ヨイショの男

〜 第 七 話 「さらば徳川部長」 〜


  • [あけぼの保険 第一営業部オフィス 〜 嵐の前]

    いつもの、本当にいつもの通りのオフィスの光景。孝太郎君、鼻歌なんぞを歌いながら、出社しています。すると

      尚美 「社員旅行の写真ができました〜」

    と、尚美ちゃんが部内のみんなに写真を披露していおり、出社してきた孝太郎をみつけて近づいてくる;

      尚美 「あっ。ねぇねぇ、孝太郎。これ、すっごい変な顔してるよ。見る?
          ジャ〜ン」

    と言って尚美ちゃんが見せたのは、船上で孝太郎が焼きそばを食べようとしているときの写真;

      孝太郎「あっ、だめだめだめだめ。こんな写真、載っけないでよ!」
      尚美 「えっ、何で、可愛いじゃん」
      孝太郎「可愛いとか。シー」

    なんて、朝からじゃれあう横で、他のあけぼの保険第1営業部社員たちも口々に感想を言い合ってます。そこに出社してきた白石もその輪に合流;

      白石 「あっ、なんなの?」
      尚美 「社員旅行の時の写真です」
      孝太郎「白石君も写ってるよ、これ。すっごい変な顔してるけど(^^;)」
      尚美 「変な顔!」

    と、続いて由紀江さんも出社してきまして;

      由紀江「私も欲しいなぁ…」
      尚美 「あ、由紀江さん。由紀江さんのは特別…(と1枚の写真を見せる)」
      由紀江「あるの?いやぁ♪ちょっといつの撮ったのぉ?!」

    と由紀江さんが喜んでる写真はもちろん、白石さんとのツーショット。

    そこに、最後に真紀子が出社する。もちろん、すかさずヨイショを始める孝太郎君。

      孝太郎「あっ、部長」
      尚美 「おはようございます」
      全員 「おはようございます」
      孝太郎「おはようございます。今、みんなでこの間の社員旅行の写真を見てたん
          ですよ。部長のも写ってますよ、しかも素晴らしく美しく。でも、当た
          り前ですよね、写真と言うのはね、真実を写すと書きますから。あっ、
          はい、こちらをどうぞ。(写真を開いて)こちら…」

    と、いつもの感じで話をしている孝太郎だが、その真紀子の表情は硬い;

      真紀子「全員、会議室に集まってちょうだい」
      孝太郎「・・・えっ?・・・部長?!」


    場面は移って会議室。徳川部長代理を除く全員が揃い、真紀子は神妙な面持ちで、話を切り出します;

      真紀子「グローバル・ライフの会議で、あけぼの保険に関する新しい方針が決定
          しました。大きくには二つ。早期退職者優遇制度年棒制の導入です」
      全員 「ええ???」

    と、一同が驚く中、もちろん、孝太郎君は;

      孝太郎「それっていうのはつまり・・・どういうことですか?」(^^;)
      井原 「いわゆる、リストラの始まりってことですか?」
      由紀江「営業成績は随分と上がっていると思いますけど…」
      白石 「グローバル・ライフはそれを評価してないって言うんですか?」
      真紀子「残念ながらそういうことね」
      全員 「・・・」
      孝太郎「さすがだなぁ・・・グローバル・ライフは」(おい!)
      白石 「桜井、感心している場合かよ!!」
      真紀子「とにかく、各自、よく考えて。何か意見のある人は私の所に言いに来て
          ちょうだい・・・(会議室内を見回して)徳川さんは?」
      尚美 「あっ、そういえば、まだ見てないわね」
      真紀子「桜井、何か聞いてないの?」
      孝太郎「いや得に・・・いつものパチンコじゃないですか?」
      真紀子「はっ?」
      孝太郎「あっ、いやいやいや…。あの、パチンコと言っても、パチンコに営業に
          行ってるという意味ですよ、もちろん」
          (それ、フォローになってないって…(汗))


    − その頃、徳川部長代理は、ある決意を秘めて本社前までやってきていた。


    会議を終えて、会議室を出てくる第一営業部の面々。真紀子は徳川が来たら連絡するように尚美に告げて、グローバルライフ本社に出掛ける。つまり、徳川はまだ出社はしてきていないわけで、その部長代理の席を見て、不思議そうに首をかしげる孝太郎君。

      ナレーション『あけぼの保険が吸収合併されてから数ヶ月が過ぎた。倒産の危機
             は回避され、平穏な日々が訪れたようにも見えた。
             ・・・しかしそれは、嵐の前の静けさだった

  • [居酒屋 松ちゃん 〜 真剣に考える]

    その日の夜。最近では恒例となった孝太郎&尚美&白石&由紀江の四人での居酒屋松ちゃんでの晩餐。

      尚美 「そんなに辞めたい人が多いってこと?」
      白石 「このまま会社にいても、明るい材料が無いなら、思い切って第二の人生
          を歩むのも悪くないって考えだよ」
      尚美 「でも、第二の人生なんて言ったって、私たち、まだそんな年じゃないし
          ねぇ」
      孝太郎「あっ、マスター、あの例の、あの、松ちゃん特製の太巻き、ひとつ」
      松永 「太巻き…あいよ!」
      白石 「桜井!」
      孝太郎「あっ、白石君も食べる?」
      白石 「俺はいいよ」
      孝太郎「うまいよ」
      白石 「そうじゃなくて、お前、一体、どうするつもりなんだよ?」
      孝太郎「どうするって?」
      白石 「いやだから、今日の話だよ。このままじゃジリ貧だからさ、思い切って
          手を打たないと」

    と、力説する白石の言葉に対して、手を「パンパン」と2回叩く孝太郎(べ、ベタすぎるぞ…)

      孝太郎「手を打つ?ナンチャッテ…(^^;)」
      白石 「ふざけてる場合かよ!」
      孝太郎「そんな、そんな、そんな怖い顔しないでよ!」
      白石 「怖いのは生まれつきだ」
      孝太郎「何?赤ちゃんのときから、そんな顔してるの?」
      白石 「桜井ぃ〜(--;)」
      由紀江「ちょっと、ちょっと、ほら」
      尚美 「孝太郎もさ、少しは真剣に考えたら?」
      孝太郎「あんまり深刻に考えるなって」
      3人 「?」
      孝太郎「オヤジによく、そうやって言われたんだよね。人の生き死に関係の無い
          ことは、あんまり真剣に考えるなって。大丈夫、乗り越えられるって

