Mの悲劇


第1話 『なぜ僕を恨む、君は誰だ』

05.01.16 Sun 21:00〜22:09 TBS系列 にて ON AIR

 

 

■ ストーリー ■

【プロローグ】

モノクロの8mmフィルムっぽい映像で、生まれたての赤ん坊が映り、町工場「有限会社 安藤製作所」を営む一家の映像が流れてます。記録映像っぽい雰囲気と、コメディちっくな雰囲気と両方を醸し出しております。

衛のモノローグ:僕の名前は安藤衛。人工衛星の衛と書いて衛と読む。1972年、アポロ計画が終わりを告げた年に、小さな町工場を営む父と、優しい母親の間に生まれた。ささやかだけど幸せな家族だった。だが、その頃の僕はまだ気づいてはいなかった。幸福の秘訣は唯一つ。あらゆる危険を遠ざけ、あらゆる災いに備えることだということを

そうして月日が流れ、衛が5歳のある日・・・

衛のモノローグ:我が家を災難が襲ったのは僕が五歳の冬・・・

家で衛が一人で留守番をしていると、覆面をかぶった泥棒が床下から侵入してくる。衛はその様子を襖の陰から覗いている。

衛のモノローグ:こつこつためた財産を一夜にして失った父は、それを取り返そうと株に手を出し失敗。その後、ありとあらゆるギャンブルに手を出し、大きな借金を抱えて、工場は倒産した。母の内職で飢えをしのぐ日々が続く中、僕は人一倍、用心深い人間になった。

そんなことがあり、衛少年は、近くの公園の”石橋”を叩いて安全を確認してから渡る用心深い子供になっていた。

さらに月日は流れ;

衛のモノローグ:父がこの世を去ったのは僕が12歳の冬。まだ幼い妹と取り残された母を守るため、僕の用心深さは度を増した。安全こそが人生最大のテーマだと考えるようになった。

衛は高校生ぐらいの年齢になっても、石橋を叩いて渡る性格は変わらず、更に横断信号では「横断中」の黄色の旗を掲げてわたるような日々であった。

衛のモノローグ:人はそんな僕のことを臆病だと言う。だけど僕はこう思う。人より少し慎重なだけなのだと



・・・そして大人になった衛(ここからがようやく吾郎君)もやはり石橋を叩き続け、危ないと判断した衛は引き返す。実際、その直後、石橋は落ちた…(汗)

衛のモノローグ:自分の身は自分で守るしかありません!

その信念に基づき、これまで生きてきた衛。例えば大雨と強風の嵐の日であっても、傘を吹き飛ばされそうになりながら突き進み;

衛のモノローグ:災難の何割かは心がけ次第で防げるものなのです。

大雨の中、衛君がやってきていたのは、とある会社の採用試験会場。広い会場にいる衛の”演説”を、その会場にいる衛以外のただ一人の人間、島谷(伊武雅刀)が聞いています。

衛 :常々、そのポリシーを社会に広めたいと思っていた私は世に安全と安心を提供し、人々の幸福を守るという、この『Japan Total Security(JTS)社』の基本理念に深く感銘を受け、御社を志望させて頂きました!
島谷:この嵐で交通機関も麻痺している中、よく来れたねぇ
衛 :はい、万一の事態に備えて、前々日から近くのホテルに宿泊していましたから

と、採用試験に誰一人としてやってこな状況で、衛は長靴姿で到着していたのだった。

島谷:はははははははは(高笑い)
衛 :!
島谷:私もだよ
衛 :(^_^)

と、かく言う島谷も衛と同じく長靴姿。二人はこの段階で意気投合し、見事、今のJTS社に就職したのであった。


衛のモノローグ:統計によると、日本の犯罪件数は年間ほぼ300万件、年々増加の一途をたどり、質の面でも凶悪、巧妙化する一方です。

JTSで働き始めた衛は、最初の頃はオペレータもやってます;

衛 :**連絡です。新宿区**にて***発生。直ちに急行して下さい

JTSはその衛の指示に従い、警備員がバイクで急行し、異常の有無を確認するというサービスを提供する会社なのです。



そしてさらに月日は流れ、衛はJTSの企画開発を担当するセクションにおり、会社の重役たちを相手に自ら立案した企画のプレゼンシーンをしている。

衛 :今や、家族や個人の安全までもが深刻に求められている時代です。我々警備保障会社に対するニーズも、ますます、高度化・多様化しています。こんな今だからこそ、わが社の最新鋭・最高セキュリティを導入したマンションのプロジェクトをキョウメイ建設・ニチヨウ不動産との共同開発で推し進めて生きたいと考えます。このプロジェクトは必ずや我がJapan Total Security社を警備のトップブランドとして社会に認知させる新たなる第一歩と成ると確信しております!

