恋愛偏差値 第二章

〜 第二話 [SEXから始まる恋…謎の男の正体は?]〜



  • Introduction

    『BAR Air』・・・琴子が夏目から告白を受けるシーンの再現;

      夏目 「この間は少し言い過ぎた・・・後悔したんだ」
      琴子 「いや、別に」
      夏目 「お詫びにさ、男紹介するよ」
      琴子 「ちょっと、あなたね」
      夏目 「付き合ってみる気無い?」
      琴子 「遠慮します」
      夏目 「何で?」
      琴子 「当たり前でしょう!
          そんなどこの馬の骨か分からないような男と何で私が」
      夏目 「俺と
      琴子 「えっ?」
      夏目 「俺と付き合ってみない、結婚を前提に!」
      琴子 「・・・・結婚?!?!??!!」

    突然の夏目の言葉に戸惑う琴子。その夏目の発言の意図するところを聞きたい琴子だが;

      琴子 「あの・・・」
      夏目 「外資系だったよね?
      琴子 「は?」
      夏目 「輸出?それとも輸入?」
      琴子 「輸入」
      夏目 「ふーん。どんな物を扱ってるの?」
      琴子 「化粧品とか・・・それより、あの、さっき何か」

    なんて、またまた夏目にはぐらかされてしまう(でも、この台詞、先週は無かったよね?(苦笑)。今回のドラマは、予告も本編とは別アングルものを使っていたりするし、油断できないわ…)。改めて聞こうとすると、今度は夏目の携帯が鳴り、話を戻すことが出来ない;

      夏目 「(電話に出て)はい、夏目です。ああ、わかった。30分で行く。
          それより資材部に、明日までに来てくれって」

    電話を置いた夏目に、琴子が尋ねる;

      琴子 「仕事?」
      夏目 「デート」
      琴子 「は?」
      夏目 「また連絡する。おやすみ」

    ここまでが前回までのお話・・・

  • [守屋硝子工場 〜 ]

    翌日。アルバイト5日目。守屋ガラスの事務所で、アルバイトを開始した琴子は、事務仕事を任されている。これまで守屋硝子では縁の無かったパソコンを使っての納品管理なんていうこともやってのけている。
    ただ、今はデスクに座ってはいるが、机の上にはこっそり夏目の名刺が置いて、心は昨晩の夏目の言葉がずっと気になっている。

      琴子 「どういうつもりだろう・・・」

    事務所では丁度、3時の休憩タイム。従業員一同、事務所に集合し、一服ついている。社長の守屋も得意先まわりから帰ってきて、そのついでに買ってきた饅頭を皆に配っている。もちろん、琴子にも一つ;

      育子 「いい感じだね、二人」
      聡子 「何かお似合いよねぇ」
      的場 「えっ、何?!二人できてんのか?」
      守屋 「おい、やめろよ、そういうの」
      一同 「あはははは(笑)」
      聡子 「オフィスラブ〜」

    と盛り上がる一同に隠れて、「どこにオフィスが・・・」と呟く琴子・・・。


    もちろん、琴子の仕事はパソコンでの納品管理だけでなく、ダンボールに入った商品〜金魚鉢を運んだりなんていう雑用も手伝ってますが、転んで危うく商品を台無しにしそうになったりしてます;

      沢井 「何だその靴!そういうのがうちの仕事には向かないってことぐらい       分かるだろ!」
      琴子 「私が向かないんだと思います…」


    仕事が終わり、再び事務所。琴子に対して、皆は、このままここに正式に就職しちゃえば?などと語りかける。守屋も「採用!」などと本気とも冗談とも取れる発言をするが、琴子は;

      琴子 「勝手に採用しないで下さい。貿易会社に就職するっていう目標が       あるんですから。ここはそれまでのつなぎなんですから」

    と、はっきりと守屋に伝える。だが、その琴子の発した「つなぎ」という言葉に、険悪なムードになってしまう。

    その気まずいムードの中、事務所を出てきた琴子の携帯電話が鳴る;

      琴子 「もしもし」
      夏目 「夏目です」

  • [BAR Air 〜 ブラームス『ピアノ三重奏』]

    その日の夜。BAR Airのカウンターに座る琴子と夏目の二人。琴子は赤いカクテル、夏目は白ワインのいつものグラスを手にしている。そして、二人の間には、バックギャモンのミニサイズのゲームが置かれていて、サイコロを転がし、ゲームをしながら、会話を続けている;

