■ ストーリー ■
衛のモノローグ:一つの出会いが人生を大きく狂わせることがある。
「君と出会ってからおかしなことばかり起きる」
「また、会いますよ。あたしたち、そういう運命なんです」
「見つからないんです」
「ごめん、本当に悪かった。僕が悪かった」
衛のモノローグ:僕にとってそれが、相原美沙だった
「嫌がらせです。僕は凶悪犯でも犯罪者でもありません」
「お前、狙われてるな」
「辞令だ」
「営業職入社の僕が、現場警備ですか」
「首になっても文句は言えない状況だぞ!」
「この人が君の言っていた一年前に亡くなった大事な人?素敵な人だね」
衛のモノローグ:彼女に出会ったせいで、10年かけた地位を失い
「あたしたち、結婚しようと思ってるんです」
衛のモノローグ:大切な婚約者を失い
「あなたは最低の人間です」
衛のモノローグ:1,100万円の預金を失った
「キャッシュカードの紛失です、すぐに停止して下さい」
「ゼロ円って…全額引き出されたってことですか?」
「君がやったんだな」
「私のこと、探し出せます?」
「えっ?」
「安藤さん、私がどこの誰か、何にも知らないですよね。決めたんです、私」
「何を?」
「あなたから全てを奪ってやるって」
「どうして、どうして僕なんだ?」
Chapter3
【城西警察】
またまたまた警察にやってきた衛君(吾郎君)。ただし今回は自ら被害の申し立てのために。ただし、相手は"いつも"の大川刑事(佐藤二朗)とその部下だったりするわけで;
大川:また君か?何回くりゃ、気が済むんだよ!
衛 :今回はどう考えたって、正真正銘の被害者でしょ!
そうして、被害の内容を聞く大川だったが;
大川:相原美沙さんねぇ
衛 :彼女が盗ったのは間違いありません。
大川:けど、一緒にホテルや、母親の見舞いに行ったりしてんだろ?そういうの、普通よぉ、恋人って言うんじゃねーの?
衛は銀行の防犯カメラに写った堂々と現金を引き下ろしている美沙の姿を見せられる。犯罪者なのに、顔を隠そうとしないのはおかしいと警察は主張。
大川:痴話げんかならさ、警察より、友だちに相談してくれよ。
衛 :そんな話では有りません!1,100万円ですよ!!この女には借金もあるんです。
そう主張してみたものの、例えば携帯電話の所有者は一年前に死亡していると言われ、全く相手にされない衛君。
衛 :はい?
大川:まぁ、何か、情報が入ったら連絡するからさ。今日のところはお引取り願おうかな。
衛 :いや、情報入ったらって・・・ちょっと、捜査はしてくれないんですか?!!!!
結局、それだけの被害をこうむっても全く相手にされない。(実際の警察だって所詮そんなもんなんだろうなぁ・・・と思ってしまうかも(笑))
【美沙の部屋】
相変わらず彼氏の写真を見ている美沙(長谷川京子)。携帯にはMamoruからの着信が入る。だが美沙は電話にでることも無く、衛から奪った現金を鞄に詰める。
【衛の部屋】
その頃、衛は、自宅で全財産を確認中。
衛 :3万2000と、837円・・・給料日まであと25日。
もう一度、美沙に電話を掛ける。今度は美沙は電話に出た。
衛 :どこにいる?すぐに金を返せ!
美沙:思い出して下さい。心の底からお詫びしたら返してあげてもいいですよ。
衛 :思い出すって何の話だよ!詫びるってどういう意味だよ!お袋の手術のことは君も知っているだろう!こっちはすぐに金が必要なんだよ!なぜあんなことをした?!全て奪うって、ど、ど、ど、どういう意味だよ!
美沙:私たちが無くしたものに比べたら、全然奪い足りないですから…。
衛 :私たちって、君と一年前に死んだっていうあの写真の男のことか?僕と何の関係があるんだよ!
