〜 第 二 話 「 這 う 鬼 」 〜
[夜 貴子の屋敷]
色鮮やかな紅葉(もみじ)の絵・・・
原作 夢枕獏
脚本 小松江里子
音楽 H.GARDEN
稲垣_吾郎
部屋の灯明の火が揺れる。
演出 小田切正明
貴子 「一体、康範様はどうしたの、もう何日も顔を出さない」
一人の女性 貴子が鏡に向かっている。そのそばに控える乳母の浮舟に、自分の恋人 康範が最近通ってこないだけでなく、文すら寄越さないことに不平を漏らしている。
浮舟 「貴子様、そのようにお怒りになると折角の美しさが…」
貴子 「本当に綺麗?」
浮舟 「ええ、貴子様ほどお美しい方は…」
そこに遣いの侍女が紅を持って帰ってくる。早速その紅をためす貴子。そして、もう一つ侍女が手にしている物が…;
侍女 「あの…それとこれを…。貴子様にお渡しするようにとお預かり
しました」
と、侍女は包みを差し出す。康範からの贈り物かと思い、心弾ませて包みの中の箱を開く貴子。が、その中に入っていたものを見て驚きの表情を示す貴子;
貴子 「! 誰がこんなものを!」
浮舟 「これは、女の黒髪!」
貴子 「気持ち悪い。早く捨てて、そんなもの見たくも無い!!捨てて
早く!!」
[夜 貴子の屋敷]
貴子の寝室。箱から髪が這い出してくる。その髪はやがて蛇に姿を変え、貴子を襲う。・・・そんな夢にうなされるようになる貴子。自らの悲鳴で目を覚まし、駆けつけた侍女に;
貴子 「あの髪はちゃんと捨てた?」
侍女 「はい。何か気掛かりな事でも?」
貴子 「別に。もう下がっていいわ…」
と、自らの気位の高さからか、何も語らない貴子。しかしその心の内は不安で一杯の様子。
[数日後 昼 都大路]
からすが一羽飛び立つ映像。
晴明が歩いている。その姿を見て、人が囁きあうのが聞こえる。
男1 「あれが安倍晴明だ」
男2 「ああ、今噂の陰陽師か?」
男1 「何でも帝の気を引いて、すごい出世らしい」
男2 「そうそう、従四位の位について・・・」
しかし晴明はそれに気を留めるでもなく、晴明の周りをヒラヒラと舞っている蝶に話しかける。
晴明 「わかっている。待ってもらってくれ」
(何てことないシーンなんですけど、何故か好きなシーン。何でだろう?周りの人の冷やかし混じりの噂が聞こえているのに、颯爽と歩く姿に惹かれたのか、なぜか格好いいと思ってしまったんですねぇ。こういう所、普段の吾郎君と重なる??)
[同昼 晴明の屋敷]
源博雅が一人、晴明の屋敷にやってくる。手には魚を持っているが、屋敷の中には人気が全くない様子。
博雅 「・・・不用心だな。何だ、誰もいないのか?」
そう言いつつ、庭を進むと、
『折角来たんだ。上がっていけ』
と晴明の声がする。振り向くとそこにいるのはフクロウ・・・?(^^;)(えっ、フクロウ?)。
博雅「何なんだ一体・・・おお」
と、今度振り返るとそこには蜜虫が屋敷の縁で控えていた。
蜜虫 「お待ちしてました。もっと早く来られるかと思っていたのに…」
博雅 「いや、酒のつまみを探していたのだ。ホラ、これ。しかし約束
もせずに来たのに、どうして?」
蜜虫 「道すがら『いるかな晴明』と何度か呟かれましたから」
博雅 「(木に止まっているフクロウを指して)あれか?」
蜜虫 「さぁ?それにこうも呟かれましたね?『晴明がいなくとも、ま
っ、いっか』と言って、ニコっと笑って」
博雅 「・・・。そんなことを」
(この辺の話は、本当は博雅と蜜虫の掛け合いじゃなくて、晴明と博雅の掛け合いで楽しみたい所なんだけどね。まいっか(^^;)。)
博雅 「しかし何だな、いつ来てもこの家は静かだな。他に誰もいない
のか?」
蜜虫 「晴明様の御世話ぐらい私一人で十分です」
晴明 「世話?つまりその・・・そなたは晴明の何なのだ?」
蜜虫 「お知りになりたいのですか?」(思わせぶりな台詞)
博雅 「ああ」(私も知りたい!!)
