行って、それから7時半に横浜なんて、
無理だよ、どう考えたってね」
尚美 「とりあえず、孝太郎先に一人で行ってって(ぬいぐるみを預けて)ね?」
孝太郎「えっ?!?!?!(絶句)」
尚美 「後から追いかけるから」
孝太郎「それはまずいよ。自信ない。ちょっと!!!」
尚美 「大丈夫だって。伝票ならすぐに見つかると思うの。たぶんね、部長ね、
違うファイル見て無いって言ってるんだと思うんだから。私が行くまで
場つないどいて!」
孝太郎「いや、そんな勝手なこと言うなよ!なぁ」
尚美 「何言ってるの。そういうの得意でしょ!」(た、確かに…(^^;))
孝太郎「いやいや、無理無理無理、絶対、無理無理無理・・・」
尚美 「お母さんには私から連絡しとくから、ね?」
孝太郎「いや、無茶言うなって」
尚美 「ごめんね〜」
孝太郎「無理だ、無理無理。ちょっと待って。待って、待って、尚美ぃ〜〜〜(><)」
尚美 「孝太郎、おねがいねーごめんねー」
と言って走り去る尚美ちゃん。孝太郎は人ごみに支えてしまし、一人取り残されてしまってます。
孝太郎「ちょっとまって、尚美、行かないでよ。尚美、尚美〜・・・ああ(涙)」
孝太郎君、ぬいぐるみに顔をうずめて涙顔・・・。嗚呼、孝太郎君の運命に合掌…(^^;)
[料亭 〜 孝太郎 硬直]
仕方なく、一人で尚美の両親と会う約束になっていた料亭までやってくる孝太郎。時計を見ると夜の7時少し前・・・;
孝太郎「よし」
いざ、料亭に乗り込んでいくと;
孝太郎「えっ?!!!!!!もう、いらしてる?そんな・・・・
だって、約束の時間までまだ30分あるのに…?」
と、既に先方は到着しているではないか!!!
女将 「杉田様ならいつもお早いですよ。大抵、一時間前にはいらしてますから」
孝太郎「1時間前?」
女将 「ええ。杉田様は何をなさるんでも一時間前行動でいらっしゃいますから。
私どもも、いつも緊張しております。さぁさぁさぁ、どうぞ、どうぞ」
孝太郎「だったら最初から言っておいてよ、尚美ちゃん(涙)」
そして、杉田の両親の待つ部屋へと女将に案内され、廊下を進む孝太郎;
女将 「尚美お嬢様と御一緒って聞いておりましたが・・・」
孝太郎「ああ、彼女は用事がございまして、遅れて来ます」
女将 「まぁ・・・それじゃぁ・・・お客様お一人でご挨拶なさるんですか?」
孝太郎「はい」
女将 「そう・・・(妙な間を置いて)頑張って下さいね」
孝太郎「・・・はい」
そして、廊下を進もうとすると、再び立ち止まって
女将 「あっ、ここで深呼吸なさった方が…」
孝太郎「あっ」
女将 「吸ってー、吐いてー。吸ってー、吐いてー。吸ってー、吐いて・・・」
その女将の言葉に合わせて、非常にぎこちなく深呼吸をする孝太郎。その孝太郎の動きに対して、女将の視線は孝太郎の持つピンクのぬいぐるみの方に向いてまして;
女将 「あの…それ、お預かりしましょうか?それ、ぬいぐるみ??」
孝太郎「ああ(@o@)・・・御願いします(汗)」
(孝太郎君って、焦ると自分のことが見えなくなる性格なのねぇ〜)
ぬいぐるみを女将に渡す孝太郎。もう、深呼吸をしたぐらいじゃ、どーにもならない感じだよね;
女将 「参りましょうか?」
孝太郎「はい・・・」
と、「うわーい」と廊下を走り回るケンタの姿が。ガチガチで廊下を歩く孝太郎の後姿を眺めていた。
いよいよ、尚美の両親、哲雄とたか子の待つ部屋の前までやってくる孝太郎;
女将 「杉田様、桜井様がお越しです」
たか子「どうぞ、お通しして」
女将 「(孝太郎に一発気合を入れて)頑張って」
女将が扉を開け、正座状態でそのまま部屋に入っていく孝太郎。正面を見ることなく、頭を下げたままで挨拶をし始めます;
孝太郎「失礼します。始めまして、桜井孝太郎と申します。本日は、大変の遅く
なりまして、申し訳ありませんでした・・・」
孝太郎が恐る恐る顔をあげると
哲雄は怖い顔をして、タバコをふかしてます。たか子だけは孝太郎に和やかに接してくれてます;
たか子「ああ、初めまして、尚美の母です。今日はごめんなさいね、お休みの日
に来て頂いて」