      松永 「あいよ」
      孝太郎「おっ」
      松永 「極太巻き、お待たせ〜」
      孝太郎「おいしそぉ〜〜〜(かぶりついて)うん、マスター、美味いよ、これ」
      松永 「だろー?」

    と、そんな孝太郎を半ばあきれ返って見ている3人;

      孝太郎「あれっ、みんなも食べたいんだったら頼めば?」
      白石 「じゃぁ、俺も」
      由紀江「私も」
      尚美 「私も」
      松永 「はい、毎度あり〜」

    やっぱり好きだわ、この4人のシーン(^^;)。

  • [孝太郎のアパート 〜 徳川の動き]

    孝太郎が家に帰ってくると、外に徳川が待っていた(今日はさすがに、上がりこまずに玄関の外で待っていたのね(苦笑))。

      徳川 「おっ、桜井。遅かったな」
      孝太郎「部長?」
      徳川 「尚美ちゃんは?」
      孝太郎「あっ、今日はもう、帰りましたけど…」
      徳川 「そうか。残念だったなぁ、尚美ちゃんの料理、食べたかったのに…」


    と、場面はそのまま孝太郎の部屋の中に移り、ちゃぶ台(?)で二人で飲む体制に;

      孝太郎「あっ、部長、奥さんにはちゃんと連絡しました?こんな時間ですよ?」
      徳川 「いいんだよ、そんな心配しなくても。あ、今日はな、お前に大事な話が
          あるんだ。実はな…」
      孝太郎「ええ」
      徳川 「俺にもいよいよ風が吹いてきたんだ」
      孝太郎「あっ、パチンコに勝ったんですか?」
      徳川 「パチンコには負けた」
      孝太郎「アラま」
      徳川 「いや、そうじゃなくて・・・」
      孝太郎「あ、はい」
      徳川 「今、計画していることが成功したら俺は会社の実権を握る。あはは(笑)。
          そうなったらお前は課長だ!

      孝太郎「課長?」
      徳川 「部長にしてやってもいいな。これからはお前らの時代だからなぁ・・・」
      孝太郎「部長ですか?」
      徳川 「いやか?」
      孝太郎「いやいやいや、とんでもないです。ただ、何を・・・始めたんですか?」
      徳川 「いや、それはまぁ、そのうち教えてやっから。ほら、いけいけ」

    と、徳川に勧められてビールを飲む孝太郎。上機嫌な徳川を、孝太郎はちょっと怪訝な表情で眺めている。

  • [あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 挙動不審な徳川と尚美]

    翌日。会議室でこっそり外に電話をしている徳川さん;

      徳川 「あけぼの保険の徳川ですけど・・・あ、はい・・・例の件で、今日にも
          そちらにお伺いしたいんですけど・・・」

    そして電話を置き、そのままオフィスを出て行く。


    一方、同じくオフィスでは、電話中の孝太郎を、白石を盾にして、キョロキョロ覗き込む尚美ちゃん。手には何か大きな封筒を持っています。そして、出社してきた由紀江を見るや否や;

      尚美 「ああ、由紀江さーん、ちょっと来て、ちょっと」

    と、由紀江を外に連れ出します。

  • [あけぼの保険ビル 喫茶室 〜 お見合い話]

    テーブルにつき、由紀江に、封筒に入ったとあるものを手渡す尚美。その封筒の中に入っているのは、一人の男性の写真。尚美の両親があけぼの保険の将来を危惧し、孝太郎以外の男性と結婚させようとしているらしい;

      由紀江「桜井君はそのこと知ってるの?」
      尚美 「そこなんですよ!やっぱり話した方がいいですかね?」
      由紀江「は?だってそれは止めといた方がいいでしょ。桜井君、怒らせたいの?」
      尚美 「怒りますかねぇ???
      由紀江「えっ?」
      尚美 「孝太郎、何言っても怒らないから。時々ね、うちのおじいちゃんと付き
          合っているみたいな気になるんですよ
    」(それもすごい喩えだわ)
      由紀江「でも、そういう所が好きだって言ってたでしょ?」
      尚美 「そうですけどぉ。何か物足りないっていうか…」
      由紀江「少しはヤキモチやいて欲しいってこと?」
      尚美 「ええ、まぁ」

    と、ある意味、お惚気の尚美ちゃんに、自分は恋愛相談には向いてないと、以前、尚美に言われたと言い返す。とはいえ、由紀江自身は白石とそれなりに上手くいってるようで;

      尚美 「だって、この間なんて、仕事帰りに二人でバーかなんか、行ったりなん
          かして」
      由紀江「ああ・・・シャンパンにキャンドルライト、そして静かに流れるジャズ
          ・・・そして、白石君は私の目を見て熱く語っていたわ・・・
          日本的経営の欠点について
      尚美 「?!」

    由紀江は由紀江さんで大変男を好きになっちゃったのねん・・・(苦笑)。

  • [あけぼの保険ビル 屋外ガーデン 〜 頼りないんだよねぇ]

    由紀江に相談した後、孝太郎に直接話をしにいく尚美ちゃん。外のベンチでお昼のサンドイッチを食べている孝太郎に、いきなり何も言わずに頭を下げてお見合い写真を差し出す;

      孝太郎「!!? 何これ?・・・ん?お見合い写真・・・誰の?」
      尚美 「・・・」
      孝太郎「…えっ、尚美の?(動揺を隠して)何、尚美、お見合いなんかするの?」
      尚美 「あっ、伯母さんに頼まれてね。会うだけでも会ってくれって」

    尚美のおばさんに頼まれてという言葉に、少し安堵の表情を示す孝太郎。あくまでも平常心を装って、改めて写真を見たりなんかして;

      孝太郎「へー。あっ、結構格好いいじゃん。へぇ。あっ、東大卒。助教授だって。
          すごいね」
      尚美 「ちょっと、そんな感心してどうするのよ!!!」
      孝太郎「ん?」
      尚美 「私がお見合いするのよ!それでもいいの!」
      孝太郎「だって伯母さんの顔を立てるためにするんでしょ?だったら仕方ないよ」
      尚美 「でも・・・」
      孝太郎「えっ、尚美、まさかこの男に興味あるの?」
      尚美 「そうじゃないけど…。ほら、会ってみたら結構、いい人だったりして。
          それで、何かがどうにかなっちゃったりー、とかそういうのもあるかも
          しれないし!それでもいい訳?」
      孝太郎「いや、よくはないけど…。でも、もしそうなったら、僕にも責任がある
          わけだし・・・」
      尚美 「何で?」
      孝太郎「だって、僕に尚美を引き止める何かが足りなかったってことでしょ?」
      尚美 「孝太郎、そんなに落ち着いててどーするんの?行かないでくれー、とか
          そういうのないの」
      孝太郎「いやいや・・・そういうの苦手だもん
          (そりゃそうなんだけどさぁ(笑))
      尚美 「(--;)」
      孝太郎「いや、恋愛っていうのも、ひとつの才能だと思うんだよね。才能の無い
          ヤツが無理をしても仕方がないでしょ」
      尚美 「じゃぁ、今までどうやって女の子を口説いてきたの?」
      孝太郎「オヤジがさ、こう言ってたんだよね。『無理して女を口説くな。男には
          一生に一度、放っておいても女にモテル時がある
    』ってね。ね?」
      尚美 「で、あったの、そういう時?
      孝太郎「あったよぉ。だから尚美と付き合ってるんだろ?だろ?

