■ ストーリー ■
衛のモノローグ:衛のモノローグ:美沙の恋人を、死へ追い詰めた一年前の不幸な事件は、誰かが薮本に僕を襲えと依頼したことから始まったという。依頼者を探すうちに、思わぬ過去が明かされていった。
美沙:前に、どこかでお会いしました?
島谷:いえ、初めてだと思いますが。
久保:このような大役を与えていただき、大変光栄に存じます。
久保:何言ってんだ、お前?人殴っただけで、何で3,000万だ?そんな簡単に金が入るんだったら、俺だってやってるぞ、ゴルラァ!
衛 :君は薮本と会って大丈夫なのか?
美沙:分からないことは全部知っておきたいんです。
久保:考えろよ、人の気持ちもさぁ!何でお前に邪魔されなきゃなんないんだよ!
衛のモノローグ:依頼者は、僕が一番信頼していた、人間だった。
【久保の部屋】
久保(佐々木蔵之介さん)のマンションにやってきた、衛と美沙(長谷川京子さん)は、浴槽で殴られ、縛られている薮本(渡辺卓さん)を発見する。
衛 :大丈夫か?しっかりしろ!!
息も絶え絶えの薮元;
薮元:あいつ、やばすぎる・・・
衛 :・・・
その薮元のズタボロの姿に絶句する衛。目をそむける美沙。そして、その様子を二人に気づかれないように、息を潜めて見ている久保。
衛 :明がお前に、僕を襲えって頼んだのか?
薮元:ああ…。
久保はそのまま姿を消す。
薮元は、浴槽の中で縛られたままの状態で、衛に1年前の真相を話し始める。
久保と出会ったのは、とあるゲームセンター(つーか、賭●場)。お金を全て使い果たした薮元の前に現れた久保は、「いいバイトがある」と、5枚の一万円札を薮元に見せた。
薮元:あんたに怪我させて、病院送りにしたら、報酬は10万。それだけの話だった…。
(って、薮元が揺すらなければ、それだけの話で終わってたんだよなぁ(苦笑))
薮元の口からその言葉を聞き、がっくりと膝をつく衛。
衛 :信じられない・・・。
薮元:どうでもいいから、これ、解いてくれよ!!
泣き喚く薮元を、静かに涙を零しながらじっと睨みつける美沙。そんな美沙を気遣い、衛は薮元をそのままにして、美沙を浴室の外に連れ出す。
美沙:大丈夫です、私は…。
そこにタイミングよくやってくる大川刑事(佐藤二朗さん)たち(ここに来る前に連絡したのか、衛?);
大川:どうした?
衛 :この中です。
大川らは浴室内の薮元を連れ出し、衛と美沙に、一緒に署まで来るように伝えて久保の部屋を出て行った。無言のままの衛と美沙だったが、やがた二人が部屋を出ようとしたところ、衛は、荒れた部屋の中に落ちていた一枚の写真に気づく。
【久保のマンションの外】
マンションの外では、大川が薮元を連れ出す様子を、久保が物陰から見ている。で、パトカーは出て行くわけですが、あれっ、衛達は一緒に行くわけじゃないのね。
【久保の部屋】
衛は久保の部屋に落ちていた写真を手にする。その写真は真ん中で半分に破れたおり、その半分の部分にメガネをかけた子供が写っている。
美沙:どうしたんですか?
衛 :僕の写真だ・・・。
「Mの悲劇」 THE TRAGEDY OF M
Chapter9
【街中】
街中を急ぎ足で歩く久保。久保は部下の高山(井澤健さん)に携帯電話から連絡を入れる。
久保:高山か?至急頼みたい事がある。この間言ってたシバタ電子への入金、今すぐやってくれ。
その指示に従い、高山はすぐに対応した。
【城西警察署】
美沙と共に城西署にやってきた衛は、大川から状況を聞く。
大川:薮元は大した怪我じゃない。すぐ取り調べに入る。
衛 :明の行方はわかりそうですか?