孝太郎「いえいえ、こちらこそ、もっと早くにお伺いしなければいけないところ、
申し訳御座いませんでした」
たか子「さぁ、さぁ、そちらどうぞ」
孝太郎「はい、失礼します」
たか子「最初は・・・ビールでいいかしら?」
孝太郎「あ、とりあえず、ビールを」
哲雄 「とりあえず ビールっていうのは感心せんな」
孝太郎「えっ?」
哲雄 「ここは日本酒が旨いんだ。(たか子に向かって)そう、教えてやりなさい」
(孝太郎とは直接話をしないのね(苦笑)↑)
孝太郎「・・・。に、日本酒を下さい」
たか子「無理しなくていいのよ。お好きなのを召し上がって」
哲雄 「馬鹿。最初にお前がビールを勧めたんじゃないか」
孝太郎「あっ、あの・・・日本酒でいいです」
哲雄 「日本酒でいいのか、日本酒がいいのか、はっきりしろ、って言ってやり
なさい」
孝太郎「ああ・・・申し訳御座いません。日本酒がいいです、日本酒を下さい」
哲雄 「最初からそういえばいいんだ」
孝太郎「・・・」
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 ]
オフィスに到着し、伝票を保管したであろうキャビネットを開ける尚美ちゃん。でも;
尚美 「何で!ここに無いってことは…(冷や汗)」
[料亭 〜 ますます状況悪化]
沈黙以外のものが存在しない空間で、依然、凍りつづける孝太郎・・・。そこにようやく携帯電話が鳴る。両親の顔色を伺いながら;
孝太郎「(ほっ(♪))。あっ、尚美さんからですね。あの…、失礼してよろしいで
しょうか?」
たか子「どうぞどうぞ、出てやって下さい」
孝太郎「はいぃ」
と、急いで席を立とうとするが;
哲雄 「コソコソするな。やましい事が無いなら、ここで話せばいい」
という哲雄の一言で再び凍りつき、再び着席して電話に出ます(^^;);
孝太郎「(電話に出て)はぁ、はい。もしもし…。な、尚美さんでいらっしゃい
ますか?」(←声がやや高い)
尚美 『どうしたの、何か声、違うけど』
孝太郎「(両親の顔色をうかがいながら)いや、いやー、そのようなことは無い
と思いますけれども・・・。
あの・・・尚美さんは、いつ頃こちらに来られそうですか?」
尚美 『それどころじゃなくなったのぉ』
孝太郎「あ、それどころじゃない!?!?!・・・と申しますと?」
尚美 『たぶん、そっちにはもう、顔を出せないと思うの・・・』
孝太郎「えっ、いや、いや、いや、そ、それは大変困る…ような
気がする。。。するんですけれども・・・
あの、みなさん、大変、お待ちかねでいらっしゃいますし・・・」
尚美 『どう、そっちは?』
孝太郎「もう、それは和気あいあいと楽しく・・・」
哲雄 「どこが楽しいんだ?!」
孝太郎「すみません・・・とにかく、一刻も早くこちらに来て頂けると、あの、
ありがたいんですけれど・・・」
尚美 『本当に悪いと思ってる。許してね!(電話を切る)』
孝太郎「尚美、尚美、尚美、尚美ぃ〜〜〜〜!!!!」
携帯に向かって叫ぶ孝太郎君ですが、一方で哲雄がにらみを効かせていて;
哲雄 「尚美?」
孝太郎「あっ、失礼致しました・・・」
たか子「尚美は、なんて?」
孝太郎「あの、なんかあの、こちらには来られないと仰っております」
たか子「困った子ねぇ。ごめんなさいね」
孝太郎「あっ、いえいえいえいえ」(←でも、声が上ずってる)
たか子「ああ、申し訳ありませんけれどね、私、少しお酒に酔ったみたいだから、
外の風に当たってきますからね」
孝太郎「いや!あの、あの、それはちょっと」
たか子「何ともないのよ。最近、すぐにお酒が回るようになっただけ。じゃぁ、
あなた、御願いね」
哲雄 「何を御願いだ?」
たか子「私抜きで、ちゃんとお話して下さい。孝太郎さんにお聞きしたいこと、
色々あるでしょ?!」
と、たか子はたか子なりに哲雄と孝太郎に対して、気を利かせているのだが、孝太郎としては、それはますます状況を悪化させる事態を迎えることは目に見えているわけで;
孝太郎「いや、あ、あの、あの、あの、それは、あの、あの、□%$△*×!
