[イントロ 〜 ヨイショの桜井孝太郎]
ライトを背に立つ、桜井孝太郎。
ナレーション『桜井孝太郎は中堅の保険会社に勤めるサラリーマンである。
入社以来8年、彼は上司のヨイショをし続けてきた。
盆暮れの贈物はもちろん、ゴルフの送り迎えから引越しの手伝い、
子守り、ペットの散歩、庭の手入れ・・・ありとあらゆる手段を
使って彼は上司のご機嫌をとった。もちろん、出世のためである』
映像は、盆暮れの贈物を持って上司の家を訪ねる孝太郎君の映像や、引越し手伝いということで、棚を抱えている孝太郎君、そして犬の散歩をしている孝太郎君がいっぱい。でも、そのどれもがスーツ姿なんだな(笑)。
そして、りんごの木にはしごをかける孝太郎。そのりんごの木には、部長,課長などの会社の重要ポストの肩書きが書かれている。
ナレーション『そして、彼は課長の座を手に入れることになった。
しかし、そのとき・・・』
孝太郎「あっ」
地面が揺れ、はしごから転げ落ちる孝太郎。
ナレーション『彼の会社は倒産した』
しかも、りんごの木が上から覆いかぶさってきて、そのうちの『課長』の肩書きの書かれたりんごが目の前に転がる。体にはりんごの木が被さりながらも、その『課長りんご』に必死に手を伸ばし、掴もうとする孝太郎君(きゃ、何だかこれも可愛いわ〜)
孝太郎「課長りんご、課長りんご。
課長りんご、課長りんごが無いと課長になれない(じたばた)
・・・あっ」
孝太郎の目の前で、その『課長りんご』が赤いハイヒールに踏み潰される。『課長りんご』を踏み潰したのは、部長の緒方真紀子だ〜。
真紀子「はははははは、あははははは・・・(高笑い)」
以上、冒頭のショートコントでした(またこういうお遊び映像はやって下さい(笑))
[あけぼの保険ビル 1Fロビー 〜 孝太郎の裏切り?]
孝太郎をロビーまで引きずってくる怒り心頭の白石君。
孝太郎「痛てててて。そんな、引っ張らないでよぉ。痛てててて、何よ」
そして、白石は孝太郎の体をロビーのソファに叩きつける。
孝太郎「何すんのよ?」
白石 「一体どういうつもりだ?」
孝太郎「どういうつもりって?」
白石 「何なんだよ、あの羊羹は?!」
孝太郎「あっ、あれはさ、緒方部長が良く行く店で売っている羊羹なんだけど、
これが噂には聞いてたんだけど、実に上手い! うん。いや、店でさ、
見本を食べさせてもらったんだけど、あの部長、流石だね。お目が高い
よ」(←相変わらずノー天気)
白石 「そんなことを聞いてんじゃない!」
孝太郎「シー。ちょ、そんな大声出さないでよ」
白石 「俺たちはあの部長に一切、協力しないってみんなで決めたんだ」
孝太郎「何で?」
白石 「『何で?』って。お前、今が一体どういう時か、分かってるんだろ?」
孝太郎「えっ?」(←本当に分かってない(笑))
白石 「グローバルライフから新しい部長が来て、俺たちをコントロールしよう
としてるんだ。これからこの職場がどうなるか、大事な時期なんだよ!」
孝太郎「うん。だから、新しい部長に気に入ってもらおうと思ってさ」
白石 「違う、違う、違う、違う、違う、違う!!!」(←切れてます(^^;))
由紀江「桜井君、私たちを裏切る気?」
孝太郎「裏切るなんて、そんな大げさな〜」
由紀江「あなたが誰にでもヨイショするやつだって知ってたけど、まさかあんな
ヤツにまでヨイショするとは思わなかったわよ」
白石 「もういいよ。こいつにはホトホト呆れた。相手にしても仕方ない。行く
ぞ!」
孝太郎「白石君、『行くぞ』ってどこへ行くのよ?オフィスに戻らないと…」
白石 「俺たちはあの女には協力しない。俺たちにつくかあの女につくか、もう
一度考えるんだな。いくぞ」
孝太郎「ねぇ、ちょっと。みんなも、オフィスに戻らないと!」
と、そんな孝太郎の言葉を白石たちが聞くはずも無く、出て行こうとする。ただ、尚美だけは違うようで、白石たちには付いていかずに立ち止まっている
由紀江「尚美、行くよ」
尚美 「でも・・・私、残るわ」
由紀江「えっ?」
尚美 「ほら、私、彼女だから。孝太郎が残るんなら、私も残る。ごめんね」
(尚美ちゃん、健気だねぇ…(涙))
由紀江「仕方ないわね」
というわけで、尚美だけが孝太郎と一緒に残ったのでした;
孝太郎「ああ、本当に行っちゃったよ」
[あけぼの保険ビル 玄関 〜 遅れて徳川部長出勤]
徳川 「おーい。お前ら、どうしたんだ?」
遅れて会社に出勤してきた徳川は、丁度、白石たちがビルから出てきたところに遭遇した。これまで上司と部下の関係にあった白石だったが、もはや部長ではない徳川に冷たく当たる;
白石 「あなたには関係の無いことです」
徳川 「何だ、お前。上司に向かってその言い方!?いくら会社が倒産したから
って、そんな風に冷たく言わなくったっていいだろう?」
白石 「倒産したのはあなたのせいだろ?あなたを含めて旧経営陣がだらしない
から、こういういことになったんだ。少しは責任を感じて下さいよ!」
由紀江「白石君!いいから行こう・・・」
そのまま立ち去る白石たち。一人取り残される徳川元部長。さ、寂しいねぇ。
[あけぼの保険ビル 第一営業部 〜 電話の応対に悪戦苦闘]
一人、電話の応対に追われている真紀子。電話がじゃんじゃん鳴っています。そこに孝太郎と尚美が戻ってくる。