刑事:各所轄には連絡しておきましたから…。
そこに、取調べに向かう薮元が警官に連れられて通りかかる。美沙をじっと無言で見つめる薮元。そして、その薮元を見つめる美沙。そのまま行ってしまおうとする薮元に、衛は近づいていく(おっ、男前だわ):
衛 :待てよ。
薮元:・・・。
衛 :彼女に謝っていけよ。
薮元:は?
衛 :裁判で嘘ついたろう?本当は先に切りつけたのは亘さんじゃなくて、お前の方だろ?
薮元:そんなこと・・・正直に言ったら俺が損しちゃうじゃないっすか!
衛 :なんだよそれ!
その薮元の言葉に、薮元の胸倉を掴みかかる衛(と、またまた吾郎君的には貴重なシーン(笑)。下柳につかみかかったのと、今回のドラマ2度目ですな)。
衛 :彼がどんなに苦しんだか考えてみろよ!!彼女だってどれ程の思いをしたか!!!お前のせいでな!!!
激しく薮元に詰め寄る衛を、大川らは引き離す。
薮元:何だよ!!・・・ふざけんなよ。自分で勝手に死んだんだ。俺には関係ねーだろうが!!!
その発言に、今度は美沙が薮元に殴りかかろうとするような目で近づく。だが、それを大川が制し、次の瞬間、代わりに大川が薮本の頬を叩き倒していた。
大川:あ、ごめんごめん。蚊が止まってたからさ。
衛 :・・・。
美沙:・・・。
(刑事さん、こんなところで、おいしいじゃん(^^;))
【JTS会議室】
翌日なのか…?JTSの役員たちの会議室。プロジェクトの責任者でもある島谷(伊武雅刀さん)が、他の役員たちを前に、謝罪をしている;
島谷:久保君の不祥事は全て私の責任です。真に申し訳有りませんでした。
役員1:どうしてあんな男をプロジェクトリーダーにしたんだ!
役員2:島谷君、責任は重いよ。プロジェクトから手を引きたいと言い出した企業もある。
島谷:私が、責任を持って対応に当たらせて頂きます。
島谷は再び深々と頭を下げた。
【JTS 専務室】
その後、島谷の部屋にやってきた衛。
島谷:このプロジェクトは君の発案だが、その後、彼も似たような企画を持ってきてね。もちろん、採用はしなかったが、彼は自分の案を君に盗まれたとでも思ったのか?
衛 :それだけの理由ではないと思います。実は・・・明の部屋に僕の昔の写真があったんです。どうしてこんなものが…
衛はポケットから取り出した半分が破られた写真を島谷に渡す。
島谷:また過去か・・・。
衛 :それに、恨んでいたなら、どうして僕をプロジェクトチームに誘ったんでしょうか?
島谷:君を?
衛 :ええ。銀行の担当を頼まれました。
島谷:?
そこまで話しておいて、衛の脳裏に一つの考えが生まれる。急いで、オフィスに行き、久保の端末(パソコン)を覗く衛。(おいおい、そんなに簡単に覗けるのかよ!)。企業リストの中に;
『シバタ電子 \50,000,000』
の文字が。
高山:どうしました?
衛 :シバタ電子・・・\50,000,000??何なんだよ、この会社?!
高山:安藤さんと親しい会社じゃなかったんですか?
衛 :知らないよ、入金は!?
高山:しちゃいました。
衛 :すぐ止めろ!
【銀行】
正しくその頃、某銀行では、久保がその50,000,000万円を現金で受け取ろうとしていた。支店長から差し出された現金を目の前にする久保。そこに、銀行の支店長に電話が。
行員:支店長、JTSの担当者から、振込みは誤りだったと…。
久保:いえ、そんなことはありません。担当は高山様でいらっしゃいますね。私がお電話、変わりましょう。
そうして、電話を受け取り、シバタ電子の社員を振る舞い、部屋の外で電話に出る久保。・・・だが、電話の相手は、衛だった。
衛 :僕だ。
久保:!