その衛のプレゼンテーションを聞き、満足げに拍手をする島谷。



そうして己の特性を生かし職場で頭角を現した衛は、同期入社の同僚の中でも一番出世を果たしたのです。それを受けて、衛は、とあるレストランのオープンテラスで島谷と会食をしている。

島谷:昇進、おめでとう
衛 :ありがとうございます

シャンパンで島谷と乾杯する衛。衛がプロジェクト開発課長への昇進が決まった事に対する祝杯である。自らの能力と島谷に目を掛けられたことで、衛は同期の中でも一番出世を果たしたのである。そこに島谷の娘の有紀(岡本綾さん)が現れる。

島谷:よぉ!
有紀:こんにちは
島谷:紹介するよ、安藤君。去年、入社した娘の有紀だ
衛 :あ、初めまして。安藤衛です

これが二人の初対面。有紀は何よりも衛の鞄から頭を覗かせている傘が気になるわけで;

有紀:こんな晴れた日に傘を?
衛 :はい

そうして二人の交際が始まった(これが恋人同士の二人のはじめての会話なのねぇ〜(苦笑))


衛のモノローグ:好きなことわざは「石橋を叩いて渡る」と「備えあれば憂いなし」


とある日に衛と公園で待ち合わせをする有紀。急に雨が降ってきて、困り果てていると、やってきた衛がそっと傘を差し出し;

衛 :ね?
有紀:ふ(^^;)


衛のモノローグ:つまらない男だと女性に振られ続けた僕も、そのことわざのおかげで、人並み以上の幸福にありついた。しかしっ!!

とある日の夜、衛が街を歩いていると、突然、暴漢に襲われ、額を負傷する。


衛のモノローグ:私たちの日常生活は危険に満ちています。あらゆる場所に落とし穴は潜んでいます。自分だけは大丈夫だという考えは大きな間違いです!

とある会場で、大勢の人を前に説明会を開催する衛;

  『虹彩認証 入退室管理システム
   [High Security Mansion PARK GARDEN SETAGAYA]
   入居者説明会』

衛 :実際に私も夕べ、街頭で暴漢に襲われ、負傷しました。もはや日本は安全な国とは言えないのです。そこで今日、みなさんにご紹介させて戴くのが、我が、Japan Total Securityがあらゆる危機を想定し、企画、設計した、ハイセキュリティーマンションです!

衛のモノローグ:オートロックはもちろんのこと、虹彩認証システムが不審者の侵入を完全にシャットアウト!さらに複数の監視カメラで24時間わが社の優秀な警備員がみなさまの安全と幸福を監視しています。



【衛と有紀の新居となるマンション】

衛自身が企画したJTS社のセキュリティが設置されたマンションの一室にやってくる衛。”ぴんぽーん”とチャイムを鳴らすと、部屋の中にいた有紀が顔を出した。

有紀:いらっしゃい。早かったね
衛 :ダメじゃないか。ちゃんと誰だか確認してから開けないと!
有紀:だって!
衛 :どんなにセキュリティがしっかりしていたって、それを使う人間が油断したら意味無いんだぞぉ
島谷:ははははは。安藤君の言うとおりだぞ、有紀
衛 :ああ、専務・・・いらしてたんですか

島谷に一礼してから、部屋に上がる衛。有紀がコーヒーを入れたりしています。

有紀:もうすぐここで衛と暮らせるのね
衛 :うん
有紀:ふふ(^^)
衛 :すみません、専務。まだ式の日取りも決まらないうちから…
島谷:ああ・・・君なら安心だ。それより明日の契約書はできているのか?

と、娘の新居となる部屋で仕事の話をし始める野暮な島谷氏(^^;)。数十億という契約が翌日に控えており、JTS社にとっても、衛の将来にとっても、非常に重要な意味を持つ・・・

島谷:絶対に遅れるなよ
衛 :分かっております
島谷:迎えの車はこっちで手配しておく
衛 :あっ、大事な商談なんで電車で向かいます。車だと事故や渋滞に巻き込まれることもありますから
島谷:相変わらず、用心深い男だな。はははははは!



【翌日 地下鉄 車内】

そうして、翌日の地下鉄。かなりガラ空きの電車の中で、衛は契約書の確認&手鏡で身だしなみのチェックと、最終確認。と、斜め前に喪服姿の一人の女性(長谷川京子さん)が座っているのが目に留まる。その女性の前で、怪しい男性が立ち止まる。それを見て、向かいのシートに席を移動する衛。女性が眠っているのをいい事に、男性は胸元のボタンを外しデジタルカメラで写真を撮り始めた(ってさぁ、これだけやられて気づかないというのは、設定に無理がありすぎじゃないか?この段階で美沙の作戦というのなら仕方ないけどさ)。そのあからさまの痴漢行為を目にした衛は、鞄の中に持っていた催涙スプレーをこっそり取り出し;

衛 :ちょっとアナタ!