      夏目 「そんときさ、初めて本物のクリムト見たんだけど、想像以上でさ。
          それから、出張するたびにウイーン美術館に通ってるんだよね」
      琴子 「そう・・・」
      夏目 「見たことある、クリムト?」
      琴子 「ええ、クリムト・・・それはそうと、この間言ってたことなんだけど」
      夏目 「いいよ」
      琴子 「えっ?」
      夏目 「そっちの番」
      琴子 「ああ」

    琴子は夏目に「結婚を前提に付き合う」と言われた言葉の真意を聞きたくて仕方が無いものの、琴子が切り出そうとしたところで夏目は話をそらした。仕方なく、琴子はサイコロを転がしゲームを続ける。もちろん、この後も、夏目は次々とマイペースで話を進めていきまして;

      夏目 「最近読んだ本で、何が一番面白かった?」
      琴子 「本?」
      夏目 「ジョージ・ソルスの『グローバル資本主義の危機』っていう
          本があってさ。あれは一度読んでおいて、損は無いと思うけどね」
      琴子 「ですよね・・・それはさておき、この間言ってた事なんだけど」

    と、今度もゲームの方に注意を持っていき;

      夏目 「ああ、違う」
      琴子 「えっ?」
      夏目 「これはここにもってくの」
      琴子 「ああ」

    と、タイミングを失う琴子。

      夏目 「音楽って何聴くの?」
      琴子 「音楽?」
      夏目 「うん・・・ジャズとか、クラッシクとかは?」
      琴子 「・・・ええ、たまに」
      夏目 「何が好き?」
      琴子 「えっと。・・・ほら、パッと思い浮かばないだけ」
      夏目 「俺はね、ブラームスが好きなんだよね」
      琴子 「ブラームス?」
      夏目 「うん。特にピアノ三重奏
      琴子 「!」
      夏目 「あまりポピュラーじゃないんだけど、いい曲でさ。
          むしゃくしゃしたり、気持ちが沈んだりしたときによく聴く」
      琴子 「へぇ・・・ピアノ三重奏とか、好きなんだ。・・・実は私も」
      夏目 「(サイコロを転がして)ヒット!」
      琴子 「えっ?」
      夏目 「これ」
      琴子 「ああ、実は私バックギャモンってよく知らないんですよ。
          でも、ピアノ三重奏は・・・」
      夏目 「っていうか、全部知らないでしょ?
      琴子 「えっ?」
      夏目 「さっきから適当に相槌打ってない?」
      琴子 「・・・」
      夏目 「本当に負けず嫌いだね」
      琴子 「素直だってよく言われますけど」
      夏目 「ほら・・・(^^;)」
      琴子 「(^^;)」

    と、お互い、憎まれ口を叩きながらも、そんな会話を楽しんでいる様子。(とはいえ、私はこのシーン、なぜか大爆笑してしまいましたよ。次から次へと夏目君の口から出てくるインテリな言葉。最後のブラームスの言葉が出たときに、笑いはピークに達してしまいましたわ。でも、この後のシーンを見ていくと、決して笑うシーンんじゃないんですよね。でも、あまりに夏目君=吾郎君が重なってきて、笑いを抑えれなかったの…)

  • [代官山の街中→都内ホテルの一室 〜 恋の始まり]

    夜の代官山。そのまま店を出てきた二人;

      夏目 「もう一軒、行ける?」
      琴子 「それって嫌味ですか?
          どうせこの年ですから、門限なんて存在しません」
      夏目 「野放しー」
      琴子 「野生化はしてません」

    と、タクシー停めようとする夏目君に、琴子はずっと聞きたかったことを尋ねる;

      琴子 「夏目さん」
      夏目 「?」
      琴子 「この間言ってた話、本気ですか?結婚を前提に付き合うっていう・・・」
      夏目 「ああ、あれ?」
      琴子 「そう、それ」
      夏目 「どうして?」
      琴子 「どうしてって・・・こっちが聞いてるんですけど。
          だって、大事じゃないですか、一応、前提が前提だし。
          まだそんなに会ってない訳だし、どこがいいのかよく分かんないし。
          とにかく、もう一度ちゃんと確認しておきたいっていうか」
      夏目 「・・・あれさ・・・」
      琴子 「?」
      夏目 「冗談だよ(えっ?)
      琴子 「!?冗談?!#$▽&%*/」
      夏目 「本気にしてた?」(本気にしたσ(^^))
      夏目 「結婚が前提じゃないと、付き合えないかな?
      琴子 「・・・」
      夏目 「保険が無いと、不安?
          (↑この言い方がプレイボーイ風で好き!)
      琴子 「・・・」