ここで御願いしたい・・・」
と、たか子にすがって見るものの、結局、頼みの綱だったたか子が席を外してしまう。
唾を飲み込み、振り返ると、哲雄が怖い顔をして孝太郎をにらんでいる。孝太郎と哲雄の二人っきりの気まず〜い空間(笑)。
孝太郎「はははははは・・・(>_<)
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 ]
一方の尚美ちゃんは尚美ちゃんで、いまだ伝票が見当たらず、ピンチは続いています;
真紀子「無いの?」
尚美 「それが・・・」
真紀子「ほら、やっぱり来てよかったでしょ?まぁ、朝まで時間はたっぷりある
から、何が何でも探し出して頂戴ね」
と言って真紀子はオフィスを引き上げようとする。取引先のパーティに行くため、退社すると言う。
尚美 「あの・・・私、一人で探すんですか?」
真紀子「何言ってるの?私が残って一緒に探してくれるとでも思っていたの?」
尚美 「いえ・・・」
真紀子「そんな責任感の無いことでどーするの?あなたはあなたの仕事をする。
私は私の仕事をする。当然の事でしょ?それにね、今から行くパーティ
は遊びじゃないの。営業の開拓をしに行くんだから」
尚美 「申し訳ございませんでした・・・」
真紀子「私はこのパーティで1億の契約を取ってくるつもり。だからあなたも、
その間、伝票探しに汗をかいて、結果を出して頂戴」
尚美 「わかりました・・・」
真紀子「じゃぁ、よろしく」
一人残された尚美ちゃん。ぽつ〜ん。
尚美 「どうしよう(涙)」
[料亭 〜 思いがけない展開]
孝太郎は孝太郎でピンチは続いています;
部屋には、庭のシシオドシの音が響いてます。少しでも空気を変えようと;
孝太郎「あの・・・尚美さんには大変いつもお世話になっております」
と言いながら酒を注ごうとしても、それを無視して手酌で酒を飲む哲雄;
哲雄 「お世話になってるって・・・尚美は君の何を世話してるんだね?」
孝太郎「ああ…。いえ、お世話したことはあっても、お世話になったことはない
かもしれません」(会話が変だよ、孝太郎・・・(笑))
哲雄 「何だと?」
孝太郎「ああ、申し訳ございません(頭を下げる)」
哲雄 「君・・・将来はどーするつもりだね?」
孝太郎「将来は・・・というと?」
哲雄 「尚美とはどういうつもりで付き合ってるんだ?別れるつもりか?」
孝太郎「いえいえ、そんな」
哲雄 「別れるんだろう?」(←決め付けられている)
孝太郎「別れるだなんて」
哲雄 「いや、別れるつもりなんだよ」
孝太郎「いえいえ、決め付けないで下さい」
哲雄 「なら、なぜ筋を通さない?私から君に会おうと言う前に、なぜ、君の方
から私のところに訪ねてこない?」
孝太郎「はぁ」
哲雄 「待って、待って、待ち続けて、私の胃潰瘍は悪化した。どうしてくれる
んだ?」
孝太郎「大変、申し訳ありませんでした m(_ _)m」
哲雄 「・・・」
生きた心地がしない孝太郎君に、今度は哲雄から言葉をかける;
哲雄 「君・・・ヨイショが得意なんだって?」
孝太郎「頭を上げる」
哲雄 「どうだ、ここで私にヨイショをしてみなさい」
孝太郎「いや、それは・・・その・・・」
哲雄 「できないのか?」
孝太郎「いや、あの・・・実は、あの・・・私はその・・・『ヨイショ』しよう
と思って、『ヨイショ』をしたことが今まで無いような気がしまして」
哲雄 「あはは、奇麗事をいうんじゃないよ」
孝太郎「いやいや、そうではなくて」