衛は久保を問い詰める;
衛 :どういうことだよ。本当に明なのか?どういうつもりだ理由を教えてくれよ。
だが、そのまま久保は電話を切る。銀行内では、支店長らが久保を見ながらひそひそ話をしている。大ピーンチの久保は、静かに部屋に戻り、そして、そのまま自分の鞄とコートを手に、一目散に逃げ出した。
【JTS会議室】
JTSにやってきて、衛,島谷,下柳(成宮寛貴さん)と面会する大川たち。シバタ電子について調べた結果を衛たちに報告する。
大川:その、シバタ電子のことを調べたんですが、この会社、『安藤衛』の名義で登記されてました。
衛 :僕の名義で?!
大川:はい。このこともご存じないんですよね?
衛 :はい。覚え有りません。でも、どうして?
(って、すぐに横領の可能性を気づいた衛にしては、鈍感すぎないですか?(笑))
下柳:安藤さんをはめようとしたんじゃないんですか?
衛 :僕をはめる?
島谷:君名義の会社に金を振り込んで、横領の罪を着せようと準備していた。そう考えれば、君を銀行担当のメンバーとしてプロジェクトに誘ったことも
納得がいく。
下柳:友人として振舞っていたのも、こういうことをやりやすくするためかもしれません。
衛 :・・・。そんなことまで。どうして明が。
【ホテル】
その頃、久保はホテルのフロントで、チェックインをしようとしていた。宿泊者の用紙には『松本明』と偽名を使う久保。だが、クレジットカードが使用停止になっているとフロントに言われ、そのまま「じゃぁ、いいです」と、何気ない顔でホテルを出た。(クレジットカードを使うのに偽名でいくつもりだったのか、久保さん…)
【JTS 玄関口】
夜。会社の入口で島谷を待つ美沙。もちろん、島谷が出したであろう美沙の借金500万円について、確認するためである。
島谷:私を待ってたんですか?
美沙:はい。
島谷:久保君の事で一番被害をこうむったのはあなたですもんね。
美沙:どうして、私の借金を肩代わりしたんですか?
島谷:・・・。
美沙:500万は大金です。
島谷:あなたの思い違いですよ。娘にもそんな話をしたようですが、やめて頂けませんか?
それ以上は何も言わず、そのまま島谷は車に乗り込んだ。
【陸橋】
とある陸橋で、行く当ても無く久保は佇んでいる。カバンの中からプロジェクトの記事が一面に載った新聞を取り出し、そしてそのまま破り捨てた。
【JTS オフィス】
その頃、衛は、誰も居ないオフィスの中を静かに歩いていた。久保の机をじっと見つめる。久保の机の上には、衛と久保が写った写真が残されていた。
衛 :どうしてなんだ・・・。
【瞳の部屋】
翌日、久保は瞳(吉岡美穂さん)の元を訪ねた。恐らく一晩中街を彷徨い、ふらふらの状態の久保。
久保:突然すみません。近くで仕事をしていたんですけど、突然、めまいがして・・・。
そう嘘を言って部屋に上がる久保。
瞳 :安藤さんに迎えに来てもらいますか?
久保:ああ、それはやめてください。あいつ、今は忙しいんで・・・。
瞳 :そうですか、じゃぁ、ゆっくり休んでて下さい。
瞳は鍵をポストに入れて置くように言って、自分は部屋を出て行った。一人になった久保は、冷蔵庫を空け、一気に空腹を満たすために、その中のものをむさぼるように食べた。
(って、こんなところで瞳が登場なのか…。てっきり瞳を騙して衛を窮地に陥れるのかと思ったら…。瞳の扱いって、一体…)
【某街中】
衛は美沙と会い、美沙から島谷についての話を聞かされる。
衛 :島谷専務が、君の借金を?
