世にも奇妙な物語 春の特別編 「あなたによく似た恐ろしい人」 |
鷲田刑事 :國村 準 吉村刑事 :菅原卓磨 警官 : 準の吹替え: 男 : 女 : 他 ストーリーテラー:タモリ 脚 本 :落合正幸 鈴木勝秀 演 出 :落合正幸
タモリ:バタフライ効果、という現象をご存知でしょうか?アメリカの 夜。降りしきる雨の中、逃げる男。鳴り響くサイレン。工事現場らしき柵をなぎ倒し、足はフラフラになりながら、へなちょこ走り(オイ!でも、これは吾郎君じゃないよね???)でパトカーから逃げる男 松倉準。警察に追い詰められ、金網の塀を乗り越え逃げようとしたときに、雨で手を滑らせてしまい、落下してしまう。そのまま準は刑事の吉村に取り押さえられる。 警察署。準は逮捕され、そのまま取調室につれてこられる。取調室の扉の向こうには、鷲田刑事がすでに準の取り調べのために待ち構えているのが見える。 鷲田「手錠外してやれ」 吉村がその手錠を外し、準を鷲田の前に座らせる。 鷲田「松倉準、29歳・・・。どれから聞こうか。話題は豊富だ。私は 楽しみにしてたよ、君がここに来るのを」 準 「知りません・・・何も・・・」 鷲田は準の胸倉をつかみ、脅しをかける。怯えの表情の準。(とにかく今回のキャラはへなちょこキャラですね(^^;)) 鷲田「さぁ、おじさんにお話してごらん」 準 「違うんです・・・僕はやってません」 鷲田「がっかりしたよ。『僕はやってません』…そこに座るやつの決り 文句から始めるとは思ってもみなかったな。これほどの確信犯は 見たことがない。よっぽど面白い話があって、ここで話ししたい んだと思ってた。あれほど顔を残すやつはお前が始めてだ」 準 「僕じゃないんです」 鷲田「僕だよ。君の顔を見た瞬間、誰だって分かる。面倒な事を省いて 本題入れるように、これ見てもらおうか?」 準の目の前に、ビデオが用意され、1本のテープが挿入される。そしてテレビ画面にあるCDショップの風景が映される。 吉村「このヘッドホンのやつにご注目下さい」 準 「・・・」 その店の防犯カメラには、棚にあるCDを次々と手にとり、そして床に放り投げる男の後姿が納まっていた。 店員 『お客様、こちらご試聴コーナーでは御座いませんので・・・お客様』 そして、ビデオの中のその男はいきなり右手で店員の首を締め上げ、そのまま店員は床に倒れた。店を立ち去ろうとする前に、その男は防犯カメラに顔を向けた。その顔は間違いなく“準”だった。(ニットキャップにヘッドフォンがラブリー(*^^*)) 吉村「この店員は辛うじて助かった。だからいつでも証言台に立つ事が できる」 次に映されたのは、パチンコ台の前に座り、パチンコに興じる“準”。無表情に右手でパチンコ台を操作しながら、顔ははっきりと防犯カメラの方に向けていた。その画面の角には、倒れた警備員が映っていた。 吉村「その2。我が儘な奴だ。夜中に急にパチンコがしたくなったから って忍び込んじゃ駄目じゃないか。警備員に乱暴を働いて。今で は回復してこの警備員も証言台に立ち、お前の顔に向けて指差す 事ができる」 さらに次のビデオには、スーツ姿の“準”。銀行のATMで引き出した現金を順番にカバンに詰め込んでいる。そしてカメラに向って右手に持ったキャッシュカードを二つに折り曲げた。 吉村「ついにやったなぁ、大成功だ。しかし、このキャッシュカードの の持ち主は証言台に立つことは出来ない。変死体で発見された。 目撃者殺害、証拠****」 鷲田「そして****。無駄な努力は止めにして、話してごらん」 そう言って、机の上のライトを準に向ける。準の顔にライトの光が当たる。 準 「僕は・・・僕はやってません!」 吉村「ふざけるな!!これだけ残忍なこと繰り返しといて、否認すれば 済むと思ってるのか!」 準 「これは、僕じゃないんです。僕にそっくりですけど、僕じゃない」 「僕は、顔を盗まれたんです」 鷲田「顔を?」 吉村「盗まれた?」 準 「はい」 鷲田「わかった。