美沙:!本当に何も覚えてないんですね。
冷たく美沙はそう言って、電話を切った。
衛 :・・・。
「Mの悲劇」 THE TRAGEDY OF M
【有紀のマンション】
二人の新居になるはずだったマンション前で有紀(岡本綾さん)が出てきたのをみつける衛。(有紀はここに住んでるのね(^^;))
衛 :話があるんだ。
有紀:私にはありません。
と言って、つれなく衛を振り切ろうとする有紀。
衛 :聞いてくれ!全ては美沙の罠なんだ。僕と有紀の仲を引き裂こうとしただけじゃない。傷害事件のリークや、怪文書で僕を陥れた上に、預金まで騙し取ったんだ!1,100万円、全部だぞ!
有紀:そんな話、信じると思うわけ?
衛 :いやいや、本当だよ!あの女僕に復讐しようとしてるらしいんだ。
有紀:どういう理由でそんなことするわけ?
衛 :・・・だから、それが分からないから僕も困ってる!
と食い下がろうとしたら、停めてある自転車を倒しちゃって、そっちに衛が気を取られてる隙に有紀ちゃん、行っちゃうし…。
衛 :君は信じて欲しいんだ!このまま終わりにはしたくないんだよ!
有紀:・・・。
だが、衛のその叫びにも有紀は何も言わずに立去った。
【JTS 会議室】
衛は久保(佐々木蔵之介さん)に預金通帳を見せ、預金を盗まれたと話をする。
久保:まさか、ここまでやるとはな。
衛 :訳がわかんないんだ。美沙が何者なのか、どこに住んでいるのか。何で僕が狙われる。全く見に覚えが無いんだよ。
そういう衛に;
「お前が気づいて無いだけかもしれないぞ」
と言う久保(久保さん、何かお心当たりでも??)。
衛 :えっ?
久保:・・・。人は、知らないうちに誰かを傷つけていることがある。
衛 :僕は誰も傷つけて無い!
久保:そう言い切れるのか?
衛 :・・・。
久保:ああ、俺が電話してみようか。
衛 :えっ?
久保:直接お前に話せないことでも、俺には話せるかもしれないだろう。
衛 :いや、明まで巻き沿いに出来ないよ…。
久保:俺が恨まれてる訳じゃないだろう?
衛 :気をつけてくれよ。
そうして美沙の電話番号を教える衛。久保が電話をしてみたが、美沙は電話には出なかった。
久保:まぁ、また電話してみるよ。
衛 :すまないな。
そこに衛の元部下の高山(井澤健)がやってくる。久保"課長"と打ち合わせしたいので、安藤には席を外すように言う高山。打ち合わせを始めた彼らを、複雑な面持ちで眺める衛。
【美沙の部屋】
1件の着信履歴をじっとみつめる美沙。そこに瞳(吉岡美穂)がやってくる。同窓会の通知が来ていたことを話する瞳。美沙は自分のことなどみんな忘れているだろうから、行くつもりは無いと。
瞳 :そんなこと無いよ、私だって半年前にばったりであったときに、すぐに思い出したじゃない。卒業以来だったのにさ。
美沙:はい、この間借りたお金、ありがとう。
そうして、現金の入った封筒を瞳に渡そうとする美沙(ばったり出会った程度の関係で、現金の貸し借りをするほどの親友になっちゃうとい設定は明らかに無理があるような…)。
と、そのとき、美沙は衛から奪った現金の入った鞄をひっくり返し、瞳は現金を目にする。
瞳 :どうしたの、そんな大金?
美沙:ああ、ちょっと預かっただけ、気にしないで。
瞳 :その大金、まさか、あの安藤さんって人と関係あるの?
美沙:・・・。心配すること無いってば。
そう言って美沙は瞳を追い出す。外は雨が降ってきた。
【JTS 警備課】
衛にとって警備課初日。新たに同僚となる人たちの前で挨拶をする。
衛 :本日より警備課に勤務する安藤衛です。現場警備は初めてなので、よろしくご指導願います。
そうして頭を下げても、明らかに歓迎のムードは感じられない。衛は、プライムスクエアビルの警備を担当することになり、下柳の指示に従うこととなった。
下柳:・・・。
衛 :あ、よろしく。
下柳:・・・。
【プライムスクエアビル】
車で警備するビルにやってくるJTS御一行様。
衛 :下柳君、質問していいかな?