孝太郎「ああ、賑やかだねぇ、これ」(おいおい、またそんな、脳天気な…)
真紀子「ちょっと、ホラ。ボヤっとしてないで!さっさと電話に出て!」
孝太郎「はい、済みません…」
と、そのまま孝太郎と尚美は、即、電話の応対をすることに。
孝太郎「はい、あけぼの保険第一営業部です」
一方、真紀子の受けた電話の相手は、岩森工業の社長である岩森。その岩森は、岩森工業の社長室では、あけぼの保険倒産を報道するタブロイド紙っぽい新聞を手に、真紀子と話をしている。岩森は白石の担当している重要顧客だった。だが、着任したばかりの真紀子は、当然、岩森の話している内容を把握していない;
岩森 「いずれにしても、この間の話は無かったことにしてくれって、(白石に)
そう伝えてくれよ」
岩森はそう、真紀子に伝えて、電話を一方的に切ってしまった。一体、何の話だか分からず、孝太郎に話を聞こうとするも電話の対応中であったため、尚美に話しかける真紀子;
真紀子「岩森工業の件、知ってる?」
尚美 「さぁ…私には…」
真紀子「みんなの仕事のことを把握するのも、あなたの仕事のうちなんじゃない
の?」
尚美 「すみませ〜ん」(←もちろん、口先だけ)
仕方なく、会社のパソコンを叩く真紀子。その肩越しに孝太郎が声をかける;
孝太郎「どうしました?」
真紀子「ええ? 岩森工業というところからね、火災保険の件で連絡が入ったん
だけど・・・。白石の担当らしいんだけど、何か知ってる?」
孝太郎「そこにはデータが入ってないですよ」
真紀子「えっ?」
孝太郎「彼はね、秘密主義ですから」
その言葉を聞いて、早速、今度は白石のデスクの引き出しを開けようとする真紀子。だが;
孝太郎「部長・・・」
真紀子「どうして白石の机に鍵が掛かってるのよ?」
孝太郎「いや、彼は秘密主義ですから」(・・・(^^;))
[オープンカフェ? 〜 ボイコット一日目]
一同 「カンパーイ」
春の日差しの差し込むカフェで、昼間からビールを飲む第一営業部のボイコット社員。ボイコットを謳歌しています;
井原 「うまい!昼真っから飲むビールは上手いね」
吉村?「普段、こういうことは出来ないですもんね」
井原 「ボイコット万歳だな、これは」
その中で、ただ一人、由紀江だけが不安げな表情を見せる;
由紀江「ねぇ、会社の中、今頃大変なんじゃない?」
白石 「何を言ってんだよ。俺たちは、あいつらを困らせるためにやってんだよ」
由紀江「それは分かってるけど」
白石 「弱気になったらつけ込まれるだけだ」
白石は由紀江の言葉を取り合おうとはしない。
[あけぼの保険ビル 第一営業部 〜 白石君のパソコン]
孝太郎「ちょっとなにやってるんですか?」
なにやら手に道具を持って、白石のデスクの引き出しをこじ開けようとする真紀子に気づく孝太郎。
孝太郎「そんな乱暴な!」
真紀子「いいから下がってて!」
と、ガチャガチャしているうちに、引き出しが開きまして、実はものすごい怪力なんでしょうか、真紀子さんって…;
真紀子「よし!」
孝太郎「あらっ。あららららら」
真紀子「あった。これこれ(と、ノートパソコンを取り出し起動する)」
孝太郎「でも、それ、白石君のですよ。何するんですか?」
真紀子「岩森工業の資料見るのよ」
尚美 「でも、白石さんのファイルはパスワードがないと・・・」
真紀子「任せておいて」
と、真紀子がキーボードをなにやら叩いているうちに、顧客情報の入ったファイルが白石のパソコン画面上に開く。
孝太郎「うわ〜。本当だ、これ。すごいよ、これ」
(↑伊達君がそんなこと言っちゃダメでしょう…(^^;))
真紀子「このぐらいのプロテクト、なんてことないわよ。(孝太郎に)メモとって
頂戴」
尚美 「ちょっと孝太郎、そんなことしたら、白石さん、怒るよ」
と尚美が心配している間にもオフィスの電話が鳴り響き、応対に追われる尚美。
その後、尚美がお茶などを入れようとしていると、オフィスの外でチョロチョロしている徳川を見つけまして;
尚美 「徳川部長?!何やってるんですか?」
徳川 「シー。静かに!」
尚美 「どうしたんですか?中に入ってくださいよ!」
中に入りにくそうな徳川に向かって、尚美は白石たちが仕事をボイコットして、職場が大変な状態になっていることを告げ、徳川に助けを求める。そこに丁度、真紀子がやってくる。
真紀子「杉田さん、これ、コピー御願い」
徳川 「何か困っているようですけど、もし、差し出がましいようじゃなかった
ら、お手伝いしても良いですよ」
と、徳川が差し出がましくは無いけど、恩着せがましく真紀子に申し出てみますが;
真紀子「じゃぁ、これ、コピー、50部御願いします」
と、コピー取りを依頼されてしまいます(^^;)。そして、そのまま真紀子は「契約書のフォーマットどこにはいってるのかしら?」なんて尚美に聞きながら、二人はオフィスに戻っていき、仕方なくコピー室でただ一人、徳川はコピーをとっているわけで・・・。
徳川 「あーあ、何で俺がこんなことを・・・」
なんていう愚痴の1つや2つは出てきます。それにそんな気分で仕事をしていると、運の悪い時は重なるもので、コピー機が停止してしまいます;
徳川 「ん?どうしたんだよ?おい、頼むよ。困っちゃうんだよ、これじゃぁ!