    と、孝太郎にしてみれば、頑張って尚美を口説いたつもりでも;

      尚美 「(^^)。じゃぁ、会うだけ会ってみるね
      孝太郎「え゛っ?

    と、尚美の発言を聞いて、少し顔色が変わっちゃう孝太郎(^^;)。

  • [あけぼの保険ビル 第一営業部 会議室 〜 白石君に相談しよう]

      白石 「お見合い?!」

    白石を会議室に連れ込み、先ほどの尚美の話を相談しようとする孝太郎。はっきり言って、動揺しまくってるよね。それにしても、こういうときに相談する相手と言えば、白石君なんだね、孝太郎にとっては(^^;)。でも、相手を間違ってるよね、絶対・・・。

      孝太郎「ああ〜(おどおど)。ちょっと声が大きい…」
      白石 「そんなことで呼んだのかよ。俺、仕事が忙しいんだからさ」
      孝太郎「いやいや、ちょっと待ってよね。どうしたらいいかな?」
      白石 「どうしたらいいって・・・別に悩むことないだろ」
      孝太郎「いやいやでもさぁ」
      白石 「人の生き死にに関係ないことでは悩まないんじゃなかったのか?
          (さっきの台詞がここにつながるのね・・・(苦笑))
      孝太郎「いや、まぁ、そう言ったけどぉ・・・」
      白石 「さすがの桜井孝太郎も、恋の悩みには解決策なしか」
      孝太郎「・・・」
      白石 「しょうがねーなぁ。相談に乗ってやるか。座れ」
      孝太郎「いやー、さすが白石君、頼りになるねぇ〜。最近、由紀江さんと上手く
          いってるって噂じゃない、どうなの?」
      白石 「まぁ、な。・・・俺が思うにさ、お前は相手に気を遣いすぎなんだよ。
          男はやっぱり、夢を語らなきゃ
      孝太郎「夢?」
      白石 「俺なんか、なぜ、日本経済がダメになったのか、立花君にじっくり聞か
          してやったよ。彼女、ボーとした目つきで、俺の話に聞き入ってた

      孝太郎「なるほどねぇ。夢を語るか・・・。昨日はね、空から落ちる夢を見たん
          だけどね、朝起きたらベッドから落ちてたね
      白石 「その夢じゃねーよ

    孝太郎と白石のボケ突っ込みもイタについてきたようで・・・(苦笑)。

  • [あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 リストラ]

    夜、誰も居ないオフィスで、徳川はどこかに電話をかけようとしている。しかし、そこに真紀子が現れ、電話がつながる前に受話器を置く;


      徳川 「緒方部長、こんな時間まで何か?」
      真紀子「ちょっとお話したいことがあるんです」

    そして、徳川の前に、書類を一部、差し出す。その書類は『早期退職者優遇制度申込用紙』。各部署で最低一人は退職希望者を出すようにとの指示が、グローバル本社より出ており、真紀子は徳川に希望退職(つまりリストラ)を進めたのだった。だが、徳川は;

      徳川 「申し訳ないが、サインは出来ません。私にはまだこの会社でやることが
          ある・・・」

    と、真紀子の要求を突っぱね、そのままオフィスを出て行く。

  • [ホテル 〜 お見合い本番…そのとき孝太郎は?]

    真っ赤な振袖を来た尚美ちゃん。お見合いの世話をしてくれるおばさんと一緒に、お見合い相手を待っています。約束の時間よりも遅れて現れるお見合い相手の”町田吾郎”(爆)。最初は乗り気ではない尚美ちゃんでしたが、お見合い相手がやってきたとたん、様子が少し変わってきまして;

      町田 「どうも遅れて済みません、女性を待たせるなんて最低ですね」
      伯母 「いいのよ、お忙しいんですもの。あの、こちら・・・」
      尚美 「(*^^*)。あ、あ、私、杉田尚美と申します。この度は、お日柄もよく…
          じゃなくって」
      町田 「(^^;)。初めまして、町田です」
      尚美 「はじめまして(*^^*)」

    そして、も・ち・ろ・ん、孝太郎もその後を追いかけてきてまして、ついでに白石君&由紀江さんの3人。尚美の様子を、陰からこっそり、もちろん面白くない気持ちで見ている野郎が約一名:

      孝太郎「尚美のヤツ、いつもと全然違うよな」

    そして、そんな孝太郎に少しからかい気分で見ている男女が合計2名;

      由紀江「目がハートになってる」
      白石 「確かに違うな・・・」
      孝太郎「・・・(不安不安不安・・・)」


    そして、ホテルのレストランで二人きりで食事を始める町田と尚美。・・・その少し離れたテーブルで様子を伺う孝太郎、他2名。楽しそうに会話をする二人を見る孝太郎は、尚美の笑顔を見るたびに、ますます不安が増大してます。

      町田 「この年までどうして独身なのか、お聞きになりたいでしょ?」
      尚美 「いえ、そんな・・・」
      町田 「大学の研究に夢中になりましてね。考古学なんですけど、興味がありま
          す?」
      尚美 「考古学?・・・ああ、インディージョーンズと一緒ですね。こうやって
          ムチを振り回してる」
      町田 「ムチは振り回さないんですけど…(^^;)」
      尚美 「ああ、あれは映画のお話ですもんねぇ」
      町田 「まぁ、昔の遺跡を歩き回っているのは一緒ですけどね。昔の人よりも、
          今の人に興味を持てって、お袋には怒られっぱなしです」
      尚美 「でも、素敵なお仕事ですよねぇ、夢があって・・・」

    と、そんな楽しそうな会話が続けば続くほど、孝太郎君は落ち着かなくなっていくわけで、尚美たちのテーブルに背を向けている孝太郎は、白石と由紀江に状況を聞きます;