美沙:始めは亘の事で何かあるのかと思ったんですけど、どうも違うような気がして・・・。
衛 :えっ?
美沙:何か両親と関係があるんじゃないかって。
衛 :どうしてそう思うの?
美沙:何となく・・・。亘と知り合う前にどこかで会ってるような気がするんです。
衛 :君の両親って、確か…。
美沙;20年前、私が5歳の時に火事で死にました。
『コーダベーカリー』の店の前で両親と撮影した写真を取り出す美沙(ちゃんと写真に『**金庫』の看板がさり気なく写ってるのねぇ〜)。
そのとき、衛の携帯電話が鳴る。
衛 :中西さん・・・?
美沙:瞳?!
(って、尾崎とだけじゃなく、瞳とも携帯電話の番号を交換してたのか、衛!!!)
衛 :もしもし。
瞳 :久保さんから、何か連絡ありましたか?
衛 :明?!明と会ったのか?いつ、どこで!!!
【瞳の部屋】
すぐに瞳の部屋にやってきた衛と美沙。もちろん、瞳も部屋に戻ってます。衛たちが到着したときには、既に久保の姿は無く、部屋の中は荒らされていた。すぐに携帯電話から銀行に電話を入れた衛だったが…;
衛 :分かりました・・・。
電話を切り、衛は瞳に;
衛 :中西さんの預金は全額、引き出されました。
と告げる。ショックで崩れる瞳。そんな瞳に慰めの言葉もなく(^^;)(話の筋にあまり関係ないので省略したのか?(^^;))、衛は久保のことを尋ねる;
衛 :どうして君は、明と・・・。
瞳 :安藤さんのこと、相談してたんです。
衛 :僕のことを?どうして??
瞳 :安藤さんが美沙に惹かれていくようで、恐くて・・・。
衛 :えっ?
瞳 :だって、中学の時から、私が好きになった人はみんな美沙を好きになるのよ!!!
(と、さり気なく凄い発言を、瞳ちゃん・・・。まぁ、いくつか突っ込みポイントはあるドラマだったけど、この部屋でのシーンが、今回のドラマで一番、違和感あったかもしれない。話の展開から、やけに浮いてない?(苦笑))
美沙:何言い出すの、瞳…。
美沙が戸惑っていると、足元に、亘の写真が落ちているのを見つける(おいおい、久保の部屋だけじゃなく、今度は瞳の部屋でもそういうことをしますか>脚本家)。その写真には、亘だけでなく、一緒に瞳も写っていた。
美沙:瞳・・・これ・・・?
瞳 :私、亘のファンで、ライブによく通ってたの。美沙が彼女だって知ってショックだった。奪ってやろうと思って、何度も誘ったけど、相手にされなかった。私は美沙が邪魔だったの!!!久保さんもその気持ちわかるって言ってくれたわ。
衛 :・・・。
瞳 :安藤さんのことかもしれませんね。昔からいつも、自分の邪魔ばかりする男がいるって。
衛 :昔から?明がそう言ってたのか?他に何か言ってなかったか?
瞳 :その人のことは、何があっても絶対に許さないって。
衛 :・・・。
衛は言葉を失う。
【有紀のマンション】
夜。娘の有紀(岡本綾さん)の元を訪れた島谷。有紀の手料理を食べ、ひとときの心の安らぎを得た島谷(久々の父と娘の団らんなのかしら?)。そうして島谷は今回の一件について、有紀に話し始める。
島谷:久保君のことが決着したら責任をとって辞める事になるだろう?
有紀:えっ?
島谷:いや、お前の事は皆に頼んどくから心配する事は無い。
有紀:そんな・・・。
島谷:仕方ないだろ。
有紀:・・・。
そうして、有紀は片づけをしながら、昔の思い出を話し始める。
有紀:子供の頃さ、私、ママがいなかったから、夜になるとすごく寂しくなることがあって仕事先までパパを探しに行っちゃったことあったよね?