    真正面から夏目にそういわれて、絶句する琴子。だが、ここでも負けず嫌いの性格が災いしてか、琴子はその夏目の反応を予想していたかのように振舞う。

      琴子 「あ・・・まさか、そんなつまんない女じゃありません、私は。
          恋愛に保険かけたらつまんないじゃないですか。
          そんな女だって思われてるんだとしたたら、勘弁して欲しいと思って。
          それで確かめたくて聞いただけです」
      夏目 「なら、いいんだけど」
      琴子 「当ったり前じゃないですか」
      夏目 「・・・」
      琴子 「そうだ、青山のお店にしません?夜景の綺麗な処あるんですよ」

    そう言って、道端に歩み出て、タクシーを停めようと手を上げる琴子;

      琴子 「タクシー!ああ、全部乗ってるな・・・空車が来ない。
          あっ、来た来た来た」

    と、タクシーを停めようと大きく右手を挙げたとき、その手首を取って、そのまま夏目は琴子の唇を奪う・・・(ああ、すみません、折角のシーンなのに、ボキャブラリーが無くて(涙)。吾郎君のキスシーンって、数々あれど、こうやって相手のキスを奪うなんていうシーンは始めて見たので、ドキドキしちゃいましたよ。ついでに、路上を走る車から二人のキスシーンを映した映像も印象的。)



    そのままシーンは、綺麗な夜景の見える都内の某ホテルの一室。

    琴子は夏目の胸に抱かれ(早まるな、二人はまだ服を着たままだよん) 、そのままベッドでもう一度、唇を重ねる二人。

    そして、二人はそのまま・・・

      :
      :
      :

    ってところで、続くシーンは翌朝だったりする(涙)。
    窓から差し込む朝の日差しで琴子が目覚める。横を見ると、夏目の姿は無いが、その夏目のぬくもりを探すように、その部分に手をやる琴子。そして、夏目の姿を探そうとベッドから出るが、どこにも夏目は見当たらない。そして、洗面台に、一枚のメモが;

       『支払いは済ませておいた  夏目』

      琴子 「何よこれ・・・」

    (確かに、一体、何なんだ夏目君!!!本当にプレイボーイって感じで、イヤなやつ。でも、でも、でも、嫌いになれないの(^^;))

  • [五嶋通商オフィス 〜 夏目の宣戦布告]

    朝の五嶋通商のオフィス。既に社員たちが忙しそうに仕事をしている。コーヒーを手にして立っている夏目のもとに、パートナーの水沢環(細川直美さん)がやってくる;

      水沢 「お待たせ。はい、資料、作っておいたから」
      夏目 「さんきゅー」
      水沢 「これ、砂糖入ってない?」

    と、夏目が手にしているコーヒーをとり、口する。

      夏目 「徹夜?」
      水沢 「二日酔い」
      夏目 「たまには真っ直ぐ帰ったら?」
      水沢 「うちに一人でいたら、寂しくて死んじゃうでしょ?」
      夏目 「ふふふ、死なないから」
      水沢 「誰かさん、最近、遊んでくれないから
      夏目 「・・・」
      水沢 「・・・ネクタイ、昨日と同じ
      夏目 「いいから仕事しよう、仕事」
      水沢 「何、隠して?」
      夏目 「いいから」
      水沢 「はいはい」

    夏目に促され、席に着く環は、夏目とこの日の仕事を始める。

      水沢 「競合相手は?」
      夏目 「亜細亜商事
      水沢 「亜細亜商事?・・・わざと仕掛けた?
      夏目 「相手にとって不足は無いでしょ?」
      水沢 「密かな復讐のつもり?
      夏目 「・・・」

    (相変わらず環さんとのシーンは意味深な会話が続きます。この二人、これまで何かあったんですかねぇ…というのが当然、気になるわけですが、さらに夏目の過去も気になるところ)

  • [オープンカフェ 〜 何が?]