下柳:はい。
衛 :みんな僕を避けてるみたいだけど、やっぱり営業の人間は現場から嫌われてるのかな?
下柳:それは当然ですよ。警備に無茶ばかり押し付けてきますからね。安藤さんだって。
衛 :僕も?何か嫌われるようなこと、した?
下柳:何も覚えて無いんですね。
下柳のその言葉に;
美沙:本当に何も覚えて無いんですね。
美沙のその言葉が衛の脳裏でフラッシュバックする。
衛 :覚えて無いって、どういうことだよ?
下柳:このビルチェーンの警備契約を取るために、安藤さんは新しい警備条項を付け加えましたよね。
衛 :えっ?
下柳:不審者への威嚇および、契約者の安心・安全のため、いかなる状況でも最低一人の屋外警備員を玄関前に常駐させる。
衛 :それがどうかしたのか?
下柳:ふふ、おめでたい人ですね。まぁ、経験したら分かりますよ。
と、衛に意味深な言葉を投げかける下柳。(って、下柳君、仕事上のことでそういういい方をするのは、それこそ逆恨み・・・)
で、外は雨が降り続き、衛はその雨の中、”屋外警備”を担当している。
下柳:寒いでしょう、安藤さん。冬の雨は堪えますよね。安藤さんはこの契約で株を上げたかもしれませんが、現場の負担は大変でしたよ。安藤さんって、善良そうに振舞ってるだけで、決してそうじゃないんですよね。
下柳のその言葉に、衛は美沙の言葉を思い出す。
美沙:あなたって、善良そうに振舞ってるだけで、決してそうじゃないもの。
下柳:俺の顔だって覚えてくれないですもんね。
衛 :!!・・・君と前にどっかで?
下柳:もう、いいですよ。じゃぁ館内巡回行ってきます。
意味深な言葉を残して、下柳は立去った。
【JTS オフィス】
久保:いい企画書になりそうだよ!よく頑張ったな。
高山:久保課長のおかげですよ。安藤さんと違って、部下を信頼して任せてくれますし。
久保が高山と仕事の話を終えたところで、久保の携帯に相原美沙から電話が入る。
久保:久保です。相原美沙さんですね。
美沙:ああ、以前私がお電話した、安藤さんの同僚の方ですか。着信があったので、連絡してみたんですが…。
久保:ああ、いえ。安藤が困ってうみたいなんで、一度お会いしてお話できませんか?
美沙:ああ。やだ。そんな深刻な話じゃないんです。何を聞いたか知りませんが、これは私と安藤さんのゲームなんです。
久保:でも、安藤の預金のことは!
美沙:邪魔しないで下さい。久保さんまで巻き込みたくないんです。安藤さんみたいには、なりたくないでしょ?
久保:!安藤をどするつもりですか!
美沙:いずれ、あなたにも分かる日が来ると思いますから…。
久保:・・・。
【JTS 警備課?】
事務所に戻ってきた衛君。一人事務所の片隅で冷え切った手をこすり、かなり寒そうです。
下柳:現場の大変さが分かったでしょう、安藤さん。
衛 :教えてくれないか、下柳君。
下柳:?
衛 :・・・。いや、前に僕らが会ったっていう話だよ。
下柳:ああ、僕が受付警備しているときに、何度も挨拶したっていうだけの話ですよ。
衛 :・・・。
そうして、事務所を出て行く下柳。そのすきに、衛は下柳の鞄を調べる。すると、手帳の間に有紀の写真が!!疑念を抱く衛君。
【JTS 会議室】
美沙と電話をした結果を衛に報告する久保。
衛 :ゲーム?美沙がそう言ったのか?
久保:お前を巻き込みたくないから、邪魔しないでくれと。
衛 :警備課の下柳晃一を知ってるか?
久保:ああ、俺みたいに警備から営業に転属したいって、時々相談を受けたよ。真面目ないい男だよ。
衛 :写真だ、写真。
久保:えっ?
衛 :有紀の写真を持ってたんだ。気をつけろ!やつは美沙と繋がってる。
久保:おかしなこというなよ!何で晃一が?
