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雑誌・新聞レポ

『「馬耳東風アラ・モーダ」『今月のイナガキ』（編集後記）』 出典：96年4月〜00年11月号　作成：KYOKO　更新日：07年9月8日

『「馬耳東風アラ・モーダ」（未収録分）』 出典：96年4月〜00年11月号　作成：KYOKO　更新日：07年10月1日

『ポポロ』 出典：96年1月号　作成：KYOKO　更新日：07年4月9日

『「馬耳東風アラ・モーダ」『今月のイナガキ』（編集後記）』 出典：96年4月〜00年11月号　更新日：07年9月8日

【第１回】　エッセイ本編のタイトル：　「猫と美しい女性についての一考察」
'７３年１２月８日生まれの彼は、繊細なボディーとアーティスティックな瞳を持つO型。ときとして大胆な言動に出る”意外性”が魅力。エッセイ連載にあたって「いろいろ考えて悩むから、僕のこと女だと思ってくれたほうがいい」と文章に対するこだわりの強さをアピール。が、「締め切り日は守る」とピシッと決めて実行。ううむ、なんだか”男っぽい”ぞ。発売中のSMAPのアルバム『008 TACOMAX』も好評。ソロ活動も充実して、順風満帆。

【第２回】　「パープル・マジック」
原稿締め切り日が、映画（『SUPER SCANDAL超・醜・聞』ヘラルド・エース配給/今夏公開予定）の撮影のピークと重なった。ということは早朝→深夜の長時間労働ゆえ、執筆時間も大いに減少のはず。案の定、ワンカット、ワンカット、膨大な時間が流れていく。しかしそんな状況下でも、同じテンションの演技を続けるイナガキ、そこに”忍耐”の文字を見つけてしまった。ゲットした原稿にも働く男の感性がピカリ、である。

【第３回】　「A day in his life」
九州へ北海道へ、春コン・ツアー真っ盛りの彼、このエッセイは新幹線の中で完成をみた。思い起こせば打ち合わせは、舞台『夜曲』（残念ながら５/１７が千秋楽）の稽古現場だったし、いつしかコスモ、疲れ知らずの稲垣のおしり（注：おっかけ）と化している。いつしかといえば、感動・激励・要望etc.のレターで、編集部の数ヶ所に小山誕生。御元に届けると先生は「おお！」と歓声を・・・。これが原動力となり、紙面にはじける日も近いであろう。

【第４回】　「クローゼットとシュールなサボテン」
「原稿できましたよ。二つ書いたんだけど、舞台とファッションの話、どっちがいいかな？」先生より天にも昇るようなお電話をいただき、『夜曲』上演直後の彼の元へ。「ごめんなさい、家に置いてきちゃったんで明日には必ず。でも”原稿なんてどうでもいい！”と思える、いい舞台だったでしょう？」ハイ、確かに。でもソレとコレとは話は別、ですよね。翌日、原稿は来なかった。翌々日も・・・。なぜそうなったか、詳細は次号。

【第５回】　「大人のお酒」
先月の続き。なぜ原稿が届かなかったか？の謎は先生の”ファックスは受信できるけど送信はできないんです症候群”で解明できる。つまり送信を人に頼んだ原稿は日本のどこかに漂流して、家宝になっているとかいないとか・・・ウワサを耳にした方は教えてほしい。先日、ゆいいつ可能な受信も紙切れでOUTとなり、催促に出向いた。６/２０号の”一生ものの男”の中居君の話題となり「僕は”瞬間もの”だなあ。それも瞬間冷凍になる”ひえっぴ〜”だ」・・・この意味がわかる方は教えてほしい。

【第６回】　「ソーホーと万有引力の法則」
ロンドン帰りの青年は熱かった。朝１０時から深夜にまで及んだ『SMAPxSMAP』の収録後、都内の某店で、できたてほやほやの原稿をサカナに語ること約３時間。ロンドンで訪れたクラブの話から音楽、国民性まで・・・。”完結した街”に新しさを感じると面白がるのである。話は次第に彼の恋愛観、人生観、そして悩みにまで移って・・・。なんだか今月は深くシブめに語り合う作家とコスモであった。待望の映画『スーパースキャンダル』も８月末から大阪、東京で公開される。

【第７回】　「real or fake?」
多忙ゆえの錯乱か、今世紀最大の奇跡か・・・なんと先生が、締め切り日きっかりに、お原稿をくださったのだ！しかもFAXで ！！締め切り日前日にTV局で打ち合わせる予定が、数分の差ですれ違ってしまったハプニングはあったものの、もう今月は、カンペキな”優等生作家”。バンザイ！と喜ぶコスモは気づいた。ヤバイ、”今月のイナガキ”のネタがないぞ。うーん、ではFAX送信時に、何回か電話で「どうやるの？」とお聞きになった事実を公開。なにはともあれ、（祝）FAX送信記念日だね。

【第８回】　「セミの一生」
それは、とある喫茶店で起こった。次回のテーマ検討中に、急に先生の声が聞こえなくなったのだ。はた、と顔を上げると、腕組みのままこっくり、こっくり。あらら、数秒のうちにすこやかな寝息まで立てているではないか。あたりまえのことであるが、コスモでは”先生”であっても、ほかではいろんな顔をお持ちの多忙な方、と実感。後日お会いした先生は、髪に白いものがチラホラ。原稿執筆性ストレスか！？と驚いたが、”スマスマ”の『古畑・・・』の犯人用ヘアであったとわかり、ホッ。コスモ杞憂で秋深し。

【第９回】　「路線変更」
「見せて、見せて、見せて」「ダメ、ダメ、ダメ」「いいじゃないよ、読ませて」「オマエ、いつも全然読んでないくせに」「だからこそ、よけいに読みたいんだよ〜」--目の前で先生と香取慎吾クンの熱いバトルが繰り広げられている。校正とタイトル再考のために訪れたコスモはあんぐり。「タイトル？僕がリスナーの目で、あ、違う、視聴者としてつけてあげるよ」・・・おいおい。結局、慎吾クンの攻撃をかわした先生が無事タイトル決定！しかし手元に戻ってきた原稿はかなり引きちぎられていたのだった。

【第１０回】　「純真無垢な子羊たち」
「首が重いんだ。何かの祟りじゃないかなぁ」原稿を校正しながら文豪は、さりげなく不気味なことをのたまう。ウヌ、何か心覚えでも・・・。よくよく聞けば、毎日２時間ずつ４日間、ソファで手足だらん、首だけ起こした体勢でビデオを見ていたとか。さっそくトレーナーの先生がマッサージ、さらに鍼治療。「うースッキリした！」の声に朋友・木村拓哉氏が「置き鍼にしたほうが効くよ」とアドバイス。仰せに従ったかどうかは・・・「？」だ。

【第１１回】　「僕の謹賀新道」
連ドラの過密スケジュール突入で、今月の原稿は難産ぎみ。あせりの状況下、稲垣氏の脳裏にふと浮かんだのが「シチリア島恋物語」というラブ・ストーリー。日本人の混血の女性と恋に落ちるという物語で、脚本も堂々完成！稲垣氏はどうやら主演男優の座をネラッているらしい。詳細を知りたいのが半分、それよりまず原稿をくれませえと叫びたいのが半分。そうだ！いっそのことその脚本を掲載しませんか？

【第１２回】　「掃除の気持ち」
「面白いよ」と稲垣氏イチオシの本は、テレビ番組『WIN』でも紹介した『蛇を踏む』（川上弘美著）。蛇を踏んでしまったら、その蛇は人間となり、家で食事を作って待っていたという書き出しにざわざわ。「あのさ、忙しすぎて最近の僕って妙に人間っぽいんだよね」という稲垣発言に（も、もしかして誰かに踏まれたかぁ？）とおののいていると、「そう、人間汁が出ちゃってさ」とニヤリ。うわぁ〜、助けて〜。ホラーを聞くにはまだ寒すぎる季節です！

【第１３回】　「暗闇の声」
連載まる１年を迎えたこのエッセイ、稲垣氏あてのレターを本人に渡すのも１０数回にのぼる。そのたびに「ああ、この人またくれた」と名前まで記憶している様子。「こういう手紙をくれる人が僕のファンの”コア”だと思うんだ。返事出せなくて、申し訳ないなぁ・・・」そこでピ〜ンと閃いたのが、１周年を記念した稲垣氏デザインのSpecialお返事ハガキ。ただし多忙の身＋レターの山ゆえ、一日も早い実行を、原稿と同じ気分で切望する次第です。

【第１４回】　「眼鏡を探しながら」
うららかな春の某月某日の昼下がり。稲垣氏は喫茶店の入り口近くに陣取り、原稿の仕上げに余念がない。”ちっ、せっかくのオフなのに”と思った、かどうかは定かではないが、目は宙をさまよい、指は髪をかき上げての苦戦状態を経て原稿完成。緊張がほどけた彼は「僕の愛車、見る？」とニンマリ。ワォ〜、お店の前には愛カーならぬ愛チャリが一台！シンプルな自転車にヒラリと載って、颯爽と、ときによろよろと、が、決して転ぶことなく坂道を下る彼であった。

【第１５回】　「僕は明日帰る」
原稿締め切り日が近づいた某日、先方からご一報あり。え、え、なーんと、パリ帰りなんだと〜〜！４泊というショートステイにもかかわらず、数々の美術館巡りはもちろん、バトームーシュでの夜景を楽しみ、ロアール地方の古城や、ベルサイユ宮殿にまで足を延ばしたそう。買い物部門ではフット・ロッカーで購入したアディダスのスエットがお気に入りとお披露目。リフレッシュした心身で、舞台『広島に原爆を落とす日』（６/１４〜２９ 東京・紀伊国屋サザンシアター）の稽古に励む日々なのだ。

【第１６回】　「快楽の原則」
「つかさんの作品には愛があるんだよね」舞台『広島に原爆を落とす日』の公演前、つかこうへい氏との対談を終えたばかりの稲垣氏は”感動の余韻”を漂わせながら語った。この一年、映画やドラマやバラエティの収録中、コンサートツアー中、ロンドン帰りにパリ帰りetc.　いろんな状況下の稲垣氏に遭遇したが、”舞台”に入っているときが一番ハードな男っぽさを垣間見るような気がする。やはり本質は”演技人間”なんだろうな。

【第１７回】　「ベテラン医師には気をつけろ！」
ケイタイ電話につけられたピンクのキューピー人形が、ピコピコ点滅して受信を知らせる。「え？やっぱりAクリニックは痛いの？僕、痛いのイヤなんだよ〜」とエッセイそのままの現実が展開。奥歯グラグラ状態の稲垣氏は、甘くて冷たいバナナ・ヨーグルト・シェイクを（歯にしみないように神妙な顔つきで）つついている。が、「う、痛」と発するやいなや、電話をプッシュ。「絶対に明日予約入れて」と友人に懇願の低姿勢。とにかく夏コンまでに完治しようと懸命なのだ。

【第１８回】　「Eyes in the night」
筆者近影---ということで稲垣氏に撮影を申し込む。折りしも『広島に原爆を落とす日』の舞台出演中、楽屋訪問となったのだが、これがもうゴージャス楽屋！フカフカ敷物にCD、本、ギター、モデルガン、etc.・・・まるで自分の部屋のよう。「このモデルガンね、来た人はみんなこれで遊ぶんだよ。昨日も坂本龍一さんが遊んでた」と自ら手にしてニッコリの表情は、舞台の疲れもぶっとばし〜。そうか、これがリラックス法！文字どおり”舞台ウラ”をのぞいた気分が。