蜜虫 「私は・・・晴明様の・・・いろいろ。まぁいろいろです。お酒
の仕度をして参ります。その鰯、焼いて下さいますか、そこで?」
博雅 「ああ」
蜜虫は席を外す。素直に縁に座って火桶で魚を焼いている博雅(おいおい、晴明が帰ってくるのを待たないのか!(^^;))。そして博雅は1匹ずつ火桶にいわしを乗せながら;
博雅 「いろいろか・・・いろいろなぁ・・・」
とあれこれと思考中(^^;)。そして、蜜虫が酒の準備をして戻ってくる。
博雅 「晴明は?」
蜜虫 「もうすぐ戻られます。どうぞ(と酒を注ぐ)」
博雅 「先程の、いろいろだが・・・」
蜜虫 「はい」
博雅 「いろいろとは?」
蜜虫 「いろいろはいろいろです」
博雅 「いろいろか・・・」(話が進まない…(^^;))
蜜虫 「・・・知りたいのですか?」
博雅 「(喜び) 教えてくれるのか?ああ、熱っ」
と、注意が蜜虫の方に向いていた博雅は、火桶に小指が触れてしまう(笑)。蜜虫は「大丈夫ですか?」と言いながら、そっと博雅の小指を口に加える(うわ〜、このシーンはいいのか、いいのか、これで!!(笑))。固まる博雅。そこに・・・
晴明 「ゴホン」
と、丁度良いタイミングで帰ってきた晴明君がその様子に思わず咳払い(^^;)。しかしその咳払いも二人には聞こえないようでもう一度;
晴明 「コホン」
と、これ見よがしに咳払い(^^;)。慌てる博雅。
博雅 「ち、違うのだ。これはだな・・・」
晴明と博雅、2人で縁に座し、火桶を囲んで酒を飲んでいる。晴明君は片ひざを立てて、ゆったりと座っております。
晴明 「俺と酒を飲みに来たのかと思ったが、別の用があったようだなぁ」
博雅 「あっ、いや、あれは、たまたまその・・・」
晴明 「あいつはダメだぞ」
博雅 「やはりおまえの?」
晴明 「違う。あいつはアゲハチョウだ」
博雅 「えっ?やはり式神?」
鳥の鳴き声が聞こえる。
晴明 「信じるか?」
博雅 「おい晴明、どっちなんだ!」
晴明 「さぁ・・・。で、何しに来た?」
博雅 「それは・・・(言いにくそうに) お前に逢いに来たのだ」
晴明 「ほぉ〜、物好きな」
博雅 「俺は安倍の晴明という陰陽師に興味をもったんだ」
晴明 「胡散臭い陰陽師にか?」(また意地悪)
博雅 「ああ。・・・いや、俺はお前という男をよく知らん。だから知
りたいのだ。それだけだ」
晴明 「それだけか?」(さらに意地悪)
博雅 「ああ、それだけだ」
晴明 「(笑って)俺も源博雅という男に興味がある」
博雅 「よし、じゃあ、今夜は飲み明かそう」
晴明 「折角来てくれたのに残念だが、今夜は往くところがある」
博雅 「何だ、何処へ行くのだ?なぁ、どこへ往くのだ?」
晴明 「四条の堀川に近い屋敷に貴子という女性(ひと)が住んでいる」
博雅 「ああ、藤原兼家殿が成子に生ませた娘だろ?」
晴明 「そうだ。今は女主として一人暮らしている」
博雅 「宮中でも噂だ、恋多き女とな。まぁ、あれだけの美しさだから
なぁ」
晴明 「艶やかな女だ」
博雅 「何だ知ってるみたいだな。まさかお前、あの貴子殿と!!!
