[イントロ 〜 孝太郎君の結婚式!]
とある協会・・・美男&美女のカップルが、牧師を前に、結婚式を挙げようとしている。
ナレーション『冠婚葬祭、それはサラリーマンにとって、ただの儀式ではない。
自らの運命を決する試練の場であり、昇進につながるビックビジ
ネスの舞台でもある。桜井孝太郎も正に今、その重大局面に立た
されていた』
牧師 「・・・孝太郎を、夫、とし、命の限り、愛し続けることを誓いますか?」
久美 「誓います」
牧師 「あなたは健やかなる時も、病める時も、ここにいる久美を妻とし、その
命の限り、愛し続けることを誓いますか?」
孝太郎「誓います」
というわけで、本日の孝太郎君のコスプレ第一弾は花婿さんです(^^;)。でも、普通、ドラマでも何でも、花嫁の方が話題になるものなのに、花婿さんの姿に注目してしまうのはファンの悲しい性でしょうか?(苦笑)。でも、先週の予告にも登場していたぐらいだし、本日のウリの1つであることは確かだよね、たぶん(^^;)。
そして、教会後方の扉が静かに開き、一人の初老の男性 広川が入ってくる;
広川 「おっ、桜井君」
孝太郎「あっ」
広川 「いやー、申し訳ないな、結婚式のリハーサルまで就き合わせてしまって」
孝太郎「いえいえ、社長、このような大役を頂き、光栄に存じております」
広川 「肝心の花婿の浅田孝太郎がね、残念ながら、式の前日まで帰って来られ
ないものだから…」
孝太郎「確か、御社のロンドン支店の店長をされているとか?」
広川 「うん」
孝太郎「いや〜、それにしても素晴らしい花婿さんですね〜」
と、見知らぬ花婿さんにもヨイショする孝太郎君。
広川 「(娘に)どうだ、久美、桜井君に代役をやってもらってよかっただろう?」
孝太郎「身長が全然違うんだもん。あれじゃぁ、練習にならないわよ」
と、なぜか怒って立ち去ってしまう花嫁さん。何が不満なんだ?代役とはいえ、孝太郎君が花婿さん役だなんて、ぜ、贅沢すぎるぞ〜〜〜〜〜〜〜〜!!(←既にドラマの感想ではなくなっている)
広川 「全く、しようの無いやつだな…」
孝太郎「きっと背の高いがっちりとした男性なんでしょうねぇ」
広川 「それが…意外と小さい男でね。でもなかなか優秀な実に好青年なんだ…。
よく、うちの娘と結婚してくれる気になった(思わず涙)」
孝太郎「何を仰います!!広川社長の娘さんと結婚できるなんて、幸せな男です
よ〜」
広川 「また、君、調子のいい事を言って」
孝太郎「いやいや、できることなら、私が代わりたいぐらいです」
広川 「そうか」
孝太郎「はい」
広川 「大いに結構、その調子だ。その調子で披露宴の司会もよろしく頼んだぞ!」
孝太郎「はい!私、桜井孝太郎にお任せ下さい」
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 冠婚葬祭費用]
いつものオフィスの光景・・・のハズ。
真紀子「桜井!ちょっと、こっちいらっしゃい」
孝太郎「はい」
真紀子「一体、これは何なのかしら?」
と、一枚の領収書を示す真紀子さん。
孝太郎「あの…、いや、実はですね、今度の日曜日、日東商事の社長の娘さんの
結婚式なんですよ。それでうちからお花と、結婚祝いを・・・」
真紀子「冠婚葬祭に関する費用は原則として認めない、ってこの間の会議で通達
を出したはずです」
孝太郎「あ、いや、あの。しかしですね、冠婚葬祭にお金が掛かるのは我々営業
マンとしては仕方ない・・・」
真紀子「ある調査によると、冠婚葬祭に掛けるお金を半分に減らしても、売上げ
にはほとんど影響がなかったそうです。これは認められません!」
そう断言して、オフィスを出て行く真紀子。残された孝太郎君は;
孝太郎「へぇ・・・あまりじゃぁ、関係ない。。。」
と、素直に感心してる(^^;)。もしかして、孝太郎君って騙されやすい?
孝太郎「いやいや、部長!ちょっと待って下さいよ!」
と改めて、部長を廊下まで追いかけていく;
孝太郎「部長、部長!聞きましたよ。何やらアメリカ留学中に、『ミス・ハーバ
ード』の最終選考にまで選ばれたそうですねぇ〜」
真紀子「?!ん?」(←ちょっと反応)
孝太郎「いや先日、当時、御学友だったという方に、これまたお会いしましてね」
真紀子「そんな話を仕入れている暇があったら、仕事を取ってこい、仕事を!」
と、怒りを顕にして真紀子さん外出。
孝太郎「はぁ・・・これもダメか・・・」
真紀子をヨイショで落とすには、まだまだ研究が必要なようで・・・(^^;)。
一方、自分のデスクで閑な毎日を送っている徳川部長代理。鉛筆なんかを1本1本削って、それを机の上に綺麗に並べたりなんぞしています。そんなときに、電話が鳴りまして;
尚美 「部長代理、1番にお電話です・・・部長代理?」
徳川 「俺???」
尚美 「はい」
徳川 「俺にか?」(余程、久々の電話なんだね…)
尚美 「ええ」
徳川 「あははははは、久しぶりだな〜。あっ、誰、うちのやつから?」
尚美 「業務の武田部長代理からです」
やや面倒な感じで電話にでる徳川さん;
徳川 「一体何なんだ?・・・本当か?!」
[某病院 〜 元社長 危篤]
電話での連絡を受けて、徳川が病院に駆けつけると、他の部長"代理"の面々が病院の廊下の椅子に座って待っている。徳川が話を聞くと前社長(今の肩書きは何なのでせう?)が、グローバルライフの面子と会議中に倒れたのだという。そこに、集中治療室では治療を続けていた医師が部屋を出てくる;
徳川 「どうなんですか?」