それは大変だったな。盗難届出せ」 口ではそう言いながら、当然、話を信じない鷲田は、いきなり準の胸倉をつかむ。 鷲田「ふざけんな!デタラメもいい加減にしろ!!警察舐めてるとどう なるか分かってるのか?顔を盗まれた?はははははは・・・」 鷲田は準の胸倉をつかんだその手を離す。 鷲田「顔を・・・顔を盗まれた???はははは。そんな言い逃れ初めて 聞いたな。言うに事欠いて、顔を、顔を盗まれた?わははははは」 吉村「お前の狂言に付き合っている暇は無いんだ。言え!やりました、 って。そして謝れ!!」 準 「信じて下さい!このビデオがニュースで流れていることは知って ました。あまりに自分にそっくりなんで、いつか疑われるんじゃ ないかって。それで恐くなって逃げてたんです」 吉村「いい加減なことを言ってると、罪がどんどん重くなるぞ!!!」 今度は吉村に腕をつかまれ、体を持ち上げられる。準は怯えつつ、必死に事実は訴える。 準 「誰かに証明して貰おうかと思ったんですけど、僕は会社を辞めて 家にこもって小説を書いていて、一年間誰とも連絡を取ってなか ったし、近所の人と挨拶することもなくなっていた…。いっそ、 いっそ、警察に保護してもらおうかと思ったんですけど、前まで 来たら、もし信じて貰えなかったらどうしようって不安になって…」 鷲田「離してやれ!」 準 「!」 鷲田「話を聞こう」 吉村「鷲田さん・・・」 鷲田「どうせ、どう否認したってこっちには溢れるほど証拠と証言はあ る。これもいい参考になるぞ。ここに座る奴はみんな嘘つきだ。 話の矛盾探しのいい練習になるだろう。続けてみろ、一時間だけ やる。今後のお前の人生の中で俺たちみたいな優しい人間と話す 機会はもうないからな」 準 「信じて下さい。本当です」 鷲田「顔を盗まれたって?もう一度言ってみろ」 準 「顔を盗まれました」 鷲田「ふふふふふ・・・何度聞いても面白いな。で、ニュースで自分の 顔が出たとき、盗まれたと知ってどう思った?」 準 「違います。それに気づいたのはニュースで見た一月ぐらい前でした」 鷲田「そうか、何があった?」 準 「僕はその日・・・原稿が進まなくなって、息抜きに街に出ました。 部屋を出たのは一週間ぐらい前、街に出たのはもっとでした」 そして、準はそのとき自分の身に降りかかった出来事を順番に語り始める; ふと窓の外から覗いた店に、準をじっと見つめる女性がいる。 するとその女性は怒りの表情で準の方にやってきて、頬をビンタした。 (うわっ、ますますへなちょこキャラだ(^^;)) 女性「よくあんな仕打ちが出来たわね!」 準 「!あなた・・・誰ですか?」 女性「何よそれ?!急に消えておいてそれがあなたの手?ドライブ に連れ出して、山の中で私を置き去りにして!忘れたなんて 言わせない!」 森の中に止められた一台の車。その中で女性が目を開けると、一緒にいた“準”が車から立ち去っていこうとする。(これは吹き替え役の人だよね?) 『どこ行くの?ねぇ、どこいくの?ちょっと待ってよ!行かないでよ』 準 「それは僕じゃない!」 女性「あなたよ!!私は運転免許を持ってないの。どれだけ歩いた と思ってるのよ!訴えてやる、訴えてやるわ!電話番号教え なさいよ!」 準 「違う、違う!!人違いだ!」 そして準は、自らの身に起きたもう一つの災難について続けて語る; 準 「そんな嫌な事があって、僕はまた一週間、部屋にこもっていまし た。けど、デリバリーのピザにも飽きて…」 一台の軽トラックが止まり、その運転手が必死の形相で準に迫ってきた。 男性「おい!今度は逃がさないぞ。ふざけやがって」 準 「またでした…。また誰かと間違えられている。その人が言うには 3日前」 準 「赤信号の横断歩道に・・・」 赤の横断歩道を渡る“準”。 準 「僕がいきなり出てきて」 男性「それだけじゃない。お前は俺を無視するように、黙って 表情も変えずに」 積荷から取り出した林檎を一口かじっては、路上に放り投げる“準”。