      孝太郎「どう?どんな感じ?」
      由紀江「何か、いい雰囲気ねぇ」
      孝太郎「えっ?」
      白石 「笑ってる、笑ってる」
      孝太郎「わ、笑ってる?」
      白石 「すっげー、楽しそう」
      孝太郎「楽しそう?」
      白石 「あんなことしてるよ」(←実際には何もしていない)
      孝太郎「ええ、どんなこと?」
      白石 「大胆!うわー、大胆!!」

    白石君もかなり意地悪かもしれない…(苦笑)。ただ、孝太郎君はそれを冗談とも思うだけの余裕もなく、焦って体を起こした時に、テーブルのグラスを派手に倒してしまいます。その音で、由紀江たちのテーブルに視線を向ける尚美ちゃん。

      尚美 「由紀江さん?」
      由紀江「は、はーい」

    と、由紀江と白石が二人でやってきていることに気づく尚美ちゃん。で、孝太郎は間一髪でテーブルの影に隠れ、ハイハイして見つからないように出て行っちゃう孝太郎。

      白石 「おい、バレちまったじゃないかよ」
      由紀江「仕方ないわよ。デートのフリしましょ?」
      白石 「デート?さくらいのやつどこいったんだ?」
      由紀江「いいじゃない、放っておけば…。大体、いつも悟り切ったようなことを
          言ってて、こういう時になると、丸っきりだらしないんだから。少しは
          悩んだ方がいいの!」
      白石 「女はきついな」
      由紀江「ん?」
      白石 「いや、別に・・・」

    で、その孝太郎君、いつの間にか、つい立の陰に隠れて町田と尚美の様子を伺ってます。あまりに楽しそうな二人に見えるもので、耳を塞いだり、どうしようもなくなってきます。そして、あるアイデアが孝太郎に閃き・・・


    ウエイターの衣装をどこからか調達し(オイオイ)、そのまま町田と尚美のテーブルに接近する孝太郎。隣のテーブルで雑務をしている振りをして、意識は尚美のテーブルの方に向いています。そのとき、タバコを吸おうとして、そのウエイターに話し掛ける町田さん;

      町田 「ねぇ、君?」
      孝太郎「はい?」
      町田 「マッチ、ある?
      孝太郎「マッチ???」
      町田 「そう、マッチ

    ああ、やっちゃいましたねぇ、コテコテのギャグ。今回はこの手のギャグのオンパレードだわ(苦笑)。

      孝太郎「あ、ここは禁煙席でございます」
          (↑さすがにこの手の言葉遣いに馴れているわね、孝太郎…(苦笑))
      町田 「ああ、それは失礼」

    と、町田に対しては上手く誤魔化したけど;

      尚美 「!!! こうた・・・」

    と、尚美ちゃんには存在がバレちゃいまして、慌てて尚美ちゃんに「あっ、お客様、ワインのおかりを・・・」と、ワインを注ごうとします(ソムリエだ、ソムリエだ〜)。ただ、孝太郎も動揺しまくりですから、尚美ちゃんの着物にワインを零しちゃうというトラブルが!

      尚美 「何するのよ!!!」
      孝太郎「・・・。お客様、お着物が染みになっては大変でございますね。化粧室
          へ。化粧室へ・・・」

    と、強引にレストランの外へと尚美の腕を引いていく孝太郎。その光景を白石君と由紀江さんがあっけに取られて見ています;

      尚美 「?!?!??!?!!」
      町田 「えっ?ねぇ、ねぇ、ちょっと君!」

    まんまと尚美の奪略に成功・・・なのかな?(^^;)



    ホテルの化粧室(もちろん、女性用)で、着物についたワインを拭いている尚美ちゃん;

      尚美 「一体何なの?!何しに来たのよ!」
      孝太郎「えっ、いや、その・・・その・・・着物綺麗だね、どこで買ったの?」
      尚美 「借りたの!でも、これもう、染みになっちゃうから買取だわ。孝太郎、
          お金出してよね」
      孝太郎「いくらするの?」
      尚美 「20万」
      孝太郎「20万?!?!何でそんなに高い服、着てんの?」
      尚美 「だって、お見合いだもん」
      孝太郎「どうせ断るんでしょ?だったらもっと安いのでいいじゃん」
      尚美 「・・・。そうだけど、ねぇ。折角フランス料理だし」
      孝太郎「あっ、あの、、、あれ。。。少し、こ、心が動いたとか」
      尚美 「そんなこと無いけど…」
      孝太郎「でも、嬉しそうな顔してたよね?
      尚美 「してないわよ」
      孝太郎「してた!」
      尚美 「してない!!
      孝太郎「してました!!!
      尚美 「してない!!
      孝太郎「してた!!!
      尚美 「してない!
      孝太郎「して…

    と、ついには大喧嘩の二人。そこに別の女性が入ってきて、「ここは女子トイレなのよ!でていきなさい」とたしなめられる孝太郎君ですが;

      孝太郎「あっ、いやー綺麗なお召し物ですね。それにこの・・・」

    と、女性トイレの中でもヨイショ・・・って、それは違うだろ〜。

      女性 「ちょっと、誰か!!」
      孝太郎「失礼しました・・・(逃げ)」
      尚美 「・・・」


    一方のレストランに一人残された町田さん。ふと気が付くと、尚美のバックが床に落ちている。そして、ふと開いたパスケースには尚美と孝太郎とのラブラブツーショット写真が…。

    町田がそれを見ているとも知らず、尚美は一人、町田のもとに戻ってくる。

      尚美 「どうも済みません」
      町田 「あっ、これ(バッグ)落としましたよ。じゃぁ食事の続きしましょうか?」
      尚美 「はい」
      町田 「・・・」

  • [ホテルの外 〜 徳川からの呼び出し]

    ホテルを出てくる孝太郎。尚美ちゃんと喧嘩までしてしまい、落ち込みぎみです。そこに、非常にタイミングよく、携帯電話が鳴る(着メロはもちろん『ヨイショ'02』)

      孝太郎「はい」
      徳川 「徳川だ。ちょっと来てくれ」
      孝太郎「え?」
      徳川 「お前に頼みたいことがあるんだ」
      孝太郎「ああ、はい・・・」

  • [某料亭 〜 逆ヨイショ]

    とある料亭の入り口で、徳川と合流する孝太郎;

      徳川 「いいか、大阪から大切な客人がくる。この間言ってた計画は、この客人
          が俺に協力してくれるかどうかに懸かってる。お前の得意なヨイショで
          何とか機嫌をとってくれ。頼むぞ」