島谷:・・・。
有紀:あとでものすごく叱られてさ、仕事ばかりで家に帰ってこないパパを恨んだわ。でも同じ会社に入ってからは仕事をしてるパパを誇りに思えてきたの。辞めるなんて簡単に言わないでよ。
島谷:・・・。
有紀:これからは、一人で抱えないで、私にも話してね。
有紀のその言葉に、優しく微笑んで島谷は;
島谷:そうだな。
とだけ答えた。
【街中】
夜。一人街中を歩く衛。携帯電話が鳴り、電話に出る衛。
衛 :明・・・明・・・なのか?
(この声がとてつもなく優しくて好きだ!!!!)
その頃、久保はどこかの高架下(?)にいた。(初回で衛が尾崎に殴られたりしていたのと同じ場所?)
久保:ああ。卒業シーズンみたいで、街は随分賑やかだぞ、安藤。
と、普通の友人のような会話の二人(このシーン、今回のドラマの中で、一番好きかも)。
久保:小学校の頃ってさぁ、お前楽しかったか?
衛 :何言ってるんだよ。
久保:俺は楽しい思い出なんてなかったな。卒業してほっとしたよ。
衛 :今何処にいる?
久保:お前、言えるわけ無いだろう?お前、俺の状況、考えろよ。
衛 :明・・・明はプロジェクトリーダーになりたくて、僕を襲わせたのか?僕に横領の罪まで着せる気だったのか?
久保:まあな。
衛 :どうして?
久保:お返しだ。
衛 :お返しって何だよ?
久保:あの女も、きっとこんな思いだったのかなぁ。けど、俺はあの女とは違うぞ。最後まで俺はやめないからな。お前のことをずっと見ているからさ。いつでもお前の足引っ張りにいくからさ。
衛 :・・・。いつから僕を恨んでた?
久保:20年前からだよ!!
衛 :20年前?!理由は何だよ?
久保:理由は自分で考えろ。
衛 :・・・。
久保:せいぜい苦しめ。
そういい残して久保は電話を切った。唇をかむ衛。
一方、衛との電話を切った久保は、偶然にも美沙と鉢合わせする(偶然にも程があるぞ!)。憎しみの目で久保を見る美沙。
久保:何だその目は?あんたの恋人を襲わせたわけじゃないだろう。
美沙:原因を作ったのはあなたです!
久保:薮本の邪魔をしたのは相原亘の方だろうが!!
警察に(?)連絡しようと携帯電話を取り出す美沙。
久保:何の真似だ?
美沙:貴方は罪を償うべきです!
久保:償うのは安藤だ。あんたも邪魔したら・・・。
と、美沙にゆっくりと近づいていく久保を、突然現れた尾崎(大西滝二郎さん)がそれを阻み、久保を殴り倒す。尾崎は久保の鞄から、恐らく瞳の口座から下ろしたものであろう現金の入った紙封筒を取り上げる。それを見て、その封筒を尾崎の手から払い飛ばす久保。
尾崎:お前のせいで、お前のせいであの女はな!!
尾崎が久保の胸倉を掴んですごむと、今度は久保が尾崎に力を振り絞って拳をぶつける。倒れる尾崎。久保は現金の封筒を取り戻そうとするが、この騒動に人だかりができ、久保は慌てて鞄も持たず、その場から逃げ去る。
人気の無い降下したにまで逃げてきた久保は、そのまま蹲る。口から流れた血を、右手の包帯でぬぐい、息を整えていると、足元に落ちていた新聞が目に入る。そこには;
『大手警備会社社員』『横領未遂』『監禁』
という見出しと、自分の顔写真が大きく載っていた(これを見て、ますます追い詰められちゃったのね、久保さん・・・)。そのまま久保はどこへともなく消えた。
その後、美沙は尾崎に500万は自分が払うので島谷に500万円を返すように言うが、尾崎は、「俺はしらねーよ。それはあんたらで話しろ」とだけ言い残して立去っていった。それと入れ替わりに、美沙の元に駆けつける衛。
衛 :大丈夫だったか?