そうか、そうなのか!!!」
晴明 「陰陽師として頼まれただけだ」
と、そこに蜜虫が酒を持って帰ってくる;
蜜虫 「それはどうでしょう?今日は妙にウキウキとされてました」
と、冷ややかにコメントする蜜虫(^^;)。そして、「ドン」と音を立てて瓶子を置いて;
蜜虫 「やけぼっくいに火が付きませんように」
とそれだけ言い残して蜜虫は席を外す。(なんかご機嫌斜めって感じ(^^;))
博雅 「やけぼっくい?」(気になる博雅)
晴明 「何でもない」
博雅 「なぁ、鬼か?アヤカシが出たのか」
晴明 「さぁ、行ってみないことには分からない」
博雅 「俺も連れていってくれ」
晴明 「そういうわけにはいかない」
博雅 「頼む、一緒に連れて行ってくれ」
晴明 「イヤだ」
博雅 「お願い」
晴明 「ダメだ」
博雅 「頼む」
晴明 「ダメだ」
(変なコンビ・・・(^^;)。でも、本日の晴明&博雅コンビの一番のツボかもしれない。晴明の顔をじっと見て話す博雅と、博雅と絶対に目を合わさずに、突き放して会話をする晴明と、ここでも対照的ですね)
[同夜 大路]
道を急ぐ晴明の後を少し距離をおいてちょこまかと(^^;)博雅が後を追う。
晴明 「(呆れ返って) まったく、お前というヤツは・・・」
博雅 「(喜んで晴明に近づいてきて) それでは、よいのか?」
晴明 「ここまでついてきておいて、良いも悪いもないだろう?」
博雅 「あははははは」
(何か、博雅、軽い…(^^;))
[同夜 貴子の屋敷]
晴明と博雅が屋敷にやってくると、廊下では侍女達が廊下を必死に拭き掃除をしている。どうやら貴子に命じられているらしい。その脇を通り過ぎ、浮舟に部屋に通される晴明と博雅。
そして、浮舟は貴子のものに届けられた箱を見せる。
浮舟 「これがその箱です」
博雅 「ただの箱にしか見えないが」
浮舟 「中に女の黒髪が一房入っていたのです」
晴明 「女の髪?」
浮舟 「侍女が申すには加茂川の橋の袂にいた女から受け取ったと」
晴明 「時は?」
浮舟 「夕暮れ時です」
晴明 「逢魔が時か・・・」
博雅 「鬼か?」
晴明 「その女に心当たりは無いのか?」
浮舟 「はい。それ以来、貴子様のご様子が・・・。薄暗がりの部屋の
隅や廊下を恐がられたり、髪の毛が落ちているととてもお怒り
になられて」
晴明 「それで先程のように掃除を?」
浮舟 「はい、何かに祟られているのではないでしょうか?」
そこに貴子が登場する。
貴子 「何を馬鹿なことを言ってるの?お久しぶり、安倍晴明様」
晴明 「相変わらずお美しい・・・」
貴子 「(笑って)貴方らしくもないことを・・・。宮中に上がられて少
しお変わりになった」
晴明 「そうですか?」
博雅 「(晴明に囁いて)やはり知り合いじゃないか」
貴子 「こちらは?」
晴明 「源博雅殿です。私に話していいことは、みな彼に聞かれてもよ
いこと。何か手伝ってもらうこともあるかと一緒に参りました」
貴子 「そう?」
博雅 「そういうことです」
晴明 「何やら黒髪を送りつけられたとか?」
貴子 「ええ、まぁ」
晴明 「今、乳母殿にも聞いていたのですが、心当たりは無いのですか?」
貴子 「ある訳ないじゃないの」
晴明 「よく考えて下さい」
貴子 「私が人に恨まれるような事をしたというの?」
浮舟 「ですが貴子様」
貴子 「この乳母が勝手に晴明様を呼んだだけの事。私は何も気にして
はいません」
浮舟 「申し訳ありません」
晴明 「そう言われるのならその通りなのでしょう。ならばこの晴明の
出る幕はありませんね」
貴子 「!」
晴明 「帰るぞ、博雅」
そうして、晴明は貴子の屋敷を後にする。晴明が立ち去るのをただ見ているだけの貴子。少し口を尖らせて見たりして、気位の高さを感じさせますね(笑)。
[同夜 貴子の屋敷の外]
博雅 「それにしても気の強い女だな」
晴明 「でも、そこが男心をくすぐるのだろう?」