・・・お前まで俺を馬鹿にするのか!」
窓際族の悲哀…。
[あけぼの保険ビル 第一営業部 〜 お茶で一服]
そして、夜。いまだ電話の対応をし続けている孝太郎。
孝太郎「申し訳ございません。いろいろとごたごたとしておりまして、その件に
つきましては、担当の者に、明日、また電話させますので…。よろしく
御願いします。失礼します!!」
(↑語尾が微妙に関西弁…(^^;))
真紀子「もういいわよ。留守電に切り替えて!」
孝太郎「あっ、はい!」
と、ようやく一息つく孝太郎たち。
真紀子「(伸びをして) ん〜〜〜〜〜」
孝太郎「部長、今日も一日、お疲れ様でした!いや〜、それにしてもさすがです
ね〜部長ぉ。トラブル処理の見事なこと!勉強になりました」
と、すかさず真紀子にヨイショする孝太郎。そして真紀子が肩が凝っているという様子を見ると;
孝太郎「あっ、肩凝ってるんですね。じゃぁ、私が。失礼します」
真紀子「いいわよ」
孝太郎「いや〜そんな、遠慮なさらないで。私、こう見えても、上手なんですよ」
真紀子「いいから、止めなさいって!あのね、職場で女性の肩を揉むのは、アメ
リカじゃ、セクハラよ!」
孝太郎「へぇ、そうなんですか、勉強になりました」(勉強しようね)
そこに尚美がお茶を入れて、やってくる;
尚美 「お疲れ様でした」
孝太郎「お疲れ〜」
で、その尚美がお茶と一緒に持ってきたのは、やや形の崩れた雷屋の栗羊羹♪
孝太郎「ん?・・・それはもしかして!はは・・・上手そうだねぇ、って自分で
言うのもなんだけどね(笑)」
尚美 「頂きま〜す」
真紀子「何よこれ?」
と、形の崩れた羊羹に目をやる真紀子。
尚美 「あっ、それは部長が床に叩きつけたからですよ。でも、包装してあった
ので、衛生面での心配は要りませんから」
生唾を飲み込みつつも、それを振り切るように、帰る仕度をする真紀子;BR>
孝太郎「あれっ、食べてかないんですか?」
真紀子「帰るわ。仕事もしたいし」
孝太郎「えっ(@o@)、まだ仕事するんですか?」
真紀子「あなたたちとは違うのよ!」
尚美 「せめてお茶ぐらい…」
孝太郎「うん」
真紀子「そうね。頂くわ。(一口飲む)熱っ。熱ーっ。これ、熱すぎるわよ!」
尚美 「そんな、慌てて飲まなくったって・・・」
真紀子「今度からね、すぐに飲めるように、もっと考えてからお茶入れなさい!」
と、言い残してその場を引き上げる真紀子。その真紀子の後姿に向かって;
孝太郎「あっ部長、お疲れ様でした〜。明日もよろしく御願いしま〜す!」
尚美 「ちょっと、なんなのよ!二度と入れてやんないから!(--;)」
そして、帰り際、真紀子がコピー室の前を通り過ぎると・・・;
徳川 「もうすぐこのコピー、できますから・・・」
真紀子「まだやってたの?」
う〜ん、徳川さんの存在、忘れてたよ…(苦笑)
[街中 〜 それぞれのツーショット]
同じく夜。白石と由紀江が家路についています。
由紀江「みんなもう、帰ったかな?」
白石 「今日は残業だろう。トラブル処理で大騒ぎだ。何だ、まだ心配してんの
かよ?」
由紀江「だって」
白石 「そんな御人好しでどうするんだよ。ビジネスっていうのは、戦いだろ?
戦って、自分の権利を勝ち取らないと!仲良しクラブじゃないんだから」
由紀江「桜井君とは随分違う考え方だよね」
白石 「あんなのと一緒にするなよ」
一方、孝太郎と尚美の二人は、居酒屋『松っちゃん』で食事を取っています・・・というよりも、尚美ちゃんの場合はヤケ酒と言うのかしら?
尚美 「まったく何なのかしら、あの態度?」
孝太郎「ん?」
尚美 「緒方真紀子よ!孝太郎がみんなの反対を押し切って手伝ってあげたのに、
『ありがとう』の一言も無いなんて、酷いと思わない?」
孝太郎「いや、でも、ホラ、部下なんだから。当たり前のことだよぉ」
(↑相変わらず素直な性格…(^^;))
尚美 「そんなこと言ってっからね、付け上がるのよ。だいたい、100g 1,500円
もする高いお茶を入れてあげたのに、あの言いぐさはないわよ! 人に
感謝する気持ちが無いのよ、あの女には!」
孝太郎「でも、仕事は大した物だよ。色々と言うだけの事はあるよ」
と、孝太郎君だけは真紀子のいいところも認めているわけですが、尚美にはまたそれが気に入らないわけで;
尚美 「何?あの女の肩持つ気?」
孝太郎「いや、そうじゃないけど…」
尚美 「部下に好かれない上司なんてね、どんなに仕事が出来てもダメ!ねぇ、
マスター?」
松永 「そりゃそうだよ。尚美ちゃん、いいこと言うわ」
尚美 「でしょぉー。なのに孝太郎、すっごく甘いの!」
孝太郎「そんなことないよ」
尚美 「ありますぅ。『肩揉みましょうか?』とか、言っちゃってさ」
松永 「何、美人なの、その部長さん?」
孝太郎「いや、いや。そそそそ、そういうのは関係ないですよ。だって、今まで
だって、肩揉んでたし」
尚美 「いや。見る目が違う!見る場所が違う!」
孝太郎「何それ?」
尚美 「だって、あの女の足ばっか見てんじゃん!
前の時はそんなことはなかった!」
孝太郎「だって、徳川部長の足見ても仕方ないでしょ?」(あ、あのね…(^^;))
松永 「そりゃそうだ」
孝太郎「ね。あはははははは(笑)」
尚美 「とにかく、私は気に入らないのよ、あの女が!!!」
と、手にしていたジョッキをテーブルに叩きつける尚美ちゃん。勢いでビールがこぼれてます。それをまた、孝太郎君はお手拭でこぼれたビールを拭いてあげて、優しいんだから…。
孝太郎「な、尚美。ちょっと飲みすぎなんじゃない?さっきから」
尚美 「何だって?(--;)」
孝太郎「ねぇ。もう、ちょっと帰ろう。途中まで送っていくから、ね?」
尚美 「もっと飲む!お代わり!お代わりぃ」
孝太郎「マスター、タクシー呼んで!」
二人とも、仲良くね・・・(笑)
[真紀子のマンション 〜 孝太郎君のヨイショはアフターケアもばっちりです]
真紀子がマンションに戻ってくる。留守電のボタンを押すと、津村のメッセージが再生される;
津村 『津村だ。今日はそっちに行けそうに無い。悪いけど夕食は一人で勝手に
食べてくれ』
そのメッセージに肩を落とす真紀子。仕事カバンをベッドの上に放り投げる。すると、そのカバンから、例の栗羊羹が1つ転がり落ちる。栗羊羹には付箋紙が貼ってある;
『お仕事の合間に食べて下さい 桜井』
真紀子「あいつ、いつのまに・・・」
[孝太郎のマンション 〜 家に帰っても元部長にヨイショ?]