医師 「心臓の機能が低下してますね。かなり危ない状態です」
徳川 「あぶないって」
医師 「とりあえず、今日の夜が峠です」
[孝太郎のアパート 〜 結婚式は教会で]
夜。家に帰ってきたばかりという感じの服装の孝太郎君。孝太郎が部屋で何か資料を眺めているところに、尚美ちゃんが夕食をお盆に載せて入ってくる;
尚美 「はいはい〜。今日のメニューは、豆腐のハンバーグとかぼちゃの肉巻き
だからね〜」
と、折角、尚美ちゃんが料理を作ってくれても、資料の方に視線を向けたままの孝太郎君。会話はこのまま続き・・・
孝太郎「う〜ん」
尚美 「ん?何やってるの?…何これ?式場のパンフじゃな〜い。何でこんなの
見てんの?」
孝太郎「ん?」
尚美 「あっ、まさか・・・」
孝太郎「うん・・・いや、結婚式をね〜」
尚美 「やーだー。そんな急に結婚式だなんて〜。
ほらその前に両親にも会ってもらわないと、ね。結納とかもあるでしょ?」
孝太郎「ああ、いや、あのね、キリスト教形式だから、結納は無いんだよね」
尚美 「あっ、孝太郎、クリスチャンだったの?」
孝太郎「えっ?」
尚美 「まぁ、いいか〜。私も教会がいいなー、って思ってたからぁ〜」
孝太郎「ちょっと、何言ってるの?」
尚美 「ほら、だってこれ。(パンフを見せて)ハイ」
孝太郎「ああ、これね。披露宴の司会頼まれちゃってさ」
尚美 「司会?」
孝太郎「取引先の社長さんの娘なんだけど・・・いや、去年そこの会社の忘年会
で司会やったら、これがまた、えらい気に入られちゃってさ」
尚美 「あっ、そ(--;)」
といって、孝太郎の見ているパンフを奪う尚美ちゃん。完全に怒ってるよね?(^^;)
孝太郎「ああ、いやでも、参ったなぁ。部長がさ、経費で認めてくれないからさ、
持ち出しになりそうなんだよねぇ」
尚美 「断っちゃえば?」
孝太郎「いや、そういう訳にはいかないよ。だって、契約がかかってるんだよ?」
尚美 「へぇー、孝太郎でも仕事のこと気にするんだぁ〜」(←皮肉?(^^;))
孝太郎「そりゃそうでしょ。あ、これ、美味そうだねぇ。いただきま〜す」
尚美 「・・・。いただきます」
と、なんとも気まずい雰囲気の中(いや、でも、孝太郎は気づいていないんだから、気まずくは無いのか(苦笑))、食事を進めようとしたとき、電話が鳴る;
孝太郎「誰、こんな時間に?(電話に出る)ハイ、桜井です。・・・ああ、徳川
部長代理。どうしたんですか、こんな時間に?・・・今からですか?
はい、わかりました。じゃぁあの…大至急向かいます。はい」
尚美 「何?」
孝太郎「いや、大至急会社に来い、って」
尚美 「今から?」
孝太郎「うん」
尚美 「ちょっと、ご飯は?せっかく、作ったのに」
孝太郎「ごめんごめん」
尚美 「いいじゃない、そんなの断れば。会社が終わってまでね、上司に付合う
ことなんてないじゃない!」
孝太郎「まぁ、まぁ、まぁそう言うなって。な、遅くなったら、先に寝てていい
から。ごめん」
尚美 「ちょっと、そうやってね、調子よく出て行くからね、いつも呼び出され
るのよ!ちょっと・・・あっ」
と、尚美ちゃんのありがた〜い言葉に耳を貸さずに、部屋を出て行く孝太郎君でした。尚美ちゃん、相変わらず苦労するよねぇ・・・(^^;)
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 正義の味方]
そして、夜、遅くのオフィス。孝太郎は徳川と一緒に、誰もいない真っ暗な状態で(電気ぐらい付けろって!)、ゴソゴソと埃のかぶったダンボールから、書類を引っ張り出しています。
孝太郎「うわ、すごいですね、これ。で、何を始めるんですか?」
徳川 「・・・社葬の準備だ」
孝太郎「社葬?誰か亡くなったんですか?」
徳川 「明智社長が、心臓発作で・・・」
孝太郎「明智社長が?!」
徳川 「しーーーーーーー。まだ、内緒だぞ。外に漏れれば、大騒ぎになるから」
孝太郎「はい」
徳川 「とりあえず、桜井は当日の式次第を考えろ」
孝太郎「わかりました」
と、孝太郎が作業をしようとしたとき、突然、オフィスの灯りがつく。同時に、オフィスに殴りこんでくる武田&上杉&斉藤&毛利の旧あけぼの保険の重役方。
上杉 「徳川お前抜けがけは汚いぞ!」
武田 「勝手に資料を持ち出しやがって!」
徳川 「何を言ってる、葬儀委員長が昔の葬儀の資料を見て、何が悪いんだ」
斉藤 「お前が争議委員長だなんて、誰が決めたんだ」
徳川 「明智社長の葬儀なんだ。俺に決まってる」
毛利 「こういうのは元々、総務の仕事だろ!」(だと思うよ…)
徳川 「俺と社長の仲を知ってるだろ!」
武田 「そういう問題じゃないよ!!葬儀委員長を誰がやるかは、今後の人事に
大きく影響するんだ!」
徳川 「社長の葬儀を出世に利用するつもりか!」
毛利 「お前こそ利用しているだろ!」
徳川 「何を言ってるんだ、馬鹿やろう」
と、5人のオヤジたちは揉み合いの喧嘩になりそうになりまして、ここは主人公ゆえに(?)、間に割って入る孝太郎君;
孝太郎「まぁ、まぁ、まぁ、落ち着いて。落ち着いて、あの・・・興奮しないで
下さい、ね」
斉藤 「桜井君、君は一体、どっちの味方だね?」
孝太郎「え゛っ」
斉藤 「あちこち、いい顔しやがって」
毛利 「そうだ!この際、はっきり聞こうじゃないか!!一体、誰の味方につく
つもりだ?誰の味方だ」
孝太郎「そ、その…、だ、だ、だ、誰の味方だと聞かれましても。まぁ、敢えて
言うならば正義の味方」
(さすが、ヒーローの言うことは違うねぇ!!!)