博雅 「やはりくすぐられたのか?」
晴明 「(笑)。さぁ」
博雅 「あのまま放っておいて良いのか?何とかしてやった方が…」
晴明 「呪とは縛られる側にある。相手が祟っていても、本人がそれに
気づかなければそれまでだ」
博雅 「そんなものなのか?」
晴明 「ああ」
博雅 「じゃぁ、あまり心配することはないのか?」
晴明 「それがそうでもない。本人がいくら気づかぬフリをしても、心
の中では既にしっかり縛られている事もある」
[同夜 貴子の屋敷]
紅葉を眺めている貴子。部屋に座して、浮舟に晴明の話を続ける;
貴子 「安倍晴明…やっぱり良い男よね。帝の寵愛を受け、あの頃より
ずっと位も上がったそうねぇ」
浮舟 「怪しげな陰陽師とも聞きます」
貴子 「男と女には関係ないことよ」
浮舟 「貴子様」
貴子 「あのとき、もし私が待っていたなら・・・」
遣いの男が帰ってくる。康範の居場所を調べるために出ていたのだが、以前、消息は掴めないと貴子に報告するる。どこに行ったのかと気になる貴子に;
浮舟 「もしかして、あの女のところでは?遠くから康範様逢いたさに
尋ねてきた女に、昔の情が移られたのかも」
貴子 「何を言っているの、そんな事あるわけないわ!あの女を見たで
しょう?薄汚れたみすぼらしいあんな田舎の女になんか!」
浮舟 「そうですが・・・」
貴子 「この私を捨てて、あんな女の処になんか康範様が戻る訳がない」
[同夜 帰り道]
晴明と博雅が並んで歩いている。
博雅 「女の髪とは恐いものなのだな」
晴明 「何だ?」
博雅 「寿海殿の話だ」
晴明 「出家されたとは聞いたが」
博雅 「ああ。その訳なんだが、それが恐ろしい」
博雅は、人から聞いた話を晴明に続ける。自らの母と妻女が仲良くやっているとばかりおもっていた寿海は、あるとき、御簾越しに、二人の髪の毛が蛇となって食らいあっているという影を見る。その様子を見て、寿海は出家を決意したというものだった。
晴明 「そうか」
博雅 「びっくりしないのか?!」
晴明 「(笑って)別によくあることだ。嫁と姑といっても女は女。お互
い張り合って、一人の男を奪い合ってるんだ」
博雅 「夫婦と親子だぞ」
晴明 「女とはそういうものだ。顔は笑っていても、心の中では相手を
憎み合っていたんだろう」
博雅 「だがなぁ、髪を蛇に変えるとはなぁ」
晴明 「人の髪には大きな呪の力がある。特に女の髪は魔物よ」
(晴明君、何か女性に関して悟ってない?過去に何か痛い目にあったとか(笑))
[同夜 貴子の屋敷]
紅葉が鮮やかに庭を彩っている。
部屋では、貴子鏡に向かって髪を梳かしている。が、その髪には蛇が・・・;
貴子 「いや、やだ、いやー、やめてー」
そのまま失神する貴子。
[数日後 宮中 陰陽寮]
部屋には数人の男たちがいる。晴明君、書物を読みながら;
晴明 「もうすぐ、北東の夜空に北斗七星が見える頃だ」
男 「はい」
晴明 「秋も終わりに差し掛かる」
男2 「恐れ入ります。帝がお呼びです」
晴明 「わかった、すぐに参る」
(真面目に仕事もしているのね(^^;)。こういうシーン、なんだか新鮮だったわ〜(*^^*))
[同日 帝の御前の広間]
御簾越しの帝を前に、座している晴明。同部屋には、藤原兼道,兼家そして、博雅も列席している。ゆっくりと頭を下げる晴明。頭を上げて;
晴明 「では・・・」
と、何やら手揉みをしながら、両手を広げると、白い鳩が数羽飛び出す;
一同 「おお」
兼道 「御上、如何ですか?何とも不思議な・・・。さすが安倍晴明に
御座ります。陰陽寮に取り立てたこの藤原兼道も甲斐があった
というものじゃ。ははは」
兼家 「いや、元はと言えば、この兼家が、兄にこの晴明を引き合わせ
たからこそ、今日があるので御座います」
晴明 「・・・」
(兼道VS兼家ってか?今後のこの二人の関係についても描かれるのかしら??)
[同日 宮中の通り?]