    夕焼けでオレンジ色のカフェテラス。(たぶん)仕事が終わった琴子と、これから仕事の真央が共にお茶をしている;

      真央 「結婚?!」
      琴子 「結局、冗談だったけどねぇ…」
      真央 「でも、付き合ってるんでしょ?だから、ナニしちゃったんでしょ?」
      琴子 「子供じゃあるまいし、一晩限りの、ってこともあるじゃない。
          何かいまいちピンとこないんだなぁ…」
      真央 「合わなかったんだ」
      琴子 「何が?」
      真央 「ナニが」
      琴子 「何言ってんの!!ばっかじゃない。
          あっちが単なる遊び気分なんじゃないかってこと!」
      真央 「そんなの琴子さん次第でしょ?」

    と、真央は琴子にもっと夏目に対して、勢いに乗ってグイグイいけばいいとけしかける。
    そして、真央ちゃんは、自分はホステスのバイトに出掛けて行った・・・(笑)。

  • [琴子の部屋 〜 グイグイいってみる]

    その夜、真央に背中を押された琴子は、自分の部屋に戻ってきて、意を決して夏目に電話をする。電話にはすぐに夏目が出た;

      夏目 『夏目です』
      琴子 「あっ、高宮です」
      夏目 『ああ、何?』
      琴子 「今、何してました?」
      夏目 『仕事だけど・・・何か用?』
      琴子 「別に用は無いんですけど」
      夏目 『なら、今、世間話している暇ないんだよ。切るよ』
      琴子 「あ、あの、ちょっと」
      夏目 『暇が出来たら連絡する』

    そう言って、あっさり電話を切る夏目。琴子はあまりの夏目の愛想の無さに、不安を感じる。

  • [守屋ガラス 〜 ミス]

    事務の仕事を続ける琴子だが、頭の中はやはり夏目のことでいっぱいになってます。

       『支払いは済ませておいた  夏目』

    ホテルで夏目が残していったメモ書きを見て、いまだよく分からない夏目のことを考えている。さらに、「つなぎ」と思っている今のバイトに対して、情熱が注げないこともあってか、注意力散漫になってしまっている一方で、納品の荷物運びをさせられたり、電話番をさせられたりとで、逆切れ寸前。

    就業時間の終わる時間帯、事務所に1本の電話が入る。古くからの得意先から、納品がされてないとのクレームが入ったのだ。おまけに全ての製品を返品すると言われてしまう。納品管理は、琴子に任されており、明らかに琴子のミスである。皆から白い目線で見られる琴子は思わず;

      琴子 「私は守屋さんがどうしてもって言うから、ここに来たんです。
          誰が好き好んでこんなとこ!!!」

    と叫んでしまう。事務所全体がさらに険悪なムードになってしまい、琴子は「責任とれっていうなら、いつでも辞めますから」と、そのまま事務所を出る。

  • [BAR Air 〜 ]

    琴子は工場を出て、そのまま書店に向かう。そこで購入した本は『ジョージ・ソロス「グローバル資本主義の危機」』。その本を持って、いつもの店『Air』に向かう。カウンターで一人、その本を読みながら、カクテルを飲む琴子だが、店に誰かが入ってくるたびにその視線は入り口の方に向かっていた。夏目が来ないかと、期待してしまうのだ。

      森川 「こないだの彼、待ってんの?」
      琴子 「えっ?」
      森川 「それも、彼の影響?」
      琴子 「違います。夢に向かって勉強してるだけ」
      森川 「素直になったら?」

    琴子は何も答えず、ムキになって本を読み続ける。

  • [守屋硝子工場 〜 皆の事情]

    昨日のことで、気まずい想いをしながらも、今日も守屋のガラス工場に出社する琴子は、いつものようにパソコンに向かって仕事をしている。そこに守屋が昨日、琴子がミスをした得意先から帰ってくるが、いくら謝罪してもいまだ許してもらえそうにないと言う。気にかけないフリをする琴子。

    そこに、育江が倒れたと言って、的場が飛び込んでくる。



    江戸川病院の病室。守屋と共に、貧血で倒れ、救急車で運ばれた育子の対応をしている琴子。そこで琴子は育子が、一人いる娘にクラリネットを買うために、ガラス工場の仕事と、それが終わってから別のバイトをしていたため、無理を続けていたことを聞かされる。



    その日の夜。守屋と二人、硝子に絵柄のシールを張る仕事を続ける琴子。琴子はそこで、それぞれの従業員の事情を話す;