    と、孝太郎の気持ちは無視して一方的に御願いをする徳川さん。

      孝太郎「・・・あ、はい」
      徳川 「何だ、いつもの元気がないな」
      孝太郎「あっ。いえ、そんなことはありません。桜井孝太郎、頑張ります!」
      徳川 「うん。じゃぁ、座敷の方に行ってるからな。頼むぞ」

    そして、徳川は孝太郎を店の入り口に残して、一人、中に入っていく;

      孝太郎「よしっ」

    気合を入れなおし、一人、孝太郎が外で待っていると、一台のリムジンが到着し、車から中年の女性が降り立つ(関西人としては、お久しぶりの山田スミ子さん);

      孝太郎「大熊様ですか?」
      大熊 「あんたが、徳川はんでっか?」
      孝太郎「いえ、私、桜井孝太郎と申します」
      大熊 「ああ、あんたが桜井孝太郎さんでっか?」
      孝太郎「いえ…。私のことをご存知で?」
      大熊 「知りまへん
      孝太郎「えっ・・・(^^;)」
      大熊 「ほな、行こか」

    と、仲居さんに案内され、さっさと店の中に入っていく大熊;

      孝太郎「あ、失礼しました・・・」(^^;)

    孝太郎君、早くも調子、狂ってます・・・。調子を取り戻すことが出来ないまま、舞台は、徳川の待つ料亭の中の一室;

      孝太郎「大熊様、お見えになりました」
      徳川 「大熊さん、ようこそいらっしゃいました」
      大熊 「あんたが徳川はんでっか?」
      徳川 「はい」
      大熊 「いやー。えらいまた、男前の社長はんやな」
      徳川 「いえいえ、私は社長ではございません」
      大熊 「何をゆーてはんねや。あんさん、社長の器でっせ。私は勘で分かります
          のや」

    と、歯の浮くようなヨイショをされっぱなしの徳川。その勢いで「どうぞどうぞ、座んなはれ」と言われて徳川が座った席は;

      孝太郎「あっ、部長。あの…こちらは上座です。上座」
      徳川 「あっ、そうか」
      大熊 「何をゆーてる、何をゆーてるのよ。上やの下やの、そんな小さなことは
          どーでもよろしい。ははは(笑)。笑いなはれ、笑いなはれ。あはは(笑)。
          (店の人に)ああ、姉さん。とりあえず冷たいおビール持って来てんか。
          それからおしぼり2つ持ってきてあげて。何かえらい汗かいてはるで」
      孝太郎「(慌てて)あの…注文はこの私が。ええ、さっき打ち合わせした通りに
          御願いします」
      大熊 「おお。何やもう、段取り決まっとんのかいな」
      孝太郎「はい」
      大熊 「あんた、最近の若い男にしたら、よーできとるやないの」
      孝太郎「m(_ _)m」
      大熊 「さすが、男前、徳川はんの片腕や。ちょっと、手、見せてみ」
      孝太郎「?」
      大熊 「兄ちゃん、手や」
      孝太郎「手?」

    と、孝太郎の手を取り、手相を見始める大熊;

      大熊 「んーーー。こら凄い!こんな凄い手相見たことないがな。将来、大もん
          になる手相や!!!」
      孝太郎「あっ、そうですか?」
      大熊 「日本経済を救う男になる手相やで、これは」
      孝太郎「いや…いやいや♪そんな風に言われると。いや、ありがとうございます」
      徳川 「桜井、何言ってるんだよ。お前がヨイショされてどうするんだよ(--;)。
          向こうをヨイショするんだよ」
      孝太郎「あっ、そうでした」
      大熊 「何、言ってるんや」
      孝太郎「いや、社長こそ、すばらしい御尊顔で・・・」
      大熊 「どこがや?」
      孝太郎「いやもう、見ているだけで思わず笑ってしまうそのお顔。素晴らしい」
          (あれっ?(笑))
      大熊 「・・・うちの顔、そんなにおかしいか?」
      孝太郎「いや〜、それはもう!」(まだ言うか?(^^;))
      大熊 「・・・そんなにおかしいか」
      孝太郎「・・・あっ、あっ、大変失礼しましたm(_ _)m m(_ _)m m(_ _)m」
      徳川&孝太郎「あっ、あははははははは (^^;)ゞ」

    と、ひじょーに気まずい空気でいっぱいになっております。

  • [居酒屋 松ちゃん 〜 図星(^^;)]

      孝太郎「はぁ〜〜〜〜〜〜〜大失敗だ〜」

    松永を前に、店のカウンターで深〜くため息をつく孝太郎君。

      松永 「どうした?」
      孝太郎「ヨイショするべき相手にヨイショされて、カンゼンに向こうのペースに
          はまってしまいました・・・(涙)」
      松永 「お前、尚美ちゃんと喧嘩しただろう?
      孝太郎「えっ?」
      松永 「へへ。おまえのヨイショの調子が悪いときは、尚美ちゃんと喧嘩した時
          だって決まってるんだよ」
      孝太郎「どうして分かるんですか?」
      松永 「居酒屋のマスターをなめるなよ」
      孝太郎「(^^;)」

  • [孝太郎のアパート 〜 仲直り]

    そのまま孝太郎が自らのアパートに帰ってくる。玄関の扉が開いて、尚美が中から顔を出す;

      尚美 「お帰り・・」
      孝太郎「尚美・・・」


    部屋の中。尚美ちゃんの着物が下げられているところをみると、尚美ちゃん、自分の家にも帰らずにそのまま孝太郎の家にやってきたのねん。帰ってきた孝太郎にお茶を入れる尚美。

      尚美 「はい」
      孝太郎「ありがとう。・・・」

    孝太郎は黙ってお茶を飲み、尚美は洗濯物をたたんでいる(もう、完全に主婦状態やん(^^;))。

      尚美 「何か一言ないの?」
      孝太郎「ん?」
      尚美 「いつもだったら『うーん美味しい。尚美の入れたお茶は天下一品だよ〜』
          とか、そういうのあるじゃん」
      孝太郎「ああ・・・」

    と気の無い返事をする孝太郎に、尚美ちゃんがお見合いの話を切り出す;

      尚美 「お見合い・・・断られちゃった
      孝太郎「えっ?」
      尚美 「さっき、伯母さんから電話があった。まぁ、元々、断るつもりだったん
          だけど。向こうから断られたのは、なんかちょっとショックかな」