と声を掛ける。男に向けて催涙スプレーで撃退しようとしたが、逆に男にフラッシュを焚かれて目をつぶった隙に逃走されてしまう。追いかけようとしたが、痴漢を撃退もしたことだしと、じっと立っていると、その次の瞬間に電車が大きく揺れる。その際、勢いで眠っていた女性が椅子から落ちる、それを防ごうとした衛は、女性の胸に正しく右手が覆いかぶさる格好に。ここでさすがに女性は目を覚まし(遅っ)、悲鳴を上げる。一方、それを目撃した客が、衛を痴漢だと思い取り押さえる。その際に携帯を落とした衛だが、それに気づくどころではなく、電車がとある駅に到着してそのまま連れ出される。その光景をじっと見ている女性。

   「助けてください!」

衛は何度も何度も女性に向かって「助けてください!」と叫び続けるが、女性はただ黙って電車の中から見つめ続けているだけであった。その女性を乗せたまま、電車は走り去っていった。


衛のモノローグその夜、僕は大きな落とし穴に転落した



    「Mの悲劇」 THE TRAGEDY OF



【城西警察署】

取り押さえられたときの格好そのままに、グダグダの格好になって警察の取調べを受ける衛。身長175cm程度、30歳前後、ベージュのコート、メガネの男、乗っていたのが夜の東速線昇りの6号車・・・今の衛の状況と連続痴漢犯と一致していることから、刑事は頭から衛の話を聞こうとはしない。鏡に催涙スプレーまでもっている男性を、警察は最初から犯罪者の視線で見ている。しかも、肝心の女性はその場を立ち去ってはいるが、衛がホームで暴れたときの男性が鼻血を出して被害届けが出ており、話は痴漢だけでなく傷害罪にまで及んでいるのだ。(って、もうこういうの書くのも本当に嫌な設定なんだよ…(ToT))
衛は今日の8時から商談が有り、携帯も無くした状況で非常に焦っていたが、衛はいくらやっていないと叫んでも誰にも聞いてもらえず、そのまま拘置所に押し込まれてしまった。(ま、まもタン・・・(;o;))



【女性(美沙)の部屋】

その夜、衛の携帯電話を拾ったその女性。携帯の中にあった衛と恋人らしき女性とのツーショット写真があるのを見たりしている。



【城西警察署】

翌日の朝、傷害の被害者が被害届けを取り下げて示談を申し入れたといって、拘置所から出される衛。警察から出てくると、そこにタクシーでかけつけた親友の久保(佐々木蔵之介さん)がいた。そのままタクシーに乗り込む衛と久保。



【移動中のタクシー】

久保:安藤!災難だったな
衛 :この件は、会社に報告した方がいいのかな・・・
久保:馬鹿言うな!うちみたいな会社でこの手のことが知れたら、いくらお前だって、処分、免れないよ。誰にも言わない方がいい!島谷専務や有紀さんにもだ!
衛 :けど、警察から連絡がいくことは・・・
久保:示談がまとまれば、もう、それで終わりさ。まぁ、大した怪我じゃないし、俺に任せろ!それより夕べの言い訳、考えたか?
衛 :えっ?
久保:何処に居たのか、色々聞かれるだろ?
衛 :これは?
久保:夕べ7時の事故だ。東速線での脱線事故で、乗客が長時間閉じ込められた。使えるかな、と思って
衛 :・・・嘘をつくのか?
久保:いや、気がひけるのは分かる。でも、他に適当な理由が見当たらないだろ?

そうして、弁護士事務所に寄る久保と別れ、衛はまず専務のところに顔を出すために、会社に向かった。

久保:おい、ところで美沙って誰だ?
衛 :美沙?
久保:夕べ、電話でお前のこと色々聞かれた
衛 :そんな女、知らないよ
久保:噂には気をつけた方がいい。特に女にはな!



【JTS 衛の職場】

衛は会社に入り、駆け足で職場に駆け込んだ、が;

   「まさかあの人がねぇ〜」
   「警備会社の人間が警察沙汰はまずいでしょ」

という言葉が耳に入り、硬直してこの声の方を向くと、防犯課長が機密事項漏洩による懲戒解雇処分を受けたという辞令が張り出されていた。

衛 :ああ、そっか、処分って、防犯課長の・・・

と、まずは胸を撫で下ろしたところに、衛の部下が声を掛けてきて;

部下:おはようございます
衛 :ああ、おはよう
部下:課長って、真面目そうに見えて、案外、遊んでるんですね
衛 :えっ?
部下:夕べ僕、電話したんですけど、美沙っていう女が出ましたよ
衛 :美沙?
部下:ふふふ、その格好じゃぁ、朝帰りバレバレですよ