【第１９回】　「イメージ変換装置」
”原稿、FAXで送る”の第一報のあとは、音沙汰なしであった。ははあ、また送信手順を忘れたのかと疑っていると、雑音入り携帯電話から稲垣氏の声。「ごめんなさい。今、館山（千葉県）にいる（ザー）、帰ったらすぐ（ザー）送る・・・（ザーザー）」。しかしこの日は台風の大雨、原稿もお流れねと腹をくくる。が！その夜、キチンと清書された原稿さまのご到着。「じつは今日、３時起きして釣りに行ってたの。え、雨？全然降られなかったよ」この恐るべき強運ぶりを「やっぱり・・・」と思うのはCOSMOだけではあるまい。

【第２０回】　「バッテリー・チャージ」
校正のため、『スマスマ』収録スタジオに向かう。折りしも歌録りの日で、控え室にはオールメンバーが。リハから本番まで、録り、待機の状態が繰り返され、本番は１５分後に。その間、木村、香取両氏は雑談に花を咲かせ、ニコニコ笑顔の草��氏もそれに加わって。一方、ソファの上に腹這いになった中居氏はテレビ鑑賞。で、われらが稲垣氏は入念に原稿チェック。メンバーのリラックス法と、稲垣氏の集中力。自由な雰囲気の中に”仕事人の顔”が見えていた。

【第２１回】　「Sweets & Cars」
今回のエッセイのテーマ”車”にちなんで撮影したいゆえ「愛車で来てください」の要請に、アルファ・ロメオを駆ってぶぁん、ぶぁんと登場した稲垣氏。カメラマンS氏所有のプジョーをめざとく見つけ、目をキラリ〜ン。「わぁ、いいですねぇ。僕のと交換しませんか？」車を交換？洋服じゃあるまいし・・・と思えば、「このアルファ・ロメオも友達と交換して乗ってるの」とのこと。気分転換にはもってこいらしい。撮影後はドラマ（『恋の片道切符』日本テレビ系水曜夜１０時〜）収録。すっかり日の落ちたロケ場所に、スーツに着替えた”森慎一”が走る。

【第２２回】　「赤いリボンのプレゼンテーション」
稲垣氏と打ち合わせするのはここ・・・いつしか決まったオープンエアのカフェに通うこと、ほぼ１年。暖房から浅き春の風、冷房、そして入り口近くのテーブルの足元にカンカンと火のおきた七輪が置かれる季節が巡ってきた。人の出入りの多い店内で、人に気づかれない不思議なオーラを持つ稲垣氏、今回はいつにも増して柔軟モードである。あ〜、これは〜、もしかして、尽くしの”森慎一”？そういえば『広島〜』のときは軍人入ってたし・・・。彼の時の流れは、役の変遷で綴られるのである。

【第２３回】　「薄くて厚い友情の始まり」
黒のキャップをひょいと持ち上げて、稲垣氏は髪の毛をかきむしった。いま一度原稿を読み返していたのだが、一ヶ所どうしても納得がいかないところがあるのだと言う。「こう言い切っちゃうと、傲慢な感じがするじゃない？吾郎語録もいいけどさ、これじゃあ解けない方程式みたいで気持ち悪いんだ」---真剣に悩む横顔に、小説家の陰影を感じさせる（ような気がした）稲垣氏は、ギターを抱えてリハーサル室へ。さぁ、どこの部分で悩んでいたか、わかるかな？

【第２４回】　「アロワナの少女」
冬には必ず登場する（・・・といっても、知ってるのはこの２年だけであるけれど）黒のダッフルコートをまとった稲垣氏は、その日非常にゴキゲンであった。どうやら文中に記された現在の”恋人”シトロエンDSと蜜月状態にあって、ふと気づけば、打ち合わせ用の紙には所狭しと描き連ねられているDSの猫目、猫目、猫目。ははん、恋も最初がおいしい。情熱が一周（注：これは現在のSMAPの流行言葉とか）したら、猫目はただの車のラト。いや、彼ならば一生、”猫”のイメージに弱いのかもしれないが。

【第２５回】　「ウイ、ムッシュ！」
メイクルームで何やらパラパラとページをめくる音がする。イタリアの本を手にした稲垣氏、発見。そーか、『SMAPxSMAP』収録のために旅立ち間近だった。料理上達したのかな？「うーん普通」。イタリア語はわかる？「勉強しなくちゃね」　ふと顔を上げた目の色の深いこと。おー、これぞ江戸川乱歩の『淫獣』、明智小五郎の目。TV番組プロデューサーも「物事を見通し考える目ですね」とコメント（読売新聞より）。が、本人曰く、「前髪切ったからそう見えるだけ」。黒目がちの瞳が一層ミステリアスに染まる。

【第２６回】　「夕焼けチャイムにはまだ早い」
常日ごろ、タダモノではない！とニラんでいた稲垣氏。原稿チェックのため『SMAPxSMAP』収録現場に訪問時のこと、彼は人通りの超激しいドア前で、その作業に従事。ドアが開くたびにひょいと身をかわしていたが、何を思ったか、その危険ゾーンにしゃがみ込んでしまった。「あ、勢いよくドアが開きそ〜」と、叫ぼうとしたとき、視線を動かさずドアを手で押さえ、インスタント写真を撮りにやってきた香取氏にキメの笑いを。文学青年がこんなにキビンでいいのだろうか・・・。

【第２７回】　「初夏散策の懸案事項」
「ちょっと贅沢するときは１８００円のランチを食べに行くか、鰻なんかとるんだよね」稲垣氏、自宅でお昼を迎えたときはそんなメニューを楽しんでいるらしい。１８００円が贅沢というあたり、家計を握る主婦っぽさが・・・。かと思えば、「今日は風邪ぎみだから、カモミールティーにしよう。前から思ってたんだけどさ、これ、お砂糖いれてもいいの？」なんて無邪気な顔も・・・。「そうそう、今度の打ち合わせ、駅前のファミレスにしようよ。安いし、速いし」・・・別れ際のこの言葉は、ジョークかマジか。COSMOは悩み真っ盛り。

【第２８回】　「プリクラ改造論」
楽しげなおしゃべりが続いている。声の主は稲垣氏とコラムの写真を撮影中のカメラマン。やっぱりね、以前も二人で車のことで盛り上がっていたのだけど、今回も同様。ふむふむ、”稲垣氏が愛車シトロエンDSを撮ってほしい”とか、ほー、”場所は道幅の広い羽田あたりがいい！とか、おっ、稲垣氏の顔色が少し曇ったような。なになに、”羽田はいいんだけれど、そこまでシトロエンが故障でたどりつけないかもしれない”だと！徐々に盛り上げて、一気に落とすこの話術。うーぬ、稲垣氏にはまだまだ学ばさせていただきとうござりまする。

【第２９回】　「存在しそこなった彼女の名前」
「そういえば共演した女優さんも僕のこと、稲垣さんって呼ぶ人もいれば、稲垣くんって言う人もいる。もちろん吾郎ちゃんもありだけど」今回のテーマ”名前”にちなんでその呼ばれ方について話していたとき、稲垣氏はひとり考察に入った。「それって僕に対する距離感を決めるってことだよね。あなたはここまでの人っていう一種の線引きでしょ？うーん、そうだよねえ」　”吾郎ちゃん”が全国区となった今、「吾郎」と呼び捨てにする人も少ないそう。---誰、それ？「親とか、昔の友達ぐらい」---寂しげなのはなぜ？

【第３０回】　「真夏のコンプレックス」
今日はレコーディングと、セ氏４２度（本人の弁）の灼熱スタジオ撮影を抱えて、いささかバテぎみの様子。「ふだん書かない、僕自身の弱み、書いちゃった。これも暑さのせいだよ」どうやら夏が徹底的に苦手らしい。「キライ、大キライ。でも、夏でもいい瞬間はあるよね。ほろ酔いかげんで店を出たときのナマぬるい大気とか、バケーションの高原のたそがれどきとかね。でも、この時期はたいていコンサートじゃない。しかも今回は大きい会場ばかり。僕の好みとしては、５００人ぐらいのところでしっかり聴かせたいんだ」---今年はソロバラードの演出に凝ったそう。じっくり聴いてみたい。

【第３１回】　「セキセイインコは泳ぐ」
近ごろ稲垣氏に屈託のない笑顔が増えた、と思っている方も多いのではないだろうか。８月放映の生スマの”指スマ”イチヌケのときとか、CD『SMAP 012』に入っていた、写真中央でのあの笑顔とか。本人はしげしげとその写真を眺め、「残念だよね、みんな笑っているのに、木村クンだけ笑ってなくて。ねえ、そう思わない？」。いやいや、個性いろいろ、表情バラバラ、それがSMAPなのでは？「だからこそだよ。みんなが笑顔のSMAP、見たいなあ」　あ〜、稲垣氏もかなりのSMAPファンだったのだ。

【第３２回】　「フィギアの部屋」
カゼで高熱を発し、点滴を受けたばかりの身で打ち合わせにやってきた稲垣氏。「いつも慣れた人がうってくれるんで痛くないんだけど、これ見てよ」---うちどころが悪かったせいか、内出血ぎみの細腕が、ああ無惨。ドラマ『ソムリエ』の収録がかなりハードとみたが、「撮影でいろいろなワイン飲むんだけど、保存状態が悪いと、どんないいワインもダメだね。ボルドーもいいけど、最近はブルゴーニュも見直してきた。エシェゾーなんかいいよ」と、ワインの話で一気に元気に。やっぱり切っても切れない関係みたい。

【第３３回】　「ある晴れがましい席で」
『スマスマ』収録後に行われた今回の撮影。ちょっとウェーブのかかった、新しいヘアスタイルで登場した稲垣氏は、長時間にわたる収録にも疲れた様子を見せず、撮影中もリラックスして、ヘアスメイクさんとおしゃべり。「そのパーカ、LAD MUSICIANのじゃない？俺も持ってるよ、カーキと黒と、どっちにしようかと迷ったんだけど・・・」。LAD MUSICIANとは、このエッセイにも以前登場した、稲垣氏の友人、黒田氏がデザインするファッションブランド。「今度、店に行ってみてよ。僕も一緒に立ち上げたようなもんだからさ」。うーん、デザイナー役でお呼びがかかる日も近い！？

【第３４回】　「バラとマフラーの変奏曲」
待ち合わせの喫茶店、稲垣氏は香りを楽しみながらコーヒーを飲んでいた。ときたまではあるが、彼が早く来た場合は、決してひとりで店の中に入ることはなかったのに（イヤなんだって）、なぜ？理由は簡単、うん、外は寒かったのだ。そういえば、先月はバースデー。プレゼントは圧倒的にプラモデルが多かったそうで、COSMOに書いたフィギュアの話の影響かも・・・。例年上位を占めるワインが少なかったのは、みなさん、”ソムリエ”佐竹に敬意を表したのかな？さて、’９９年の抱負は、「まず映画、それから舞台も・・・」。今年もいろんな顔に出会えそう。

【第３５回】　「旅が与えてくれるもの」
打ち合わせ終了後、慌しく立ち去った稲垣氏の椅子の下に、紙袋ひとつ。ムム、COSMOにそっとプレゼントか？と一瞬ほほえみかけたが、ふと先ほど、「東急ハンズでコロコロローラー買ってきたんだ」と話していたのを思い出した。そうだ、コロコロローラーで掃除という趣味が、彼にはあったっけ。趣味といえば、エッセイに登場したご両親との海外旅行は２度目。リゾート滞在型の旅は稲垣氏の選択で、「両親の趣味と合わなかったみたい」とポツリ。その言い方に、彼らしいやさしさが香る。