哲雄 「じゃぁ、なんなんだ」
孝太郎「その・・・こう、血が騒ぐと申しますか、それが結果的に『ヨイショ』
になっているのかもしれませんが」
哲雄 「嘘つけ。それをゴマすりって言うんだ」
孝太郎「いや、いや、あの、お言葉を返すようですが…」
哲雄 「何だ?!私に挑戦する気か?!!」
孝太郎「その…。いや、私はその…元々無いものを、何かあるかのように言った
ことは無くてですね。その…、確かに、1つあるものを100あるかの
ように言ったことはありますよ」
哲雄 「それを嘘つきと言うんだよ」
嘘つき呼ばわりされて、孝太郎も徐々にムキになっていきます;
孝太郎「いや、でも、私はその、元々、ゼロなものを何かあるようには言ってま
せん!!」
哲雄 「都合のいい、言い訳するな。生意気だぞ!」
孝太郎「いや、確かに生意気かもしれませんが、私は絶対に嘘はつきません!!」
哲雄 「分かったような口を利くな。ええ?俺に説教するつもりか!?!」
孝太郎「・・・」
哲雄 「・・・」
そのままにらみ合う孝太郎と哲雄。むきになる孝太郎君も可愛いかも(*^^*)(←どういう見方をしてるんだか、σ(^^;))
その沈黙を破るように部屋の外から「ちょっとよろしいですか?」と、男性の声がする。
哲雄 「・・・はい」
と、にらみ合っていた状態から、脱力する孝太郎。部屋の外の男性は言葉を続け、「こちらに、あけぼの保険の桜井孝太郎君はいらっしゃるかな?」との言葉に孝太郎が振り返ると、その声の主は、昼間に会った河上社長で、ケンタを連れて顔を出しに来たのだった;
孝太郎「あっ」
驚く孝太郎だったが、さらに驚くことに;
孝太郎「しゃ…」
哲雄 「社長!!!」
孝太郎「?!(@o@)」
孝太郎が言葉を発するよりも先に、そしてより大きな声で河上と話を始める哲雄。しかも先ほどの厳しい表情とは打って変わって、非常に腰の低い人間に変貌している;
哲雄 「社長ぉ〜。これはこれは、あの、杉田でございます〜。どうも〜」
孝太郎「(@o@)」
河上 「ああ、何だい?どうしたんだ。こちら、知り合い?」
哲雄 「先日はうちの若い者が、とんだ御迷惑をお掛けしまして〜m(_ _)m」
河上 「ああ、あれね。もう済んだことだし、忘れた忘れた。もうそんな、よし
てよ」
哲雄 「いえいえ、社長のお力添えがあればこそ、何とか乗り切れた訳でござい
まして・・・」
河上 「それより、なに、あけぼの保険とは、どういうご関係?」
哲雄 「ああ。あの、うちの工務店の福利厚生も、そろそろ見直しの時期に来て
おりまして、色々、御相談申し上げている訳でございまして…」
孝太郎「へ?いや???」(←何も言えずにいる)
哲雄 「(--;)」
孝太郎「・・・」
河上 「あっ、そう、奇遇だなぁ。実は今日の昼間も会ったばかりなんだよ」
哲雄 「あっ、それはそれは・・・(チラッと孝太郎を見る)」
孝太郎「(気を取り直して)いやー、しかし驚きましたよぉ」
河上 「さっき孫が君のこと、見かけてね。昼間、食事をしたお兄さんがココ
に来てるって言うもんだからさ」
孝太郎「ああ、そうですか、そうですか。(ケンタに向かって)全く気がつきま
せんでした」
河上 「本当に世話を掛けた。居るならちょっと声を掛けさせてもらおうと思
ってね」
孝太郎「世話を掛けたなんて、とんでもございません!わざわざお声を掛けて
頂きまして、誠にありがとうございます」
哲雄 「・・・(--;)」