晴明と博雅が並んで歩いている。先程の方術を目の当たりにして興味津々の眼差しで博雅が晴明の後を続いている(笑);
博雅 「すごい術だな、さすが安倍晴明だ」
晴明 「あの男の退屈しのぎに付き合うのも、疲れるな」
博雅 「あの男とは、まさか帝の事ではないだろうな?」
晴明 「あの男はあの男だ」
博雅 「俺だからいいようなものの、他の者に聞かれたらどうするつも
りなのだ?」
晴明 「別にどうも無い」
涼しい顔をして歩く晴明君。そこに「晴明!」と背後から声がする。
晴明 「これは藤原兼家殿」
兼家 「見事であったぞ」
晴明 「恐れ入ります」
兼家 「一度、我が家に来てくれ。妻や娘もお前の方術を見たがってい
るのでな」
晴明 「いずれ」
兼家 「(こっそり)それとは別に他の女の家にも来てくれ。みんな退屈
しておるのでな。頼んだぞ。ふははははは」
(怪しいオヤジだ〜(^^;)。やっぱりいい味ありますよね)
晴明 「いい気なものだ」
博雅 「あの兼家殿、このところ兄の兼道殿を追い越す勢いだ。事ある
毎に張り合っておられる。いつか、兼道殿に取って代わるかも
しれんな」
博雅 「そういえば、兼家殿は貴子殿の父上だ!な、貴子殿が関わって
いるのか、お前の出世には?」
晴明 「さぁ」(ここでもオトボケ)
博雅 「本当はどういう関係なのだ、貴子殿とは?」
と言われても、やはり涼しい顔をしたままの晴明君。そして今度は「貴子様、お引かえしくださいませ!」という女性の声が飛び込んでくる。その声の方向に目をやると、そこには貴子とその乳母の浮舟がいた。貴子は浮舟が静止するのを振り切って、康範の居場所を探し出そうと、父の兼家に頼もうとしていたのだ。そこに、もう一人別の女が貴子の前に現れる。
貴子 「あなたは確か、越智様の奥方・・・。越智様はお元気?」
その女は懐から刃物を取り出し「殺してやる!」と貴子に切りかかろうとする。止めに入る晴明と博雅。それでも女は怒りに震えて刃物を振り回す。
女 「この女を殺してやるのよ!この泥棒猫!人の夫を横取り
して!色目使って誘惑したことは分かっているのよ!!」
しかし、貴子はその女に見っとも無いと言い放つ。さらには、「男は若くて美しい女が好き」などと挑発的な言葉の数々を並べる貴子。
晴明 「もういいだろう」
貴子 「けど・・・。ああ、晴明様、お怪我を・・・」
晴明は左手を押さえている。先程、女が振り回した刃物で怪我をしたらしい(ド、ドジ…)
博雅 「大丈夫か?」
晴明 「博雅、その方を早くどこかへお連れしろ。みんな見ておる」
貴子 「(晴明の左腕を手に取って)大丈夫ですか、晴明様?」
[同夜 晴明の屋敷]
博雅と蜜虫のツーショット!(笑)。博雅は昼間の出来事の話をしている。
蜜虫 「そうですか、貴子様の処へ・・・」
博雅 「傷の手当てをするには、宮中よりもあちらの方が近いと言って
貴子殿が…」
蜜虫 「・・・」
博雅 「あっ、何も心配する事は無い。傷もそう深くないし」
蜜虫 「はい」
博雅 「やはり…心配なのか?その…、晴明と貴子殿の事だ。どういう
間なのだ?」
蜜虫 「よく知りません」
博雅 「この前、やけぼっくいに何とかと言っていただろう?俺から見
ても何やら怪しい。やはり2人はできていたのか?」
蜜虫 「知りません。博雅様、明け透けにそのようなこと、女にくもの
ではありません、見損ないました」
と、怒って席を立つ蜜虫。(やっぱり晴明が貴子のところに行ったことに嫉妬してる?)