【第３６回】　「結婚突然変異説」
「顔デカイね。しかもこのテの顔は幸薄く、性格も内向的なんだよねぇ」。たまたまCOSMOの担当者が持っていた、ほかの記事に使う彼女のポートレートを見て、稲垣氏が分析した。「ウチのもそうだからわかるんだ」。そう、写真に写っていたのは猫（そして今回、本邦初公開、愛猫・ロシアンブルーと登場！）どうやらネコの顔で性格がわかる術をお持ちらしい。分析ついでに「人間も２０代のうちに３〜４年かけて恋愛し、それをきっちり終わらせないと、人間形成に問題が残るんだよね。それができないから、僕はヘンんだ」と自らのことも。今は映画『催眠』（６月公開予定）の、心理カウンセラーがのりうつってるらしい。

【第３７回】　「春眠、暁ニモトレズ」
前号初公開の愛猫の写真はお気に入りらしく「カワイイでしょう？」「でももう一匹（アメリカンショートヘア）も載せないと、不公平だよね」などと、もうひと方にも気を遣っている溺愛ぶり。しかし、「家に帰ったときに出てくるのは決してお出迎えではなく、『何だ !? 何だ !?』って好奇心からだと僕は思うよ」とも。うむ、やはりひとすじナワではいかない方が好きみたい。猫も、もちろん女性も（？）

【第３８回】　「帽子の中に隠されたシェフの秘密」
ちょっと驚いたこと---撮影中に突如、<鈴木あみ>の顔マネ。似てたかどうかはさておき、場は確かになごんだ。いささか驚いたこと---北欧出身・２１歳モデルと知り合いになったそうで「キレイなんだよね、とにかくキレイ。彼とだったら一緒に飲みたいなあ」・・・？？？ すごく驚いたこと---「最近太りぎみだからさ、僕はあくまでジャープなイメージじゃないとマズいでしょう」とまだ早い夜の繁華街をジョギングで去っていったこと。うーんお達者で〜。

【第３９回】　「スポーツ家族・稲垣家の謎」
初夏の気配を感じさせるある日、「最近僕、フケたよねえ」と語り始める稲垣氏。映画『催眠』を見たあとの素直な感想らしい。「アップだとシワも増えたような気がするし、２０歳のころの顔が一番よかったんじゃないかなあ」。そうボヤきながら、「でも、昔できなかった表情も可能になったし、少なくとも２年前の顔より今のほうがいい」と。顔は人間の成長の証。今月の舞台『月晶島綺譚』（６/１１〜２７）では、どんな表情で登場するのか、想像は無限大。

【第４０回】　「マイナーコードで伝えたい」
「ようこそ、貴賓室へ」と稲垣氏が招き入れたそこは、白い大理石（たぶん）の床に、白いレザー（たぶん）のソファ、豪華な雰囲気のロビーだった。今回は、都内某所の彼のマンションの一隅で打ち合わせ。当然、住人の出入りがあり、外国人は通る、子供は走る、犬は吠える、そして時折り彼にアイサツする人もいて・・・。芸能人にしてもこのフレンドリーな近所づき合いは何？「そうなんだよ、不思議な人が多いでしょ、ここ」

【第４１回】　「”舞台人・稲垣”の密やかな楽しみ」
単発ドラマの収録、コンサートリハーサルの合間をぬっての打ち合わせとなった。’９１年９/９デビューのSMAP、今改めてメンバーについて綴ってほしいという読者の声に、考えてひとこと。「難しいよね、僕が皆のことを語るときはあくまで主観なのに、活字になると客観性をもって事実になっちゃう。それは少し違うと思うんだよんね」。SMAPのメンバーであり、かつまたSMAPをこよなく愛するゆえのお断り。寂しいけど納得。

【第４２回】　「僕が彼女に目を奪われた理由」
撮影におじゃましたのは、単発ドラマ『名探偵・明智小五郎』（テレビ朝日系、放送日未定）の収録現場。明智小五郎に扮した稲垣氏は、炎天下にスーツ姿でも汗ひとつかかずクールな演技。しかし、「OKでーす」の声に、すかさず「ねえ、扇風機とって」。登場したのは、１０ｃｍくらいの超小型のオレンジ色の扇風機！顔に風を送り「あー涼しい」。”汗知らず”の演技の裏に名小物アリ。

【第４３回】　「唇の記憶」
「もし僕が女だったら、絶対好きになっちゃうな！」。出ました、稲垣氏のアブナイ発言。そのお相手とは、豊川悦司氏。ドラマ『危険な関係』の収録でビビッときたらしい。共演者にはセクシーNO.1の藤原紀香嬢もいるのに、なぜ？惚れたポイントは彼の食べ方。「じつにキレイにおいしそうに食べるんだ」などと語りつつ、リゾットを注文し、残さずたいらげた稲垣氏。「さあ、今日はもう食べないようにしよう」。その食べっぷりもお見事だった。

【第４４回】　「いつものテーブルでの一考察」
エッセイに書かれているとおり、カフェ執筆家の稲垣氏、今回受領の時間になっても未だマス目が埋められていないのは、どうしたことか？見れば狭いテーブルにはケイタイ電話が２台、１台はメール専用で、「この間のJCO事故や、その対策をいち早く送ってくれるから役立つんだよね」とマメにチェックしてる様子。隣でデート中のふたりにも目を向け、「あのふたりは本当のカップルとはまだ呼べないね、見ててわかるけど」そんなこんなで、原稿は遅延の一途。

【第４５回】　「空を見上げる気持ち」
珍しくオフの一日、有名ブランドのセールに出かけ、しこたま買い込んだという稲垣氏。一緒に行った草��氏とお買い上げ金額が数千円しか違わなかったのには「スゴイよね〜」。そしてランチは、歯医者さん帰りの木村氏と。うーむ、本当に仲良しチームなのね。しかし打ち合わせ中、何度も「ああ、買いすぎた。もう冬物は絶対買わない」と反省する姿は、われわれ女性と同じ。今年の冬は、稲垣氏の新ワードローブに注目だ！

【第４６回】　「ビター・スイート・メモリー」
いよいよ２０００年の幕開け、稲垣氏がどのような迎え方をしたかといえば、まず原宿の某店で、ミレニアムシャンパンを購入。ラベルのかわいさでチョイスしたという一品。誰と祝杯をあげたのかが、気になる気になる。お正月休みは、稲垣家恒例の海外ツアー。ご両親とお姉さま夫婦（もちろん’９９年生まれの甥っ子も）とともにハワイへ。昨年の[今月のイナガキ]を思い起こすに、今回の目的地はご両親を喜ばすための選択。”２０００年　始まりはステキな　親孝行”　字余りなり。

【第４７回】　「渋谷、１９：３０」
「ゴッホ展を見てきたんだけど」と、稲垣氏。「ゴッホって気が短くて、わがままな人間 みたい、でもたった１０年間にあれだけの絵を描き、３７歳で逝ってしまうのもすごいよね」。単なる絵画鑑賞にとどまらず、性格や人生までくみ取ろうとする感性は、かなりアーティスティック。その人が『スマスマ』の罰ゲームで４２．１９５ｋｍ完走できるや否や？「いやー、僕の筋力ってマラソン向き。マラソンは有意義だから、番組でも負けてもいいと思ってたんだ」とか。結果オーライ。

【第４８回】　「走る男」
「番組で所ジョージさんにもらったんだ」と稲垣氏がバッグからゴソゴソと取り出したのは、パープルの円盤。え、新手のフリスビー !? と思いきや”Trick Spin”というアメリカでブレイク中のおもちゃ。「さすがチェック早いよねー」と稲垣氏、周囲の目も気にせず指先でくるくると回す。ブレイクといえば「俺ってマイペースに見えて、新しいものに弱くて」と、話題のキックボードも購入。でも乗ってるのは「家の中だけ」。歩道で暴走はしていないらしい。

【第４９回】　「稲垣的チョコレート効果」
「全然セクシーだと思わないよ」撮影で使用したUS版コスモの、かなり露出度の高いカバーコスチュームへの感想を求められて、稲垣氏ひとこと。「これはあくまでファッションだもの。むしろこっちのほうが」と手にしたフランス版コスモのカバーは、シンプルなピンクのニットにジーンズ姿。「だからだよ、このジーンズからペパーミントのショーツがチラッと見えたら、よけいにセクシーだよね」うーん、稲垣流エロス。”これみよがし”は嫌いとみた。

【第５０回】　「今はこのまま」
「ラジコンを買ったんだ。この間、慎吾の家で見たら、すばらしくキレイで」打ち合わせ の合間に稲垣氏、ポツリ。動くばかりでなく、フォルムも美しいラジコンカーにいたく感動し某所で購入したとか。「ルノーのアルピーヌっていう型。デフォルメがすばらしいんだ」。ううむ、今月のネタに使える！と思った瞬間、コスモにひと言「今月のイナガキに書いていいからね」・・・バレバレ？

【第５１回】　「のみ込まれない言葉のために」
最新号のページに見入っていた稲垣氏は突然顔を上げ、言った。「知ってる？今、カーネーションっていろんな色があるんだよ、ブルーとか」彼が見ていたのは”花キャラ占い”のページ。そういえば大好評のうち幕を下ろした舞台『七色インコ』の初日は５/１４（日）、まさに母の日だった。記者会見で宮沢りえ嬢に「何かプレゼントは贈った？」と聞かれ、苦笑していた稲垣氏。はたして母上はブルーのカーネーションを受け取ったのだろうか？

【第５２回】　「危険ガ　イッパイ」
”アブナさ”について沈思黙考していた稲垣氏、おもむろに目を開け、つぶやいた。「蚊だ。ここには蚊がいる」。そう、夏の”招かざる客”。しばらく原稿に向かった稲垣氏、突然、両手を宙に振りかざしパチン！「殺した。いっぱい血を吸ってる。誰の血だろう？」---手のひらを見つめて低くつぶやく声は、まさにホラー。ドラマ『催眠』収録中はずっとそのモード？

【第５３回】　「東京ステーションホテルにて」
打ち合わせ中、なぜか話題はワインの話に。すると稲垣氏、身を乗り出し「○○って酒店でよく買うんだけど、この間ブルゴーニュのDRCの、”８６年のエシェゾーを買ったら明らかに質が落ちてて、飲めなかった」。立て板に水の勢いでワインのディテールを述べるのはさすが。でもクレームは？「つけなかった。そうだよね、文句言うべきだよね」。ソムリエ稲垣、じつは意外と小心者。

【第５４回】　「バラは人を運ぶ」
今月のテーマは花。「僕は白い花が基本的に好きなんだけど、舞台の楽屋にいただくのは、紫の胡蝶蘭がいいな」。なぜ、胡蝶蘭？「もつんだよ。それもなぜか、紫が一番もつの。５月の舞台のときにもたくさんいただいたけど、一番もったのは美輪明弘さんの胡蝶蘭。なぜか色は白だったけど」。なるほど、似た者同士（？）の共感が花をももたせる？COSMOはちょっと複雑・・・。

【最終回】　「そして地球は回る」
「本当にいいファンが多くて、ありがたいよね」。稲垣氏はしみじみとつぶやいた、体調を崩し、点滴を打ったあとの絆創膏も痛々しい左手で、ファンレターを読みながら。５年の長きにわたり、彼自身が自分の言葉で思いを綴ってきたエッセイも、いよいよ最終回。思わず目頭を熱くするCOSMOに稲垣氏、「じゃあ、第二部までお休みだね」。え、第二部 !? 何の話ですか、センセイ！