河上 「(哲雄を無視して、孝太郎ににじり寄って)でね、もし良かったら、
向こうで一緒に飲んでくれないかな。どうも一人で、こう…飲んでも
つまらなくてな・・・」
と、それまで蚊帳の外だった哲雄が話に割り込んで;
哲雄 「それはもう、喜んで!さぁ、さぁ、参りましょう」
河上 「あっ、そう?」
哲雄 「さ、坊ちゃん。さぁ、善は急げ!」
と、河上社長とケンタを促して部屋を出て行こうとする。おいてきぼりの孝太郎;
孝太郎「・・・」
哲雄 「早く行くぞ!!」
と、孝太郎に言いつつも、ほとんど無視して、そのまま
哲雄 「いや〜こんな所で社長にお目にかかれるなんて、ついてるなぁ今日は」
と言いながら、行ってしまう。
孝太郎「・・・(呆然&唖然)」
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 ]
母に電話する尚美。いまだ伝票は見つからず、今日中に顔を出すのは無理そうだと話をする;
尚美 「それで、どう、お父さんと孝太郎の様子?」
たか子「それがねぇ、意外な展開になってるわよ・・・うふふふふ(笑)」
尚美 「えっ?どういうこと???」
[料亭 〜 二世代ヨイショ]
非常にテンション高く、河上社長を囲んでの宴となっている孝太郎と哲雄。
河上夫人「あなた、大事なお話をされてる方たちに、そんなにお酒を勧めちゃ、
悪いわ」
河上 「そんなことないよなぁ。酒はなるべく大勢で飲んだ方が絶対に旨い」
哲雄 「仰る通りです!」
孝太郎「私もですね、今日は社長の二度もお役に立てて、何よりも光栄でござい
ます」
河上 「そうかそうか。あ、君見てて思い出した。次の土曜日にうちが主催する
チャリティのゴルフコンペがあるんだがね、杉田さん、ゴルフは?」
哲雄 「ああ、まだまだ練習中で、もう、コースに出る度胸もとてもとても」
孝太郎「?!」
哲雄 「ああ。でも、もし社長、よろしければ社長のキャディーをやらせて下さ
いませ」
孝太郎「?!(@o@)」
河上 「あ、やってみるか?」
哲雄 「社長のゴルフも、プロ顔負けだそうで、是非、御教授願いたいもんです
なぁ。あはは(笑)」
河上 「あはは(笑)。そうかそうか」
ケンタ「だからぁ、おじいちゃんのゴルフ、下手くそだって言ってるじゃない。
また乗せられちゃって・・・」
哲雄 「・・・」
河上 「・・・」
孝太郎「・・・あっ。
いやややややや。もう、社長に似て、利発なお孫さんだ事!これは将来
が楽しみですねぇ。いや〜、どこの企業も後継者に悩む中で・・・」
と、昼間と同じヨイショで乗り切ろうとすると、ケンタがそれに割って入り;
ケンタ「『♪ちゃちゃちゃ ちゃちゃちゃちゃ リフォームするならカワウソ君
任せて安心 カワウソ君』 さぁ、みなさん、御一緒に!」
一同 「あはははははは」
哲雄 「お利巧なお孫さんだ〜」
二人 「(顔を見合わせて)ねぇ〜」
杉田 「すばらしい!」
孝太郎「すばらしい!」
なんとか危機を乗り切った孝太郎と哲雄。そのまま宴会はますます盛り上がり、たか子も加わってみんなで盛り上がっています。孝太郎&哲雄&河上の3人でフレンチかんかんを踊ってみたり、どこからかポンポンを持ってきて、それにケンタも加わって4人でチアガールをやってみたり。もう、孝太郎と哲雄のヨイショがあれば、怖いもの無しって感じ・・・(笑)。
[料亭の外 〜 ]
宴会も終わり、料亭の外で、車に乗り込んだ河上夫妻+ケンタ君を見送る孝太郎と哲雄。そして、その様子を見守るたか子;