[同夜 貴子の屋敷]
こっちでは、晴明と貴子のツーショット!!(笑)。貴子が晴明の傷の手当てをしています。
貴子 「こうしてまた二人でお会いできる日が来るなんて、嘘みたい。
何だか懐かしい。あの頃に戻ったみたいね、晴明様」
と、折角貴子がアプローチしてくれいてるのに
晴明 「世話になった」
と、あっさり立ち去ろうとする晴明。それを引き止めるように晴明にすがるように貴子は晴明の背中に話し掛ける;
貴子 「また行ってしまうの?覚えてるでしょ?あの時も紅葉が綺麗だ
った。貴方は修行に行く、そう言ってこの部屋を出て行った。
一人にしないでと泣いて頼んだのに、貴方は振り返りもしなか
った。あの時、私がどんな思いで貴方の背中を見送ったか、分
かる?どれだけ、寂しくて悲しい思いをしたか…」
晴明 「都に戻ってきていくつもの恋の噂を耳にした」
貴子 「待てばよかったの、今日の女みたいに?でも私は待つだけの女
は絶対にいや!子供の頃から母を見てずっとそう思ってきた。
たまにしか家に寄らない父を母は死ぬまでずっと待ち続けて…。
私はそんな惨めな女にだけは絶対になりたくない!」
と、強気の発言を続ける貴子だが…;
貴子 「これからはずっと私のそばにいて、晴明様…。もう二度と何処
へも行かないで」
晴明 「・・・。見事な紅葉だ」
貴子 「どうして!?私が欲しくないの?私の為には全財産くれても惜
しくない、命を差し出す男もいるのよ!なのに、どうしてまた
行く…」
貴子の方を振り向く晴明。
晴明 「・・・」
そのまま黙って部屋を後にする。部屋に戻る貴子。
貴子 「どうして、どうしてなの?」
気位の高さからか、晴明の態度を理解できない貴子。そして、ふと床に目を見やると、再び数多くの蛇の幻影が見える。
貴子 「きゃ〜〜〜〜〜」
帰ろうと廊下を進んでいた晴明の耳にもその貴子の悲鳴が聞こえる。
貴子の部屋には浮舟がかけつける。貴子は蛇の幻影に怯えている。もちろん浮舟にはその蛇は見えない。晴明が部屋に戻ってくると、貴子は悲鳴を上げつづけている;
晴明 「下がっておれ」
なおも貴子の悲鳴が響く中、目を閉じ左手で印を結び、呪を唱える晴明。晴明が目を開けると、貴子にだけ見えたおびただしい数の幻影の蛇が現れた。
晴明 「祟られる心当たりがないといったが、本当か?心当たりがある
のだろう?」
晴明は小刀を抜き、そして貴子に向かってまっすぐ振り下ろす…。
[同夜 貴子の屋敷前]
博雅が晴明の様子(何の様子だ?(笑))が気になって貴子の屋敷前までやってくる。そこに丁度、貴子の悲鳴が聞こえる。
博雅 「?!何だ?」
博雅が声に驚いていると、そこに晴明が屋敷から出てくる。
晴明 「何してる?」
博雅 「いや、お前の傷が心配で。あ、それより、今の悲鳴は?」
晴明 「女の髪に祟られて、貴子殿が亡くなった」
博雅 「亡くなった?」
その事実だけ伝えると、それ以上は何も話さず、先を急ぐ晴明。
博雅 「おい」
[同未明の河原]
怪しげに烏の群れが木にとまっている。河原を急ぎ足で進む晴明と博雅の二人を蝶が先導する。そして行く先の橋の袂では蜜虫が待っていた。
晴明 「見つかったか?」
蜜虫 「はい」
その先に、頭から着物を被った一人の女性 草笛が現れる。女性に話しかける晴明。
晴明 「貴子殿に箱を届けさせたのは、そなたか?」
草笛 「あなたは?」
晴明 「陰陽師、安倍晴明」
草笛 「陰陽師?」
晴明 「貴子殿がさっき亡くなられた。そなたの髪に絞められて、苦し
んで、のたうち回って死んでいった」
草笛 「ああ、これで気が済みました」
晴明 「なぜ、あのようなことを?」
草笛 「私は藤原康範さまが遠江国で受領されていた時、一緒に暮らし
ていた者です」
しかし、3年前、康範は急遽、都に帰ることになり、その時に残した「必ず迎えをやるから」という言葉を女は信じ、そして待ちつづけた末、康範を慕って一人都に出てきたのだと語ります。だが、迎えに来た康範は、女と共にこの橋の袂に来たときに、康範は女に切りかかる。女は息絶える前に、康範を殺し、そして康範を奪った貴子を呪ってそのまま生き霊となり、自らの髪を切り落とし貴子に送り届けたのだった。そして、もはや貴子も亡くなり、女の恨みも晴れたのだった…。そんな恨みが深いにも関わらず女は;