と部下に言われ、己のヨレヨレの格好を見て慌てて洗面所に向かう衛。顔を荒い、歯を磨き、髪を整えて、真面目しかとりえの無いような衛君の出来上がり。(でも、ヨレヨレの衛君も好みだぞ!σ(^^;))



【JTS 専務室】

まずは昨晩の出来事に対して島谷に謝罪する衛;

衛 :夕べは本当に申し訳ありませんでした。ちょっとした事故に巻き込まれて。しかも携帯電話を紛失してしまいまして・・・

衛は島谷専務に電車の脱線事故に巻き込まれて大事な商談に行けなかったのだと告げる。先方も衛が遅れるのは余程のことがあったのだろうと心配してくれたぐらいなのだ。契約は明日、改めて仕切りなおす事になった。

島谷:用心が裏目に出たね。明日は車を使いなさい
衛 :はい



【JTS 衛の職場】

専務を納得させ、安心して自分のオフィスに戻り、続いて衛はインターネットで昨日の脱線記事の情報収集を行う。そこに、弁護士との話を終えた久保がやってくる;

久保:何してる?
衛 :情報収集、明日の商談で話題に出るかもしれないからさ
久保:その用心深さが出世の秘訣か?
衛 :・・・。裏目に出ることだってあるさ
久保:示談は順調だ。専務だって納得したんだろ、丸く収まるさ!
衛 :だといいが・・・

とそこに、衛に電話が・・・

衛 :安藤です
美沙:突然お電話して申し訳有りません。相原美沙と申します

美沙は衛に、携帯電話を拾ったこと、それを返したいこと、そのために着信履歴にあった人物に電話を掛けたことなどを告げた。携帯を返したいので、今日の夜8時に会う約束を取り付ける。

久保:美沙って女だ?何だって?
衛 :心配するなって。携帯電話を拾ってくれたみたいで
久保:ああ・・・

そこに、衛を訪ねて有紀がやってくる

部下:やっぱり女ですかね
久保:ばーか、あいつに限ってありえるかよ!



【カフェ】

衛は有紀に昨晩、脱線事故に巻き込まれたことを有紀に話す。

有紀:へぇ、そうだったんだぁ。大変だったんだね
衛 :ちょっと待ってよ。何か嬉しそうじゃん
有紀:だって、夕べは色々勘ぐっちゃったから
衛 :勘ぐる?
有紀:でも、浮気なんかできっこないか。私がパパに言いつけたら、出世の道も閉ざされちゃうもんね
衛 :出世のために君を選んだわけじゃ…
有紀:分かってる!冗談よ

そうして、有紀は鞄から指輪を取り出す。

衛 :おっ
有紀:サイズの直し、昨日出来てきたの。衛さんにつけて欲しくて
衛 :うん

衛は有紀の手に婚約指輪をはめる。その様子を窓ガラスの向こうからじっと見ている美沙。

有紀:どう?
衛 :よく似合ってる

そうして、有紀と衛は、翌日の朝、出勤前に新居のカーテンを取り付ける約束をした。



【某ホテルのロビー】

美沙との約束の場所にやってくる衛。ロビーにある椅子に座り待っていると、向こうから黒いコートの女性がやってるのが見える。その女性は、正しく昨日のあの騒動のときの女性だった。

衛 :美沙さんって、君が?
美沙:夕べはすみませんでした。ずっと気になってたんです。目が覚めた途端、状況が分からないままに、私、大声を出して。でも、『助けてください』って叫んだあなたのことを思い出したら、とてもそんなことをする人には思えなくなって。いい人だったらどうしようって、心配になって
衛 :現に僕は何もしてませんし
美沙:そうですよね。電話したお知り合いも、口を揃えて真面目で誠実な人だって・・・。なのに私・・・
衛 :おかげで留置所に一泊。貴重な体験をさせてもらいましたよ
美沙:ごめんなさい。私のせいで・・・。どうお詫びしていいか・・・本当にごめんなさい
衛 :ああ、もういいですよ。信じてもらえて安心しました
美沙:本当ですか?
衛 :はい

微笑んでみせる美沙。そうして衛の携帯を取り出し;

美沙:あっ、これ・・・
衛 :わざわざありがとうございました。じゃぁ、僕はこれで

衛が立去ろうとしたとき、その衛の腕を取り、引き止める美沙;