孝太郎が自分のアパートに帰ってくると、なぜか部屋の明かりがついている。しかも、鍵まで開いている・・・;
孝太郎「?」
不思議に思いながらもドアを開けると、ちゃっかり徳川が部屋の中で陣取ってます(鍵を返してもらってなかったのねぇ、孝太郎君…。ふ、不幸だ…)。しかも、誰かと電話で話をしているようで…;
徳川 「そういうことですから、御心配なさらずに。ちょっと待って下さい。今、
戻ってきたみたいです」
孝太郎「部長?・・・ちょっと、何やって・・・」
徳川 「お袋さんからだ」
と、普通に受話器を孝太郎に差し出す徳川。もちろん、孝太郎君は慌てて受話器を受け取ってます(笑)。先日の留守番電話の主は、どうやら孝太郎君の母親だったようです。
孝太郎「もしもし?」
母親 『あっ、孝太郎?今、部長さんに、お前のこと、御願いしてたのよ。家に
まで来て頂いてるなんて、お前は本当にいい人を上司に持ったんだね』
孝太郎「あああ、ああ。まぁ、そ、そうだねぇ。で何か用事?」
母親 『別に大したこと無いから。また電話するね。部長さん、待たしちゃいけ
ないから。うふふふふふ(笑)。それじゃぁ、ね』
孝太郎「あっ・・・」
と、電話を切られてしまう。
徳川 「良いお袋さんじゃないか! お前のこと心配してたぞ! 息子をよろしく
御願いしますって、電話の向こうで何度も頭を下げる姿が目に浮かんだ
よ!」
孝太郎「勝手に電話に出ないで下さいよ!・・・っていうか、部長、家に帰らな
くていいんですか?」
徳川 「五月蝿い! (と、一度は怒ったものの) あっ、まぁ、いや、いいから、
一緒に飲もう。ちゃんと座ってな」
孝太郎「っていうか、ヤケ酒はやめてくださいよ。体に良くないですよ」
徳川 「いいんだよ!俺はもう、何の役にも立たないんだよ。今日だって見ろ、
コピー1つ満足に出来やしない」
孝太郎「そんなことはないですよ。徳川部長が居ないと、うちの部は成り立ちま
せんよ!」
徳川 「お前、よく、そんな白々しい嘘が言えるな…」
孝太郎「いや、嘘じゃないですよ。だって・・・(沈黙)」
徳川 「『だって』…何だよ?」
孝太郎「だって…ホラ、あの…ホラ、新しい部長が来たって、みんな上手くいっ
てない訳だし。(何やら思いついて)ほら、新しい部長とみんなとの橋
渡しが出来るのは、徳川部長しかいないですって!」
徳川 「橋渡し?」
孝太郎「そうですって。考えてくださいよ。徳川部長の力を必要としているとき
なんですよ!」
徳川 「そうか?」
孝太郎「そうですって。緒方部長も白石君たちだって、いや、グローバル
ライフのみんなが、徳川部長のお力を必要としている
時なんですよ!」(←最後は演技がかってます)
徳川 「そうかなぁ・・・」
孝太郎「そうです!!!」
徳川 「そう言われると、そういう気もするなぁ・・・あははははは(笑)」
孝太郎「ね。そうですね。ですから早く今日は寝ましょう。こんなヤケ酒なんて
やめて、明日も早いですからね、明日も頑張りますよ〜!」
徳川 「うん、そうだな」
孝太郎「(布団を敷いて)はい、どうぞ」
徳川 「そうだよ!俺、頑張るよ!」
と、機嫌を良くして布団に入る徳川。孝太郎君と徳川さん、どっちが上役なんだか・・・(苦笑)。
[真紀子のマンション 〜 お茶で一服]
その頃、真紀子のマンションでは・・・シャワーも浴びて、ベッドの上で一服。お茶なぞ入れて、その横には、例の栗羊羹が。そして、羊羹を一口に入れて;
真紀子「美味しいぃ」
幸せいっぱいの真紀子さんでした。(孝太郎マジック炸裂中です(笑))
[あけぼの損保本社 玄関口 〜 徳川の打倒 真紀子作戦始動]
翌朝。出勤する徳川。各階案内にあるグローバルライフ株式会社のネームプレートを確認しまして、その階までやってきます。取り囲みの役員たちと、ロビーを進む津村社長。その津村に対し、徳川は直訴を始めます。昨晩、孝太郎に言われたように、自らボイコットする白石たちと、真紀子との仲介役を申し出る。それだけではなく、したたかな徳川は、部長代理の肩書きを取り付ける・・・。もちろん、真紀子はその徳川の行為が気に入らない様子。
真紀子「調子に乗らないでよ!」
と言い放ち立ち去る真紀子だったが、一方の徳川は「さてと」とつぶやき、何やら行動を開始します。
[あけぼの損保本社 第一営業部 〜 本日もボイコット]
昨日は業務をボイコットした白石たちだったが、この日は会社には出てきています。だけど、白石が出社するなり;
白石 「誰だ!こんなことしたのは!!!」
デスクが破壊され、パソコンも触られた後があることを指摘する白石。心当たりがありありの尚美は顔を背ける。そこに、タイミングよく、真紀子が出社してくる;
真紀子「おはよう」
白石 「部長、ちょっとお話があります」
真紀子「あら、今日はちゃんと出社してるのね」
白石 「昨日、僕のデスクで何をしたんですか?」
真紀子「ああ、パソコンをちょっとね」
白石 「勝手に使ったんですか?」
真紀子「悪い?」
白石 「悪いに決まってるでしょ!私物ですよ!」
真紀子「岩森工業のデータは会社のものよ。あなたは、それを自分のパソコンの
中に隠しておいた。その方が問題があると思うわ」
白石 「隠しておいたわけじゃありません」
真紀子「じゃぁ、なぜ、会社のコンピューターに入れておかないの?」
白石 「だって自分の担当のデータだし、誰だってやってることだし。家に帰っ
て仕事をするのも便利だし。今は会社のためにそういうことをしてるん
ですよ!」
真紀子「会社のため?なぜそんな人が、ボイコットなんかするの?ほら、邪魔よ。
向こうに行きなさい。
それから、岩森工業の件は私が引き継ぐことにしましたから、あなたは
今後、手を出さないように」
白石 「あそことうちの取引は、年間10億は下りませんよ。それにあの社長は、
一筋縄ではいかない人物だ。部長には荷が重過ぎるんじゃないですか?」
真紀子「御心配、ありがとう・・・」
白石 「・・・」
真紀子に対して、何も言い返せない白石。理論詰めでいくと、この場合、真紀子さんには勝てないよね。結局;
白石 「行くぞ!」
ってことで、昨日と同じく同僚を引き連れて、オフィスを出て行く白石。ただ、尚美だけはどうすることもできずにそれを見送る。・・・で、孝太郎は一体、何処?(笑)
[あけぼの損保本社 1Fロビー 〜 ]
階段を下りてくる白石たち;
井原 「どうするんですか?白石さん?」
白石 「あそこの社長は偉そうにしている女が大嫌いなんだ。絶対に上手くいく
はずが無い」
と、計算して、自分たちに分があることを力説する白石。と、そこに孝太郎君が出勤です。
孝太郎「白石君、おはよう。あれれ、みんな、どこ行くの?」
白石 「今更、聞くなよな」
孝太郎「また、ボイコットするんでしょう?良くないよ、そういうの。
それにね、緒方部長だって、ああ見えて、結構いい人だよ」
白石 「どこが?」
孝太郎「どこが、って…。仕事は出来るし、足は…綺麗だし(笑)。うふふふふ」
(孝太郎、スケベ…(笑)↑)
白石 「勝手に言ってろ!(--;)」
孝太郎「ねぇ、ちょっと。みんなちょっと。待ってよ。おーい」
と、相手にしてもらえない孝太郎君。
[あけぼの損保本社 第一営業部 〜 真紀子とお出掛け]
再び、第一営業部オフィス。白石たちがいなくなったオフィスで、真紀子と尚美が二人きり。真紀子はカバンに書類を詰め込み、どこかに出掛けようとしています;
真紀子「桜井!桜井はどこ?」
と、孝太郎を探す真紀子。ってことは、真紀子さんも意外と孝太郎のことを買ってるってことなんでしょうか?