河上 「じゃぁ、杉田さん、次はコンペで会いましょう。ああ、招待状は、うち
の秘書から行くようにしますからね」
哲雄 「楽しみにしております。奥様もどうぞ何なりと。来月のお茶会の受付け、
喜んでやらせて頂きますm(_ _)m」
孝太郎「?!」
河上夫人「ああ。恐れ入ります。どうぞよろしく」
河上 「じゃぁ」
孝太郎&哲雄「どうぞ、お気をつけてお帰り下さいませ」
と、孝太郎と哲雄がハモって(笑)、河上社長に挨拶をしつつ、車の反対サイドに回って、今度は河上夫人に対してはこっそりと;
孝太郎&哲雄「奥様も五十肩、どうぞお大事になさって下さいませ」
河上夫人「いやですわ。おほほほほ」
車はそのまま発進する。車を見送って;
孝太郎&哲雄「カワウソ不動産、バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ。
お疲れ様でした〜」
車が見えなくなってようやく一息;
孝太郎&哲雄「はぁ・・・(ため息)」
と、ため息のタイミングまで一致するなんて、この二人、波長が合いすぎ・・・(笑)。でも、その後はすぐに哲雄の顔には厳しい表情が復活してまして、孝太郎君、にらみつけられています;
哲雄 「(--;)」
孝太郎「あっ、お疲れ様でしたm(_ _)m」
そんな孝太郎に、哲雄は何も言わず、そのまま料亭に戻ろうとする。でも、孝太郎はどうしていいのかわからず、そのまま何もできずにいる。
哲雄 「(背を向けたまま)いつまで突っ立ってるんだ。帰るぞ!」
孝太郎「はい!♪」
その哲雄の言葉に、笑顔で後を追う孝太郎。その様子をほっとした表情でたか子は眺めている。何はともあれ、孝太郎君のヨイショ哲学が通じたみたいだね〜。
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 ]
一方、尚美は未だ伝票が見つからず、延々一人で探し続けている。尚美はありとあらゆるところを探しているようで、オフィスの中は物が散乱しちゃってます。そこに、お弁当を持ってやってくる孝太郎君(@スーツの下はなぜか紺のポロシャツ);
孝太郎「尚美!」
尚美 「孝太郎・・・」
孝太郎「ああ、ごめんね、遅くなっちゃってね・・・どうした?」
尚美 「もうダメ・・・(へたれ込む)」
少し間をおいて、会議室で孝太郎からその後の事情を聞きながら、孝太郎のもって来たお弁当(たぶん、さっきの料亭で詰めてもらったものでしょうね)を食べる尚美ちゃん。孝太郎は上着を脱いで、半袖のポロシャツ一枚になっています。孝太郎君って、スーツかパジャマしかないから、こんなポロシャツ姿(しかも半袖)ごときでドキドキ(*^^*)。
尚美 「はぁ、信じられない。何なの、それ?」
孝太郎「(笑)。でも、尚美のお父さんって苦労人なんだね・・・」
尚美 「うん。うちのお父さん、婿だからね、いろいろとあったみたい」
孝太郎「ふーん」
尚美 「でも、何か面白くない」
孝太郎「何で?」
尚美 「だって、私がいないところで、そんないい雰囲気になっちゃって」
孝太郎「ええ、いいじゃない!」
尚美 「家に連れてかれて、お風呂まで入れてもらって、着替えさせてもらって、
何なのそれ?このシャツ、お父さんのでしょう?」
孝太郎「そうそうそうそうそう。いやー、でもね、お陰で酒も抜けて、さっぱり
したよ」
尚美 「ますます面白くない」
孝太郎「さぁ、失くした伝票探し、再開しようか?手伝うよ」