一同 「・・・」
孝太郎「あっ、すみません。(咳払い)あの…明智社長はところで、いつどこで
お亡くなりになられたんですか?」
武田 「まだ、死んじゃいないよ」
孝太郎「えっ?じゃぁ、な、なぜ、葬儀の準備を?」
上杉 「こういうのは事前にやっておくもんなんだよ」
孝太郎「ああ・・・」(納得)
と、揉め事がひと段落ついたところに、電話が鳴る(何でここの電話が鳴る?)。
徳川 「あけぼの保険、第一営業部・・・・そうか・・・うん、わかった」
上杉 「どうした」
徳川 「社長の意識が戻った」
上杉 「え?」
やけにあっさりと意識が回復したもんだ(^^;)。
[某病院の病室 〜 明智と徳川の師弟関係]
誰もいない明智の病室に一人で見舞いにやってくる徳川;
徳川 「オヤジさん・・・」
明智 「ああ、徳川か・・・」
徳川 「はい」
明智 「わしゃ・・・まだ死んじゃいないぞ」
徳川 「はい?」
明智 「喪章がついとる・・・・」
・・・(洒落にならんぞ〜)。
明智 「葬儀委員長はお前になったのか?」
徳川 「まだ、これからです」
明智 「金の掛かる事はするなよ。わしゃ、会社潰してお前らを苦しめた。済ま
ないと思ってる」
徳川 「何言ってるんですか!オヤジさん(涙)」
[居酒屋 松ちゃん 〜 孝太郎君のお付き合い]
そして、残る部長代理の4人といえば、居酒屋 松ちゃんにそのままやってきてまして、孝太郎もそれに付き合って、一緒にいるようです。相変わらず最後まで面倒見がいいのねぇ、孝太郎君…。
その、4人の元部長さんたちは、徳川さんのことを話ています;
毛利 「あいつは入社したときから明智社長にずーっと可愛がられてきたからな」
斉藤 「どうする?あいつに葬儀委員長、やらせるか?」
上杉 「仕方ないだろう」
武田 「みんな納得するだろう」
孝太郎「あ、あの・・・・あの、まだお亡くなりになられてません、よね?」
毛利 「えっ、ああ、そうだったな、こりゃいかん」
一同 「あははははは」
孝太郎「じゃぁ、あの、今夜はね、パーっといきましょう。パーっとね。部長、
どうぞ。パーっといきますよ!」
そして、順番にビールを注いでいく孝太郎。
[孝太郎のアパート 〜 ・・・]
孝太郎が出て行って、一人ぼっちの尚美ちゃん。孝太郎もいまだ戻ってこず、夕食の料理を見ながら大きなため息をついています;
尚美 「これは明日の朝ご飯か・・・孝太郎、連絡1つ寄こさないんだから」
と、思ったときに、玄関のドアがガタガタなる音がする;
尚美 「(^o^)。孝太郎、お帰り!」
と、玄関の扉を開けると、べろべろに酔いつぶれた孝太郎君が、いきなり尚美ちゃんに倒れ掛かってくる;
尚美 「ああ、ちょっと、大丈夫?孝太郎?何なに、どうしたの、どうしたのよ」
孝太郎「だめだ〜。もうだめだ〜」
尚美 「お水持ってくるからね。孝太郎、お水・・・孝太郎?」
孝太郎はそのまま部屋に上がって、仰向けに倒れこんじゃって、おやすみモード。
尚美 「(笑)」
ソノママ、ナオミチャンガ、コウタロウノクチニ、ジブンノクチビルヲチカヅケヨウトシタトキニ・・・
孝太郎「!」
突然、孝太郎が目を開けまして;
尚美 「ん?なに?」
飛び起きた孝太郎君、そのまま台所の方に行って挙動不審になってまして;
孝太郎「う・・・気持ち悪い、気持ち悪い…」
尚美 「あ、孝太郎?」
孝太郎「トイレ、トイレ、トイレ…」
尚美 「大丈夫?トイレ?」
で、そのままトイレに駆け込みまして、以下、敢えて表現は省略させていただきます…(^^;)。今回のドラマ、永遠にラブシーンは見れそうに無いわね、これじゃぁ(涙)&(苦笑)。
[真紀子のマンション前 〜 津村の宣戦布告]
真紀子が自宅に帰ろうとすると、一人の男が立ちはだかる。
男 「ちょっと、こちらまで来て頂けますか?」
真紀子はそのまま強引に男に路上に停めた一台の車の所まで連れて行かれる;
津村 「よ!」
真紀子「あなただったの?」
車に乗り込んだ真紀子。ワイン片手にしている津村の隣に座っています;
真紀子「で、一体、何の御用なのかしら?言っておきますけど、あなたとヨリを
戻すつもりなんてありませんからね」
津村 「それならそれで、君に覚悟しておいて欲しいことがある。アメリカ本社
は、合併後、あけぼの保険の業績に大変、不満らしい。特に営業部門に
問題が多くあるということになる」
真紀子「私の責任だって言うの?」
津村 「そうだ。今までは君の事を私が色々とフォローしていたからね」
真紀子「あーら、それは知らなかったわ」
津村 「今後、業績が上がらなかったら、君にも責任を取ってもらう」
真紀子「もちろん、覚悟しているわ」
そのまま津村のワイングラスを払って車を降りる。立ち去る真紀子を見続ける津村。だからそれはストーカーだって・・・(^^;)
[広川社長のオフィス 〜 披露宴の出し物は?]
さて、数日後(?)、日東商事の社長室にやってくる孝太郎;
孝太郎「おはようございます、広川社長!」
広川 「おお、桜井君か。おはよう」
孝太郎「いよいよ明後日ですね、結婚式」
広川 「ああ」
孝太郎「今日はですね、当日の披露宴の式次第をお持ち致しました」
広川 「ああ、それはごくろうさん」
そういいながら、孝太郎から渡された結婚式の式次第を見ながら;
広川 「ああ。これ、君のアイデアね。ココに入れてくれたの?ああ、いいね。
いいよ〜。なかなか、よくできてるじゃない」
孝太郎「ありがとうございます」
広川 「ところでね」
孝太郎「?」
広川 「君にもう一つだけ頼みたいことがあるんだよ」
孝太郎「はい?」
広川 「当日、私もね、できることなら、なんていうかその・・・ちょっとした
芸を披露したいと思ってね」
孝太郎「それは素晴らしいアイデアですね」