KYOKO'S COMMEMT:
コスモの編集の方が吾郎ちゃんの近況を細かく観察して書いて下さっていたので毎月楽しみでした。しかし、作家の近況なのに「繊細なボディ」「黒目がちの深い色をした瞳」など美しく描写して下さったり、また吾郎ちゃんのアブナイ発言や天然な行動なども惜しみ無く暴露して下さったのが嬉しかったです。そして吾郎ちゃん自身の発言「僕はあくまでシャープなイメージじゃないと」とか「２０歳の頃の顔が一番よかった」など・・・ファンの私達がまさに話題にしているようなことをちゃんと自覚しているのに改めて驚きました。またファンレターをきちんと読んで「いいファンが多くてありがたい」と言ってくれ ているのには嬉しくて涙が出そうに・・・。そして、最後に「第二部」についてほのめかしてます！この時に「第二部をぜひお願い！」とすぐにリクエストしなかったことを今頃後悔している私です。


ANGEL'S COMMENT:
本当に、KYOKOさんにはご苦労様ですとお礼を言いたいですね。この編集後記は、当然世に出たエッセー写真集には掲載されていないので、当時ファンではなかった方たちは目にしたことがないと思いますので、じっくり読んで楽しんでください。
編集者の方がファンのためにイナガキの現状を教えてくれるのが嬉しくて、本文のエッセーと同じぐらい毎月楽しみにしておりました。こうやって続けて読ませて頂くと、当時の吾郎のお仕事や髪型、気になっているものが本当によくわかって楽しいですよね。相変わらず、何かドラマや映画を撮っているときは自分自身のキャラがわからなくなる吾郎に「役者だなぁ」と思わずにはいられません。そして、綺麗な人は男性女性に関わらず吾郎は惚れてしまうのは、ここでも発覚ですね(笑)　あと、00年のシャンパンのくだりは思わずいろいろ語りたいのですが、とりあえず控えておきます(爆)

やはり、吾郎のエッセー写真集第２弾はどうしても出してほしい。こうやって編集後記を読ませてもらうと、編集者の方の原稿受け取りも忙しいスマップのメンバーから毎月決まって取りに行かれるのは大変なようですが、問題は本人次第だと思いますね。もともと文章を書くのはそう嫌いな方ではないと思うのですが、あれだけ忙しいとなるとなかなか大変なんでしょうねぇ。なんとか、みんなでお願いするしかありませんね、吾郎にも(笑)
この編集後記を見てもらってもわかるように、実はCOSMOには写真集に掲載されなかった回もあるんですよね。それも後日KYOKOさんにお願いしてUPさせて頂きます。お楽しみに。


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『馬耳東風アラ・モーダ」（未収録分）』 出典：96年4月〜00年11月号　更新日：07年10月1日

第３回　「a day in his life」

日記について書こうと思う。人はなぜ日記をつけるのか？ 自分に向けてなのか、それとも誰かにむけてなのか・・・。僕の日記を他人が読んだとしたら、その人は何を思うだろう？ 僕は恋人の日記だったら読んでみたいと思うし、また読みたくなかったりもする。日記とは意外と複雑で難解な存在なのかもしれない。
某月某日、いつもと同じ顔ぶれだ。福岡でのコンサートのため、朝、マネージャーにピックアップされ、メンバーの木村拓哉と一緒に羽田空港へ向かう。お互い特に話をすることもなく、寝グセだらけの顔のまま、半分まだ夢の中。ふと自分が冬物のロングダウンを着ていることに苛立ちを感じ、寝言のようにつぶやく。
「もしかして、もう春なのかなぁ」
何をボケているのか、あたりまえである。泊まりのツアーのときなど、ついラクな格好が一番と思い、スウェットにロングコートを羽織ることなんか多いのである。「今日は辛子明太子のようにピリッとしたライブにしようぜ！」などとメンバーのわけのわからぬ掛け声とともに、２時間にわたるライブが始まった。よく、舞台に立つ者には必ず神が降りてくる、というが、本当なのだろうか？僕がたまにフリを間違えるのも、神様のいたずらなのか。OH！ゴッド（笑）
最近は、昔のように ”１万個のカボチャの上で踊ってる”　なんて思わなくても平気なくらい余裕が出てきた。僕はいつになくちょっとばかしテンションが高くなる（これも神のいたずらか？）
帰りの飛行機でのこと。僕は上空１万メートルのナイトフライトの最中、ひょんなことからコクピットに招待される。「すみません、娘がファンでね、サインしてくれるかなぁ。かわりにすばらしいものを見せてあげよう！」キャプテンの指さす方向、北斗七星が輝くその隣に、一生のうちもう二度と見ることができないといわれている百武すい星を発見する。たくさんの星がちりばめられたその光景と、１万人のファンのペンライトの光とがシンクロする。きっと一人一人、まったく違う生活環境で、いろんな人生を送っているように、夜空に輝く星一つ一つにも、何万年、何億年という歴史があり、そこにいろんなドラマがあるんだろう。またもや僕はテンションが高くなり、記念にもらったJALのステッカーをバレないようにこっそり草��剛の背中に貼ってしまった（これも神様のいたずらか？）
最近の僕の日記はこんなページで---今回はややふざけすぎたが---構成されている。日記はきわめてプライベートなものだし、人それぞれ１００％異なる。まぁ、ほとんどその人そのものといっても過言ではないだろう。フリーダ・カーロの日記はフリーダ・カーロのようだし、寺山修司の日記は寺山修司なんだろう。自分の気持ちを誰かに話すことで、自分自身も納得するように、自分の気持ちを書き出すことで、自分自身をまた違う角度から確かめることができるんだろう。
日記だけには本当の気持ちを書いてみるのもいいかもしれない。素直に思うままを書いてみたら、自分の想像を超える何かが見つかるような気がする。


第４回　「クローゼットとシュールなサボテン」

洋服を買いに行こうと思い立った。何か今の気持ちにピッタリの服を買おうと思った。突然の休日に、僕は少々戸惑って、クローゼットのドアを乱暴に開けた。昨日僕がかけたとおりにハンガーにかかった服を見つめ、ため息をつく。ベーシックなタイプから今をときめく流行のスーツまで、ズラリと並んだ服が僕にチョイスされるのを待っている。当然僕はSMAPだから、ステージモードの金のガウンや、とんでもなく派手なコートなんかも、そこに溶け込んでいる。
僕はなぜかブルーになって、クローゼットのドアを定位置に戻した。どれも着る気がしないとは。一体全体、僕は何が欲しいんだ？ 気を取り直して、昨日コンビニでレンジグルメと缶ビールとともに買ったファッション誌のページをめくってみる。きれいなモデルたちがスタイリッシュなポーズで笑いかけてくる。「今年の夏はこれで決まりだ！」とか、そんな適当な見出しが目に飛び込んでくる。僕はまた深いため息をつき、カタログ状態のファッション誌をベッドの上に放り投げた。
最近は着心地のいい服を着ることが多い。以前はその日の”テーマ”をイメージしていたと思う。あるときは知的な実存主義者風に、黒いタートルに黒い細身のパンツで、テーマは”エスプリ”だ。あるときは年上のお姉さんのハートを掴むべく、少年性をテーマに”迷える子羊風”（これは１６、１７歳頃だが・・・）。ときには”人気アイドル、追っかけから身を守る風”、また”相当街の人々モード入ってる風”などなど。ただやっぱり、かなり疲れる。早く家に帰って着替えたくなるし、必然的にフットワークも重くなってしまう。そんなのがうっとうしくなって、寒いときは暖かくなる服を、移動が多いときは動きやすい服を選ぶようになった。まぁ、スタイルから機能性へと、選ぶポイントが変わったってことでしょう。
それにしても今日は何も着たくないとは。買い物に行くこともできないこの状況がおかしくなって、僕は思わずふきだした。笑いだしたらますますおかしくなって、声を出して笑い転げてしまった。そんな僕を遠くで見ていた僕は、さらにおかしくなり、腹がよじれるほど笑い続けた。僕はいったい何なんだ？
でっかいサボテンの鉢をそっと洋服の中に置いて眺めてみた。とりあえず笑いを全部ぶちまけて、どうにか肌を隠して外へ飛び出した。ものすごくいい天気で、風が気持ちよくて僕はすっかり一時のパニックを忘れ、車を走らせた。花屋のお姉さんの笑顔にヤられて、またアナーキーなサボテンなんか買ったりして。今はもう、洋服なんてどうでもよくなり、誰か夕ご飯を一緒に食べてくれる人いないかなぁ、なんて思っている。気ままな僕の人生のひとコマは、相変わらずこんな感じで過ぎていくのだった。


第８回　「セミの一生」

ここ一年くらいお世話になっている、ヘア＆メイクのブースカ（女性）が、いつになく僕のクセ毛をていねいにブローしながら言った。「この間、お見合いをしたんだけど、あったまきちゃう！向こうの方から『この話なかったことにしてください』だって」「なんで、急にお見合いなんて？」「私もそろそろ安定したくて・・・。この男なら一生やっていけるって相手を探さなきゃ、将来が不安でさ」
”一生やっていける男”かぁ・・・。僕は以前、コスモで『一生ものの男を探せ』の特集をしていたときのことを思い出した。その記事を見ながら僕は担当さんにポツリとひと言、「僕は一生ものの男ではなく、瞬間ものの男だなぁ」と呟いた。そのひと言（暴言!?）に対する疑問、「瞬間ものってどういうことですか？」という手紙が、編集部にたくさん届いたそうである。一生もの、瞬間ものの違いとは？僕はたとえば、ジッポーとマッチと思い浮かべる。まさに一生ものと瞬間ものである（マッチの燃えかすをためて家でも建てない限りね）
さて、なぜ僕は瞬間ものであるのかと考えてみよう。すると「である」というより「でありたい」という結論に達する。つまり、僕は瞬間ものでありたいのだ。遠いのか近いのかよくわからないような未来にとらわれて今を暮らすより、今を、この一瞬一瞬を生きたいと思う。たとえば、ひと夏分の一生しか与えられていないセミ。秋がくればまた土の中に帰っていくという事実を知らず、そのあまりに短い夏を堂々と生きている。僕はセミのように生き、そして恋をしたいと思う。
女性に対しても、一生ものの男として将来への安心感を与えるより、瞬間ものの男として、一秒も怠ることなく、瞬間瞬間、愛していたいということである。これからどうなるのか、なんてことは本当に誰もわからないのだから。今を一生懸命生きずにどうする！というのが、今をいきる今の僕である。
近ごろ、男性女性を問わず、輝いている人と出会うことがとても多くなってきた。彼らのまわりを覆う気というのかオーラというのか、それが放つパワーは、僕の目を強烈に奪う。彼らはなぜ輝いているのか？そんな疑問は彼らに近づき、触れ合い、話すことでなんなく解決した。というより、納得させられたのだが、彼らはハッピーなのだ。生きていることが、毎日が。ただ純粋に。”自分に気持ちよく生きる”という基本的なのに忘れがちなこと、それに気づくだけでもラッキーなのだと僕は改めて思う。
前回に続き、われながらかなり力の入った文章になってしまった。しかし、要は現実だ。瞬間ものの男の名に恥じぬよう、懸命に瞬間瞬間を愛していこうと願いつつ、実際の僕といえば瞬間瞬間、女性に振り回され、ただセミのように鳴いているだけなのであった。（あ〜、サナギのころに戻りたい〜）