    と言う尚美の言葉で孝太郎は、ようやく調子を取り戻す(分かりやすいヤツだ…)。

      孝太郎「馬鹿だなぁ、あの男」
      尚美 「えっ」
      孝太郎「尚美とのお見合いを断るなんてさ。信じられないね。何てやつでしょう、
          世の中にそんな男が居たなんてさ

      尚美 「・・・」
      孝太郎「だってそうでしょ?大きな瞳にキュートな唇、いつも笑顔の職場の天使。
          まぁ、たまにドジはするけど、料理の腕は…天下一品。あけぼの保険の
          みんなが認める花嫁候補ナンバー1。そんな彼女の見合いを断るなんて
          さ、まったくもって信じられないね」
      尚美 「孝太郎・・・」
      孝太郎「うん、まぁでも、これは、恐らく神様の悪戯かな?だって、彼女には、
          すぐ近くにもっと素敵な男性がいるんだからさ
      尚美 「ん?」
      孝太郎「ん?」
      尚美 「どこにいるの?」
      孝太郎「ほら目の前」
      尚美 「えっ、ちょっと、その素敵な男性ってどこにいるの?

    と、部屋の中をキョロキョロ探し回る尚美ちゃん。

      孝太郎「えっ、ほらほらほら!」
      尚美 「えっ、どこだろう?」
      孝太郎「ほら?目の前にさ」
      尚美 「目の前〜?」
      孝太郎「ほらほら、ね?」
      尚美 「えっ、目の前って、どこだろう?」
      孝太郎「ほら、素敵な男性 σ(^^;)」
      尚美 「あれっ、こっちかなぁ〜」
      孝太郎「ほら、素敵な男性だよぉ」

    で、今度は台所の炊事場の下の扉を開けて「素敵な男」を捜したり;

      尚美 「目の前って、どこぉだろぉ。ここ?おかしいなぁ」

    今度はそれを受けて、孝太郎がその扉の中から出てきたり・・・やること可愛いじゃねーか!(^^;)

      孝太郎「ほらほらほら、この中から出てきちゃったよぉ、素敵な男性が」
      尚美 「あれ〜あれっ、見えない〜」
      孝太郎「ほらほらほら、目の前でしょ?」
      尚美 「あれっ、何処〜」
      孝太郎「目の前にいるじゃん!!!

    で、これで仲直りはできたんだよね?(^^;)

  • [あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 不安]

    翌朝。

      孝太郎「おはようございまーす」
      尚美 「あ、桜井さん、おはようございます」
      孝太郎「あ、杉田君、おはよう」

    などと、白々しい挨拶を交わす二人。あ、アホらし・・・。もちろん、由紀江からも、「どーせ、一緒にきたんでしょ?」と突っ込まれてます(苦笑)。

      孝太郎「あ、白石君、おはよう」
      白石 「ああ」
      孝太郎「どうしたの白石君、朝から渋い顔して?」
      白石 「うちの株の動きがおかしいんだ
      孝太郎「株?白石君、株なんかやってるの?」
      白石 「うん…。うちの株を持ってるからさ。いつもチェックしてるんだけど、
          最近、動きが激しくて・・・」
      孝太郎「ふーん。えっ、なに?何がどうおかしいの?」
      白石 「わからん。でも、やな感じだなぁ」
      孝太郎「・・・」

    と、そこに今度は徳川さんが出社してきまして;

      徳川 「おい、桜井」
      孝太郎「あ、おはようございます」
      徳川 「ちょっと来い」

    と、孝太郎一人を会議室に呼び出します。

      白石 「?」


    会議室。徳川は昨日の件について、孝太郎に話しをします;

      徳川 「今朝、連絡があってな。昨日の件、上手くいったぞ」
      孝太郎「本当ですか!」
      徳川 「いやー、お前の調子がいつもと違うから、冷や冷やしたな」
      孝太郎「ああー、よかった(ほっ)」
      徳川 「これで全て上手くいく。グローバルライフの人間にアッと言わせてやる」
      孝太郎「ところで、一体、何の取引だったんですか?」
      徳川 「うん・・・もう話していいか。おい、でも他の連中にはまだ内緒だぞ。
          お前には特別に話してやる」
      孝太郎「はい」
      徳川 「実はな、俺はあけぼの保険を奴等から取り戻す」
      孝太郎「えっ?」
      徳川 「今度の株主総会で今の経営陣の解任案を出す。それに勝つだけの株主を
          やっと抑えたんだ。昨日のおばさんが、最後の難関だった。彼女が協力
          してくれれば、あの津村を解任して、あけぼの保険を取り戻すことがで
          きるんだ・・・」
      孝太郎「えっ???」
      徳川 「ふふふ(孝太郎の肩を叩いて立ち上がる)…これで俺の時代が来る」

    自身満々の徳川に対して、でも、ちょっと不安げな表情(に見えるんだよね)で徳川のことを見つめる孝太郎君。


    会議室から出てきて、やっぱり上機嫌の徳川さん。第一営業部のみんなにも、夜は祝宴を開こうと宣言しています。

      井原 「何かったんですか?」
      徳川 「あったんだよ。まだ内緒だがね」

    そんな上機嫌の徳川に、尚美は1時に本社に来て欲しいとの真紀子の伝言を伝える。

  • [グローバルライフ本社ビル 〜 計画崩壊]

    津村が本社の会議室に入っていくと、そこには真紀子と、社長の津村が待っていた;

      津村 「徳川君、私は非常に残念です」

    徳川が画策していた計画は、全て津村にばれてしまっていた。昨晩、大熊を接待した領収書を経理に回したことが原因だった(さすがにお間抜けすぎるわ、徳川さん…(;o;))。

      津村 「徳川君、そういうときは、自腹で払わなくっちゃ。ねぇ?」

    全てが水泡に帰したことを悟り、カバンを机に叩きつける徳川。さらに津村は徳川に;

      津村 「ところで、この造反劇には他にもうちの社員が関わっているんじゃない
          のか?誰なんだ?」
      徳川 「誰も居ません、私が一人でやりました」
      津村 「そんなわけないだろう?誰か一緒に行動した人間がいるはずだ。名前を
          言いなさい!桜井という男か?
      徳川 「違います。彼は何の関係もありません

  • [孝太郎のアパート 〜 また遅刻じゃん]

    翌朝。徳川に非常事態が起きていることもつゆ知らず、ベッドにもたれかかった姿勢で、うとうと寝ている孝太郎。朝の日差しに、自然と目を覚まします;

      孝太郎「ん?ああー、朝か…。あれっ、徳川部長、結局、電話かけてこなかった
          な、祝宴やるとか言ってたのに・・・あれっ?あっ!!!」

    と、時計を見ると、はっきり言ってとんでもない時間になってます。

  • [あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 解雇]