広川 「よし!。ちょちょ、ま、ま、これを見てくれ」
と言って、広川がクロゼットから取り出したのは、ラメでキラキラ光ったブルーのスーツ。
広川 「私もここ最近ね、密かにマジック教室を通っていてね」
孝太郎「なるほど、マジックですか!いや〜、素晴らしい!!!」
広川 「賛成してくれるか?」
孝太郎「はい」(あっ、言っちゃった…)
広川 「いや、よかったよかった。君にそう言ってもらえる…。あ、それでね、
君に是非、その助手方、アシスタントを御願いしたいんだよぉ」
孝太郎「はい?僕、ですか?」
で、広川が次に引っ張り出してきたのは、先ほどのブルーのスーツとお揃いのきらきら光ったピンクのスーツ。これはもしかして…
広川 「君の衣装、ほら、ちゃんと用意してあるんだ」
と、その衣装はやっぱり孝太郎が着るつもりで作られたものらしい。孝太郎にその衣装を合わせてみる広川社長(^^;)。なされるがままの孝太郎君(ふ、不幸だ…)
広川 「ちょっと、サイズの方はね、サイズはもうこの間、仕事のときに教えて
もらったから、ピッタリだと思うんだよ」
孝太郎「ええ・・・」
広川 「ちょっとあそこ行ってごらん」
と、姿見の前に孝太郎を連れて行く広川さん。でも、自分の姿を見た孝太郎は、社長のテンションとは正反対に、かなりの抵抗を感じるわけで・・・
孝太郎「(--;)」
広川 「ああ、どうだ、すごいだろう!これなら君にも絶対に似合うハズだ」
孝太郎「あははは、ありがとうございます(^^;)」
なんてお愛想しているときに、救いの携帯電話が鳴りまして;
孝太郎「あ、ちょっとすみません。はい、桜井です」
その電話の相手はオフィスにいる尚美ちゃん;
孝太郎「ああ、尚美、いまちょっと仕事中だからあと」
尚美 『さっき電話があって、明智社長・・・』
孝太郎「本当に?!」
再び明智の容体は急変し、本当に亡くなってしまったのだった。
[某病院 〜 ]
孝太郎が徳川の下に駆けつける。他の旧部長方も一緒である。
孝太郎「遅くなりました」
徳川 「桜井、遅い!今、奥さんと話は済ませてきた。すぐ社に戻って葬儀実行
委員会を設置する。桜井、お前は若いスタッフを集めろ!葬儀に慣れて
いるヤツじゃないとだめだぞ!」
孝太郎「あ、はい」
こういうときになると張り切る人っているけど、徳川さんって、まさしくその典型って感じ。この段階ではね。
[あけぼの保険ビル 第一営業部 オフィス 〜 ダブルブッキング]
そのままオフィスに戻ってくる、旧部長たちと孝太郎。いつの間にか、孝太郎君、中心人物になってるねぇ。孝太郎って、会社全体にとっても便利屋さんなのね。
尚美 「孝太郎!」
孝太郎「あっ、尚美、各部署の若手社員に連絡してもらえないかな?葬儀の役割
を決めたいから」
尚美 「ああ、わかった」
徳川 「桜井」
孝太郎「はい」
徳川 「菩提寺には俺が連絡する。参列者の人数を把握したいから、関係者のリ
ストを作れ」
孝太郎「もう、リストならあります。親戚、来賓、取引先、一般、それから社内
関係と項目別になっています。確認して下さい」
徳川 「よし、当日の司会進行はお前に任せたからな!」
孝太郎「あ、はい」
徳川 「それから何人か社長に自宅にいってくれ!」
孝太郎「あ、じゃぁ、井原さんと吉村さん、御願いします」
井原 「あ、はい」
吉村 「どこいくんですか?」
井原 「いいから来い」
白石 「桜井、何かやることあるか?」
孝太郎「じゃぁ、あ、由紀江さんと葬儀社に打ち合わせに行ってもらえないかな?」
白石 「分かった。いくぞ」
由紀江「はい」
そうして、井原,吉村、白石,由紀江たちは外出する。そして、ある電話を受け取った尚美は;
尚美 「孝太郎、社葬の正式な日時は決まってるの?」
徳川 「今度の日曜だ!」
尚美 「あ、はい」
孝太郎「えっ、明日じゃないんですか?」
徳川 「明日は友引だ!できるわけないだろう!」
孝太郎「あっ・・・」
徳川 「基本だぞ、基本!」
孝太郎「はい。・・・。」
見事にダブルブッキング・・・さすが、ドラマだわ・・・(苦笑)。
しばらくして、孝太郎はこっそり会議室に隠れて広川社長のもとに電話をかけます。ちなみに、広川社長は社長室でマジックの練習の真っ最中(笑)(あっ、月晶島だ・・・)
広川 『はい、もしもし。おお、桜井君か、どうした?』
孝太郎「あの・・・実は、あの。。。結婚式の件なんですけど・・・」
広川 『それなら丁度よかった。さっき言い忘れたんだけど、当日ね、当日、君、
少し早めに入ってくれないかな?』
孝太郎「あの、社長、あの、とても言いづらいことなんですけども・・・」
広川 『分かってる分かってるって!君、契約の件だろう・・・?まぁ、式には
君のライバル会社の連中も大勢来ていると思うがね、ちゃんと君の所と
契約するよ!』
孝太郎「ああ、それは、、、ありがとうございます・・・」
広川 『じゃぁ、おおいに楽しみにしているぞー!チャオ〜』
孝太郎「あ、あの・・・」
はっきりしない男だねぇ…、ってそういう問題じゃないか。ますますややこしい話になってくねぇ。どうする、孝太郎?!
[居酒屋 松ちゃん 〜 フォローして]
さてさて、そのまま夜になり、今夜も松ちゃんに来ている孝太郎と尚美ちゃん。おいおい、お葬式の準備は?!お通夜は?!!!
尚美 「そんなの無理よ!ねぇ、結婚式の方、断れないの?」
孝太郎「断れる訳ないじゃん。だって向こうの社長、すごい楽しみにしてんのよ」
(それが理由になるとも思えないけど…)
尚美 「でも、うちの会社の社長のお葬式なのよ!どっちが大事だと思ってんの!」
孝太郎「そりゃ、結婚式でしょう?」(うん、そこは同意だな)
尚美 「えっ?」
孝太郎「いや、まぁ、社長も大事だけど、社長はほら、家族みたいなもんだろ?