美沙:はい。
衛 :明は、何か言ってたか?
美沙:償うのは安藤さんの方だって・・・。
衛 :とにかく、明の目の届かないところに逃げた方がいいのかもしれないな。
【衛の実家】
(で、やってきたのが実家かよ!!!)
翌朝。衛は美沙を連れて実家にやってきていた(会社は休んでるのか?)。明らかに不機嫌な愛子(浅見れいなさん)に声を掛ける衛(そりゃぁ、そうだよな)。
衛 :愛子・・・夕べは遅くに悪かったな。
愛子:事情は分かったけどさ、どうして美沙さんまで?
愛子は庭のベンチに腰掛けている美沙を見て衛に不満を漏らす。
衛 :この間話したろ。許してやってくれよ。
愛子:だって・・・。
美沙は愛子に、ゆっくり頭を下げるが、愛子は許す気にはなれず家の奥へと引っ込む。それを見ていた礼子は、庭に出て、美沙に話しかける。
礼子:美沙さん、夕べは眠れた?
美沙:はい・・・。図々しいですよね、私。
礼子:衛が無理に連れてきたんでしょ?
美沙:私もお母さんと愛子さんに今までの事、謝っておきたくて。・・・それで・・・。
家の中にいる愛子の方に視線を移す美沙。愛子は複雑な視線を美沙に向けている。
美沙:本当にすみませんでした。
礼子:いいのよ。私は美沙さんの味方のつもり。誰だって、心が迷う事はあるわ。みんなそんなに強くないもん。愛子もそうよね?
3人の様子を黙って見ている衛。そして、愛子はようやく美沙に;
愛子:ご飯作ったから、美沙さんも一緒に、食べよう。
と声をかけるのだった。
美沙:ありがとう。
【JTS 資料室】
その頃、島谷は一冊のファイルを手にし、ようやく1つの決断をしていた。
【衛の実家】
一方の安藤家。朝食も終わり、衛は昔のアルバムをめくっていた。
礼子:衛、何見てんの?
衛 :うん、ちょっと気になることがあって・・・。
そうして、何枚かのアルバムをめくっているうちに、”あの”写真を見つける。
衛 :あれっ、この写真・・・。
久保の部屋で見つけた写真を取り出し、アルバムの写真とを比較する衛。アルバムの方の写真には、幼い頃の衛の横に、もう一人、幼い男の子が写っていた。
衛 :母さん、この子、誰だっけ?
礼子:お父さんと仲の良かった松本さんの息子さん。
衛 :松本さん?
礼子:ほら、あの迷惑をかけた・・・。
衛 :親父が何かしたの?
礼子:うちが、泥棒に入られてから、借金したでしょ?結局、返せなくて、保証人になってもらった松本さんがかぶることになってしまって・・・。あんたたちが大きくなって、少しずつでもお金を返そうと思ったときには、連絡がとれなくて。
衛 :ねぇ、この子の名前、覚えて無い?
礼子:確か・・・松本・・・明君だったかしら?
その言葉に驚く衛と美沙。
【ホテル?】
その頃、別のホテルかレストランかどこかで、食事の会計を済ませようとしている久保。だが、クレジットカードは使用停止なわけで、カードを渡した直後、久保はそのまま逃げ去った。
【20年前の回想シーン】
幼い頃の久保。保証人になったために、前の家には住めなくなり、母親と前の家とは違って他の狭くて汚い家に引っ越してきたのだった。
【衛の実家】
引き続き、礼子から当時の話を聞いている衛;
礼子:覚えてない?衛と同じ学年だったはずよ。
衛 :えっ、僕と同じ学校に?