草笛 「今でも、信じたいのです・・・あの人を・・・
きっと・・・戻ってこられると・・・」
晴明 「それがいい」(この台詞、優しくていいですね)
立ち去る女の後ろ姿を見送りながら、静かに印を結ぶ晴明。女の行くその先に康範が現れ、そして二人一緒に消えていった。それを見届ける晴明、そして蜜虫,博雅。
博雅 「あの女は、何だったのだ?」
晴明 「生き霊だ」
博雅 「生き霊?」
蜜虫 「死んでも死にきれない…。きっとそれほどまでに恨みが深かっ
たのでしょうね」
博雅 「女の心は凄まじいもんだな」
晴明 「だから悲しい。・・・貴子殿の様子を見てくる」
博雅 「おおい!貴子殿は生きているのか?!」
蜜虫 「危ないところでしたが」
博雅 「なぜ晴明はあの女に嘘をついたのだ?」
蜜虫 「きっと、その方が救いになる、そう思ったのでしょう。だから
ああして二人、旅立って…」
[同朝 貴子の屋敷]
寝室で横になる貴子のそばにに晴明が付き添っている。ゆっくりと目を覚ます貴子。
晴明 「大丈夫か?」
貴子 「ええ・・・私・・・どうしたのですか?」
晴明 「康範殿が亡くなった」
貴子 「えっ?」
晴明 「髪を贈ってきた女と一緒に」
貴子 「・・・」
[同日 屋外 とある橋の上]
晴明と貴子が並んで橋の上にいる。その二人を鮮やかな紅葉が彩る。
晴明 「好きな男が死んで、涙も流さないのか?」
貴子 「後悔してるんです、あんな男に一時でも心を通わせたこと」
晴明 「その心が鬼を呼んだ。」
貴子 「えっ?」
晴明 「人の髪には強い呪いの力がある。特に女の髪にはな…。心当た
りがあるのだあろう。でなければ蛇など見るはずがない」
貴子 「蛇はいたのです!」
晴明 「おまえの心が蛇を見せた」
貴子 「私の心?」
晴明 「心のどこかにやましさがあるのだ。罪の意識を感じているので
あろう?」
貴子 「無いわ、そんなもの」
晴明 「いつまでも蛇に苦しむことになるぞ。それでよければ、勝手に
するがいい」
そう言って立ち去ろうと貴子に背中を向ける晴明。
貴子 「無性に腹がたったの。10日程前よ、薄汚いみなりの女が訪ねて
きて、康範様を帰して、私たちは固い約束をしてる、って」
貴子の回想。貴子の元を草笛が訪ねてきて、ずっと自分は康範の約束を信じて待ちつづけ、康範を返して欲しいと頼む。しかし、貴子は傲慢で残酷な言葉を投げかけ追い返したのだった。
貴子 「私は藤原兼家の娘よ!その私と付き合っている男が、あんな女
と関わりがあっただなんて。なのにそれからあの男はぱったり
来なくなった。不安だったわ。男を失うことがじゃない、あん
な女とこの貴子が同じ女として比べられていたのだとしたら、
許せないのよ」
そんな貴子に向かって晴明はゆっくりと振り向いて;
晴明 「男は女の姿かたちにだけ心惹かれていると思うか?」
貴子 「?」
晴明 「あの女は康範殿に逢いたい一心で何日もかけてやって来た。男
の言葉を信じて。男は純粋で一途な心に惹かれるものだ」
貴子 「だとしたら馬鹿な男よ。こっちから捨ててやったのに。男なら
他に幾らでもいる」
晴明 「そうだな藤原の兼家の娘だからな」
貴子 「?!」
晴明 「康範殿もそれで迷った。貴子という女ではない。地位と名誉と
金を取ろうとした。ただ信じればいいのに、人を、そして自分
を・・・。
信じ合っていれば・・・(じっと貴子の目を見て)待てる」
貴子 「・・・」
そうして晴明は再び振り返って立ち去ろうとするが、貴子はその背中に訴える。
貴子 「私だって待ちたかった。貴方が戻ってくるのを信じて待ちたか
った。でもできなかった…。父を信じて待ちつづけた母の涙を
知ってるから。裏切られる悲しみを見てたから…。恐かったの
傷つくのが。貴方は初めて愛した人だったから」
その言葉に再び振り返る晴明。見詰め合う二人。
貴子 「・・・」
晴明 「・・・」
だが、晴明はそのまま、踵を返し、貴子の前から立ち去る。
(誰しもが言うようにこのシーン、綺麗ですね。それに野外でのロケゆえに、周りの景色と相まって、なおさらそのビジュアルが際立ちます。
プライドの高くて素直になれない貴子。晴明はその気持ちが変化することを願っていたのでしょうか?