つまり身内だよ。身内とお客さんを比べたら…そりゃぁお客さんを大事
にしろって、うん、うちの親父が生きていたら、きっとそうやって言う
に決まってるんだな。あ、ねぇ、ねぇ。ねぇ、これ見てくれる、これ、
これ、これ・・・」
尚美 「ん?」
と、一枚の紙切れを持ち出す孝太郎。それは式場の地図だった。
孝太郎「ココが結婚式場。で、ここがね、ここが社長の葬儀が行われるお寺なの」
尚美 「うん」
孝太郎「何とこの距離が、500mしか離れてないのよ!」
尚美 「だから?」
孝太郎「いやだから、ね、これ、行ったり来たりすれば、何とか両方出ることが
出来るんじゃないかな、と思ってさ」
尚美 「えーー、そんなの無理!」
孝太郎「無理じゃないって。例えば、100mを10秒で走ったとするよ」
松永 「おい、10秒は無理だよ。だって、100mを10秒で走れたら、オリンピック
出られちゃうよ」
尚美 「そうだよ」
孝太郎「あ、じゃ、じゃぁ、15秒」
尚美 「せいぜい頑張って20秒?」
孝太郎「20秒ね。20秒として・・・100秒でしょ? エレベータとか階段とか入れ
ても、まぁせいぜい5分あれば行けるはずだから、何とかなるっしょ!」
(それって、皮算余って言いません?(^^;))
尚美 「でも、孝太郎がいないときにもし何かあったらどうすんのよ」
孝太郎「その時は、尚美がフォローしてくれるだろ?」
尚美 「ああ、私がね・・・私が?」
孝太郎「(尚美ちゃんの前で手を合わせて)
御願い! ね? 一生のお願い。ね、ね、本当に、本当に。一生の御願い
だから、ね。御願い、御願い、御願い、御願い、御願い、御願い・・・
フォローして、ね?」
こんな可愛く御願いされたら、もちろん、尚美ちゃんだって断れないよねぇ(^^;)。
[葬儀会場 〜 まずは葬儀会場の準備]
そして、日曜日。葬儀会場となる某お寺で、式場の準備に追われるあけぼの保険の社員たち。孝太郎も、会場の中で徳川葬儀委員長と葬儀の手順を調整中;
徳川 「桜井、お焼香の順位表は出来たか?」
孝太郎「はい、こちらです。ただ、先ほど、丸東サービスの佐伯社長から連絡が
ございまして、遅れるかもしれないとのことなので、順番を変えた方が
いいかと思いますが…」
徳川 「ん」
孝太郎「それから弔辞なんですが、御願いしていた池内議員より、お断りの連絡
がございまして…」
徳川 「何だと?」
孝太郎「その代わり、日程建設の飯田専務が自分が弔辞を読みたいと言ってきて
いますが…」
徳川 「だめだだめだ。そんなもんにやらせたら、5時間あっても終わらんぞ。
他に候補は?」
孝太郎「ああ、今、東都大学の広瀬教授に御願いしているとこです」
徳川 「ああ、あの人ならいいだろう」
そこに、白石が携帯片手にやってくる;
白石 「桜井、午後から雨が降るかもしれないぞ」
孝太郎「ええ?」
徳川 「何だ、それ。要するに降るか降らないか、分からないってことじゃない
か!?」
白石 「ああ・・・」
徳川 「貸せ。あけぼの保険の徳川だが、そんないい加減なことじゃ困るんだよ!
こっちは大事な葬儀なんだから。おい、聞いてるのか?」
と、電話の相手に文句を言う徳川さんですが・・・;
白石 「部長代理、これ、webサイトですよ、web」
徳川 「・・・。とにかく、何とかしろ!」
白石 「何とか、ったってさ・・・」
孝太郎「ああ、じゃぁ、白石君、傘立てと、ビニール傘用意しよう。ああ、あと
テントも二つぐらい増やした方がいいかもね」
白石 「ああ、そうだな、話してみる」
と、的確に指示を出す孝太郎。こういう特技もあったのねぇ…。もっとそういう才覚を仕事に生かせれば、いい営業マンになれただろうに。あっ、でも、日本経済を救う男なのだから、これはこれでいいのか?(笑)。
さて、ここで、そろそろもう一つの会場が気になる孝太郎君。チラチラと腕時計を見始めます。徳川が写真の位置や生花の順番などの指示を徳川が出している隙に、孝太郎は尚美を会場の裏口近傍まで引っ張っていく;
孝太郎「ちょっと向こう見てくるから、何か合ったら携帯に電話して」
尚美 「ええ、もう言っちゃうの?」
孝太郎「大丈夫、すぐに戻ってくるから」
尚美 「ちょっと、ちょっとちょっと!!」
と、尚美ちゃんに快諾(?)してもらい、孝太郎は会場を脱出しようとする。裏口の扉を開き、こっそり誰にも見つからないように様子を伺い、そして外に出て、塀を軽やかに乗り越えていく。いや〜、このシーン、やっぱりツボだったりして…。正直、冷や冷やしたけど、さすがSMAPだねぇ、アイドルだねぇ。塀を飛び越える姿に惚れ惚れしちゃいましたわ。できるんだ、そういうことも(←って、とことん吾郎君のこと、信用してないよねぇ、私)。
[路上 〜 チェンジ!]
100m 20秒の速度で走っているハズの孝太郎君。走りながら、ネクタイを黒から白に取り換えてます。で、これがなぜか雨の中・・・天候変わってるやん!^^;)。雨降っても収録はしちゃったのねぇ(苦笑)。
[結婚式場 〜 リハーサル]
結婚式場に到着し、広川社長に挨拶をする孝太郎。しかし、広川は孝太郎の到着を待ちわびていたのだった。なぜならそれには先日の電話の通り、理由がありまして;
孝太郎「社長」
広川 「ああ、桜井君、君、遅いよ・・・」
孝太郎「あの・・・実は・・・」
広川 「まぁ、まぁ、まぁ、いいから。始めよう!」
孝太郎「始める、って?」
広川 「電話で言っておいただろう、練習だよ、練習、さぁ、いこう」
孝太郎「え、練習?」
要領を得ないまま、孝太郎君は広川社長に連れられて親族控え室。そこには、マジックの小道具の数々が置かれていた;
広川 「ここが、まぁ、会場の入り口としておこうか?」
孝太郎「はい」
広川 「いいか、ついてくるんだよ」
と、とにかく、マジックのリハーサルを始めさせられる孝太郎。でも、広川が準備したテーブルが自動的に広がっただけで;
孝太郎「おお、おお、うわ、素晴らしいですね、これ」
なんて驚いて、果たして本当にこれがリハーサルになっているんだかどうだか・・・。
広川 「そんなことはどうだっていいんだ。『それでは皆様、大変長らくお待た
せを致しました』。私が喋っている時は、君、後ろに下がっていなさい、
助手なんだから」
孝太郎「ああ、はい」(^^;)
広川 「『えー、では、只今より私のマジックショーでお楽しみ頂きたいと思い
ます』。音楽スタート。…音楽スタート。ほら、ラジカセがあるだろ、
スイッチ入れて」
孝太郎「ああ、あ、はい」
広川 「音楽と共に、そのステッキを私に軽やかに、ポーンと投げてください。
軽く軽く軽く」
孝太郎「ポーンと」
ポーンと孝太郎が投げると、ステッキに仕込んでおいたネタ(花)がステッキから飛び出しちゃいまして;
孝太郎「ああ、ごめんなさい」
広川 「何をやってるんだ、君は。助手なんだから。まぁ、まぁ、いい、あった
としよう。あったとして、次はそこにあるシルクハットを持ってきて、
気をつけて。『えー、それでは、みなさま只今より…』」
と、孝太郎がシルクハットを広川に渡そうとすると、今度は躓いてシルクハットがぺっちゃんこ。
広川 「ポッポ、ポッポ。ポッポが死んでしまう!鳩が入っているんだよ。君、
鳩なんだよ・・・」
孝太郎「あらあらあら」
シルクハットの中から孝太郎が鳩を取り出すと、その鳩はピクリとも動かない;
広川 「かわいそうに・・・君、圧死だよ」
孝太郎「とんとんとん(鳩を叩く孝太郎)」
広川 「駄目だって。そんな強く叩くな」
孝太郎「ああ、生き返りました」
と、鳩は生き返ったのはいいけれど、今度は部屋中を飛び回り、窓から逃げていってしまう。まぁ、次から次へと(都合よく)ハプニングが集中するヤツだ(^^;)。
広川 「ああ、ああ・・・・」
孝太郎「ああ・・・行っちゃった」
広川 「どうしてくれるんだね、君。これじゃぁ、台無しじゃないか」
孝太郎「申し訳ありません」
広川 「何が何でも、捕まえてきなさーい」
孝太郎「はい」
って、そんな安請け合いして大丈夫?