尚美 「(拗ねて)大丈夫。私、一人でできるもん」
孝太郎「一人じゃ無理だよ。ねぇ、ほら、二人でがんばるぞぉ〜」
そして、二人の伝票探しが始まります。
机を動かして・・・
動かした机と机の間を探して・・・
コピー室も、備品の間を探して・・・
炊事場も一応、チェックして・・・
廊下の植木の中までもチェックして;
孝太郎「ああ、あった!」
尚美 「えっ?」
孝太郎「ほらほら。千円、千円、千円」
尚美 「んーーーん」
ついには、地下(?)の、ごみ置き場のゴミ袋も、一つ一つ、探して・・・
ついに、朝ーーーーを迎えたのでした。
それでも、ビルの入り口付近の植え込みの中をも探す孝太郎と尚美;
尚美 「ごめんね、孝太郎・・・」
孝太郎「ん?」
尚美 「もう無理だと思う」
孝太郎「まぁ、無かったらさ、一緒に監査に行って、謝ってあげるから」
尚美 「(ため息)・・・散々なお休みにしちゃって、本当にごめんね」
孝太郎「そんなことないって。まぁいろいろあったけどさ、結構、楽しめたじゃ
ない…?」
尚美 「うん・・・ありがとう」
孝太郎「(尚美の顔を覗き込んで)そんな顔するなって。尚美?
(尚美の頭を揺すって)ホラホラホラ。尚美らしくないぞぉー」
尚美 「・・・(^^)」
孝太郎「ふふふふふ。笑った笑った」
尚美 「ありがとう・・・」
ああ、こういう孝太郎君もいいなぁ。今回はずっと情けないキャラだっただけに、ここで頼もしいキャラになって、いいじゃないですかぁ〜。
そして、二人はそのままの体勢で、顔を近づけて・・・と、そこに風が吹いて一枚の紙片が舞い;
孝太郎「?・・・あれっ」
尚美 「何?」
孝太郎「これ〜・・・」
孝太郎の拾った紙片は、間違いなく尚美の探し続けていた伝票だった;
尚美 「あああっ!!!」
孝太郎「あ、これでしょう?」
尚美 「えっ、どうして空から??????あっ!」
尚美の回想。金曜日の夜の屋上で、尚美のファイルが散乱してしまったときの出来事。
尚美 「ああ〜」
孝太郎「ちょっとちょっと」
そして、尚美は孝太郎の助けを借りて散らばった書類の回収を終え、屋上から引き上げようとする二人;
孝太郎「ああ、大変だったねぇ・・・」
尚美 「ありがとう、孝太郎」
孝太郎「どういたしまして。何かおなかすいてきちゃった」
尚美 「そうだね、何か食べよう・・・ね」
と、全てファイルに戻した・・・つもりだったが、肝心の伝票が一枚、柵に引っかかっていたのだった。
伝票が見つかって、逆に力が抜ける孝太郎;
孝太郎「もう、この休みは一体、何だったんだ!?!?」
尚美 「あら〜、結構、楽しめたんじゃなかったのぉ?!」
孝太郎「(尚美を指差して)ちょっと・・・」
尚美 「嬉しいぃーーー」
尚美ちゃんは伝票を掲げて喜んでいます。それを見ていた孝太郎は、ジャンプして尚美の手から伝票を奪ったりして、じゃれてます・・・(笑)。
孝太郎「よっ」
尚美 「あ、ちょっと、孝太郎」
孝太郎「僕が見つけたんだからねぇ」
尚美 「やだー、ちょっとぉ」
孝太郎「感謝の気持ちが足りないんじゃないの?」
尚美 「何だって、返せー」
孝太郎「やだよー、やだよー。ほらほらほら」
尚美 「やだー、返して、ああ」
孝太郎「ほらほらほら」
尚美 「御願い御願い」
孝太郎「やだよー、やだよー」
と、二人の追いかけっこは延々と続くのであった(^^;)。
ナレーション『孝太郎と尚美の長い休日はこうして終わった。
二人にとってかけがえのない思い出がまたひとつ、
生まれた週末だった・・・』