第１１回　「謹賀新道」

’９６年は心を揺さぶられ、予測のつかない一年だった。よくありがちな言葉を使わせてもらうと、去年１年間はホント、いろいろなことがあったわけで、たとえるなら広大な台地に続いている一本道を、イージーライダーのようにただ真っ直ぐ、何事もなくゆっくり走り続ける、そんな予定だったのが、目をかっ開いてカーチェイスでもする勢いで、ハンドルを、くねくね切り返してしまった・・・そんな一年だった。これって雑誌のインタビューにでも答えているような勢いの発言ではあるが、ホント若いうちの３６５日なんてそんなものだと思う。そしてゴール直前に、最後の難関であるボスキャラふたりが現れた。
ひとりは大人の色香を漂わせながら、ハサミという武器を持ち、天空から髪をなびかせ攻めてくる。もうひとりは三味線にのせて甘い歌声を響かせ、暗い路地裏に僕を引きずり込もうとする。・・・なんて、突然の押し付けがましい僕の空想だ。
これは久々の連ドラ出演となった『彼　KARE』の撮影に入ったせいであろう。その「彼」というのは僕の演じる天才美容師、岡本俊矢、２２歳。原宿の美容室に勤めていたが、ある事件をきっかけに神楽坂の町に流れてきた。そこでふたりの女性と知り合う。ひとりは結婚もし、街の美容室で働いている、４０歳過ぎのちょっと翳りのある女性。もうひとりは神楽坂のスターである芸者。３０歳だが、その年齢を感じさせぬチャキチャキの江戸っ子の押しの強さがある。そのふたりに「彼」は愛される。
撮影はたいてい、まだ暗い早朝６時くらいから始まる。ロケ現場に向かう僕は車のライトをつけなければならず、ゴミをあさっているカラスを避けながら走る。現場に着くと、白い息を吐きながら、朝食のオニギリを持ってブースカが待っている。低血圧のためか、後ろ体重ぎみの姿勢で僕が「おはようございます」と挨拶すると、メイクアップ中の年上女優ふたりは、役づくりのためにテンションを上げつつも、静かに挨拶を返してくれる。女優さんのメイク中を見るなんてすごく失礼だが、僕はその姿を見るのが好きだ。なぜなら未完成の美しさは、僕にしかわからないから。
今回もそうなのだが、なぜ年上の女性と仕事でかかわることが多いのだろう？「ビストロSMAP」に出演する女優さんとは、たいてい共演したことがある気がする。自分なりにその答えを考えてみると、それは僕が年上の女性に対して”対年上”ではなく”対女性”として接するからだろう。近ごろ、年上の女と年下の男のカップルが流行っているが、長続きしないというのも耳にする。それはたぶん、若い男が彼女の”年上”を意識して甘えすぎるからだ。女性はいくつになっても男性に守られ、大切にしてもらいたいのではないだろうか。僕はそんな気持ちをほんの少しわかってしまった。
そして’９７年。「彼」と一心同体になって走り続ける道が二またに別れ、僕が道に迷ったら、方向を導いてくれるのは、そこのあなただ。


第１４回　「眼鏡を探しながら」

眼鏡を探しながら考えた。目は口ほどにものを言う。そう、<目を見ればわかるなんて/ちゃんと言わなきわからない>なんてどこかの歌詞にもあるが、やはり目と目で通じ合うなんて、ちょっと憧れたりする。少なくとも僕の今までの人生の中で、そのようなことを感じたことがいくつかあったと思う。それに特にわれわれのような仕事をしていると、言動だけで表現しきれないことだってたくさんある。歌番組でのカメラ目線はちょっと苦手だが、演技をするときだと異常に目に神経を使う。セリフのない部分では、目の演技が重要視されるときもある（個人的に目で演技するということにこだわりがあるのだが）。
眼鏡を手にして思い出した。子供のころ、父親が車の運転をするときだけかける眼鏡に憧れていた。体の部品がひとつ、人より多いような気がしたからだ。当時、ロボットおたく少年だった僕にとって、本体のパーツが人よりも一部品多いように感じたのだ。しかし、サバンナのコイサンマンのように目がいい僕にとって、眼鏡は憧れの存在にとどまるしかなかった。
眼鏡をふきながら考えた。大人になった僕は、憧れだった眼鏡のかわりにサングラス収集のとりこになってしまっている。気がつけば、洋服の数より多い。ウェリントンタイプからジョン・レノンの丸メガネタイプまで、さまざまなディテール、そしてさまざまなレンズの色、まさにメガネフェチ。ファッションというものがシンプルになったぶん、唯一こだわりがあるのはまさに眼鏡だそう。ジーンズのときも、ローファーにシェイプされたジャケットを着るときも、気に入った眼鏡ひとつで、しっくり自分らしくなる。
眼鏡をかけながら思った。僕は眼鏡をかける前に必ずレンズをふくことを忘れていない。特別神経質なほうではないが、レンズが汚れているのだけは気になる。それは車のフロントガラスや、ワイングラスが汚れているのがイヤなのと同じかもしれない。けれども、なぜ女の人はよくレンズが汚れたままの眼鏡を平気でかけていることが多いのだろうか？それはせっかくの「口ほどにものを言う」目の魅力が台なしだ。そんなとき僕はいつも、それを指摘するべきか、気がつかないフリをするべきが、黙ってふいてあげるべきが、迷うのだ。
眼鏡をはずしながら気づいた。レンズが汚れていてもキレイであっても、眼鏡というのは、目に一枚”フィルターを通す”ということになるのだろう。やはり何かを訴えたり伝えたりしたいときは、素目のほうが勝っているのかもしれない。流し目や伏し目などの視線の表情もそれにひと役かっている。確かに目の力は大きなもので、”アイ・コンタクト”なんて響きもいい。けれどそれだけでは言葉が少ないぶん、行き違いになったりすることも多い。やっぱり、肝心な愛の言葉は”言わなきゃわからない”かな？


第１８回　「Eyes in the night」

僕と猫２匹との共同生活が始まって、約半年がたつ。熱帯魚もまともに飼えなかった僕にとって、これは奇蹟的といえるだろう。運命的な出会いだったのか、それとも彼女たちが僕を待っていたのか。彼女たちは今では、僕にとって欠かせない存在である。そして彼女たちにとっても、僕と僕の部屋という空間がすべてなのであろう。まぁ、読者のみなさんは、僕の猫好きというのはご存じだと思うが、そもそも昔から猫と人間との結びつきというものは強いものがあって、古代エジプトなどでは信仰の対象だったし、人々の生活にも身近な存在だったはずだ。日本文学の代表的な作中でも、彼らは登場することが多い。
そんな猫ちゃんだが、そもそもこの猫というネーミングの由来は、文字どおり”寝る子”というところから来てるらしい。”寝る子”・・・確かに彼女たちは僕の睡眠をじゃまするわりには、僕が帰宅しても、犬のように玄関まで迎えに来ることもなく、スヤスヤと眠っている。名前を呼んでも、片耳がピクッと動くくらいである。
”寝る子”・・・猫というものは、一日の半分以上を寝ているわけだが、人間と同じように、日常的な夢や非現実的な夢、うれしい夢や悲しい夢、少しエッチな夢を見たりするのだろうか。観察してみると確かに、低音で呻いたり、触れてもいないのにゴロゴロとノドが鳴っていたりすることがある。そんなとききっと、何か夢を見ているに違いない。
猫の見る夢---確かに興味深い。しかし、夢といっても家猫である彼女たちが存在する世界は僕の部屋だけであって、それがすべてである。あとは僕を中心にして、家に訪れる人間たち。目が合えば突如として変貌し、赤ちゃん言葉ですぐに抱っこしたがるわりにはタバコをふかす量が多く、あまり近づきたくない彼、ご主人さまであるゴローさんよりも猫じゃらし使いがうまい彼女など、さまざまな人々が視界に入ってくる。たまにこちらを見向きもせずに、ご主人さまと話込んでいるおじさんなどもいる（ウチのオヤジ？）。
彼女たちの夢の登場人物というのは、きっと限られているのだろう。でも複雑な現実を生きる人間の場合は、そうはいかない。僕といえば、近ごろ人に追われたり、裁判で裁かれる夢を見たりする。ちょっと悪夢がちだ。初夢以外はすぐに忘れることが多いが、最近は妙にこびりつく。なぜだろう。２万４０００字の台詞のせいだろうか、上下動の激しい不安定な気温のせいだろうか。
昨夜も寝苦しく、何度も目が覚めてしまった。そんなときなぜか、必ず２匹の猫も目を覚まし、必ずある一定の方角をじっと見つめている。　もしかすると僕が想像している以上に、彼女たちには別の世界が見えているのかもしれない。これから１０年以上はともに生きているはずの、その間に、彼女たちの世界を垣間見ることができるのだろうか。


第２０回　「バッテリー・チャージ」

一般的にこの季節になると”食欲の秋””運動の秋”などといわれ、夏バテからもすっかり遠ざかる。肉体的にも精神的にも活性化され、人間本来のパワフルさみたいな部分が出てくるものだが、僕の場合はどうやら、普通の人よりサイクルが２，３ヶ月早いらしく、夏の初めごろにそれが訪れる気がする。夏バテどころか食欲が増し、運動も読書もすすむのだ。
<某月某日。東京は、気温摂氏３４度まで上昇し、人口密度は下降している・・・>
僕は今、千葉県の最南端、館山の海上で船に揺られている。昨夜２時ごろ東京を出発し、車で３時間かけて到着した。ただただキスのてんぷらではなく、造りを食べたくて、友人と海釣りに来たわけだ。もちろん、こんなことは初体験だ。
湖でカップルが乗るような小さなボートで、岸から５００〜６００ｍの沖合いで剣道の竹刀のように、力いっぱい、竿を振りかざした。最初は釣り糸に餌をつけるのも怖かったものの、朝７時から午後１時までの６時間で、３０〜４０匹のキスやメゴチを釣り上げた。「う〜ん、釣り日和だなぁ」などとオヤジくさいセリフを吐きながら背伸びをすると、昨夜からの寝不足のせいか、大きなあくびを連発する。船の上で６時間も揺られているなんてことも初体験で、日が高くなるにつれて僕の気分は悪くなり、船酔いという最悪の事態に突入した。もちろん、帰りは友人に運転してもらい、僕はキスの刺身を夢見ながら、助手席で青ざめていた。その後、家でさばいて食べた、キスの刺身やメゴチのてんぷらの絶品さは、言うまでもないだろう。
<某月某日。コンサートツアーも半ばにさしかかっている・・・>
僕は約１年ぶりに、ここ広島に来ている。会場には１１時に入る予定だが、僕は、東京ではありえないことだが、妙に朝早く、７時に目覚めた。部屋の窓からは瀬戸内海の風景が広がり、厳島、似島、江田島などの島々が緑に輝いている。
僕のやっていた舞台『広島に原爆を落とす日』に登場した街だ。きっと５２年前の８月６日、こんなふうに空が澄みわたり、海や島は美しく輝き、海辺には鳥が群れをなして飛んでいたのだろうと思うと、複雑な気持ちになる。そんな気持ちとは裏腹に、一日２回の公演で、４回も食事をとる自分は、ライブではとてもエネルギッシュだと思う。 <某月某日。ある朝、目が覚めたら僕は脱皮していた・・・>
夏に発散し、なくなったエネルギーを蓄えるべく、僕はみんなよりひと足早く新年、すなわち新秋を迎える体になっていたのだ。