(これも吹き替え役の人?) 男性「そして次々と商品を駄目にした」 男性『何をするんだよ、お前!やめろよ!』 “準”の行動を止めようとする男性に対し、突然、右手で首を締め上げる“準”。 準 「知らない!僕じゃない、僕じゃありませんよ!」 語りつづける準。 準 「僕は悩みました。僕によく似た双子のような存在が、この近くに 住んでいるのか、或いは・・・僕は夢遊病のように、意識も無い まま外を歩き回っているのか、って」 吉村「夢遊病?」 準 「いえ、違います!!いや、何度考えても、僕はずっと家で原稿を 書いていた。その証拠に、日付を付けて保存している原稿はちゃ んと揃っているし、一日に書く枚数もほぼ決っていてそれにバラ ツキもないんです」 鷲田「毎日同じ時間だけ記憶が飛ぶんだったらどうする?書く量も変ら ない」 準 「でも最初の女性が言うように、僕がもし山に車を残してきたなら、 僕だって歩いて帰ってきたはずだ。その日の内には帰れない…。 そして暫くするうちに、妙な事を思い出したんです」 鷲田「何を?」 準 「僕の記憶に空白があったんです。僕には記憶の無い時間があった という記憶があるんです」 鷲田「また面白くなってきたな」 準 「その日、同僚と酒を飲んだ帰り、僕は1人川を見つめながら考え 事をしていました。川の流れによく自分の心が写し読めた。やは り小説に専念するために、会社を辞めようと」 鷲田「それで?」 準 「そこまでなんです。記憶はそこで終わってるんです。…気がつい たら次の瞬間、僕は自分の部屋にいた」 吉村「ただ酔って、記憶を無くした話だろう、それじゃぁ」 準 「酒を飲んでも記憶が無くす方じゃない。それに、その日はビール 一杯だけで・・・」 鷲田「俺も酒は好きだ。ずっと記憶を無くした事は無かったが一昨日、 ついにきたよ。気がついたら居酒屋から駅のホームにいたよ」 準 「それだけじゃない!顔に、顔に…妙なものが付いていたんです」 吉村「妙なもの?」 準 「液体の塊のような・・・粘り気のある緑色のものが」 鷲田「何だそれは?」 準 「分かりません。でも、もしかしたらそのときに顔に何かされたん じゃ…きっとあの時、顔を盗まれたんです」 そこまで語った準だったが、刑事達の反応は、相変わらず冷ややかなものだった。 鷲田「面白い小説が出来たじゃないか、松倉。どうせ今まで活字になん かなった事なんて無いんだろ?残りは刑務所の中で頑張れ、私は 顔を盗まれた」 準 「待って下さい、これは作り話じゃないんですよ!!」 鷲田「もういいよ」 準 「だっておかしいじゃないですか!!銀行のカメラ別にしたって、 犯罪を犯したヤツがわざわざ防犯カメラに向って、これが犯人の 顔ですって、顔を見せるような事をしますか!?これは、これは 絶対に僕を陥れるために仕組まれた罠です!!!」 鷲田「黙れ!!」 準 「誰か、誰か…、あいつら僕の顔を盗んで、自分の顔じゃない事を いいことに、犯罪を楽しんでるだけです」 鷲田「じゃぁ何か、お前の顔したお面つけて、犯罪ごっこやってるって 言うか?えっ!!****以下だよ」 準 「もう一つ、もう一つあるんですよ、もう一つ!!!」 鷲田「もういいよ」 「僕は左利きです」 鷲田「それがどうした?」 準 「ビデオに映ってる奴は、あいつは右利きです」 鷲田「・・・」 鷲田の脳裏に、先ほどのビデオの映像が過ぎる。 準 「証明します」 机の上に置かれた鷲田の万年筆を取り、準は左手で机に文字を書き始める。(出た、ブラックアウトに続く左利きネタ、って感じですね。でも、もう少し左利きネタは有効活用して欲しかったなぁ…) 鷲田「咄嗟のときに利き手じゃない方が出ることってあるだろう?」 準 「だって、パチンコも咄嗟の時なんですか!?何故僕は捕まりたか ったみたいに防犯カメラに顔を見せ、なのに何故、何故、右利き を装うんですか?」 鷲田「お前がこの作り話をしたかったからだよ!!!1人家にこもって 小説のネタ考えているうちに、お前、頭がおかしくなったんだよ! 