[葬儀会場 〜 孝太郎と尚美のコンビネーション]
一方の葬儀会場では、孝太郎の居ない状態をフォローする尚美ちゃんはおどおど。
徳川 「ああ、尚美ちゃん、桜井はどうした?」
尚美 「ああ、あ、今ちょっとトイレに・・・何か?」
徳川 「坊さんがまだ来てないんだよ」
尚美 「坊さん?」
徳川 「社長の生まれ故郷から来ることになっているんだけど…。ああ、迎えに
行ってくれたのかな?」
尚美 「ああ、すぐに連絡とってみます」
で、徳川部長代理が立ち去ってから、こっそり尚美が孝太郎に電話をかけると・・・その頃、孝太郎は、公園で鳩ポッポを捕まえようとしていたのねん(^^;)
孝太郎「ああ、そのままでいてねぇ。いい子だからねぇ」
と言いながら、静かに公園に集まっている鳩に近づいていく孝太郎。そこに尚美ちゃんからの電話が入ります;
孝太郎『はい、もしもし』
尚美 「孝太郎?今どこ?」
孝太郎『ああ、今ね・・・』
尚美 「ちょっと、お坊さんが来てないって」
孝太郎『お坊さん?』
と、同時に、鳩が一斉に飛び立ってしまう。鳩の捕獲失敗っす;
孝太郎『ああ、ちょとちょっと(涙)。
そうだ、そうだ。いやさ、10時に駅に迎えに行く予定だったんだよね。
誰か、代わりに行ってくれないかな?』
尚美 「誰かって、そんな!!!」
孝太郎『そんな、って頼むよ。だってさ、こっちだって色々と大変なわけだし。
あっ、(鳩が)いたいたいたいた、いたいたいた・・・』
と、そのまま孝太郎は電話をフェイドアウト・・・。困った尚美ちゃん、とりあえず会場の中に戻っていくと、丁度、受付の準備が終わった由紀江がやってくる;
由紀江「尚美、受付の方、準備が終わったけど、こっちどう?」
尚美 「由紀江さんちょうどよかった…。駅にお坊さんが来てるんです。迎えに
行ってもらえませんか?」
由紀江「お坊さん?」
尚美 「本当は孝太郎が行く予定だったんですけど、実はね・・・(耳打ち)」
由紀江「ええ!(@o@)。そんなことになってたの?」
尚美 「誰にも言わないで下さいね」
由紀江「しようがないわね。私、迎えに行ってくるから」
尚美 「御願いします」
一方の孝太郎君、塀を乗り越え、再び葬儀会場であるお寺に到着。息を切らせて葬儀会場内に入ってきて、尚美に状況を尋ねます;
孝太郎「お坊さんの件、どうなった?」
尚美 「孝太郎。由紀江さんに行ってもらった。・・・ちょっとネクタイ!」
孝太郎「(自分のネクタイを見て)(@o@)!!! 白いじゃん!」
徳川 「おい、桜井!」
孝太郎「あっ」
とっさに、尚美ちゃんと背中合わせになって、尚美に隠れる格好でネクタイを白から黒に急いでしめなおす孝太郎君。
尚美 「ああ、ああ、ああ、お坊さんのけん、由紀江さんに迎えにいってもらい
ました」
徳川 「そうか」
尚美 「はい」
徳川 「それから、弔電を読む順番なんだが…」
尚美 「ええ、ええ」
徳川 「やっぱり、コウヨウ電機の専務さんを先にした方がいいと思うんだ」
尚美 「ああ、ああ、ああ」
徳川 「何やってるんだ、お前?」
で、何とか黒のネクタイの準備が整いまして、徳川さんの方に正面を向きなおす孝太郎君。
孝太郎「はい。ああ、あの弔電を読む順番ですよね。あ、分かりました、早速、
検討して見たいと思います」
徳川 「おまえ・・・ネクタイが裏返しだぞ」
孝太郎「・・・」
早くもミスが続出してきました。それにしても、孝太郎と尚美ちゃん、息が合ってるねぇ(^^;)。
そうこうしている間に、そろそろ参列者が集まり始める時間になってきました。孝太郎は会場の入り口では、まだ到着しないお坊さんを待っています。
孝太郎「まだかな・・・」
そこにようやくタクシーが到着氏、お坊さんが降りてきます;
孝太郎「お待ちしておりました。どうぞこちらへ・・・」
そのまま席まで案内をします。いよいよ孝太郎君の司会本番。司会席に立ち、マイクに向かって、式を進めます;
孝太郎「えー、お待たせしました。それでは始めさせて頂きます。
本日はお日柄もよく・・・」
その一言に、場内、一斉に孝太郎君の方を向きます。焦る尚美ちゃんは;
尚美 「違う!」
と、孝太郎にだけ聞こえるように叫んで、脚を蹴飛ばす尚美ちゃん。フォローが行き届いてますねぇ(^^;)。
孝太郎「ああ!ああ、ああ、大変失礼を・・・大変失礼を致しました(汗)。
えー、本日は御多忙のところ、故明智建造の葬儀に御参列戴きまして、
誠にありがとうございます。私、本日の司会進行を勤めさせて頂きます」
そのころ、バージンロードを歩く花嫁さんの映像。もう一つの会場では、挙式が始まっている模様です。もう少ししたら披露宴が始まっちゃうよぉ〜。
[路上 〜 飛ぶネクタイ]
再び葬儀会場を抜け出し、ネクタイを黒から白に変えとりかえようとすると、風でネクタイが飛んでいき・・・
孝太郎「ああ、ああ、あっ、・・・あつ・・・」
と、手を伸ばせど、ネクタイは、何と道行くタクシーのアンテナに引っかかって、そのまま走り去っていくのでした。
[結婚式場 〜 披露宴スタート]
ハンカチをネクタイ替わりでタイを作る孝太郎君。結構、機転がきくのね。
教会での挙式も終わり、参列者に送られる新郎新婦。孝太郎もその参列者の中にこっそり紛れ込んでおります。それを広川が見つけ;
広川 「桜井君、一体どこにいたんだね、随分探したんだぞ」
孝太郎「・・・。いやあの、感動のあまり、トイレで泣いていました」
広川 「とにかくな。いよいよ我々の出番だ、本番だ」
孝太郎「はい」
広川 「よし、じゃぁ、いこう」
そのままシーンは披露宴会場に移ります。まさしく「乾杯」が終わったところ。もちろん、披露宴の司会は孝太郎君が行ってます;