      育江は12年前に夫を亡くし、一人で娘を育てている
      聡子は夫が単身赴任中で、姑の相手をずっとしている
      沢井は娘婿が事業で失敗したときに作った借金をかわりに返している
      的場は母親が入院しており、その入院費用を毎月支払っている
      ババも母国に仕送りしている
      タケルも昔は学校不登校だったが、今では黙って工場で働いてる

      守屋 「一人が欠けても、この花瓶派完成せいへん。
          まぁ、俺にとってはみんな、大事な家族みたいなもんやからな。
            高宮さんちは?家族って立山に住んではんねんね?」
      琴子 「両親は健在で・・・兄は二人いるんですけど」
      守屋 「へぇ・・・」
      琴子 「・・・」

  • [琴子の部屋&五嶋通商オフィス 〜 ブラームス『ピアノ三重奏』その2]

    家に帰ってきて、一枚のCDを取り出す琴子。そのCDは”BRAHMS『ピアノ三重奏』”。


    一方、その時間帯、夏目は五嶋通商のオフィスで、一人の男性と電話をしていた。

      夏目 「五嶋通商を辞めるつもりはありません」
      男性 『まだそんなことを言っているのか?』
      夏目 「後継者なら、他を当たって下さい
      男性 『勇作・・・』
      夏目 「他にいくらでもいるでしょう。あなたに媚びる人間は」
      男性 『意地を張るな。亜細亜商事に戻って来い
      夏目 「意地なんか張ってませんよ。プライドですよ。
          妾の子にだって…プライドぐらいはあるんです
          ・・・失礼します」

    電話を切る夏目。そして、机に置かれた一つの書類を手に取る。その書類には『対 亜細亜商事 対応プラン』というメモ書きが貼られていた。



    琴子の部屋では静かにブラームスの音楽が流れている。静かにその音楽に耳を傾ける琴子。


    深夜、誰もいない照明の落ちたオフィスで、一人仕事を続ける夏目。そこに、一通のメールが入る。そのメールを開く夏目。


       ブラームスのピアノ三重奏1番』っていい曲ですよね。
       本当は、私、あの曲知ってたんですよ。
       絵画とか本の話はさっぱりついて行けなかったけど、
       『ピアノ三重奏』だけは知ってたんです。



    夏目は、先日の琴子との会話を思い出す。

      琴子 「ピアノ三重奏とか好きだったんだ」
      夏目 「さっきから適当に相槌打ってない?」

    知らないと決め付けていたが、琴子は知っていたのだ・・・


       私も大好きな曲なんです。
       そのことだけは言っておきたかったから。
       おやすみなさい。
       高宮琴子




    深夜2:35・・・。琴子の部屋の窓に吊り下げられた「幸せを呼ぶ風鈴」が鳴っている。この時間帯、当然、琴子は既にベッドで深い眠りについていた。そこに携帯電話が鳴り、起こされてしまう。面倒くさそうに電話を取ると、その相手はオフィスで仕事を続けている夏目だった;

      琴子 「もしもし・・・」
      夏目 『夏目だけど』
      琴子 「(飛び起きて)何時だと思ってるんですか?」
      夏目 『ああ・・・じゃぁ、切るよ』
      琴子 「何かありました?」
      夏目 『何かって??』
      琴子 「だって、用が無かったら電話しちゃいけないんでしょ?」
      夏目 『・・・メール、見たからさ
      琴子 「ああ・・・」
      夏目 『あの曲・・・知ってたんだ
      琴子 「あ、まぁ、ちょっとあって」
      夏目 『ちょっとって?』
      琴子 「大したことじゃない」
      夏目 『思い出とか?』
      琴子 「うん」
      夏目 『どんな』
      琴子 「えっ?」
      夏目 『聞かせてよ』
      琴子 「うん・・・私ね、3人兄妹なんだけど、兄が二人で」
      夏目 『うん』
      琴子 「でね、その2番目の兄が高校の時ブラスバンド部でトランペット
          吹いてて、よくあの曲練習してたの」
      夏目 『そう』
      琴子 「私ね、お兄ちゃんのこと大好きで、すっごく優しいし、面白いし、
          いつも笑わせてくれるし。
          ・・・あ、うん、やっぱ退屈じゃない、こういう話?」
      夏目 『いや。いいから聞かせてよ』
      琴子 「んでね、私が中学のときに、クラスの男の子にバレンタインのチョコ
          をあげたの、生まれて初めて」
      夏目 『フフフ、それってかなり遅くない?』
      琴子 「真剣な告白ってこと。でもね、よくある話で見事に振られちゃって。
          そしたらその2番目のお兄ちゃんが、あの曲をトランペットで吹いて
          くれたの・・・ちょっと音程ずれてたんだけど、それでも一所懸命、
          吹いてくれた。それがすっごい嬉しくて、涙ボロボロ流しながら聞い
          てた・・・そういう思い出があるの、この曲には・・・」
      夏目 『兄妹の思い出か・・・
      琴子 「うん・・・」
      夏目 『結構、ブラコン?』
      琴子 「ちょっとそうかな?」
      夏目 『いや、かなりでしょう』