第２２回　「赤いリボンのプレゼンテーション」

プレゼントを買いに行こうと思った。十何年かぶりに、クリスマス・パーティーというものに誘われ、パーティーメニューにはプレゼント交換やら仮装タイムやらのアトラクションがあるにもかかわらず、古い友人からの誘いでついつい断りきれなくて、”恐怖のクリスマス・パーティー”に行くことになってしまったのである。プレゼント交換・・・まったく僕の辞書にはない言葉だ。クリスマス・プレゼント・・・はたして何を買えばいいのだろうか？
毎年、この季節になると原宿・表参道にイルミネーションがきらめき、街行く恋人たちは冷たい木枯らしの中、何かふたりだけのオリジナリティーのあるプレゼントを探し求め、温め合いながら歩く。僕はその雑踏の流れの中に、ひとり身を任せることにする。
なぜか僕はプレゼントというものが苦手なような気がする。どこかこっぱずかしいような、わざとらしいような。なぜならば、まずプレゼントを選び、しかも包装紙の柄まで店員に聞かれ、さらにリボンの色まで指定せねばならない。そして、いざプレゼントを渡すときには、シチュエーションやタイミング、さらにはそれにのせる言葉、までも考えねばならない。そのすべての過程を、渡す相手に想像されるのは照れくさい。けれども一般的に、女性にとっては、そんな細かい心くばりのツメが重要なポイントだと思う。
映画でいうなら『ベティ・ブルー』で、ベティの誕生日にゾルグが車のトランクから、火のついたロウソクを立てたケーキを何の前ぶれもなしに、さりげなく取り出すシーンなんか、憧れるのだろう、きっと。わかってはいるけれども、やっぱり苦手だったりする。
僕流のプレゼントや心くばりはどういうものなのだろう？自分の首に赤いリボン、なんていうのはどうかな？「僕がプレゼントです」などと言った瞬間、抱きつかれるかひっぱたかれるか。人生には一度くらいはいいかもしれない。それはジョークとして、僕は”記念日＝プレゼント”というよりも、あげたいときにあげたいものを、姑息な演出なしに渡せて、それを相手が喜んでくれればいいと思う。そして一緒にいる時間や、一緒に見たものから感じられる、言葉や形にできない雰囲気、それが色褪せることなく相手の記憶に残ってくれればいいかな。それが本当のプレゼントの意味かもしれない。リボンの色を決めるのを悩んだり、渡すタイミングを慎重にはかったりするのも、悪くないけどね。


第２４回　「アロワナの少女」

人は誰でも美しいものを見れば瞬時に心動かされ、自分の中にある独占欲みたいな部分に刺激を受ける。と、同時に、その美しいものを自分のものにしたいというのは、当然の願望だろう。しかし問題なのは、その後に、それを人と共有するかしないか、ということ。ただし、もしも美しい夜空を見たとして、それを大好きな人に見せたいと思うのは当然のことであって、独占したいと思うのはちょっと違うと思う。
家の近くを車で走っていると、大通りに一軒だけ、午後１０時という時間にもかかわらず、こぢんまりとした店が、ウィンドウから青い光を微かに漏らしながらやっているのが見えた。その力弱い青い光の引力にひかれ、車を急停車して店の中に入っていく。店内には大きな水槽が５、６個あり、その向こうで、木箱を積み上げてひとりの少女が魚（アロワナ）にエサをやっている姿が、ガラス越しに目に映った。今にも魚に呑み込まれてしまいそうなその少女と、力強いアロワナの関係に疑問を抱く前に、青い光の中の美しい光景に、僕は心を奪われた。
それはまさしく偶然に偶然が重なった一瞬の出来事であって、心を突き刺すような刺激とともに、僕の目にしか映らなかったであろうという歓びに浸ることができた。もし、もう一度同じような光景に出合えたとしても、僕はそれを人と共有するようなことはないだろう。なぜならば、あまりに刺激的な美しさというものは、とても刹那的なものがあって、そして自分の心の中を一周したあとに”美しい”と結論するのだから。他人にわかるわけがなく、わからせる必要もないのであろう。
　 逆に、人と共有したい美しさとは？それは包容力のある美しさ。まるで母のような・・・。たとえば、日本の四季や自然。海の中。あかちゃん。（きっと）宇宙。まさしくそれらは瞬間的なものでもなければ、偶然の産物でもない。誰もが共感できる美しさ、安らぎだろう。
　 ちなみに、今年に入ってその美しさを武器に僕を魅了しているのは、猫目で曲線美の’７３年生まれのシトロエンDS。外見のフォルムやディテールの美しさのみに惹かれたその車の性格はまだわからないが、ただひとつわかるのは、その美しさに母のような包容力は求められないこと。今、僕らはお互いに独占の歓びを分かち合ってる。（いつまで？）


第２７回　「初夏散策の懸案事項」

最近、家の近所を歩いていると、「あ、サンキューだ」などと呼ばれることが（小・中学生を中心に）多く、僕は複雑な思いで初夏の陽射しを感じ、濃い緑に葉の色を染めたイチョウの樹を仰ぎ見て、近所の坂道を散策している。”サンキューゴロー”といえば、『SMAPxSMAP』の中でみなさんに愛され、熱いご支持を得ているキャラクターなのだが、コーナーが始まって早１年がたつ。いつか”野口五郎”に出演してもらうまでは終われないと思っているのだが、番組スタッフの人たちは、やはりテレビ局という会社の社員なので、番組編成とともに移り変わることもある。
先日もひとり、番組スタート時から一緒にやってきたディレクターが異動になってしまった。SMAPの間で恒例になっている、香取慎吾クンでおなじみのコント、「勅使河原コール」で、メンバー全員で新しい門出を祝福してあげた。そんなジョークとユーモアが、笑いを追求するうちのメンバーなりの愛情表現なのかもしれない。
別れもあれば再会もある。今、公演中の舞台『広島に原爆を落とす日』のスタッフ、キャストとも約１年ぶりに稽古場で再会した。緒川たまきさんの髪もショートからボブに伸び、光浦靖子さんもちょっとばかり以前よりも女の色気を感じさせ、演出のいのうえひでのりさんも、自分のところの劇団が好調なのか、少し肥えて見える。たとえるなら”長い夏休み明けの再会”といった感じで、”ディープ山崎”ではなく、”サンキューゴロー”でもない素の稲垣吾郎は、皆に会い、さっそく稽古が始まり、ストレッチの組み合わせで肌と肌が触れ合うと、たとえ男性同士とはいえ、ちょっと恥ずかしい気持ちがした。
舞台というのは何ヶ月もの時間をともにし、ひとつのものをゼロからつくりだしていく。たとえるなら同じ釜の飯を食べたり、酒を酌み交わしたりする合宿のようなものだ。そう考えると『SMAPxSMAP』という番組は、テレビという枠の中で最も”舞台的”なのかもしれない。
テレビ、舞台のどちらでも仕事をする僕は、両方のスタッフのいい面、悪い面を見たりする。通常、テレビのスタッフというのは複数の番組を持ち、複数のタレントとおつき合いをしなければならない。それは人間関係のうえではとても難しいことであって、いろいろな人にいい顔をするのは仕方がない。その点、舞台や映画のスタッフは職人気質だが、閉鎖的な面もいなめない。
先ほどのにぎやかな小・中学生を背に、僕は坂道を上がりきった。近くの小学校の校舎から、子供たちの歌声が聞こえる。僕はふと、今の自分を支えてくれるスタッフの顔を思い浮かべた。僕はどちらのスタッフがなじみやすいのか。本当の僕の体質はどちらなのか。それはまだわからない。


第２８回　「プリクラ改造論」

つ、ついに撮ってしまいました。プリント倶楽部、通称プリクラという謎の粘着式縮小型切り取り用記念写真を！ことの発端は、先日、友人のファッションデザイナー、黒田君のブランド、LAD MUSICIANの秋冬コレクションが渋谷は円山町で行われ、シャンパン片手にそのショー会場に入ったことに始まる。仕事も早めに片付いたので、本番少し前に入り、搬入の手伝いなどもしていると、リハーサルを終えた外国人モデルの少年少女たちが、僕を見つけるやいなや、いっせいに駆け寄ってきた。まるで冒険家が弓や松明を持った異民族に囲まれるように、僕の周囲に人の輪ができた。その中でいちばん悪ガキそうな１４〜１５歳の少年が、どうやら早口の英語で僕に何か頼んでいる。子供（元気な）に弱い僕は、そのまま手をひかれ、１階にあるゲームセンターに連れていかれた。
「Take a shot with me?」
「O, OK」
僕は渋々、その勇気ある行動に踏み切ることに決めた。しかも、その子供ときたら、僕に写真のデザインまで選ばせるときた。僕とプリクラ、プリクラと僕・・・とにかく人に見つからぬようにと伏し目がちにしても、ここは渋谷の繁華街。SMAPと外国人モデルがプリクラをやっていたら、こんな愉快なショーはない。
なぜ写真好きな僕が、プリクラ嫌いなのか？それは写る人物に、その瞬間的な異常なテンションと、シチュエーションにかかわらず、無意味にふざけなければならない設定が必要だということである。たいがい顔しか写らないその表情というのは、女の子だったら弾けたコミカルな表情で、ラッパーみたいなポーズをとったり、男の子だったら眉間にシワを寄せ、ひと昔前のチーマーのように口をしゃくりあげ、ガンをくれた表情だったりする。確かに、あの縮小された枠の中で自分を表現するにはそのくらいのアピールが必要なのかもしれない。しかも何より僕に嫌われる理由は、撮られるときの体勢にある。後ろ体重どころか中途半端に腰を曲げる。するとたいていの人はその時点でオシリが出ている。その滑稽な姿を後ろから見たことはないのだろうか？
もし僕らが恥ずかしくなく楽しめるプリクラがあるとすれば・・・たとえば”３分間写真”のような個室プリクラ。でも気軽さを考えればそれはありえない。じゃあ、いっそのことゲーム感覚で、エステブームを反映しての整形プリクラ。厚生省認定で、整形後の見本例を表現してくれる。あるいは、１０枚に１枚はドッキリ・プリントがあって、レントゲン写真が出てきてしまうとか、いろいろ考えられる。まあどっちにしてもそんなこと考えながらプリクラを撮っている僕は、どうしてもプリクラ用の顔になれず、ごらんのとおりであった。

（注：本文の横にちゃんとその時に撮ったプリクラ---サングラスかけて無表情---が貼り付けてありました）（笑）


第３０回　「真夏のコンプレックス」

珍しくこんな時間に目を覚ました。今日は午後からの仕事だというのに、上昇する真夏の気温のせいではなく、なぜか朝日とともに目が覚めたのだ。ふだん聞いたことのない小鳥の鳴き声が聞こえてくる。”猫進入禁止”のはずの僕の寝室に入り込んだのは、まぎれもなく野生児のアイツだ。しかも、昨日脱ぎ捨てた白いストレッチ素材のＴシャツをベッドがわりに寝息を立てている。普通だったら、かわいい寝顔を見れば、物音ひとつ立てずにそっとしておいてやりたいと思うのが主人の心理だが、僕はステレオのボリュームを最大にしてみる。すると・・・。
そのＴシャツというのは、友人のデザイナーのオリジナルなのだが、とても変わったデザインで、右胸に縦一列、黒いボタンのついた、シェフのユニホームのようなマークが入っている。昨日一日、そのＴシャツを着ていたら、４人もの人にほめられ、いま一番のお気に入りということになっている。でも、僕がＴシャツ一枚で外に出られるようになったのは、ここ最近のことで、１０代のころはヤセていることへのコンプレックス（？）から、真夏の空の下でも長袖を身にまとっていた気が・・・。まあ、今だから言える話なんだけど。
今日も錦糸町にある元セイコーの工場で今は倉庫兼貸しスタジオになっている、通称”錦糸町スタジオ”に向かう。本物の中学校の教室と錯覚してしまうほど、うまくデフォルメされたセットで、３０人もの生徒が待つ中、ベニヤ板でできた教壇に立つ。始まって間もない役者人生の中で、初の教師役。秋にオンエアされる『世にも奇妙な物語』の撮影で、僕は今、世にも奇妙な新人教師。別所右（あきら）になりきっているというわけだ。
壇上に立ってみると、生徒一人一人の様子が、手にとるようにわかる。自分が中学生のころなんかは、先生の目からなるべく離れようと、最後列の席に座りたがったが、それは大間違い、後ろほどよく見え、そして、比較的対象物の多いぶん、一人一人の性格もよく見えてくる。芸歴が長く、大人社会で生きてゆく術をよく心得ている子---そんな子に限って「中学校の勉強なんか、今の芸能界には役立ちませんよね」なんて言って、僕を試してみたりする---「おう、本物のSMAPだよ」てな感じで、テレビを見るように僕を見ている子、そして、上目遣いで完全に誘ってる子（僕の思い違いだろうか？）。でもやっぱり、生徒はみんなかわいい。この世代の子たちがなぜキレるのか、僕には信じられない。
そして、なによりも一番デフォルメされたのは”中学時代の僕”だったのだ。生徒の輪の中に入っていると、コンプレックスを多く抱えて満喫できなかった中学時代の空白のアルバムに、一枚だけ色鮮やかな写真が加えられた。