「あなたを待ちたかった」という台詞、ちょっと明智2の桂子先生を想い出したりして…(^^;)。どこか明智と晴明のキャラって似てるのねぇ…(違うって)。それにしても、このシーン、吐く息が白いくて寒そう…(って何処見てるんだ、私は(笑))
[同夜 晴明の屋敷]
いつものように濡れ縁で酒を酌み交わす晴明と博雅。そしてそばに控えている蜜虫。
博雅 「いや〜、どういう訳だか、此処に来ると落ち着くなぁ。なんだ
か楽しくなって酒が上手くて仕方が無い」
晴明 「恋とはそういうものだ」
博雅 「うっ(絶句)。恋?!」
晴明 「そう赤くなるな。正直な男だ(笑)」
博雅 「いや、酔っているのだこれは!」
蜜虫 「もし博雅様が亡くなった康範様と同じ立場だったらどうします?
もし私が田舎から出てきた人で、もう一人はやっぱり貴子様…」
博雅 「そんなの決まっている。俺は約束はきちんと守る。迷ったりは
しない」
蜜虫 「そうおっしゃると思いました」
博雅 「あ、いや・・・(照れる)。ところで本当のところはどうだった
んだ、晴明?」
晴明 「どうって?」
博雅 「貴子殿だ。つまりその・・・できておったのか?」
蜜虫 「またそういうことを」
博雅 「あっ、いや・・・」
晴明 「・・・。
男を信じられん女と、女を信じられん男。それだけだ」
博雅 「なんだそれ?」
晴明 「(答えず) 少し酔った。風にふかれてくる。
(立ち上がって庭に出て)良ければ泊まっていけ」
と言って屋敷を出て行く。(やっぱり3人のシーンって好きだわ。ホッとします)
[翌明け前 河原]
今回も一人たたずむ晴明の後姿。(1話に引き続き、2話も最後は晴明一人の後ろ姿…。やっぱり晴明って孤独なのかなぁ。今回は何を想う?)
[次回予告]
晴明 「幸せ、不幸せ・・・それは当人が決めることだろう」
<第2話感想> とりあえず一安心・・・
まだ手放しで喜ぶことはしないけど、でも、第一話についてはあれは“別格”ということが判明した第2話でした(いいのか、そんなこと言って?)。今回は大きく「?」と首を傾げるような引っかかりポイントもなく最後まで見ることが出来たので、ホッと一安心しているというのが正直なところです。私自身は歴史に疎く、時代考証云々については全く分からないもので、幸か不幸かそういう違和感を感じない人間としては、今回は普通に見れました。
私の場合、男性陣、というか吾郎君に関しては、ドラマを観る目的が“それ”しかないので(爆)、時には台詞にしびれてみたり、時にはビジュアルにやられてみたり、様々な角度から堪能できるのですが(^^;)、女性陣に関しては、ある程度の感情移入ができないとエンディングまでドラマを楽しむのは厳しいものがあったりします。そういう意味で(どういう意味だ?)、今回はそれなりに女性陣への感情移入が上手くいったので、ドラマにちゃんと入り込むことができたのかもしれません。
あと、蜜虫・・・しゃべるのは構わないんだけど、晴明の台詞を取られてるような気がして、私としてはそういう意味で微妙かも…(苦笑ひ)。しゃべるのなら、ドラマオリジナルの部分にして頂けませんでしょうか?>スタッフさま〜(ドラマとは全く関係ない部分で変なお願いだなぁ…(苦笑))。
第一話のキービジュアルはオミナエシ。第二話は紅葉でしたね。毎回、どうやら女性のキャラクターを表すのに登場してくるものなのでしょうか?貴子については「燃えるような紅葉を思わせる」だそうで、気性の激しさ、恋愛への情熱を表したものなんでしょうね。気位の高い、我が儘娘に見えるんですけど、そうは言っても貴子は、普通の女性なら敬遠するであろう「胡散臭い陰陽師(晴明のことね)」に恋をしたのですから、男を見る目は確かだったと言ってもいいのではないでしょうか?(爆)。別の考え方をすると、晴明が“貴子を待たせる”ようなことをしなければ、こんな「恋多き女性」にならずとも済んだような気もします。あくまでも現代ドラマ的な考え方ですけどね。晴明の言う「男を信じられない女と、女を信じられない男」というのはどういう意味になるんでしょうね。色々と深い関係があったような気もします。
と、あれやこれやと女性ヒロインに対して考えを巡らせることができるのも、今回のドラマを落ち着いて見ることができた証拠かもしれません(笑)。
まぁ、とはいえ、まだまだ「普通に見られた」という感覚なので、折角の10回シリーズ物ですので、2,3度程度は、見ているこっちがどうにかなってしまいそうな燃え燃えになれるエピソードを期待したいところですね。
(01.04.15)
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