孝太郎「いや〜、すばらしい!!実に素晴らしい乾杯の音頭でした。ありがとう
ございました。さてこれまたゴージャス、アンド、デリシャスなお食事
の準備も整ったようでございます。本日の料理は新郎がフランス留学中
に知り合った三ツ星レストランのシェフが、今日のためにわざわざ来日
し、腕を振るった、本場ヌーベル・キュイジーヌでございます。新郎の
御交友の広さを物語るエピソードでもございます。みなさま、是非、
ごゆっくりと、その神秘の味をお楽しみ下さいませ」
と、ゆっくりと食事を楽しんで頂いている間に、その場の様子を伺いながらゆっくり後ずさりし、そのまま式場を抜け出す孝太郎。
葬儀会場への道中、再びネクタイを引っ張り出して、黒のネクタイを締めなおしています。
[葬儀会場 〜 弔電]
再び葬儀会場。式次第を進める孝太郎;
孝太郎「次に弔電を読ませて頂きます。『この幸せの門出にあたり…』」
尚美 「何読んでんの!!(--;)」
孝太郎「あっ!!あ、ああ、大変失礼致しました」
と、これもお約束って感じで祝電と弔辞を読み間違え・・・
[結婚式場 〜 マジック]
続いての披露宴会場では、例のピンクのピカピカ衣装でマジックのアシスタントもこなし・・・
・・・というより、次々とミスをしてネタばらしをやっちゃったりして。
仕込んでおいた犬も鳴き出すし…(^^;)
[葬儀会場 〜 葬儀中止]
息を切らせてそのまま戻ってきた葬儀会場では;
孝太郎「ええ…それでは、故人を偲ぶVTRの上映です。あちらのテレビモニタ
をご覧くだ・・・(@o@)!」
と、手をモニタの方に差し出すと、マジック用の花が、その手の袖から飛び出すし…(サスガニ ココマデシチャッテ ダイジョウブ ナノデショウカ?)。尚美ちゃん、血相を変えて、孝太郎を舞台裏に引き戻します;
孝太郎「ああ、ブイ、VTR・・・」
(おいおい、そろそろ気づけよ(^^;))
で、尚美ちゃんに引っ張り込まれた会場裏の通路。
尚美 「何なのよ、その格好は!!!!」
孝太郎「ああ!!(@o@)」
ここでようやくマジックの衣装のまま来ちゃったことに気づく孝太郎君。おいおいおいおいおい!!!
孝太郎「いや、あ、向こうでさ、その…マジックをやらされてさ。尚美、悪いん
だけど、どっかで喪服手に入れてくれないかな?」
尚美 「喪服?」
孝太郎「うん」
尚美 「そんなの無理!」
孝太郎「いいから早く、ね」
尚美 「無理!!!」
そんな孝太郎がドタバタ&パニック状態の真っ最中に、津村のリムジンが葬儀会場に到着します。そしてそのままお経が詠まれる静粛な空気中、孝太郎を退け、司会席をジャックする;
津村 「この葬儀は直ちに中止しなさい!!」
津村は、葬儀の会場で、あけぼの保険に大きな損害を与えた明智を、社葬という形で送ることはできないと言い放ち、そのまま会場を後にしようとする。リムジンに乗り込む津村に、すがりつくように直訴する徳川;
徳川 「ちょっと待って下さい!津村社長、もう一度、考え直して頂けませんで
しょうか?」
津村 「何を考えているんだ。私に何の相談も無しに会社の金で葬儀を行った。
これは責任問題だぞ」
徳川 「それはそうなんですが、明智社長はあけぼの保険の功労者でもあります」
津村 「どこが功労者だ。彼はあけぼの保険を潰したんだよ。まだそれが分から
んのか?!」
徳川 「津村社長御願いします、社長!!!
すがりつく徳川を振りほどき、そのまま車を発進させる津村。倒れる徳川に近寄る孝太郎;
孝太郎「徳川部長・・・」
周りを見ると、参列者たちも会場を後にし始めている。そして葬儀社の人も会場の片づけをしはじめ・・・
孝太郎「済みません。あの、看板、元に戻してください」
業者 「ええ?」
孝太郎「葬儀を続けさせて下さい」
業者 「でもね・・・」
孝太郎「お金なら、僕が払いますから…」
と言って、自らの財布から出そうとしたお金は、福沢諭吉さん1人と夏目漱石さんが数人程度…(^^;)
業者 「そんなんじゃ、足りないよ」
孝太郎「いや、そこを何とか。何とか、御願いします」
と言って、土下座をするが、業者側は「そんなことされてもねぇ」と取り合わない。そこに登場したのは;
真紀子「いくらあればいいの?」
孝太郎「部長!」
真紀子「(小切手を取り出して)金額を言いなさい。欲しいだけ出すわ」
業者 「(@o@)」
真紀子「ボーとしてないで、さっさと看板を戻す!桜井、あんたも手伝う!」
孝太郎「はい!」
そして、葬儀は続行。順番に焼香を済ませ、帰ろうとする参列者の一人一人に声をかける徳川;
徳川 「ごたごたして申し訳ございませんでした。仏が寂しがりますので、もう
少し、仏と・・・仏と・・・明智のためにもう少し・・・」
そんな徳川の様子を、眺め続ける孝太郎。そこに、孝太郎の携帯が鳴る;
孝太郎「はい」
広川 『おい、君一体、どこにいるんだ!!いいか、これからクライマックスの
空中浮遊が始まるんだぞ!』
孝太郎「社長・・・申し訳ございません。急用で行けなくなりました」
広川 『何だと!君が居なきゃ、このワイヤ、誰が引くんだ!!』
孝太郎「この埋め合わせは、後日、必ずしますので、申し訳ございません」
広川 『そうか、今度の契約の件はどうなってもいいんだな!』
孝太郎「・・・(電話を切る)」
広川 『もしもし。おいコラ。桜井!!!』
葬儀の司会を続ける孝太郎;
孝太郎「次に葬儀委員長の徳川部長代理から挨拶があります」
徳川 「社長…、いえ、今日は昔のようにオヤジさんと呼ばせて下さい。オヤジ
さんと初めて話したときのことを今でも覚えています。私はまだ、新入
社員で、なかなか仕事を取れずに落ち込んでいました。そしたらオヤジ