空想と現実が入り混じって、自分が犯した事も分からなくなって るんだよ!もしかすると、お前恐くなって、お前は犯罪を犯した 自分を分離して、知らない奴にしてしまったんだよ!!」 準 「違う、違います!信じて下さい!!何でもします、何でも調べて 下さい!何でも協力します、検査でも何でも!!!! ・・・検査・・・ああ、そうだ、DNA鑑定して下さいよ!こう いう時はするもんですよね?DNA鑑定お願いします」 (ちょっとDNAの滑舌が気になるところ…) 吉村「してるよ。キャッシュカードの持ち主に付着していた本人とは別 の血液…」 鷲田「それと、お前の家のバスルームから採取した髪の毛と。もうすぐ 結果が出る」 準 「あははは、そうだったんだよ。始めからそうして貰えば良かった んだ。あははははは」 取調室の電話のベルが鳴る。 その電話に出る鷲田。 電話の受話器を耳にしながら、鷲田はじっと松倉の顔を見る。その様子を、期待と不安の入り混じった表情で見つめる準。(←何回かビデオを見直して、このときの表情が一番好きかも) 準 「早く家に返してくれ・・・違ったろ、早く返してくれ・・・」 「おまえ嘘つきだ・・・DNAは一致したよ」 準 「・・・そんな・・・馬鹿な・・・」 思わず立ち上がる準。だが、すぐにその両肩を吉村に抑えられる。 鷲田「この瞬間からお前は、もう、話さなくていい」 思ってもみなかった展開に、完全に取り乱す準。だが、既に吉村らに体を押さえられ、身動きは取れない。 準 「ああ、警察もグルなんだろ!!!な、みんなして、俺を犯罪者に 仕立てるつもりなんだろ!!!」 そのまま準の両手には再び手錠が掛けられた。 鷲田「うるさいよ!遺体に残された血液だけじゃない。ATM,CDの パッケージ,パチンコ台に残った指紋まで全てお前と一致したよ。 観念しろ!」 準 「嘘だ!嘘だ!!俺じゃない、奴を捕まえてくれ!俺の顔を盗んだ、 アイツを捕まえてくれ!!!俺はやってない!俺はやってない! 奴を捕まえてくれ!!俺の顔を盗んだ、奴を捕まえてくれ!!! 俺はやってないんだ・・・」 取り乱し、泣き叫ぶ準は取調室から連れ出され、そして疲れきった鷲田だけが残った。 警察のトイレ。吉村のいるところに鷲田もやって来る。 吉村「もしかして、本当に多重人格か何かですかねぇ?」 鷲田「おいおい、お前まで騙されるな。精神鑑定で逃げられるように、 苦戦作りの嘘付いてるだけだよ」 吉村「あんな根っからの嘘つき、始めてですね」 そう言って、吉村はトイレを出て行った。 鷲田「(笑)。顔を盗まれたか…面白い嘘つきだ」 外からの光だけが差し込んでいる留置所。準は、その片隅に壁を背に座っている。 準 「僕じゃない、本当だ。僕は・・・僕は顔を盗まれたんだ」 誰に話すでもなく、そう呟きつづける準。 再びトイレ。口笛を吹きながらの鷲田 そのトイレの扉がノックされ、そこに“鷲田”が入ってくる 暫く時間が経ち、鷲田を探して吉村がトイレにやってくる。 吉村「鷲田さん、電話が入ってますよ。鷲田さん」 そのトイレの床には、鷲田の万年筆と、そして緑の液体が落ちていた。 人気のない夜の川岸。路上でゴムシートの掛けられた鷲田を覗き込む“鷲田”。 “鷲田”は鷲田に火が放ち、側に止めた車に乗り込む。そして、後部座席に居る“準”。そしてもう1人の“準”。さらにもう1人・・・ 鷲田「俺達ニハ全テ同ジニ見エルガ、人間達ニトッテハ、顔ハ皆、違ウ ンダ。ダカラ、別々ノ人間カラサンプルヲ取ル。取ッタラ、ソノ 人間ハ消シテオケ」 その指示を聞き、車から出ていく“準”たち。(個人的には3匹目がお気に入り(^^;)) 留置所。 準 「僕じゃない、僕じゃない、僕じゃない・・・」 静かに留置所の向こうの扉が開く。扉の向こうから明かりが差し込み、1つの影が準に近づく。それに気づき影のほうに準が視線を移すと、その影は人間のものではなく。そして、声一つあげられない準は・・・ Fin |