衛 :影で僕や有紀の情報を流してたんだよ。油断するとお前まで標的になるぞ!!
久保:お前、疲れてるんだな。暫く休んだらどうだ?
衛 :僕がおかしくなってると思ってるのか?
久保:・・・。
衛 :何で分かってくんないんだよ!!!
久保:・・・。
(衛君がますますかわいそうになっちゃったよ・・・(ToT))
【公園のベンチ】
親友にも信じてもらえず、落ち込んで公園の中を歩く衛。ベンチに腰掛け、風で木の葉が舞うと、その先に美沙がいた。まっすぐゆっくり衛の方に向かってくる美沙。
衛 :君は誰なんだ!僕に何の恨みがある!
そうして、もう一人、警棒を手に衛に迫る下柳。
「何にも覚えてないんですね」
美沙と下柳の二人が一斉に衛を襲う。
衛 :助けて下さい!!!
で、目が覚めると夜の公園ベンチ(今回の夢オチは分かりやすかったな(^^;))。衛がほっとしているところに近づく靴音。肩を掴まれたその方向を振り向くと、それは中西瞳だった。
瞳 :やっぱり、安藤さんだ。
衛 :ああ…(ほっ)。確か、中西さんでしたよね?
瞳 :はい、またお会いしたいなぁって、思ってたんです。
衛 :?
【レストラン】
二人はレストランで食事をする。
瞳 :えーと、私はディナーセットのA。
衛 :あ、ああ、じゃぁ、僕も同じものを・・・
と、言おうとしたものの、3,200円の値段を見て;
衛 :あ、コーヒーだけじゃダメですか?
と、節約の衛君。不憫じゃ・・・
衛 :あ、昼飯が遅かったもんで…。
瞳 :あ・・・。
衛 :あの・・・ちょっと質問していいですか?
瞳 :えっ?
衛 :もし、中西さんが誰かを恨んでいるとして、その人から全てを奪うとしたら。その人はもう、婚約者と会社での地位と、お金まで失ったんです。今度は何を奪いますか?
瞳 :それって、安藤さんの話ですか?
衛 :あ、ああいや、すいません。よく知らないあなたにこんな話。
瞳 :知らないから話せるんじゃないですか。
衛 :・・・。怖いんです。周りの人間まで巻き込むのが。今の僕に残されたものは、友人と肉親ぐらいですから。
瞳 :・・・。どういう人からそんなに恨まれてるんですか?
衛 :あなたを同じ年ぐらいの。相原美沙っていう女です。
瞳 :・・・。
(衛君、自分のことはさておき、周囲を巻き込むのが怖いというその言葉に、さらに切ないものを感じてみたり…。)
【病院】
衛は病院側から母親の検査の結果についての報告を受ける。
衛 :脳の動脈部?狭心症じゃなかったんですか?
医師:狭心症の回復は順調だったんですが、検査で脳の血管にゴム状の塊が見つかりました。放っておくと血管が敗れてくも膜下出血を起こす恐れがあります。
衛 :の、脳の手術を?
医師:頭を開くわけではありません。ステント併用コイル塞栓術といいまして、太ももの動脈からカテーテルを通して、血管の破裂を防ぐんです。
事務:で、費用の件なんですが、これは保険適用外の治療ということで、来月の末には入院の費用の他に、手術の費用として200万円用意して戴く事になります。まぁ、そういうこともありますんで、今月分(?)は期限どおりお願いします。
衛 :わかり・・・ました。
現在、一文無しに近い衛にとって、その金額は既に絶望的だった。何としても美沙から現金を返してもらう必要が出てきた。
その足で衛は病室に行き、医者から聞いた話として、母親の礼子(吉行和子)と妹の愛子(浅見れいな)に話をする。
礼子:そう、大した手術じゃないんだ。
衛 :ああ、だから、母さんは何も心配することは無いから。
礼子:で、仕事の方は上手くいってる?
衛 :もちろんだよ。
礼子:美沙さんとも仲良くしてる?
衛 :・・・。ああ、心配ないから。
礼子:じゃぁ、手術が終わったら、式の日取りも決めなくちゃね。
衛 :えっ?