第３７回　「春眠、暁ニモトレズ」

梅の盛りは過ぎ、桜の開花にはまだ少し早く、花粉症に悩む人々が急ぎ足で街を駆け抜けていくころ、僕は季節の移り変わりとはまったく無縁の撮影所のスタジオにいた。陽の差し込まない密閉されたスタジオは、誇りと使い込まれた機材の独特の匂いが立ち込めている。繰り返される本番の声、スタッフの緊張した息遣い、そして演技者の熱気、それらが重なり合い、作られた空間は、リアリティーを持つ情景へと変貌する。いやいったい、どちらが虚構でどちらが現実なのか？なんてことを考えてしまうのは、たぶんいま撮影中の映画のせいだろう。
『催眠』は、脚本にもかかわっている監督の落合正幸氏曰く、”サイコ・シュミレーション”。脅かしもののホラーとは違い、人間の意識の深さや脆さを追求していくストーリー展開で、もしかしたらこんな現実が起こるかもしれないなと思わせる（起こったら恐ろしいが）。僕の役は催眠療法のスペシャリストである心理カウンセラー、<解離性同一性障害>などという言葉が並んでいる台本と闘っている。
ということで、この映画の撮影が苦痛なのかといえば、まったくその逆なのだ。まず共演者の菅野（美穂）さん。『ソムリエ』以来、約半年のつき合いになるが、芝居に取り組むマジメさや、一生懸命な態度に、僕はかなり刺激されている。その比類ない瞬発力と集中力を目のあたりにして、ひそかに彼女を”怪優”と呼んでいたりするほどだ。
もうひとりの大きな存在感は落合監督。理科系思考の監督は、クールなところが、『ソムリエ』の佐竹城に似ている。誰かが面白いことを言っても「それ、冗談？ そうだよね、冗談だよね」と冷静に分析したり、撮影が翌朝の７時に及んでも、変わらぬトーンで「稲垣さん、次のカットはですねー」と的確に説明してくれたり。常に変わらぬ監督は、ほとんど寝ないし、食べない。そうすることによって、ドーパミンが出て、脳内ホルモンが活性化されると信じているらしい、との噂。
リアリティーを重視する監督は「ヨーイ、スタート！」とカチンコを鳴らす音とともに芝居を始める、というのではなく、いつの間にかフィルムが回っているという方式をとる。その観察力は人一倍で、微妙な感情表現を追求し、僕にも細かい注文をつける。僕は（そう見えないかもしれないが）注文は多ければ多いほどやりやすく、うれしいタイプ。なぜなら芝居という世界で僕は一個の素材であるからで・・・まあ、それなりに”考える素材”であるんだけどね。
かくして、翌朝まで延びる撮影を僕は快適に続けている。もしかして僕こそが、監督の「催眠」にかかった最大の患者？僕は自分の知らない自分にめぐり合う現場を、誰よりも楽しんでいる。


第４６回　「ビター・スイート・メモリー」

---昨夜わが家に、初めてビデオというものが来た。本当は夏前に購入し、ロス五輪をすべて録画する予定だったそうなのだが、「どうせ買うなら新製品」ということで、ここまで延びてしまったわけだ。１１階建ての団地の僕の部屋から雪景色が見えるのは今まで生きてきた１０年間の記憶をたどっても３度目か４度目のことで、とても新鮮に感じる。そして明日は２月１４日。ヴァレンタイン・デー。女子にとっては特別な日らしく、今日の休み時間もみんな教室の隅でヒソヒソ話をしていた。もちろん、僕と相思相愛の立場にいるあの子も、その輪の中にいるわけで、ふだんはポーカーフェイスな僕も、心の中ではドキドキしていたのだった。
翌日、一夜明けて凍りついた雪道をアイススケートのように滑りながら、期待に胸をふくらませて僕は学校に急いだ。帰りのHRが終わり、掃除当番である僕とあの子に、ふたりきりになるチャンスがめぐってきた。当然、チョコレートをもらえるであろう僕の鼻は高くなり、まだひとつもチョコレートをゲットできていない同じ掃除当番の男子ふたりを鼻で笑っていた。いつもは嫌いな雑巾がけも、クリスタルグラスをシルクのクロスで磨いているかのごとく、ていねいにていねいに、時間をかけて行う。彼女が手提げ袋をいじっているのに過敏に反応すると、袋の隅からラッピングのピンクのリボンが顔をのぞかせていた。チャンス到来。すると突然、スネ夫のようなキャラのアイツが、何を血迷ったかいきなり叫んだ。「オイ、ゴロー。掃除なんか女子にまかせて、オレら男同士で遊びに行こうぜ。どうせチョコレートもらえない組だしな。へっへっへっ」
---万事休す。当時、小学生のルールとして、男同士のしがらみは最優先すべきものであり、女子側につこうものなら３年はいじめられる。そんなヤツを僕は知っている。後ろ髪をひかれる思いで、僕は男同士のまったくつまらん雪合戦に参加したのだった（OH.ブローンハート）
これがほろ苦い僕のファースト・ヴァレンタインの思い出だ。あれから１０数年が経ち、ＶＨＳビデオはもちろんのこと、ＤＶＤやデジタルカメラ、ペット型ロボットまで登場している今の世の中、ヴァレンタイン・デーというものは進化しつつあるんだろうか？いや、現代は恋の告白という本来の目的から離れてお祭り騒ぎだけが残っている気がする。そう、義理チョコなんて言葉もあのころはなかったはずだ。もっとピュアで、一年に１度子供同士のルールを突き破り少し背伸びした気分になれる、そんなスペシャルな一日だった。
さて現在、僕は実際のところ、甘いもの嫌いで有名で、日ごろチョコレートを口にすることはほとんどない。しかし、ヴァレンタインの日くらいは、あの苦い思い出を噛みしめながら、ディナーをともにした女性につき合ってデザートを食べるのもいいだろう。


第５３回　「危険ガ　イッパイ」

現代社会で生きていくうえでの危険、物理的なことでも心理的なことでもそれは数限りなく存在し、僕らのまわりで蠢いている。基本的に僕は危ないことは嫌いだ。危ないことをして何が楽しいのか？と思っている。が、そう言いつつも今日もじつはすごく危ないことをしてきた・・・。
ドラマ『催眠』の僕の役どころは映画と同じ精神科医なのだが、由香を救えなかったことがトラウマとなり、現実逃避をして下町の時計店の２階に下宿させてもらっている。今日は、彼の回想シーンで、屋上から飛び降り自殺をしようとする由香の手を間一髪で握るのだが助けられなかった、という状況の撮影が行われた。
地上４０階建てのビル、命綱をつけているとはいえ、僕はそこから身を乗り出し、スタントの女の子は柵から外へ出てぶらさがる。これだけでもかなり危ないのに、風が強い日という設定なので大きな扇風機がブンブン回っている。
こ、怖い。と同時に、この感覚は何か懐かしさも含んでいた。高島平団地の１１階に住んでいた僕は、高さには慣れていたはずで、屋上で遊ぶのが好きだった。屋上は子供たちの無法地帯、隠れ家的な匂いに包まれているものだ。存分に肌を焦がした夏の夜に咲く、板橋花火大会の大輪の花の美しかったこと。そう、その屋上での出来事、団地の二棟の間は１メートルちょっとあいていて、小学生の僕らは”根性試し”とか言って、その間をジャンプする遊びを思いついた。次々と子供たちが飛んでいく中、僕は決して飛ばない子供だった。なぜなら、危なさの中にスリリングなものを見だして、その刺激を求めるようなところは僕にはないからだ。僕は心地よいこと、気持ちよいことが大好きな快楽主義者である。無論、世の中には”快楽＝危ないこと”と言う人もいるだろうけど、僕の場合は心地よい危なさと心地よい安全さとの狭間にいることが、快楽と一番直結している。恋愛なんかにしても、ヘルメットかぶっての恋愛はつまらないけれど、危険な恋愛も望まないわけで、どこかに保証があり、なおかつ危なさも感じるもの、要するに”いいとこ取り”の恋愛がすきだったりする。
裏を返すと、節度を超えたものは苦手、たとえば巷で流行の暴力アニメも敬遠したいクチだ。何事も、一歩手前ギリギリのところで止めるからいいのであって、すべてを描写するのは想像の余地を奪い、危なさまで破損するのではないか。『催眠』のように、目に見えないものから発される恐怖、そして目に見えないものは目に見えないもので解決しようという精神的な対処、そういう世界のほうに共感を覚える。
ところで、僕がイメージよりもはるかに安定度の高い人間である、ということを少しは理解していただけただろうか。一攫千金狙いにもいけないし、かといってサラリーマンにもなれない。危ういところを漂っている僕。もっかの悩みは『SMAPxSMAP』のエンディングトークの黒ひげゲームでどーんと飛び出す首、あれ、危ないと思いませんか？


KYOKO'S COMENT:
写真集＆エッセイ「馬耳東風」に収録されなかったエッセイ１５編です。今読み返してみると、どれも面白くてファンならきっと読みたいだろう話題ばかりで、これらがどうして選ばれなかったのか？その基準は私には分かりませんが、きっと写真集に素敵な撮りおろしの写真を少しでも沢山載せるために泣く泣く削られたんでしょうね。
毎月エッセイに添えられる写真も最初の頃は無くて、サイケデリックなイラストでした。写真が登場したのは途中からで、それらの写真は雑誌のグラビアと違って、担当さんが「筆者近影」と呼んでいたように、ふと何気なく振り返った顔や、伏し目がちなはにかみ顔、旅行先で撮ったプライベートな写真など貴重なものも多かったですね。中でも私の一番のお気に入りは愛猫を抱いた写真（これは写真集にも収録されていますが・・・）猫ちゃんを素敵に撮るために自分は横目で顔も半分しか映ってない所・・・本当に吾郎ちゃんの猫愛を感じました（笑）


ANGEL'S COMMENT:
本当に、私も何故これらが未収録になったのかと疑問に思うほど素晴らしいものばかりです。とてもイナガキらしいですよね。本当に突っ込みたいところもたくさんあるし(笑)、そして、何より吾郎の文学青年らしさが非常に良く出ています。

当時、私は掲載された中で「セミの一生」がとてつもなく好きでした。「一生ものよりも、瞬間ものの男でいたい」と言う吾郎は、今も貫いている気がします。良い意味で自分が一番という人生は、彼の美意識にも合っているんではないでしょうか。それでいて、他人に対して非常に優しい吾郎だからこそかっこいいとなるんですけどね。 自分の首に赤いリボンを巻いて「僕がプレゼントです」っていうのを一度やってみたいっていうのも・・・ものすごくファンを喜ばしてくれるような話題ですよね(笑)　これ、どの書き手さんも読んで驚愕したんではないでしょうか（あるジャンルの書き手さんですがｗ）いやぁ、吾郎それいいと思うよ。何よりも喜ばれると思います(笑)　プレゼントも、特に記念日じゃなくて普通にさりげなく渡してあげたいっていうのも、もう本当に今と替わってなくて吾郎が本当に愛しくなります。この人は、本当にロマンチストで優しい男性ですよね。素敵すぎて何ももう言うことがありません。