    相変わらずの口調で軽口を叩く夏目。

      琴子 「でも、もういないから
      夏目 『え?』
      琴子 「私が高校のとき、交通事故で死んじゃった
      夏目 『・・・』
      琴子 「だからね、あなたがあの曲好きだって言ったとき、本当はすっごい
          びっくりしたんだよ。一瞬、息止まったかと思ったぐらい。
          でも・・・すっごい嬉しかった

      夏目 『・・・ああ、そう・・・』
      琴子 「私もね、落ち込んだときとか、この曲引っ張り出して聴いちゃう
      夏目 『・・・』

    琴子のその心情に同調したかのように、夏目はそのまま沈黙する。同じく琴子もそのまま黙る;

      夏目 『こっちもさぁ・・・聴きたい気分なんだよね
      琴子 「何か落ち込んでるの?」
      夏目 『・・・。いや』
      琴子 「だって、今」
      夏目 『言ってみただけだよ』
      琴子 「何時間でも聞いてあげるよ
      夏目 『!・・・』

    その琴子の言葉に、どうしようもなく悲しみを帯びた表情を示す夏目。

      琴子 「私に話してもしょうがないか」

    心の中に沸いた感傷的なものを振りほどくように、いつもの憎まれ口を言い始める;

      夏目 「早く寝た方がいいんじゃないの」
      琴子 「えっ?」
      夏目 「もう、若くは無いんだからさ」
      琴子 「あっ、掛けてきたのそっちでしょ?」
      夏目 「出たのはそっちだろ」
      琴子 「電話だもん、鳴りゃ出るわよ」
      夏目 「ふっ。メールありがとね、お休み」
      琴子 「えっ。あっ」

    と、今回も一方的に電話を切る夏目。

      琴子 「はぁ???」

    あまりに自分勝手な夏目の行動にあきれ返りつつも、電話を置いた琴子は、少し温かい気持ちになっていた。


    そして琴子は・・・・

  • [守屋ガラス工場 〜 謝罪]

      守屋 「辞める?」
      琴子 「はい」

    翌朝、琴子は守屋にアルバイトを辞めたいと申し出る。出勤してきた沢井たちは、その二人の声が聞こえてきて、思わず事務所のドアの向こうで立ち止まる;

      琴子 「私、心のどっかでこの仕事、馬鹿にしてました。
          でも、昨日、従業員の人たちの話聞いて、馬鹿にしてた自分をすごく
          恥ずかしく思ったんです。
          みんな色んな事情抱えながら真剣な想いで働いているのに、
          私は中途半端でいい加減だったし、
          みんなに迷惑かけたくせに、嘯いたりして、ここで働く資格無いんです
          みんなだって許してくれる訳ないし。辞めさせて下さい」

    守屋が琴子に何か言おうとしたとき、従業員たちが元気に事務所に入ってくる。琴子と守屋の会話を聞きながらも、聞いたがゆえにいつも通りに明るく振舞う育江たち。さらに、客先から電話が掛かってきて、それを受けた育江が;

      育江 「データ???」

    一旦電話を置いて、琴子に事情を確認すると;

      育江 「花瓶のデザイン画をデータでパソコンに送って欲しいって言われて」
      聡子 「へぇ・・世の中、便利になったね」
      琴子 「あの、私今日で・・・」
      育江 「でもさ、琴子ちゃんしか分からないよね、パソコンとかデータとか
          言われてさ」
      聡子 「私たち覚える必要ないんじゃない?琴子ちゃん居るんだもん」
      沢井 「何か一つぐらい、取得があるもんだな・・・
          みんな、おいらはおいらの仕事だ」