愛子:美沙さんから聞いてるよ!婚約したんでしょ!
衛 :えっ!!!
その話に驚き、慌てて愛子を病室から連れ出す衛。
愛子:何?何、何?
衛 :もしあの女が来ても、病室には絶対に入れるなよ!
愛子:あ、もしかして、喧嘩したんでしょ!
衛 :とにかく、僕の言う通りにしてくれ。
愛子:?
と言ってみたところで、衛の必死さは愛子には伝わらないわけで…。
【夜の街】
夜の街。あてもなく美沙を探し続ける衛。
その頃、美沙は鞄をコインロッカーに入れたりしているが、当然、衛はそんなことは知るはずも無く、街にいる人に片っ端から美沙の名前を出して訪ね歩いている。
衛 :美沙っていう若い女なんです。
と、そうやって必死な衛の姿を、美沙は偶然目にし、ビルの陰に身を潜めて見ている。と、ここでまたまた偶然、美沙に付きまとう男性尾崎(大西滝次郎さん)が衛の前に立ちはだからり、脅迫してくる;
尾崎:何をかぎまわってるんだ?
衛 :あ、いや。やっぱり美沙はあの金を借金の返済に…。
尾崎:あん?何の話だ。
衛 :ああ、いや、いや。
尾崎:あの女に金でも貢いだか?
衛 :ああ、いや。
そうして、尾崎は美沙の500万円の借金の借用証を衛に見せる。
衛 :500万?
尾崎:払えるぐるらいの金か?
衛 :いや、貢いでません!
尾崎:だったら、何かぎまわってるんだよ!
と、さらに脅しをかけらえる衛だったが、その尾崎の肩越しに、美沙の姿を見つける衛君。尾崎を振り払い、美沙を追う衛君。
【夜の某駅】
美沙を追って、とある駅までやってくる衛。改札の中に入っていった美沙の姿をみつけ、衛もホームへと。携帯電話が鳴り;
衛 :どこにいる!
ふと反対ホームを見ると、そこに美沙はいた!
美沙:・・・。
衛 :金を返せ!
美沙:思い出したんですよね。私にお詫びすること。でなきゃ返せませんよ。
衛 :だから、言ってる意味が分からないんだよ!
美沙:だって、そういうルールですよね。
衛 :僕のお袋を殺す気か?
美沙:!人殺しはあなたの方です。
衛 :!どういう意味だよ。
美沙:思い出して下さい。
衛 :・・・。
そこに美沙のいるホームの方に電車が入ってきて、美沙の姿が見えなくなる。急いで反対側のホームに回る衛。だが、ホームに美沙の姿は無く、電車に飛び乗る。社内で美沙に似た女性を捕まえたが、よくあるパターンの人違いという展開で、まさしくそのときに電車のドアが閉じてしまった。その閉じたドアのむこうに衛をあざ笑うかのように美沙がいた。電車は静かにそのまま発車した。
【JTS 専務室】
衛はどうしようもなく、島谷(伊武雅刀)に給料の前借を申し出る。
衛 :お願いします!
島谷:あれだけ会社に損失を与えておいて、前借だと!私が守ってやらなければ、君は首だったんだぞ!母親が病気だと何かと入用だと思って、娘を裏切った男に情けをかけたんだ!少しは私の立場も考えろよ。
衛 :僕は裏切ってません。全てその美沙っていう女の仕業で、警備課の下柳君と共謀しているかもしれないんです。有紀だって…
島谷:!
衛 :有紀さんだって危険です。
島谷:本気でそう言ってるのか?
衛 :はい。
島谷:じゃぁ、あの女は何の目的でそこまでした?君を罠に掛けて何のトクがある。下柳君との接点はどこにあるんだ?
島谷にそう問い詰められ、衛は何も言えない。(って、その口ぶり、普通に”下柳君”と言ったけど、専務は下柳を知ってるのか…?)
衛 :・・・。
島谷:もし、仮に、万が一、君の言うことが本当だったとしても、何の根拠も無いんじゃ、信じようが無いだろう?