さんに怒鳴られました。会社はお前みたいな若造に、今日、明日の稼ぎ
を期待しちゃいない。5年後、10年後に会社のためになる人間になれ。
そのときに力になってくれる人間関係を作れ!それが今のお前の仕事だ
って。それまでは俺たちがお前たちの給料を稼ぐからって…。私は目が
覚めました。そしてオヤジさんの教えを守ってやってきたつもりです。
でも、それを本当に実行できたのか、正直、自信がありません。あけぼ
の保険が潰れたのは、決してオヤジさんの責任じゃありません。オヤジ
さんに頼ってばかりいてた、私たちの責任です」
黙って話を聞いているあけぼの保険の旧経営陣の部長代理のおじ様方。
徳川 「しかし、ここに私たちよりも若くて優れた人材が沢山います。彼らと力
を合わせ、今こそ、あけぼの保険の再建に向けて、頑張るつもりです。
オヤジさん・・・見てて下さい・・・」
場内で拍手が起きる。
葬儀が終わり、葬儀業者も会場を後にしようとしています。
孝太郎「ありがとうございました」
業者 「いや、こちらこそ、ありがとうございました。失礼致します」
玄関口で見送った後、ふと横を見ると、真紀子がいた。
真紀子「桜井」
孝太郎「?・・・部長。今日は本当にどうもありがとうございました」
真紀子「何で私に相談しなかったの?」
孝太郎「えっ?」
真紀子「葬儀のことよ。部長の私を通さずに、勝手にやるから、ああいうことに
なるんでしょ?」
孝太郎「だって、冠婚葬祭に使うお金は無駄だって・・・」
真紀子「元社長の葬儀となれば話は別!」
孝太郎「部長・・・」
真紀子「私に仕切らせれば、もっと大きな、もっと盛大な葬儀をしてあげられた
のに。財界の有名人、たくさん集めて・・・。こういうときはね、香典
代わりにビッグな契約をとるチャンスなんだからね。よく覚えておきな
さい!」
そう言って真紀子は立ち去る。
孝太郎「・・・。お疲れ様でした」
[居酒屋 松ちゃん 〜 お葬式と結婚式]
式後、居酒屋「松ちゃん」で飲む尚美、白石,由紀江,そして尚美。
由紀江「何か寂しいお葬式だったねー」
白石 「そうだなぁ、あんなことになっちゃったしなぁ。まぁ、社長だった人の
葬儀にしちゃ、花輪の数も参列者の数も少なかったしなぁ」
由紀江「やっぱり倒産ともなると、あんなもんなのかなぁ」
白石 「まぁ、ゲンキンなもんだよ、世の中は」
と、そこに孝太郎が遅れて合流;
孝太郎「お待たせー」
尚美 「ああ、孝太郎」
由紀江「お疲れ」
孝太郎「いやー、それにしても、いいお葬式だったねぇ」
3人 「?!」
孝太郎「みんな、なかなか帰ろうとしなくてさ。ずっと社長の思い出話をしてい
て。やっぱ、こういうときに亡くなった人の人柄って出るもんだよね。
ね〜」
3人 「(^^;)」
尚美 「はい、お疲れ様ー(孝太郎にビールを注ぐ)」
孝太郎「ありがとう。ああ、いや、でもさ、僕も死んだときには、ああいういい
お葬式が出来たらいいなぁ、って思ったね」
白石 「その時はさ、俺が葬儀委員長をやってやるよ」
孝太郎「本当に!!!あ、それは嬉しいかもしれない」
尚美 「いや、そんな縁起でもない!」
孝太郎「えっ?」
尚美 「まず最初に結婚式でしょ?」
由紀江「そうだよねーーー」
尚美 「そ、そういう意味じゃない!」
白石 「じゃぁ、どういう意味だよ?」
尚美 「一般論として!」
由紀江「あっ、照れてる、照れてる、照れてる・・・」
尚美 「照れてないですって!」
白石 「この」
と、冷やかして孝太郎に向かってお手拭を投げる白石君。
孝太郎「あっ。ちょっと、白石君、何すんだよ!」
白石 「わかってんだろ、おまえ」
すると、今度は孝太郎が白石君にお手拭攻撃の逆襲をしたりして;
孝太郎「このやろう、このやろう」
由紀江「やめなよ!!」
で、最後はその由紀江に被害が及ぶのであった…。
[病院 〜 ハッピーエンド]
後日、花束を持って病院を訪れる孝太郎。病室の扉を開けようとすると、丁度、そこから広川が出てくる;
広川 「ああ、桜井君か・・・」
孝太郎「先日は大変失礼致しました。そして改めて御結婚おめでとうございます。
聞くところによると、御出産もなされたそうで」
そのまま赤ん坊のいる部屋の前までやってくる。ガラス張りの向こうに、広川の孫の赤ん坊が眠っている;
広川 「ん?ん、そうなんだ・・・。実はあの後、急に産気づいてしまって…」
孝太郎「うわー、可愛いですね〜」
広川 「・・・。ところで君、なぜ言わなかったんだ?」
孝太郎「はい?」
広川 「あの日、オタクの前社長の葬儀だったんだろう?」
孝太郎「ああ、はい」
広川 「まぁ、急なこととはいえ、言ってくれれば無理に君に司会なんか頼まな
かったのに…」
孝太郎「あっ、でも、無理してでもやりたかったんです。好きなんですよ、結婚
式もお葬式も。色んな揉め事や悩み事があっても、こう…その日だけは
お互いの気持ちを労わろうとするじゃないですか。そういうの、好きな
んですよね。・・・あっ、でも、かえって御迷惑をお掛けして、本当に
申し訳ございませんでした」
広川 「・・・。ああ、ところで、例の契約の件だがね・・・」
孝太郎「ああ、いや、もう、覚悟はできてますんで」
広川 「(笑)・・・君のところに決めさせてもらったよ。孫も産まれたことだし、
これは内祝いだ」
孝太郎「ああ・・・ありがとうございます」
広川 「ふふふふふ(笑)」
ナレーション『日本の高度成長を支えた一人の老人が死に、同じ日に、まだ何者
でもない、一人の子供が生まれた。
そして桜井孝太郎は笑っていた。きっとこの子供には明るい未来
が待っていると、そう信じて笑っていた』