尚美 「ああ。そういえば、まだ見てないです」
真紀子「何してんの?」
といったところで、丁度、孝太郎君、登場。
孝太郎「おはようございま〜す」
真紀子「遅い!」
孝太郎「いや、実はですね、夕べ徳川部長が家に泊まりまして。で、朝起きたら
これがびっくり。居ないんですよ」
真紀子「いいわけはいいから、すぐに出掛ける準備をしなさい!」
孝太郎「えっ、どこ行くんですか?」
真紀子「岩森工業に決まったるでしょう」
孝太郎「あっ、はい」
真紀子「(尚美に)出掛けるから、後よろしくね」
尚美 「えー、それじゃぁ、ここ、私ひとりですか?」
真紀子「徳川部長代理が来るはずよ」
尚美 「部長代理?」
真紀子「そう。、二人でしっかりね。いくわよ」
孝太郎「えっ、えっ、待ってください、部長」
孝太郎と真紀子は、尚美一人を残して外出してしまいました。
[カフェ 〜 白石と徳川 同盟を組む]
昨日と同じカフェで、今日もたむろしているボイコット組。「さて、今日もがんがん飲みますか」と景気付けようとする白石だが;
井原 「いや、今日はいいや」
?? 「僕も」
と消極的。
白石 「何だよ、みんな。元気ないな・・・」
由紀江「本当にいいのかな?こんなことしてて・・・」
不安を見せる同僚たちに、もうすぐ困り果てた部長の方から頭を下げに来れば、こちらが主導権を握れると強気に主張する白石。とはいえ、当の白石も若干の不安な気持ちはある様子。そこに、部長代理の肩書きを取得した徳川がやってくる(白石たちが何処にいるか、よく御存知で…)。
徳川 「よぉ!今日も頑張ってるな」
そして、何かを企んだ風の徳川は、一緒に真紀子と戦おうと、白石たちに共同戦線を申し入れる。
[岩森工業ビル 〜 ]
岩森工業にやってくる真紀子と孝太郎。そのまま社長室に通される。トラのはく製が置いてあったり、ソファーもトラ柄だったりと、趣味がいいのやら、悪いのやら…。さっそく、岩森社長と面談している真紀子と孝太郎。相手が社長一人ってことは、すっごくワンマンな社長ってことなんでしょうか?(この辺の設定がこのドラマでは良くわかんないんだな…)
岩森 「おお。女の部長さんとはね。珍しいねぇ。しかも、こんなべっぴんさん
とは」
と、いきなりセクハラ発言の岩森。年齢や結婚だとか、真紀子に対して、セクハラコメントを続けます。真紀子はすでに嫌気がさしながらも、岩森は気づかず発言を続けます;
岩森 「いつの時代も男と女の役割があるもんだ。大体な、男じゃ子供、産めん
もんな」
孝太郎「仰る通りでございますぅ」
岩森 「いや、何もな、女が仕事をしちゃいかんと言ってるわけじゃないんだ。
しかし、損保っていうのはどうなんだ?女じゃやり辛いだろう?」
真紀子「古い価値観をお持ちの社長が相手ですと、やり辛いこともありますねぇ」
岩森 「なるほどねぇ。そういうヤツもいるからねぇ」
真紀子「(小声で)あんたのことだよ!」
岩森 「えっ?」
と、その二人のやり取りを聞いていた孝太郎君は、とっさに話題を変えたりして;
孝太郎「社長!こちらの壁にかかってある絵!素晴らしいですね〜」
岩森 「ああ、その絵か?」
孝太郎「もしかして、こちらの絵も、社長がお描きになったのでは?」
岩森 「あはは、分かるかね?」
孝太郎「分かりますとも!岩森社長の絵の才能は我が社でも有名ですから!何や
ら、会社の絵画コンクールで4年も連続して金賞を受賞されたとか?」
岩森 「5年だよ」
孝太郎「・・・。あっそれは失礼いたしました」
と、そんな二人のやり取りを見ていて、真紀子はこっそり一言;
真紀子「馬鹿らしい」
(^^;)。そんな真紀子の無反応さも気にせず、岩森にヨイショをし続ける孝太郎;
孝太郎「・・・。それにしても、素晴らしいですねぇ、この白鳥!」
岩森 「あひるだよ!」
孝太郎「もちろん、あひるです。しかし、このあひるの内面から滲み出る、
白鳥の気品すら感じられます!まるであの、有名な童話のように!」
岩森 「なるほどね。ボロは着てても心は錦ってヤツだな」
孝太郎「あはははは(笑)。仰るとおりですぅ〜」
(↑演技かかりすぎだって…(苦笑))
真紀子「あのー。そろそろ仕事の話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
岩森 「まぁまぁ。そう急がなくても、いいだろう?どっかで食事でもしながら
っていうのはどうだ?」
真紀子「いいえ、結構です」
と、真紀子が冷静に却下しよとしたのをさえぎって、すかさず孝太郎が;
孝太郎「いいですね」
と、同意しちゃいます。
岩森 「折角、こんな美人部長さんとお話をするんだからさ。こんな色気の無い
部屋で、失礼ってもんだよ」
孝太郎「仰る通りでございます」
岩森 「君な、どっかにいい店知らんかね?」
孝太郎「私にお任せください」
そして、1F。エレベータホール前にある公衆電話で店に電話を入れている孝太郎(自分の携帯電話は使わないのね)
孝太郎「あの、大切なお客さんなんで、くれぐれもよろしく御願いします。はい」
そして、孝太郎は電話を切って、椅子に座って待っている真紀子のところにやってきます。
孝太郎「いや〜部長。いい店取れましたよ。これできっとあの社長さんも喜んで
くれると思います」
真紀子「あのね。あなた何か勘違いしてない?」
孝太郎「えっ?」
真紀子「私たちは、あいつの機嫌をとりに来たんじゃないのよ。これはビジネス