衛 :・・・。失礼します。
島谷:・・・。
衛はそれ以上何も言えず、部屋を出て行った。
【JTS ビル内】
エスカレータを降りながら、衛に話をする久保。
久保:ごめんなぁ、力になれなくて。
(って、久保さん、軽っ)。どうやら衛は久保に借金の申し出をしていたようである。
久保:親父が借金抱えてさ、俺の貯金、全部その穴埋めに使われてるんだ。
衛 :明が誤ることじゃないよ。全部あの女のせいだ。今日は早番だから、この後探してみる。
久保:うん。あ・・・。
と、久保は後ろにいた有紀に気づくが、衛はそのまま有紀とは何も言葉を交わさない。衛は久保に;
衛 :有紀に下柳君には絶対に近づくなって言っておいてくれ。
久保:・・・うん。
とだけ伝言を残して、衛は立去った。残った久保に話しかける有紀。
有紀:久保さん、美沙さんの電話番号教えてもらえますか?自分で直接確かめたいんです。
【喫茶店】
で、早速喫茶店で会う有紀と美沙。
有紀は衛とどういう関係なのか美沙に問いただす。美沙は、衛と出会ったのは一昨年の11月だったこと。その後、ずっと衛のことを思って生きてきたこと。有紀に気遣って、自分が悪者になって恨まれるのが嫌だから有紀に嘘をついているということ・・・などと話をし、最後には結婚の約束をしてるからと、有紀が衛に投げつけた婚約指輪を、美沙は有紀に見せる。
有紀:それ、私が返した指輪ですよ。
美沙:えっ。だって、安藤さん、私のために買ったって。私も安藤さんに騙されてるってことですか?
その言葉に有紀は店を出て行った。(ゆ、有紀ちゃん、いくらなんでもそりゃねーぞ(ToT))
【JTS 警備課】
警備課のロッカー。仕事が終わり、下柳が出て行く。その後をつける衛君。
【美沙の恋人のアパートの近く】
その頃、尾崎は美沙に会い、衛から貢がせた金で借金を返すように迫る。
美沙:借金を返すためのお金じゃありませんから。
尾崎:死んだ男の借金で人生ぼうにふるきか?
美沙:尾崎さん、私、楽になろうなんて考えたことないんです。私の人生なんてどうなたって構わないんです。
尾崎:じゃぁ、何のために盗った金だ!
美沙:あの人を困らせて、苦しめるためです。
【マンション】
その頃、衛君は下柳が有紀のマンションに入っていくのを目撃するわけで・・・。鞄に入れていた防犯スプレーを手にしていざ突入の決意を。
下柳がやってきて、部屋の扉を開ける有紀。
下柳:俺の言った通りだったみたいだな。
有紀:うん。
そうして、有紀の部屋に上がろうとする下柳に向かって「うわーーーーーー」と突進する衛君。へなちょこぶりは流石です(いや、だから…(ToT))。防犯スプレーを下柳に向けたものの、あっさりと腕をとられて、ねじふせられてるし…。
衛 :あ、痛い!お前、有紀に何する気だ?!
下柳:えっ?
衛 :有紀、気をつけろ、この男はな、美沙と共謀して僕や有紀のこと狙ってるんだぞ!
下柳:何、おかしなこと言ってるんですか。大丈夫ですか、安藤さん?
衛 :ちゃんと証拠だってある!離せ!
下柳を振りほどいて、彼の鞄をあける衛君。
衛 :この男はな、美沙と共謀して有紀のこと狙ってるんだ。ほら、これ見ろ!
と、取り出した写真は、有紀の写真じゃなく、有紀と下柳の写真だった。
衛 :えっ?
下柳:学生時代からつきあってたんですよ。あなたが現れるまではね。
有紀:指輪、美沙さんにあげたんですってね。帰って下さい。
衛 :誰がそんなでたらめ。あの女がそう言ったのか?
そうして、下柳によって部屋から連れ出される衛。その様子を何も言わず黙ってみている有紀。衛はエレベーターホールまで連れてこられ;
衛 :いや、僕はそんな。有紀!!!離せ。
下柳:いい加減、もう、有紀を傷つけるのはやめてもらえますか?