美沙:私の気が済みません。せめてお食事ぐらいご馳走させて下さい
衛 :・・・



【レストラン】

衛は美沙の希望通り、美沙とレストランにやってくる。コートを脱ぎ、肩を露出した黒のドレスを着ている美沙。テーブルにはワイングラスが置かれている。

美沙:なんだか不思議ですね、こんな風に食事できるなんて
衛 :・・・。そうですね
美沙:あんなことがあったおかげですよね
衛 :・・・あ・・・あの、誤解の無いように言っておきますが、僕にはれっきとした婚約者がいまして
美沙:お友達の噂どおりね
衛 :生真面目で、安全なだけの男ですか?
美沙:お酒も飲まれないんですか?
衛 :ああ、いや、普段はそれなりに
美沙:今日は普段とは違うんですか?
衛 :・・・あ、いや
美沙:ふふ。もしかして私のこと警戒してます
衛 :ああ、いや、別にそういうわけでは・・・夕べと随分印象が違いますね
美沙:夕べは喪服でしたから
衛 :お葬式か何か?
美沙大切な人の一周忌だったんです
衛 :・・・
美沙:ここその人とよく来た思い出の店で。よかったらいっぱいだけでも付き合って頂けませんか?
衛 :ああ、そういうことでしたら・・・

そうして、ようやくワインを口にする衛。さらに美沙は;

美沙:実は私、安藤さんに色々相談したいこともあって・・・
衛 :えっ?
美沙:最近、周囲も物騒で、たまに誰かに後を付けられていたり、部屋を覗かれているようが気がして怖いんです
衛 :そういうことなら僕の専門だ。いくらでも力にまりますよ
美沙:ありがとうございます
衛 :でもね、相原さん、結局、自分の身は自分で守るしかないんですよ
美沙:・・・
衛 :そう、誰も助けてなんてくれません。僕はずっとそう考えて生きてきました

この言葉を聞いて、美沙は衛に尋ねる;

  「安藤さんは誰かに助けてもらったことはないんですか?」

それに対して、衛は答える;

  「ありませんね」

と。その言葉を聞いて、美沙は意味ありげな表情を浮かべる。

そこに衛の携帯が鳴り、少しの間席をはずす。その隙に美沙は、バッグの中から錠剤を取り出し、衛のグラスに入れた・・・



【衛と有紀の新居となるマンション】

翌朝。ベッドで眠る衛。朝の光で目を覚ますと、その隣には美沙が眠っていた。
(おお、吾郎君の上半身の素肌がぁ〜。嬉しいぞ!!!!・・・って、こんなことでだまされていいのかなぁ、私)

衛 :あっ!!!!

そのとき、扉の向こうには「衛、来てる?」と有紀の声が。慌てて美沙を隠そうとするが、二人から「どういうこと?」と責められ、追い込まれる衛・・・そのまま気を失い・・・

で、再び衛が目が覚めると、さきほどの光景は夢だったというオチ・・・と思ったら、悪夢は続いていて、メガネをかけて部屋の中をよく見回すと、部屋のソファーに女性の衣服。そうして、洗面所から出てくる美沙。

美沙:おはようございます
衛 :ど、どうして君が?!▼*?$#&
美沙:いやだ、覚えて無いんですか。セキュリティの話になって、このマンション見てけって連れてきてくれて…。なのに、安藤さん、そのまま眠ったっきり
衛 :ねぇ、君がここで?
美沙:ふっ、婚約者がいる人と、同じベッドでなんて眠れません
衛 :は・・・・だよね。そうだね

と、安堵してそのソファーに座る衛だが、ソファーに美沙の髪の毛が落ちているのを見つけて、慌ててそれをポケットに押し込み、8時に有紀が来る事になっていたのを思い出し、ベランダから下を覗くと、有紀がマンションに到着したのが見える;

衛 :ちょっと悪いけどすぐ出て行ってくれないか!彼女が来たんだ!カーテンを取り付ける約束になってて。とにかく君がここにいるのはまずいから!!!

とにかく、大慌て大急ぎで美沙の脱ぎ捨ててある服を彼女に押し付け、玄関の扉を開けて追い出そうとする衛;

衛 :さぁ!
美沙:専務のお嬢さんね・・・島谷有紀さん
衛 :どうしてそれを?
美沙:夕べ、教えてもらいました
衛 :ぼ、僕が?!
美沙:?じゃぁ、また

部屋に独りになった衛は、昨晩から今朝までの美沙との記憶をたどる余裕も無く、有紀がやってくる前に部屋の片づけをし始める衛。ガムテープを手にし、ソファーのありとあらゆるものを除去していた。