    そう言って、守屋と琴子を残して全員、仕事のために、工場のある建屋に向かって出て行く。琴子は思い切って皆の後を追って、事務所を出て行く。そして;

      琴子 「あの、すいませんでした。
          私のミスでみなさんに御迷惑をお掛けしてしまって・・・
          本当にすいませんでした。
          生意気なこと言って、本当にすいませんでした」

    琴子は涙を流しながら、頭を下げる。そんな琴子に;

      育江 「誰だってするよ、ミスの一つや二つ」
      聡子 「ミスすればあとで挽回すればいいのよ」
      的場 「俊平ちゃん、今日も謝りにいくの?」
      守屋 「うん」
      的場 「ミスした張本人が行かなきゃさ、許してくんないんじゃないの?」
      育江 「バイトだろうが、うちの従業員に変わりないんだからね」
      琴子 「・・・」
      育江 「行ってきな、俊平ちゃんと一緒に」

    さらに、それまで黙っていた沢井も;

      沢井 「おい、いつまでそんな靴履いてるんだよ。
          そんなんじゃ、働きにくいだろう?」

    と。そして、最後に守屋自身も;

      守屋 「高宮さん、支度して。一緒に行こう」
      琴子 「はい」
      守屋 「よしっ」

    (というわけで、琴子がこれで一つ成長したってことで…。琴子のこの告白は、その前の晩に、夏目と話をしたからかなぁ、どうなんだろう?と夏目君贔屓の人間としては、思ってしまうわけで。意地を張ってばかりだったけど、少し素直になれるようになったのね)

  • [BAR Air 〜 本当のこと]

    そして○日後、夜。AIRにやってきた琴子はいつものようにカウンターに座る。その琴子に語りかける森川;

      琴子 「こんばんは」
      森川 「待ち合わせちゃうの?」
      琴子 「ん?」

    琴子が振り向くと、奥のテーブルに夏目が一人、座っていた;

      琴子 「あ・・・」
      夏目 「ここに来れば会えるかと思ってさ」
      琴子 「何か用ですか?」
      夏目 「会いたかったからさ・・・」

    そのまま夏目は琴子の隣に座り、二人並んでカウンターに座っている。だが、先日のように仲の良さそうな会話も、仲の悪そうな会話も一切出てこない;

      夏目 「どうした、さっきからずっと黙ってて」
      琴子 「考えてるんです」
      夏目 「次、何飲むか?」(^^;)
      琴子 「何を考えているのか、あなたが
      夏目 「・・・」
      琴子 「だってそうでしょ!
          結婚を前提に付き合ってくれから始めて、いきなりホテ・・・」

    と、ここでちょっと小声で話を続ける琴子ちゃん(^^;);

      琴子 「ホテルとか行っちゃったりして」
      夏目 「だって一緒に行ったろ?」
      琴子 「そうかと思ったらメモだけ残して急に消えちゃったり」
      夏目 「会議があった
      琴子 「その後、電話したら、全然、素っ気無くて」
      夏目 「打ち合わせ中だった
      琴子 「かと思ったら、夜中に突然電話してきたり」
      夏目 「迷惑だった?
      琴子 「迷惑じゃないけど」
      夏目 「だったらいいじゃん」
      琴子 「いいじゃんじゃなくて、よくわからないの。
          私、思いっきり振り回されてる気がするんですけど」
      夏目 「そんなことないよ」
      琴子 「そうです!・・・私のこと、どう思ってるの?
      夏目 「好きだよ
      琴子 「♪」

    と、夏目の言葉に、心の中では喜びを隠しきれない感じの琴子さんでしたが、その直後、

      夏目 「満足した?

    なんて言われたら;

      琴子 「しない

    と答えるしかないわけで・・・(相変わらず何を考えてるんだ?)