礼子;衛は6年生の時に川崎からここに引っ越してきたから、卒業は一緒じゃなかったけど・・・ここにきて、もう20年よね・・・。
衛 :20年・・・。
その20年という言葉に、慌てて立ち上がる衛;
礼子:どうしたの、衛。
衛 :ちょっと出かけてくる。
礼子:どこいくの、衛。
一方、美沙の方にも携帯に連絡が入る。
【JTS 通路】
下柳は有紀を呼びとめ、島谷から預かった1冊のファイルを有紀に渡す。
下柳:有紀の知りたい事が書いてあるそうだ。
有紀はファイルを受け取り、すぐに中を読もうとする。
有紀:一緒にいてくれないかな?
下柳:えっ。
有紀:これ見終わるまで・・・何か、ちょっと怖くて。
【コーダベーカリー 跡地】
美沙は、衛の実家を出て、昔のコーダベーカリーのあった場所にやってきていた。そこは、今は駐車場になっていた。その場所に待っていたのは島谷だった。島谷も、自分の過去について決着をつけにやってきたのだった。
島谷:あなたのご両親は20年前、火事で亡くなられたんですよね?
美沙:はい。
島谷:原因はご存知ですか?
美沙:そこの信用金庫に強盗が入って、うちに逃げ込んで火をつけたって・・・。
島谷:そこで警備をしていたのは、私だったんです。
【JTSの会議室】
静かに事故の報告書を読む有紀。その報告書の中には、島谷が関係した事件、そして美沙に関わる事件の記載がされたものがあった。
<原因>
小職の娘・有紀が現場を訪れたため、職務を離れてしまった隙に犯人が侵入した。
契約先については被害を最小限に抑えることができたが、小職が警備室を空けたため、犯人の
侵入を許し、追跡した結果、追い詰められた犯人の放火を誘発した結果となった。
父と美沙が関係した事件が、元々は自分が原因だったことに動揺する有紀。その有紀の様子を、黙って見つめる下柳。
【コーダベーカリー 跡地】
20年前の真相を美沙に打ち明け、謝罪する島谷。
島谷:あなたのご両親を死に追いやる原因を作ったのは、私だったんです。それで私は処分を受け、社内へのけじめはつけました。しかし、一番大切なあなたへの償いは済ませていなかった。もっと早くあなたに詫びるべきだった。すまなかった。本当に。
美沙に深々と頭をさげる島谷。美沙も20年前のことを思い出す。それは両親の葬儀の場。ひとりぼっちでいる美沙に、声を掛ける大人の男がいた。だが、その男は、「何しに来た!」と他の大人たちに追い出されていったのだ。その男=当時の島谷は、美沙に謝罪をしにやってきたのだったが、結局、そのときはできなかったのだ。
美沙:やっぱり前にも会ってましたね。
島谷:安藤君の件であなたのことを聞いて、私は、もう一度過去を償えるチャンスをもらえたと、そう思えました。あの、500万円はせめてもの償いのつもりです。いや、許してもらおうなんてそんな図々しい事は考えていない。ただ、これからのあなたのために、できることは何でもしたい。させて下さい。
そうして、再び頭を下げる島谷。
美沙:顔を上げてください。どうして私があなたを許さなきゃならないんです?許すも何も、あなたは何も悪いことなんてしていません。
島谷:・・・。
美沙:私も貴方も被害者なんです。
【川崎の小学校】
夕刻。衛は自分が通っていた小学校を訪ね、「松本明」について、当時の名簿を調べてもらっていた。
先生:松本明・・・いないなぁ。あれっ、親が離婚して、途中で苗字が変わった子かな?
衛 :苗字が変わった?久保ですか?
先生:そうそう、久保明。
そうして、衛に卒業アルバムの写真を見せる。
先生:久保くんなら覚えているよ。よくいじめられていたからさ。
衛 :!