その頃、エレベーターホールでは、やってきた有紀と美沙がすれ違う。

有紀:あ、あの、今度ここに越してくる島谷です。ここにお住まいの方ですよね?
美沙:はい。よろしく
有紀:よろしくお願いします


有紀が部屋にやってくると、衛は悠然と構えていた・・・(^^;)。

有紀:早かったね
衛 :夕べ、飲んじゃってさ。遅れるとまずいから泊まったんだよね
有紀:相変わらず用心深いのねぇ〜

といって、有紀はカーテンを取り出し、衛は台所に置かれた口紅のついたマグカップを見つけ、大慌てで洗い落としている。

有紀:どうしたの?
衛 :何か?
有紀:何か慌ててる?
衛 :ああ、とりあえず、コーヒーをね
有紀:うん

だが、美沙の罠はそれだけでなく、ベッドの陰に白い薔薇の形をしたピアスが落ちていたのだった。



【アパート】

衛のマンションから出てきた美沙は、とある電車の沿線沿いのアパートにやってくる。表札は「相原・香田」と。
その部屋に入ってきた美沙は、部屋の玄関に落ちていた「期限はとっくに過ぎている。至急、連絡しろ」と書かれたのメモを握りつぶす。その部屋には美沙と男性との写真が置かれていた。



【JTS】

その日の夕方、再び取引先との契約に向かうため、衛は島谷の元を訪れ、契約書の最終確認をしていた。先方の社長の好みに合わせて、吉兆安のゴマ豆腐を手土産に用意する用意周到振りである。

島谷:この契約が纏まったら、君を新しいプロジェクトの責任者に抜擢するつもりだ。これからもその調子で頼むよ
衛 :はい
島谷:君のお母さんにもそろそろご挨拶をしておかないといかんな
衛 :はい、ありがとうございます。今度、有紀さんと見舞いにいくことになっているんです。退院したら専務にも…
島谷:他に、女がいるんならいまのうちに整理しとけよ
衛 :えっ?
島谷:冗談だよ!はははははは。君に限ってそんなことは無いだろう…
衛 :あ、もちろんです

と、普通なら明らかに冗談だと分かる会話にも、そわそわする衛であった。



【料亭】

そうして、とある料亭で、社長ともう一人その部下の接待をしながら契約を進める衛と島谷。まずは一昨日のことを詫び、脱線事故の話になるが、先方にカマをかけられ、「安藤さん、来られなかった本当の理由は何ですか?」と問い詰められる。聞けば、ライバル会社の人間から、衛がその日に傷害事件を起こしたとの密告があったと。結局、契約は白紙に戻されてしまう。

島谷:安藤君、君は私にも嘘をついていたんだね。まさか君からこんな仕打ちを受けるとはな。処分は免れないよ。昇進の話も、有紀との話も、白紙に戻させてもらう
衛 :待って下さい、専務!
島谷:分かってるのか!君のしたことは、警備会社の人間として最もやってはいけないことだ!私は君と言う人間を買被り過ぎていたようだな!
衛 :・・・



【JTS】

結局、衛は、傷害事件と虚偽の事故報告を理由に、謹慎3日を言い渡された。会社に張り出されたその辞令を複雑な面持ちで見ている有紀。衛から電話が入るが;

衛 :もしもし、有紀・・・ごめん。今から会えないか。僕の話も聞いて欲しいんだ。悪意があったわけじゃない。ああするしかなかったんだ。僕だって辛かった、君には分かって欲しくって
有紀:・・・
衛 :有紀、どうしても会って、話がしたいんだ・・・
有紀:ごめんなさい、気持ちの整理がつかないの

そんな有紀の様子を、一人の警備員が見ていた。



【バー?】

衛と久保は、とあるバーで、今回の一件について話をしている。

久保:本当にすまなかった。俺があんなことを言ったから…
衛 :いや、お前のせいじゃないよ。正直に話していたとしても、契約は無理だったろうし、ああするしかなかったよ
久保:でも、どっからそんな話が・・・示談相手は納得してたし、俺の方から漏れるとは考えられないんだよ
衛 :まぁ、警備会社と警察はいろんなつながりがあるから、刑事が金目当てにリークしたってことも考えられるし。もう、気にするなよ。全部、僕の責任だ・・・
久保:ほとぼりが冷めたら、専務だって考え直すさ。お前は会社にとって必要な人材だろう。な?

そこに衛の携帯に電話が入る。相手は『Misa』だった;

久保:『Misa』って・・・携帯拾った?
衛 :名前まで登録して・・・

その美沙の行動に恐ろしさを感じた衛は、その電話に出なかった。その頃、衛が電話に出ないことを確認して、美沙は夜の街を彷徨っていた。



【衛の自宅マンション】

自宅の一人暮らしのマンションに戻ってきた衛。厳重なロックの掛かった扉を開け(^^;)、部屋の留守電には、母親から予定通り明日の有紀との来院を楽しみにしているとの伝言が入っていた。携帯に納めた有紀とのツーショット写真を眺める衛。コートも脱がずにベッドに横になると、『Misa』から電話が!

衛 :はい
美沙:やっと出てくれましたね
衛 :一体、何の用です
美沙:すみません、実はあのマンションに忘れ物をしちゃって
衛 :忘れ物?!