なのよ、分かってるの?」
孝太郎「いや、だから、食事したいって言ってるし」(分かってないみたい…(^^;))
真紀子「その費用は誰が持つの」
孝太郎「それは、やっぱりうちの経費で(^o^)」
真紀子「そういう感覚だから倒産するのよ」
孝太郎「いや、まぁ」
真紀子「あんたの給料から天引きだわね」
孝太郎「えっ、いや、それは・・・」
と、ちょっとおどおどしてみせる孝太郎君が可愛かったりして…(^^;)。と、そんな会話をしている間に、岩森社長がエレベータで降りてくる。
孝太郎「あっ、社長!」
岩森 「いやー、お待たせ」
孝太郎「とんでもございません」
岩森 「どうだ、いい店みつかったか?」
孝太郎「こちらへどうぞ、どうぞ」
岩森 「よし、行こう」
と、孝太郎の案内で出掛けていきます。
[とある店 〜 孝太郎君の宴会芸]
決して高級料理店ではない雰囲気(^^;)のお店の一室。料理の準備も終わり、まずは孝太郎君は社長にお酌をしようとします;
岩森 「君な、目の前にこれほどの美女がいるのに、男のお前がお酌をすること
は無いじゃないか」
孝太郎「おっしゃるとおりでございます。失礼しました」
と言いながら、さて、孝太郎が真紀子の顔を覗き込むと、真紀子は表情ひとつ変えず、黙って座っています;
孝太郎「???」
この様子じゃ、部長がお酌をするなんて、到底無理っぽいです。
孝太郎「あの、部長はですね…あの、うちの部長は、あの、あのあの・・・海外
勤務が長くてですね、その何と申しますか…、向こうでは女性がお酌を
してはいけないことになっておりまして。ですから、今日は、御不満で
しょうが、この私が…」
岩森 「何だと?でも、ここは日本なわけだし、これからお付き合いをしていく
わけだから・・・」
真紀子「・・・。いいですよ」
と、緊迫した雰囲気を漂わせながらも、承諾する真紀子。孝太郎も真紀子にお銚子を渡します。ただ、まぁ、相手がセクハラ社長ですから、真紀子がお酌をしたときに「こぼれる、こぼれる・・・美」なんて言いながら、真紀子の手を握り締めたりするわけで…。
岩森 「女のお酌は一味、いや、二味違うなぁ。あははははは(笑)」
と、御満悦の社長に見えないように、こっそりその握られた手を座布団でぬぐったりしている真紀子(思わず真紀子さんを応援しちゃうわ…(笑))。
やがて、食事の方も、おおかた食べ終わり、孝太郎君は酒を飲む岩森に「男らしい!」なんていいながら、なおもヨイショしてますが、そろそろお仕事の話に持っていく真紀子;
真紀子「それではそろそろ仕事の話を…。来期の火災保険に関する新しいプラン
です」
岩森 「来期はな、新しいところに頼もうかと思ってるんだ」
と、真紀子の差し出した書類を放り出す岩森。潰れそうになっている会社や、肌に合わない外資系の会社が相手だと、契約をしたくないという岩森。
そこに、唐突に「大丸銀行、ばんざーい!」などと、酔っ払いが裸踊りをして乱入。どうやら部屋を間違えたようで、それに気づいた男は恥ずかしそうに去っていきます。
真紀子「何なの?」
孝太郎「失礼しました」
真紀子「いや〜、元気があっていいなぁ。わしも若い頃はよくやったもんだよ。
(真紀子に)君もひとつ何かやってみせなよ」
孝太郎は真紀子の顔を覗き込んで「?」という表情をしてみますが、もちろん真紀子がそんなことをするはずも無く…
真紀子「あ、岩森社長、今日はそういうお話じゃなくて・・・」
岩森 「芸のひとつでも出来んと、この世界やっていけんぞ。なぁ」
ってことで
孝太郎「私、桜井孝太郎、裸踊りをやらせて頂きます!失礼します!」
と、代わって自ら名乗り出る孝太郎君。
孝太郎「ちゃんちゃらんちゃ、ちゃんちゃらんちゃらん・・・手拍子!」
と、立ち上がり、盛り上げながら服を脱ぎ始めたりなんかして。さらには、ズボンのベルトにまでてをかけ始め、岩森は一緒に盛り上がっていますが、真紀子は我慢できない様子で;
真紀子「やめなさい、桜井君・・・やめなさいっていってるでしょ、桜井君。
やめなさい!!!」
あまりの剣幕に、固まる岩森と孝太郎。そしてズレ落ちる孝太郎のズボン(爆)。
真紀子の怒声に怒った岩森は店を出て行く。それを必死に止めようと追いかける孝太郎君。店の外に出てきて;
岩森 「何だ、まったく・・・。わしは帰る。タクシー!」
岩森はタイミングよく(笑)やってきたタクシーに乗り込む。その岩森の後姿に、土下座する孝太郎
孝太郎「社長、申し訳ありませんでした。この埋め合わせは次の機会に、是非…」
しかし、そのままタクシーは行ってしまう。だが、孝太郎は土下座をし続ける;
孝太郎「ありがとうございましたーーー」
真紀子「いい加減、頭上げたら…」
店から出てきた真紀子は、タクシーの姿が消えても土下座を続けている孝太郎に声をかける。
孝太郎「あっ。ははは・・・部長・・・」
[帰路 〜 孝太郎君のプライド]
そのまま帰路に着く孝太郎と真紀子。
真紀子「ねぇ?」
孝太郎「はい」
真紀子「あなた、恥ずかしくないの?」
孝太郎「えっ?」
真紀子「あんなとこで、あんなやつに土下座なんかして」
孝太郎「・・・(笑)。5秒で終わることです」
真紀子「えっ?」
そして、道行く人がいる中、唐突に、真紀子の前で土下座して見せる孝太郎;
孝太郎「申し訳ございません!お許しください!」
真紀子「ちょちょちょ、何やってるの。やめてよ、やめて」
そして、立ち上がって言います;