    大慌てで出社する孝太郎;

      孝太郎「おはようございます!」

    だが、オフィスは、みな、じっと着席し、静まり返っている。

      孝太郎「・・・・あれっ?どうしたの、あれれれれ」

    と、孝太郎がオフィス中を見渡すと、津村がオフィスの応接コーナーに座っている;

      孝太郎「あっ、社長、おはようございます」
      津村 「(冷ややかに)遅刻じゃないのか?」
      孝太郎「申し訳ございません。これには、深ーい訳が・・・」
      津村 「言い訳を聞くつもりはない!」
      孝太郎「・・・」

    と、非常に空気の悪いところに、真紀子と徳川がオフィスに戻ってくる。事務手続き的なことを二人は話しているようだが、事情の分からない孝太郎はいつものように声をかける;

      孝太郎「おはようございます」
      徳川 「桜井・・・」
      孝太郎「?」

    だが、徳川は何も言わずに孝太郎の傍らを通り過ぎる;

      孝太郎「部長?」
      徳川 「・・・」
      孝太郎「どうしたんですか?」
      津村 「彼は、今日限りで会社を辞めることになったんだ・・・」
      孝太郎「えっ?!(小声で)ああ、まさか、部長、この間の計画が…」
      徳川 「桜井!・・・希望退職だよ
      孝太郎「希望退職!?」
      徳川 「そうだ・・・みんな、頑張れよ!さらば、あけぼの保険よ・・・

    そして、オフィスを出て行く徳川。真紀子も、白石も、由紀江も、尚美も、誰も言葉を発する者はいない。堪らなく、孝太郎は真紀子のデスクにすがりつき;

      孝太郎「部長、どうにかならないんですか?
          おかしいじゃないですか、こんなの!
          部長!
      真紀子「・・・」

    何も言わない真紀子を無視し、徳川を追いかけようとする孝太郎君。

      真紀子「桜井!待ちなさい。もう、仕事の時間ですよ」
      孝太郎「部長!」
      真紀子「みんなも、早く仕事しなさい」

    そう冷静に言いながらも、悠然と構える津村をにらむように視線を送る真紀子。真紀子のその言葉で、それぞれ仕事をしはじめる。だが、孝太郎だけは、すぐにはそういう気分にはなれない;

      尚美 「孝太郎・・・これ、徳川部長の忘れ物

    黙って立っている孝太郎に尚美が徳川愛用の双眼鏡を差し出す。そして孝太郎は双眼鏡を受け取り;

      孝太郎「ぼく、行ってきます
          (↑このときの孝太郎君のやりきれない表情は好きかも…)

    と、急ぎオフィスを出て行く。会社の階段を駆け下り、玄関を出て・・・雨の中、孝太郎君はオフィス街を走る。

  • [オフィス街 〜 別れ]

    アテもなく、走り続け、必死に徳川の姿を探す孝太郎;

      孝太郎「部長!部長!部長・・・!!!」

    交差点をわたり、なおも駆ける;

      孝太郎「部長!部長、・・・部長!!!徳川部長、どこですか?部長!」

    ・・・徐々に息も切れ、足取りもあやしくなり、躓いてこけちゃう孝太郎。双眼鏡が気になり見てみるが、傷はついていなかった。そのまま顔を交差点の向こうに向けると、その先には徳川が居た;

      孝太郎「部長!徳川部長!」
      徳川 「桜井・・・」
      孝太郎「部長!」
      徳川 「さくらーい」
      孝太郎「部長!」

    そのまま交差点をわたり、ようやく徳川に追いついた孝太郎君;

      徳川 「お前・・・何しに来たんだ?」
      孝太郎「これ・・・忘れ物です」
      徳川 「馬鹿だな。こんなもの届けにきたのか」
      孝太郎「はい。部長、大事にしてたから(^^;)

    無邪気な表情で双眼鏡を徳川に差し出す孝太郎;

      徳川 「・・・。(受け取る)」
      孝太郎「部長・・・何とかならないんですか?何で部長が辞めなきゃならないん
          ですか?」
      徳川 「もう言うな。俺は、一世一大の駆けに出た。しかし負けた。それだけの
          ことだ。後悔は無い。・・・これ、お前にやる


    と、徳川は孝太郎に双眼鏡を差し出す。黙って受け取る孝太郎。そのまま徳川は、再び歩き出す。今にも泣き出しそうな子供のように、部長の後姿を見送る孝太郎;

      孝太郎「部長!!!

    孝太郎のその声にもう一度だけ振り返る徳川さん。その徳川を受け取った双眼鏡で覗く孝太郎;

      孝太郎「部長が大きく見えますよ!!!

    徳川は黙って頷いて、片手を高々と掲げる。涙がこぼれながらも、同じく、手をふり上げる孝太郎。そのまま徳川は去っていく;

      孝太郎「ありがとうございました

    孝太郎は徳川の後姿に、深々と頭を下げた。

  • [居酒屋 松ちゃん 〜 珍しくヤケ酒]

    その日の晩。いつもの居酒屋松ちゃんに尚美ちゃんと来ています。でも、やりきれない思いから孝太郎は泥酔してしまってます。

      孝太郎「マスター、ももも、もういっぱい頂戴」
      尚美 「ちょっと孝太郎、飲みすぎよ!」
      孝太郎「放っておいてよ。(空のグラスを差し出して)ほら」
      松永 「はいはい・・・(こっそり)薄く作れよ」

  • [孝太郎のアパート 〜 徳川さん再び(おや?(^^;))]

    酔いつぶれ、尚美につかまり、アパートの前までやってくる孝太郎。 尚美ちゃんが孝太郎に代わって部屋の鍵を開けようとするが、部屋の鍵は開いていた;

      尚美 「あれっ、ちょっと孝太郎。今日、鍵掛けるの忘れた?やだもう、待って」
      孝太郎「ああ、ちょっと」

    と、そのまま玄関の扉を開け、そのまま玄関口に崩れ落ちる孝太郎。尚美ちゃん、見事に下敷きになってます(^^;)

      尚美 「ちょっと重い。いやー、ちょっと重いよ」
      孝太郎「あたたたた。気持ち悪い、気持ち悪い」

    尚美が部屋の中に視線を向けると、暗い部屋の中に人影が見える;

      尚美 「孝太郎、誰か居る、誰か居る」
      孝太郎「ちょっと、やめて揺らさないで気持ち悪いから・・・zzZZZZ(-o-)」

    と、ぶっ倒れている孝太郎をおいて、尚美が部屋の灯りをつけると;