美沙のその言葉に、ベッドから飛び起きる衛。

美沙:ピアスです。白い花の形の。大事なものなんです。失くすと困るんです
衛 :今から探しに行きます
美沙:ありがとうございます
衛 :万が一、彼女に見つかって、あらぬ疑いを掛けられても、僕の方が困りますから



【美沙or??の部屋】

美沙は部屋で思い出の人とのビデオを一人見ていた。衛の部屋に忘れたピアスはその人からの贈り物・・・(って、そんな大事なものをそういう手段に使うなよ!!!)



【衛と有紀の新居となるマンション】

急ぎマンションにタクシーで乗り付ける衛。慌てて部屋にやってきて、ピアスを探していると;

有紀:何してるの?

と、なぜか既に部屋には有紀がいた。大慌ての衛。

衛 :あっ、あ、いや、あの、この間時計、忘れたみたいでさ。ほら、あの、誕生日に君からもらった時計。洗面所かな・・・

と言いながら、衛は洗面所に入っていって、有紀に見つからないように、身につけていた時計を洗面所のタオルの間に隠す(とっさのことなのに、賢っ)。だけど有紀は衛に対して;

有紀:本当はこれ、探してたんじゃないの?

恐らく美沙の言っていたピアスらしきものを差し出す。

有紀:ベッドルームに落ちてた。誰の?
衛 :いや、知らない・・・
有紀:そうよね、色んな業者が出入りしてたもんね。でも、この前、衛ここ、とまったんだよね
衛 :えっ、僕を疑ってるの?そんなことも信じてもらえないわけ?
有紀:衛だって私のことを信じてくれて無いじゃない!事件のこと、私にまで隠そうとしたじゃない。私はあんなに心配したのに。それが納得できないの・・・。鍵、返して。ここパパの家よ・・・
衛 :・・・
有紀:パパが別れた方がいいって
衛 :・・・。君の気持ちはどうなんだよ!専務が薦めてくれたから、だから僕とつきあったのか?僕は君が専務の娘だから好きになったんじゃない
有紀:・・・

衛はそのまま部屋の鍵を置いてマンションを出て行った。



【夜の街中】

イルミネーションで飾られた夜の景色とは対照的に、衛が落ち込んでベンチに座っていると、そこに美沙が現れる。

美沙:ピアス、持ってきてくれました?何かあったんですか?
衛 :君なのか?
美沙:えっ?
衛 :君が告げ口したのか?
美沙:何の話です?
衛 :だって、不自然だろ?婚約者がいると知ってて、僕らの新居に平気で泊まってご丁寧にピアスまで忘れて、考えたら府に落ちないことばかり!
美沙:全部私のせいにするんですか?
衛 :・・・。お金なのか?
美沙:えっ?
衛 :お金目当てで僕に付きまとっているのか?
美沙:・・・
衛 :じゃなかったら、僕みたいな男に、何の利用価値があるというんだよ!
美沙:寂しかったんです、大事な人を亡くして一年、生きていく理由が見つからなくて・・・そしたらあなたが現れたから・・・

     あなたを生きる理由にしたいんです

衛 :どういうつもりで言ってんだよ!意味わかんないよ!僕は君とであって散々だよ!痴漢の濡れ衣、つまらない傷害、大きな契約にも失敗して、専務にも彼女にも見放されて!!!僕の方こそ、生きる、生きる理由が見あたらないよ!!
美沙:だったら私でいいじゃないですか
衛 :本気で言ってるのか!!!
美沙:嫌いじゃないから触ってきたんでしょ?
衛 :何言ってんだよ!誤解だって君も認めたじゃないか!
美沙:私が被害届けを出したら、世間はそう思わないわ
衛 :!!!!!
美沙:例えばの話です。安藤さん、自分を守ろうとしてばかりいるから、少し脅してみたくなっただけ・・・ちょっとほっとしました。あなたって善良そうに振舞ってるだけで、決してそうじゃないもの・・・

そうして静かに衛の前から立去ろうとする美沙。

衛 :・・・
美沙:安藤さん、思い出せません?

    私たちが会うの、あの電車が始めてじゃないんです

衛 :前に???何処で?!・・・君は誰なんだ?!