孝太郎「今ので約5秒です」
真紀子「は?」
孝太郎「親父がよく言ってたんです。あっ、家の親父は、実は太鼓持ちをやって
いたんです」
真紀子「太鼓持ち?」
孝太郎「ええ。政治家や財界のお偉方にいつもお世辞を言ったり、頭を下げたり
して…。でも、子供の頃、親父のそんな姿がすごく嫌で、文句を言った
ことがあるんです、ちょうど、今の部長みたいに。そしたら、言われて
しまいました;『ありがとうも、ごめんなさいも、
5秒あれば言える言葉だ』って。
『でも、人はその一言が言えずに、一生、恨まれたり後悔したりする。
そんなの馬鹿らしいじゃないか』って・・・」
真紀子「たいした人生哲学ね。さぞ、お幸せな生活を送っていらっしゃるんでし
ょうね?」
孝太郎「去年、ガンで死にました」
真紀子「・・・」
孝太郎「でも、幸せな人生だったと思いますよ」
真紀子「私は・・・私はできないわ、そんな生き方・・・」
そう言って、真紀子は孝太郎を残してその場を立ち去る;
孝太郎「部長!」
その部長の後姿を見ながら、何かを思う孝太郎;
孝太郎「・・・」
[とあるバー 〜 一方の白石は…]
白石 「そうか、わかった・・・」
白石は誰かと携帯電話で話をしている。電話を切り、徳川と由紀江のいるテーブルに戻る;
白石 「徳川部長、どうやら岩森工業との取引、上手くいかなかったみたいです
よ」
岩森工業の社長秘書を良く知っている白石は、真紀子が社長を起こらせた先ほどの接待情報を入手する。
白石 「チャンスですよ」
由紀江「部長、明日の会議であの女を攻撃できますよ」
徳川 「そうだな。じゃぁ、乾杯といくか」
と、仲良く3人でカンパイするのかと思ったら、由紀江の終電があるからと、先に帰ろうとする白石君。
そして、白石と由紀江は店を出てきて、駅に向かって歩き始めます;
白石 「ったく。あんなおやじに付き合ってらんないよ」
由紀江「じゃぁ、なんでいっしょに組むことにしたの」
白石 「組む気ないよ」
由紀江「えっ?」
白石 「まぁ、あんな人でも、何かの時には役に立つだろう。部長代理だからな」
う〜ん、つくづく計算高いキャラなのね、白石君って・・・
[あけぼの損保本社 〜 大逆転]
翌朝。ビルの入り口で、出社する真紀子を見つける徳川;
徳川 「緒方部長!おはようございます。
今日はまたいちだんとおきれいでございますね〜」
何やら思惑ありありという雰囲気で、ヨイショの言葉をかける徳川。
そして、営業第一部の会議が始まり、真紀子他、徳川,白石以下、会議室に集まる。尚美たちは会議室の外から中の様子をこっそり(でも無いけど)覗いている。但し、もちろん、孝太郎君はそこにはいません(笑)。いいのかなぁ、こんなことで。誰か気づいてあげなよ!!!
真紀子「おはよう」
徳川 「おはようございます」
全員が着席し、徳川にこっとり「頼んますよ」(←なぜか関西弁、入ってます)と耳打ちする白石。
徳川 「部長、今日は一つお聞きしたいことがあるんですが…」
真紀子「何ですか?」
徳川 「うちの部の大手取引先である岩森工業との契約、失ったそうですね?。
どうなんですか?」
真紀子「はい、その通りです」
徳川 「それも部長はうちの白石君に、自分が担当するからあなたは引っ込んで
いないさいと啖呵をきったそうじゃないですか!年間10億の取引ですよ。
部長としての何らかの責任を取って頂かないと、部下に対して示しがつ
かないじゃないですか!」
真紀子「確かに岩森工業との契約は切れました。その件に関しては、私に全責任
があります」
と、真紀子が追い込まれようとしているところに、真紀子の携帯電話が鳴ります;
真紀子「ちょっと失礼」
白石 「携帯ぐらい切っとけよ!」
と、真紀子が電話に出ると、その相手は孝太郎だった(さっすが女性の電話番号を聞くのは早いねぇ>違うって…)。孝太郎は、どうやら外回り中の様子で、オフィス街を歩いています。
真紀子「はい」
孝太郎『あっ部長?私です、桜井です!』
真紀子「今、会議中なの。切るわよ」
孝太郎『ちょっと待って下さい。いい知らせがあるんです』
真紀子「なによ、はやくいいなさい」
孝太郎『岩森工業、OKになりました〜!!』
真紀子「えっ?」
孝太郎『今後とも、うちと付き合っていきたいと、そう仰ってくれました』
真紀子「それ、本当のことなの?」
孝太郎『もちろん、本当ですよぉ〜』
真紀子「でも、どうしてまた…」
孝太郎『それは、また後で御説明します。はい、失礼します!』
と、合点がいかないまま、真紀子は携帯を切る。ちょっと呆然(^^;)。
徳川 「どうかしたんですか?」
真紀子「ええ???・・・(落ち着いて)何の話でしたっけ?」
白石 「ですから、岩森工業の件ですよ! 部長のせいで、わが社は大変な損を
被ったんですよ!」
真紀子「その件なら、心配要りません。今、報告がありました。岩森工業は以前
と変わらず我が社と取引してくださるそうです」
白石 「えっ?どういうことですか?」
真紀子「何も問題は無いということです」
白石 「・・・」
理由は分からないけど、孝太郎君の逆転勝利ってことやね。
[あけぼの損保本社 屋上 〜 ほのぼの]
屋上で一人、そとの景色を眺めている孝太郎君。そこに尚美がやってくる;
尚美 「やっぱりここにいた!」
孝太郎「よっ」
尚美 「遅刻だよっ」
孝太郎「いやー、ちょっとさ、昨日、飲み過ぎた」
と言って振り返った孝太郎の右目には眼帯が;