衛 :僕は傷付けて無い!僕は有紀を守りたいんだよ!
そうして、エレベータに乗せられちゃう衛君でした。
【美沙のアパート】
瞳は美沙を訪ねる。そうして、いきなり部屋に上がりこみ、衛の金の入った鞄を持ち出そうとする。
美沙:何するの?
瞳 :だってこれ、安藤さんのお金でしょう!安藤さん、困ってるんだよ。美沙のしてること、犯罪だよ!
そうして、美沙は過去を語り始める。
美沙:本当ならあの日、亘の夢が叶うはずだったの。亘が音楽事務所とデビュー契約を結ぶ記念日になるはずだった。
ある日、二人で夜の街を歩いていると、路地裏で男に暴行を受けている衛を見つける。
衛 :た、た、た、助けてください!!!
衛は亘に助けを求め、それを見た亘は、暴行を振るう男の間に入っていく。
亘 :おい!やめろ!
亘が力ずくで男を追い払い、そうして、衛は亘に助けられた。
衛 :あ、ありがとうございます。本当に助かりました。
衛は二人に礼を言う。
美沙:なのにあの男と出会ったせいで、私たちの不幸が始まったの。
衛 :本当にありがとうございました。
衛は再び二人に礼を言い、二人の前を立去る衛。その後、先ほどの男に亘はナイフで腕を刺され、もみ合いになる。
美沙:その怪我が元で・・・
瞳 :だからって、安藤さんにどんな罪があるの?
美沙:亘は大きな夢をつかみかけてたのに、あの男を助けたせいで、何もかも失ったの。全てあの男のせいなのよ。亘の一周忌に突然現れたあの男は、何事も無かったかのように、普通の幸せを掴もうとしてた!私や、亘のことなんて覚えてなかった。いい人ぶって、自分のことを守ることしか考えてなかったのよ!自分の身は自分で守れって言ったのよ、人の助けなんてアテにしないで生きてきたから、今の僕があるんだって。助けられたくせに私にそう言ったのよ。これぐらいのことして何が悪いの?
瞳 :・・・。
その話を聞いて、瞳はお金を美沙に私、静かに抱きしめた。って、おーーーーーーーーーーーーーーーーい。
(ひ、瞳ちゃん、この話の流れで納得してどーうするよ!他にも理由はあるようだけど、このシーンで瞳の行動が一番理解できないよ…)。
【JTS】
衛は大量のファイルを持って、エレベーターで降りようとすると、そこには島谷が乗っていた。
衛 :ああ、専務。
島谷:何を調べようとしてるんだね?
衛 :下柳君の件は勘違いだったようで。過去のトラブルを調べたら、相原美沙に行き着かないかな、と思いまして。
島谷:私も色々、調べてはみたが、あの女にはたどり着けなくてね。
衛 :専務は僕の言うことを信じてくれるんですか?
島谷:目があんまり真剣だったんでね。仕事以外のことで心当たりは無いのか?
衛 :そういうことは無いよう、用心して生きてきたつもりです。
島谷:君が忘れてるだけかもしれないぞ。
衛 :!
島谷のその言葉はそのまま;
久保:人は、知らないうちに誰かを傷つけていることがある
久保に言われた言葉を思い出す。
島谷:足を踏んだ人間は覚えて無くても、踏まれた人間はずっと覚えている。それだけが理由で復讐を決意する人間がいる。恐ろしいもんだ。
衛 :・・・。
(あれっ、専務、いい人?)
【海】
海を見つめる美沙。今日も花束を海に投げ入れる。
【病院】
美沙は、衛の代理人として、病院の受付に行き、今後の手術費と入院費を含めて、完治までに必要な費用を尋ねる。待っている間に、愛子が美沙の姿をみつけ、声を掛ける。
そうして、愛子は美沙を礼子の病室に連れていく。美沙も礼子の前では本当のことは言わず、会話を続けるが;
美沙:もしかしたら私がお見舞いにこれるのは今日で最後になるかもしれません。
愛子:えっ?