【街中】
街中を彷徨う久保。警察の姿を見ただけで、それを避けるようにして歩いていた。その際、路地裏に逃げ込むと、今度は数人の男たちとぶつかり、その男たちに絡まれる。人気の無い場所に連れ込まれる久保。だが、サイフの中身は空っぽで、そのまま空の財布は水溜りに投げ捨てられる。
【JTS 専務室】
一人、島谷の帰りを待つ有紀。
有紀:読んだよ、これ。
島谷:そっか。
有紀:私が会いにいっちゃったから、私が原因で美沙さんのご両親は・・。だからパパはずっと言い出せなかったんだね。
島谷:お前が悪いわけじゃない。彼女にもちゃんと謝ってきた。
有紀:ごめんね・・・。ごめんね・・・。
島谷:こんどまた、飯でも食おう。
有紀:・・・うん。
島谷・有紀・美沙の関係は、これで一件落着です。
【小学校】
引き続き、久保についての話を聞いている衛。衛は廊下に出て歩きながら先生から当時の話を聞いている。
衛 :久保明がいじめられていたのは、どうしてですか?
先生:6年の時に、お金を盗もうとしたのが見つかったんです。
衛 :お金を盗んだ・・・?
その衛の側を通り過ぎる小学生の姿。その小学生は、他の先生に「給食費の袋」を手渡していた。それを見た衛は;
衛 :もしかして盗んだのって、給食費じゃないですか?
先生:そうそう、給食費だよ。
衛の中にも、20年前の断片的な記憶がよみがえる。
とある教室の前を通りかかった当時の衛。その教室は体育の授業があるのか誰も居ない教室で、一人の少年が生徒たちのランドセルの中から休職袋を盗んでいたのを目撃する。
衛 :あっ、先生。
その衛の声に、振り返る久保。逃げ出そうとする久保だったが教室にやってきた先生に見つかり、連れだされる。そして、その際に衛を睨みつけ;
明 :覚えてろ・・・。
衛 :…明だったのか!!!
【路地裏】
その頃、男たちに殴られた場所に、なお、座り続けている久保。
久保:あいつのせいだ。全部あいつのせいだ。あいつのせい・・・
ただただ、その言葉を繰り返していた。そこに、先ほどの男たちが戻ってくる。
男1::こいつまだいるぜ。
男2::チキン野郎が!
その嘲りの言葉に切れた久保は近くにあった鉄パイプを手にする。
久保:待てよ!!
男1::何だよ!
久保:なめられるの嫌いなんだよ。
激情のまま、久保は鉄パイプで男たちになぐりかかった。
【衛の実家】
夜。寒いのに(^^;)、庭のベンチに腰掛け、それぞれの今日の一日を報告している衛と美沙。
美沙:そんな過去があたんですか。
衛 :・・・。僕をそんな風に恨みながら、何年も友だちみたいな顔をしていたなんて。・・・でも君はよかったね。専務に話してもらえて。
【夜の坂道】
その頃、足取り重く、坂道を登っている久保の後姿。
【衛の実家】
庭で話を続ける衛と美沙に、愛子が声を掛ける;
愛子:ねぇ、ご飯の用意できたよ!
美沙:行きましょ!
美沙は家の中に入っていき、それに衛も続こうとしたとき、衛の携帯に電話が。電話に出る衛;
衛 :はい。ああ、先生。先ほどはどうも。
先生:あの・・・、ひとつ噂を思い出しまして。
衛 :噂?
そのとき、久保は衛の実家の目の前までやってきていた。
引き続き、小学校の先生と話をしている衛;
先生:久保君のお父さんが、離婚した後に大きな事件を起こしたって聞いた事がありまして。
衛 :事件?大きな事件ってどんな事件です?教えて下さい!
衛がそんな会話をしている正しくそのとき、久保は庭に入ってきて、そのまま静かに衛の背後に忍び寄った。
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