尚美 「どうしたのそれ?」
孝太郎「これ?取引先の社長と色々あってさ」
尚美 「まさか、殴られたの?」
孝太郎「えっ」
尚美 「そうなの?」
孝太郎「いや、違う違う違う」
尚美 「可愛そう。ちょっと見せて」
孝太郎「いや、殴られんたんじゃなくて」
尚美 「いいから見せて!」
と、無理やり尚美が取った眼帯の下には、隈取の落書きのあとが・・・(^^;)。
尚美 「なにこれ?!」
孝太郎「いや、その・・・。洗ったんだけど、なかなか落ちなくてさ」
尚美 「・・・。あんた、何やったの?」
孝太郎「ん?その・・・罰ゲームと言うか・・・いいじゃん、何でも」
尚美 「(笑)。変な顔!」
孝太郎「(笑)。笑うなよ」
尚美 「あはははは」
孝太郎「何だよぉ。ちゃんと顔見てよ」
と、顔を尚美に近づける孝太郎君。かわいいわー(*^^*)
尚美 「いやーだ。気持ち悪い。やだやだ」
孝太郎「尚美〜」
尚美 「いい。こなくていい」
孝太郎「なんだよ。なに?」」
尚美 「いい」
と、鬼ごっこのように追い掛け回す孝太郎君と尚美の関係がかわいいんだ、これが。ああ、好きだわ、この二人・・・。
[あけぼの損保本社 第一営業部 〜 種明かし]
会議が終わり、自分のデスクに座る真紀子。早速、岩森社長に電話を入れる。
真紀子「あけぼの保険の緒方です・・・夕べはどうも失礼いたしました」
岩森 『いや、こちらこそね、いろいろ失礼いたしました』
真紀子「ところで、先程、うちの桜井から聞きましたが、来期の保険契約・・・」
岩森 『ああ、またね、お願いすることにしましたよ』
真紀子「ありがとうございます。ただ、一つお聞かせ願いたいんですけど、どう
して心変わりを?」
岩森 『あはは。あの桜井君にはしてやられたよ。あの後にね、うちに帰ったら
桜井君が現れてね。どうしてももう一軒、飲みに行こうって言うんだよ』
と言いながら振り返った岩森の顔全体には、マジックで落書きが…
ここから昨晩の回想シーン。居酒屋『松ちゃん』のカウンターで、一緒に盛り上がっている岩森と孝太郎。
孝太郎「そうだ、社長、ゲームやりません?」
岩森 「ゲーム?」
孝太郎「ええ。題して、面白い顔ゲームぅ!」
松永 「イエーイ」
孝太郎「面白い顔を作って、笑ってしまったら負け。んで、10秒我慢できた方の
勝ち!ね。じゃぁ、マスター、審判、審判」
松永 「おお、任せて。そういうの任せて」
孝太郎「じゃぁ、まず私の方から行かせて頂きます。いいですか?」
松永 「一回戦!Ready Go!」
松永の合図で、変な顔を作る孝太郎。アルコールが入っているせいか、ちょっとしたことで笑ってしまう岩森;
松永 「はい、負け!」
岩森 「もう負けなの?」
孝太郎「はい、負け。負けです。負けたら罰です、いいですか?」
と言って、岩森の顔を抑えて、マジックで落書きをしようとする孝太郎君。
岩森 「何すんだ!おい、ちょっと!そんなことしたら、お前の所とは二度と仕
事せんぞ!」
孝太郎「そんなことは分かってますよ。でも、これは仕事とは関係ないですから。
じゃぁ、失礼しまーす」
と言いながら、楽しそうに岩森の顔に落書きをしちゃう孝太郎。それ、演技だよね?(^^;)
孝太郎「にょきにょきにょきにょき、にょきにょきにょきにょき。あははは(笑)」
岩森 「なんてことをまぁ。。。。。」
逆に岩森が変な顔を作っても孝太郎は耐え、再び孝太郎が「アイーン」と顔を作ると、今度もすぐに笑ってしまう岩森。
孝太郎「社長、弱いですね。。。」
岩森 「俺、笑い上戸だもん。あはははは・・・」
そのまま、楽しそうな時間が過ぎていってます(以上、回想シーン、終わり)。
岩森 『いやー、あんなに笑ったのは何年ぶりかな?』
真紀子「それが理由ですか?契約を継続して頂けたのは、そんなことが理由です
か?」
岩森 『いや、それだけじゃないがね。でも・・・それが理由かな。負けたのは
ちょっと悔しいがね』
真紀子「はぁ」
岩森 『あの男には、人を安心させる不思議な魅力がある。
あんな部下を持っているあなたが、正直、羨ましいよ。あのね、桜井君
にね、伝えといて。今度は絶対に負けないからって。あははははは(笑)』
真紀子「はい、わかりました。桜井に伝えておきます。それでは失礼致します」
と、受話器を置くと、目の前に、白石以外の部下たちが真紀子を取り囲んでいる。孝太郎に至っては、真紀子のデスクにちょこんとぶら下がるように、顔を机の上に置いたりして…(やっぱりかわいい・・・)。
孝太郎「岩森社長ですか?」
真紀子「そうよ」
孝太郎「何か言ってました?」
真紀子「すぐに見積もりを出すようにって!」
孝太郎「はい、分かりました。桜井孝太郎、頑張ります!」
と、取り囲みの同僚を書き分け、張り切って自分のデスクに戻る孝太郎君。
ナレーション『こんな簡単なことで仕事が取れるなんてあり得ない。・・・そう
思う人も居るかもしれない。しかし、笑いこそ、動物の中で人間
にだけ許された、高度な感情である。そして、人間は笑うことに
よって癒され、幸せになれる人間である』
書類を作成する孝太郎に、そっとお茶を差し出す尚美;
尚美 「頑張ってね」
孝太郎「ありがとう」
そして、そのまま尚美は真紀子にお茶を差し出して;
尚美 「どうぞ」
真紀子「・・・。ありがとう」
尚美 「いえ・・・」
と、真紀子も少しは孝太郎に感化されたのかな?
孝太郎「よーし、今日も一日がんばるぞぉ!ヨイショ〜!!」