礼子:美沙さん、確かに衛は気の利かないところも有りますけど、心根の優しい子なんです。もう少し長い目で見て・・・。
美沙:ごめんなさい。今日はこれで失礼します。
美沙はそう言って立ち去る。
【夜の街】
夜。今日も美沙を探す衛君。すると、あのロッカーに鞄を預けてる美沙を見つけました。後をつけると、ビルの3Fに入っていく美沙。後を追おうとしたときに、丁度、愛子から電話が入った;
衛 :何かあったのか?
愛子:うううん。病院代払ってくれたみたいだね。ありがとう。
衛 :えっ?
愛子:美沙さんが払ってたみたいだよ。早く仲直りしなよ。お母さんも心配してたよ。
衛 :・・・
愛子:どうしたの、お兄ちゃん?
衛 :ああ、いや、また電話するよ。
【クラブ】
衛がその後、美沙が消えたであろうフロアにやってくると、そこは高級クラブ。美沙はその店で働いていたのだった(って、なのに瞳に借金するかぁ〜)。
お金も無いはずなのに、衛は客として店に入り、美沙を指名した。
美沙:いらっしゃい・・・。
衛 :・・・やっと会えたな。
客が衛だったことに、驚くわけでもなく、相変わらず冷たく対応する美沙。
美沙:お飲み物は。
衛 :何なんだ、君は。あれだけのことをしておいて、今度は病院代の支払いか?何のつもりだ?少しは自分の罪を軽くしようっていう考えか?そんなことで自分のしたことが許されると思ったら大間違いだぞ!
黙って、お酒を作る美沙。
衛 :今頃になって自分のしたことが怖くなったのか?だったらもう2度と僕や周りの人間に近づかないよう、約束しろ!残りの金も返せ!
美沙:じゃぁ、思い出しました?私にお詫びすること?
衛 :僕から詫びることは無い!盗んだのは君だ!騙したのは君だろ!
美沙:・・・。
衛 :どうせ、金目当てだったんだろう?借金の返済でもするつもりでな。指輪はどうした、由紀に何を言った!何故僕を巻き込む!僕は君に何の迷惑もかけて無いはずだ。何かあるなら、今、ここではっきり言ってくれ!言えないのか?どうせくだらない言いがかりだろ。
美沙:・・・
衛 :君と出会わなかったら僕は幸せだったんだ。なのに、君と出会ったせいで、色んなものを失った。詫びるのは僕じゃなくて、君の方だろ!
美沙:・・・。
(って、またそんなさらに傷を広げるような発言を…(ToT))
立ち上がろうとする美沙。引き止める衛。
衛 :どこへ行く?
美沙:人呼びますよ。
衛 :・・・。
美沙:ここじゃぁ、何ですので、下で待っててもらえますか?
美沙は一旦、立去る。控え室でベンヂンを鞄に入れ、店を出る美沙。(って、どっから急遽ベンヂンなんて調達できるんだよ!!!)
【夜の街】
美沙に連れられ、お金を置いてあるロッカーに行く衛。
衛 :金はその中か?
黙って美沙は金の入った鞄を取り出し、で、お金を出した途端、美沙に逃げられて・・・って、重ね重ねドジな衛(ToT)。
夜の街を逃げる美沙、追う衛。
そうして、人ごみの無い一角にやってきて、衛に追いつかれる前に鞄にベンヂンを注ぎいれる美沙(怖いなぁ、全く)。ライターを取り出し、衛が追いつくと;
衛 :何の真似だ!
美沙:来ないで!
美沙が火がついたライターを手にしているのを見て、後ずさりしちゃう衛君。
美沙:結局、思い出せませんでしたね。
衛 :まだそんなこと言ってるのか?
美沙:私だって、あなたに会わなきゃ幸せでした。なのに、あなたなんかに出会ったせいで。
衛 :・・・僕が君に何をした?!
美沙:そんなに欲しいなら、返してあげますよ!
ライターを落とした途端、鞄の中の現金が燃え上がる。
必死にコートで火を消す衛。そのようすを冷ややかに見ている美沙。
美沙:これはもう少し借りておきますね、安藤さん、もう、必要ないでしょうから。
美沙は婚約指輪を手に姿を消し、衛は灰になった全財産を前に崩れ落ちた。
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