美沙の様子を見ている男。美沙はその場を立去る・・・暫くしてそれを追いかける衛。美沙の後姿を見失いそうになりながら、どこまでも追いかけていこうとするが、突然、ある男に暴行を働かれる。男から「あの女の何だ?」と聞かれるが、怯える衛は静かに首を振って知らないと答え、「おかしな真似したら、こんなんじゃすまないぞ…」と更に脅迫を受け、男は立去った。一人、痛みと恐怖で怯える衛・・・。

(目が妙にリアルで可哀想になっちゃったよ。美沙だけならいいけど、そこまで理不尽な展開は見ていて辛いよー(ToT))



【メガネ店】

翌日、眼鏡屋で新しいメガネを新調する衛。



【病院】

そうして、海岸沿いにある病院へと母親の見舞いにやってきた。有紀と一緒ではなかったことで病室に入りづらい衛だったが、妹の愛子(浅見れいなさん)に見つかる;

愛子:お兄ちゃん?
衛 :ああ・・・
愛子:一人?
衛 :うん
愛子:どうしたの、その傷?
衛 :ああ、ちょっと転んじゃってさ
愛子:お母さん、お兄ちゃんきたよ!

と、愛子は売店に出て行き、衛は母親の病室に入っていく。衛は有紀が急に都合が悪くなってこれなくなったと母親の礼子(吉行和子さん)に告げる。

衛 :次は必ず一緒に来るから
礼子:振られたわけじゃないのよね?
衛 :そんなんじゃないって
礼子:ふふ、よかった。あなたはね、妙に細かすぎるところがあるから、彼女に愛想をつかされたんじゃないかと、心配で
衛 :大丈夫だって、うまくやってるから
礼子:仕事は?
衛 :相変わらず順調だよ


病室に戻ってきた妹からロビーに有紀らしき人がいたと聞かされ、衛は病院の周りを探しにいく。



【海岸】

海岸で海を見ながら有紀はいた。

衛 :有紀!!!!

有紀のいる方向に駆け寄る衛。

衛 :ああ、来てくれたんだ
有紀:やっぱりあのままじゃいけないと思って・・・
衛 :・・・
有紀:時計、あったよ
衛 :・・・
有紀:ごめんね、パパがうるさくて、衛のお母さんにはまだ会えないの
衛 :・・・
有紀:私もだよ、私も衛と同じ、パパに薦められたから好きになったわけじゃない

そうして例のピアスを取り出し衛に見せる有紀。

有紀:信じていいんだよね?
衛 :当たり前だろ!そんなこと気にしてどうするんだよ!

そういって、海に放り投げ、有紀を強く抱きしめる衛だったが、その視線の先に、美沙の姿が。美沙の姿に怯えながら、二人はその場を立去った。


衛のモノローグ:世の中で一番恐ろしいのは人間の心だ。この後僕は彼女によって、それをいやというほど思い知らされるのであった。


■ 感   想 ■

まずはお断り。すみません、まだ感想らしき感想がまとまっておりませぬ。ドラマとしてどうなのかとか、そういうのを考える以前の問題というか…。やっぱり役とはいえ”吾郎君”が辛いのはいやん。

なもので、暫くアップできたとしても内容が中途半端なものが続くかと思いますがお許し下さい。


さてさて・・

久しぶりの連ドラは、吾郎君がてんこ盛り。変な言い方ですけど、出番、多かったですね。吾郎君が主演のドラマって、傍観者的な役をするときは、本当に主役なのかと思うぐらい出番が少ないものも多かったのですけど、今回はほとんどのシーンが衛のシーンだったもんなぁ〜。

で、その衛君なのですが、一言で言えば”冴えない男”ってことになるんでしょうか?
その設定はいいのだけど、個人的にはそういう”冴えない男”に、何故に有紀が惚れたのかということと、何故に久保のような親友が出来たのかと。その辺も今後、ドラマの中でちゃんと説明はして欲しいな(ぼそっ)。このドラマにおける一番の謎はそこなんだな。

ドラマは、それにしても、うーん、見ていて辛いかも。衛が堕ちていく展開というのはいいのだけど、出来ることなら美沙の色香に惑わされ・・・程度の展開にして欲しかったよぉ。痛々しくも生々しい内容は、見ていて相当、きついのだわ(すみません、今回のレポは一部、相当きついっす)。

美沙に、「善良そうに振舞ってるだけで、決してそうじゃないもの」と言われた衛君。でも、対応の仕方がまずかったとはいえ、痴漢を追い払うことをする勇気はある人なんじゃないかとは思うんだけどなぁ〜。
自分のことを守るのに必死で余裕の無いように描かれてるけど、でも、結構、それって普通の人なんじゃないかな? 私の中にも思い当たるところがあるような気がします。

今回のドラマは、自分でもここまでの感想を抱くのが不思議なぐらい辛かったです。主人公は主人公らしく、ヒーロー的なキャラを加えてくれてたら、もう少しお気楽に見れていただろうに。それでも、あんなシーンやこんなシーンがあっても、こういう役をやっちゃうのは、吾郎君のプロ意識ゆえなんでしょうか?

ああ、早く、衛君には堕ちるところまで堕ちてもらって、衛の再生を見たいとか思ってしまったです(ToT)。

(05.01.23)


ブラウザの戻るの機能で戻って下さい