      琴子 「だって私のこと、たいして知らないじゃない。
          それなのに私のこと、簡単に好きだとか言えちゃうもの?」
      夏目 「言えちゃうもの
      琴子 「じゃぁ、私のどこが好き?」
      夏目 「そういうこと、普通、聞くかよ?」
      琴子 「言えないでしょ?」
      夏目 「(耳元で)右の鎖骨の下のほくろ」
      琴子 「茶化さないで!」
      夏目 「もう、いいって」

    と、夏目はその話をやめようとするが、琴子はそれ以外にももう一つ気になっていることがあった・・・;

      琴子 「もし、もし私があなたの想像しているような女じゃなくても、
          好きだって言える?」
      夏目 「何、深刻な顔して?」
      琴子 「・・・」
      夏目 「性格は負けず嫌いでおっちょこちょいだろ
      琴子 「すっごい見栄っ張りかも
      夏目 「家は代官山でマンション暮らし
      琴子 「代官山に住んではいるけど、ぼろっちいコーポかも
      夏目 「勤め先は丸の内で
      琴子 「江戸川かも
      夏目 「会社は外資系の貿易会社
      琴子 「三代続くガラス工場かも
      夏目 「仕事は企画で・・・
      琴子 「ただのフリーター
      夏目 「何それ?」
      琴子 「それでも好き?それでもいい?」
      夏目 「どういうこと?」
      琴子 「・・・」
      夏目 「どれが正解?高宮琴子さん」

    夏目は琴子の顔を覗き込む。琴子はそして、これまで見栄で隠していたことを、素直に打ち明けた;

      琴子 「実は私、失業したの」
      夏目 「失業?」
      琴子 「確かに、最初にあなたに会った時は、貿易会社にいた。
          アシスタントだったけど、企画部にもいた。
          でも、あの次の日、会社が倒産して、あっけなく失業しちゃった。
          その後、今言った通り。今はOLでも何でもない、ただのフリーター。
          それが正解、全問正解、今の私」
      夏目 「あはは。そんなの黙ってりゃいいのに・・・」
      琴子 「本当のこと知っててもらいたかったの。
          ・・・あなたのこと、好きになっちゃったから!

      夏目 「?!」
      琴子 「・・・と思ったから・・・」

    琴子の一世一代の告白に対し、夏目は平然と答える;

      夏目 「いいよそれでも。ただのフリーターでも、好きなのは変わらないよ
      琴子 「!」
      夏目 「ただ・・・だったら俺も同じことを聴くけどさ、俺のどこがいいの?」
      琴子 「・・・」
      夏目 「もし俺が君のイメージしている男じゃなくても、好きだって言える?」
      琴子 「言える」
      夏目 「本当に?」
      琴子 「絶対に言える」
      夏目 「だったら、正直に言うよ・・・実はさ、商社マンじゃないんだよね」
      琴子 「えっ?」
      夏目 「五嶋通商の社員じゃない」
      琴子 「・・・どういうこと?」
      夏目 「ずっと君を騙していた」
      琴子 「ウソ」
      夏目 「・・・」
      琴子 「・・・」

    と、訳のわかんないまま、今回も続く。最後の最後まで、琴子さん、夏目君に振り回されっぱなし・・・(^^;)



  • [次回予告]

      琴子 「寂しかったら泣いちゃえばいいのに」
      夏目 「寂しくったって泣けないことってあるだろう…」

    3話目もキスシーンだよん(って、そこしか見てないんかい!>自分(^^;))


    <第二話感想> 早々にラブ

    今回もオンエア中、夏目君にばかり目が行ってしまった私。ドラマの内容(ストーリー)についての話も少しはしなくてはいけないとは思いつつ、今回もあきらめました(^^;)。

    相変わらず何を考えているのかさっぱり分からない夏目君。最初のBARのシーンからホテルで先に消えちゃうまでのシーンは、本当にプレイボーイ風でイヤなヤツそのものの印象。ああ、それでも、嫌いになれないんだな(*^^*)。

    そして最初にプレイボーイ風を装われ、中盤に『妾の子』発言だとか、「ブラームスを聞きたい気分」だとか言われたら、そりゃぁ、もう、見ているこっちは行っちゃいますって(って、どこにいくんだ?(笑))。

    もちろん、その夏目君の魅力爆発の冒頭のラブシーンは、素直に「ありがとうございます!」と叫びたい気分です(笑)。半ば強引にKISSをしちゃう夏目君なんて、いいじゃないですか〜。こういう”奪う”というシチュエーションって、今まで見たことが無かっただけに、ドキドキですわ。ああ、こういう男性が似合うようになったのねぇ。よしよし。

    でも、実際、琴子と夏目は同い年の設定のはずなのだけど、会話だとかを聞いていると夏目の方が年上って感じですよね。なんとなくその辺の琴子さんと夏目君との関係が心地よくて、二人の交流を楽しんでます。

    (02.08.11)


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