      尚美 「徳川部長?!何やってるんですか?こんなところで?」
      徳川 「ああ・・・いや・・・家に帰ったら、女房も子供もいなくてな。実家に
          帰ってしまったらしい」
      尚美 「ええ?」

    と、徳川の声にようやく反応した孝太郎君(但し、部長の話の内容までは耳に入っていないと思われる(^^;))。急に元気になって、体を起こします;

      孝太郎「あらっ、部長!!!
      徳川 「桜井・・・」
      孝太郎「何やってるんですか、こんなところで?」
      徳川 「まぁ、いっぱい飲もう」
      孝太郎「あら、いいですね〜!いきましょうね!!!」
      徳川 「尚美ちゃんもどうだ?」
      尚美 「あの、二人とも飲みすぎですよぉ」
      徳川 「男にはね、飲まなきゃならないときがあるんだよ」
      孝太郎「そうですよ。部長、いきましょう!」
      徳川 「部長か・・・もう、部長なんかじゃないよ」
      孝太郎「あ、あ…そうでしたね・・・社長?いいですね、この言葉の響き。
          私、桜井孝太郎、これから、社長と呼ばせて頂きます!
      徳川 「あははあはは」
      孝太郎「さささささ(ビールを勧める)」
      徳川 「(うん)あははあはは(笑)」
      孝太郎「うふふふふふ(笑)」
      徳川 「あはははは(笑)、調子いいこと言って」
      孝太郎「ほら、尚美もね。一緒に飲もう。ほらほらほら」
      尚美 「じゃぁ、あと一時間だけですよ」
      徳川 「あ、お母さんみたい」
      孝太郎「ほーい」
      尚美 「はいはい。じゃぁ、乾杯ね」
      孝太郎「何に乾杯しようか?」
      尚美 「何にでもいいから、乾杯」
      全員 「かんぱーい」
      孝太郎「ああ…。もう、部長と飲む酒は最高ですよ!!!あっ、社長でしたね。
          すみません。よーし、今夜も、ネクタイパワーで飲み明かすぞぉ〜。
          ヨイショ」


    ・・・で、そのままの体制で翌朝。孝太郎と徳川さんは、ベッドにもたれて、二人並んで、ぼーっとしています;

      徳川 「・・・桜井・・・」
      孝太郎「・・・はい」
      徳川 「・・・朝だな・・・」
      孝太郎「・・・朝ですねぇ・・・」
      徳川 「・・・不思議なもんだ・・・」
      孝太郎「?」
      徳川 「ふん。もう朝なんか来ないと思っていたのに・・・目が覚めたら朝だ。
          それに、晴れてる

      孝太郎「はははは。そうですね」

    何だかこの会話、しみじみしちゃいますねぇ。でも、絶望の中にも光が見えたような、そんな演出には救われます。

    そこに、尚美ちゃんが朝食を作ってやってくる;

      尚美 「はーい、お待たせー」
      孝太郎「お、来た来た来た」
      尚美 「今日は二人とも二日酔いだろうから、おかゆねー。でも、ただのおかゆ
          ではありません。何と特製、雲南伝七人参エキス入りおかゆー。じゃん」
      孝太郎「旨そうだねぇ、これねぇ」
      徳川 「いいにおいだ」
      孝太郎「いただきまーす。アツアツアツ…」
      尚美 「そんな慌てないで」
      徳川 「ああ、うまいねこれは」
      尚美 「本当ですか?孝太郎は?」
      孝太郎「うまいうまいうまい。料理の天才!」
      尚美 「でしょー」
      徳川 「幸せもんだぞ、お前は」

    と、なんとなく、少しはみんな、元気を取り戻せたのかな?

    さて、そろそろお出かけの時間;

      孝太郎「それじゃぁ、戸締りと火の始末は御願いします」
      徳川 「わかった、わかった」
      孝太郎「じゃぁ」
      二人 「行ってきます」

    二人を見送りながら、徳川は静かにつぶやく;

      徳川 「がんばれよ、桜井孝太郎!」


      ナレーション『徳川元部長の第二の人生が始まった。しかし、彼がやがて、桜井
             孝太郎の最大の敵になるとは、この時、誰が予想することができ
             ただろうか…』

    孝太郎と尚美ちゃん、アパートの階段を下りて着て、ゆっくり朝の空気を吸って;

      二人 「ヨイショ」

to be continued …

[次回予告]

  ナレーション『次回ヨイショの男は・・・
         久しぶりにやってきた二人だけの休日。
         しかしそれは波乱の幕開けだった。
         孝太郎と尚美に次々とふり掛かる大災難。
         二人の休日は、一体どうなってしまうのか?!
         次回もテレビの前のあなたに、ヨイショ!』

ああ、今回、予告の映像に、タイトルバックの映像まで混じっちゃって…(涙)。WCはこのドラマにとって幸なのか不幸なのか・・・


<第6話感想> 孝太郎の涙

今回は、前半は尚美ちゃんとのラブコメディ。そして、後半はちょっとシリアスにいまどきの会社事情にホロリ。前半と後半で非常に対照的な内容です。

前半の尚美ちゃんのお見合いエピソードは孝太郎君の狼狽がやっぱりおかしかったです。尚美ちゃんの前ではヨイショがいかない孝太郎君だけに、いろんなことが空回りしちゃって。でも、尚美がいないことには孝太郎のヨイショが上手くいかないなんていうところは、二人が一緒にいてこそなんだなぁ、って思わせる展開は好きでした。孝太郎を前にしての尚美ちゃんの「素敵な男探し」のシーンも好きだし。

そして、問題は、後半の展開。徳川さん、本当に辞めちゃうんだねぇ。今回のドラマは、コメディゆえに、信じられないぐらいのハッピーな展開になると信じて見ているので、本当に会社を辞めちゃうとは思わなかったなぁ。孝太郎の機転でなんとかなるものだと思ってたのよ(今回も、孝太郎のヨイショは何の役にもたたないんだよねぇ(涙))。
徳川さんが出て行くときの孝太郎君の子供のような泣き顔・・・正直、見たくなかったよ。あんな孝太郎君の表情を見ちゃったら、こっちは引きずっちゃうんだよねぇ。孝太郎君は笑顔が一番なのにさ。しかも、ナレーションでは徳川さんが最後は「最大の敵」になるみたいだし、ああ、一体、どーなるんでしょ、このドラマ。
ヨイショを武器に戦うヒーローを、今後、期待しています。

(02.06.02)


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