どこを読んでも稲垣吾郎。こうやって彼の文章を改めて読ませてもらうと、やっぱりエッセイ第２弾を出してほしいと切に思ってしまいます。いろんなエッセイ本は好きで読みますが、ファンの贔屓目なしで吾郎の文章は素晴らしいです。個人的に私がすごく好きな文章を書かれる方ですね。ぜひ、またエッセイの連載をどこかで始めて欲しいなぁ。


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『ポポロ』 出典：96年1月号　更新日：07年4月9日

ＳＭＡＰ対談第２弾「将来も友達、今も友達」（木村、稲垣）

「お互い難しいヤツだと思う。けど、嫌いになったことはないネ」
　
懐かしい話を聞こうと待ち構えているところへ現れたふたりは黒の衣装。ほんの数年前の、まだあどけなかった顔を思い出せないほど目の前の彼らはカッコいい。「背景が赤だと緊張するね」という吾郎と、小道具のクマを足で挟んだりキュッと抱きしめたりしながらレンズを見据える木村。その視線の中に大人の色香を漂わせる２３歳と、もうすぐ２２歳のふたりは言う。

「俺たちって、すごく似てるようでもあり、全然違うようでもあるってよくいわれるんだよね」


<一緒に買い物に行って同じような格好してた>

稲垣　「デビュー当時、同じような髪形や似たような格好してた時に似てるって言われたよね。渋谷のチーマーの流れでブーツはいてジーパン引きずるのが流行った頃、木村君に教わったりして一緒に古着とか買いに行ったじゃない。」
木村　「あったあった。よくそういう服着てたよ。」
稲垣　「まあ、それからファッションは全然別に行っちゃったけどね。」
木村　「吾郎はすごくスタイリッシュだよ。生活面でも自分で自分をプロデュースしてるようなとこがあるでしょ。部屋の環境を変えて気持ちをコントロールしたり。俺なんか何にしても楽だったらいい。」
稲垣　「おれ、そうでもないよ。それはイメージだよ（笑）。スタイリッシュということで言えば、俺は木村君の方だと思うよ。木村君は何を着ても木村君だから、存在自体がファッションだよ。」
木村　「それ、褒めすぎだよ。」
稲垣　「でも、男ってそういうほうがいいじゃない。男にとってファッションは二の次というか、自己アピールの三段階目ぐらいの部分だから。」
木村　「吾郎ってさ、話すことにしても何にしてもすごく緻密だよね。俺はすごく大雑把。だから吾郎と話してて、たまに緻密すぎてムッとすることがある（笑）。」
稲垣　「なにそれ。僕も大雑把だよ。緻密に見えるだけ。だってＯ型で細かい人ってあんまりいないと思うよ。嫌なことがあっても家帰って寝ちゃえば忘れるという。Ｏ型の人ってみんなそうじゃないかな。どこかノー天気っていうか。」
木村　「俺もＯ型だよ。確かに吾郎は決して暗くはないね。」

<あの頃は楽しかったな。いつもドキドキしてた>

稲垣　「木村君、昔ウチの高島平に泊まりに来たことあるよね。俺も木村君が千葉から出てきて最初に住んでた所に行ったことあるし。木村君の家が学校に近かったから、そこから学校に行ったことも覚えてるもん。懐かしいね。」
木村　「うん・・・。吾郎の家の風景とか匂いもよく覚えてるよ。」
稲垣　「ああ、匂いって、すごく記憶の中で鮮明だよね。」
木村　「たまにさ、仕事の帰りに車の窓を開けて走ってると、住宅街のあたりで夕飯の匂いがすることがあるじゃん。”この匂いかいだことある”っていう感じのあったかい匂い。それに遭遇すると、ああ、とか思うよね。あの匂い、最高だよ。」
稲垣　「そういう家庭じみたのって、最近ないからね。」
木村　「俺の家でふざけて家にあった酒を全種類飲んで、ヘロヘロになってふたりで板の間で寝たっこともあったじゃない。」
稲垣　「木村君の家の近くにスポーツクラブがあって、いきなりスカッシュしに行ったこともあったよね。」
木村　「オールナイトの映画を見に行ったりもしたね。『ハートブルー』とか。あの頃って、ホント楽しかった。いつもドキドキしてた。いきなりメンバー同士で喧嘩始まったりとか、好きな女の子ができたりとか。」
稲垣　「そうだよね。でも、去年、『リトルブッダ』に一緒に行ったじゃん。」
木村　「映画の話になると、吾郎はうるさいよ。俺は好きなものしか見ないけど、お前は”とりあえず見ておこう”っていうところがある。何にしても興味の対象が広くて、そういう意味では俺が出してないところの電波を出してるから、そのレーダーに引っかかったものを聞くと面白いし、刺激にもなる。ただ、時々”稲垣吾郎”という雰囲気が強すぎてちょっと堅苦しい時もあるけど（笑）」
稲垣　「どういう意味（笑）。でもさ、たとえば映画の趣味では”マニアックですね”とか”よく見てますね”とか変な褒め方をされるんだけど、俺は普通のことをやってるだけであって、すごくノーマルな人間なんだよ。むしろ、話題の映画とか本とかを知らない方がおかしいと思うんだよね。日本て、そういうものに対する関心が少なすぎる。」
木村　「ほら、そういうとこが”稲垣吾郎”なんだよ（笑）」

<最近は、自己批判を語ることが多くなった>

木村　「俺たちの間で一番似てる部分は、何をやるにしても中途半端が嫌いってことじゃないかな。やるんだったらちゃんとやりたい。カッコよくするならカッコよく、バラエティでバカやるんだったらバカやろうよって。そのあたりの感覚はすごく近いじゃない。とにかくハンパでいることがすごく嫌いなんだよね。」
稲垣　「それわかるな。俺なんかたまに、バラエティですごい役がきたりしてたじゃない。でも、やる時はちゃんとやらないと余計カッコ悪い。もとから仕事の面では両極端でいることが好きだから、それを楽しもうとはいつも思ってるけど。」
木村　「だよね。でも、思えば、昔はこんな話しなかったよね。今、俺と吾郎と友達と集まって飲んだ時なんか、お互い、自分で考えてることが出来ない自分に対する批判ばっかしてる。それって何かに負けてることじゃん。俺は負けん気過剰だから余計イライラするのかもしれない。」
稲垣　「でも、その気持ちがなくなったらダメだと思うよ。」

<”難しいひと”って最高の褒め言葉だよね>

稲垣　「よくさ、”メンバー同士、どこが好きですか”なんて聞かれるじゃない。でも好きに理由なんかないんだよね。好きな人はすべてが好き。木村君もね。」
木村　「ホントかな。」
稲垣　「というか、自分にとって好きだと思える人は、悪いとこもいいとこも含めて好きってことよ。これって男と女の恋愛っぽい意見なんだけど、男同士の間でもその気持ちはあると思う。」
木村　「それは言えるかな。男と女だとさ、顔が可愛いとか胸がデカいとか足がキレイとかあるけど、男同士はそういうのないよ。逆にアイツの顔が好きとかあったらコエーよ（笑）。だから、どうして木村拓哉が稲垣吾郎のことが好きかといったら、なぜならば稲垣吾郎だから。なぜ山に登るのですかと聞かれて、そこに山があるからっていうのと一緒。」
稲垣　「男同士はそういうことを口に出して言い合うもんじゃないと思うし。」
木村　「でもあえて吾郎に関して言えばさ、いいと思うのは、俺から見れば”難しい人”ってこと。カッコの中に入ってるものが見えにくい。根はあったかいくせにどこかいつも醒めてるという、ミステリアスなところがある。」
稲垣　「それってさ、俺にとっては最高の褒め言葉よ。俺から見れば木村君も難しいけど、面と向かって言われるとなんかうれしい（笑）。”難しい人”って、男と女の間でもそうかもしれないけど、永遠の研究の対象になりそうな気がするからね。」


「対談の風景」
友達って、より若い時ほど、似た者同士でつるみたがる。それが次第に人間は違うから面白いということに気づき、お互いを尊重するようになる。そして、根っこのひとつが同じでさえあれば、友情はより深い所で静かに育まれる。ふたりを見て感じたのはそういう大人の男同士の世界。それは女性にはちょっと入り込めないエリアのような気もして、羨ましくもあり、ふたりのこれからに興味は尽きない。撮影の間、顔を近づけ木村と吾郎は笑いながらこちょこちょと話をしていた。とっても自然な笑顔だった。


KYOKO'S COMMENT:
吾郎ちゃんの言葉「Ｏ型は大雑把。Ｏ型はノー天気」。まさに私は自分の事を言われているようで、「当たってる〜！」と一人で爆笑しました。昔、木村君の家に泊まってお酒を飲んだ話はすごく印象に残っていて、二人が板の間に寝転んでる姿を何度も想像したせいか、私の頭の中にはその姿が今でもしっかり浮かんで来ます。映画については、当時から吾郎ちゃんが幅広く映画を見ていたことが分かり、今テレビや雑誌で映画紹介の仕事をするための土台を築き始めていたんだなぁと感動しました。そしてこの対談で私が一番気に入ってるのが、「好きな人はすべてが好き。木村君もね」という吾郎ちゃんの言葉です。今でもきっとそのままの言葉で言えるよね？ とにかく、この対談は私の宝物です。当時、この対談を見た瞬間にその美しいツーショット写真満載の記事が震えるほど嬉しかったのですが、今見てもやっぱり宝物だなぁと思う程、二人共ビジュアル最高！向き合って笑い合ってる全身写真あり、髪がからみ合うほど顔を寄せ合ってる超特大アップあり・・・・とどれも素敵なツーショット。衣装は二人共黒で、ブルゾンだったりジャケットだったり。でもブーツは二人共全く同じもの！そして、何より印象的だったのは二人の姿が対照的なこと。二人それぞれの仕草を見ても顔の造作を見ても、木村君は男っぽくて、吾郎ちゃんは女っぽい・・・。もうカップルにしか見えないよ〜っ！


ANGEL'S COMMENT:
結局、微妙にわからない程度に編集しただけで、ほぼ完レポでKYOKOさんに頂いたままです。もう、じっくり読んでみなさんに噛み締めてほしかったから(笑)
昔から、スマップのメンバーの中ではプラベでもよくつるんでいたという話が、他の雑誌やテレビで話す昔語りなどからも聞いてはいますが、本当に気が合う二人なんだろうということがよくわかる対談ですよね。そして、お互いを堂々と褒めあえる二人が私は大好きです。若干、いつも木村くんの方が「やめろよ(笑)」って照れてるのもいつものことですが(笑)　なんだか、若かりしころお互いの家に泊まって青春そのままをしてきた２人。事務所が決めたメンバーだったにも拘わらず、普通の友人として仲良く青春時代を過ごした２人に記者の方ではないですが、私も男同士の友情を羨ましく思いました。
きっと、これからもこの２人は変わらない。いつも、自然に隣同士に座り私語をしまくるキムゴロさんたち。きっと、今でも２人だけの友情を育んでいるんでしょうね。この雑誌のグラビアを掲載できないのが本当に残念。鼻がくっつきそうに向かい合って笑ってる二人の写真・・・きっと誰でも微笑まずにはいられないと思います。


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