ゴロウ・デラックス'18年3月放送分

 

'18年3月放送分
第287回放送
18.03.01
第288回放送
18.03.08
第289回放送
18.03.15
第290回放送
18.03.22
第291回放送
18.03.29



♪番組の説明

祝・7年目突入!!『ゴロウ・デラックス』とは…?
SMAPで一番おしゃべり好きの稲垣吾郎がMCを務める業界唯一無二のブックバラエティ
毎週1冊(課題図書)、巷で話題の本からベストセラーまで様々なジャンルの本を深く紹介!!
さらに、
大御所作家先生からまだテレビに出ていないニューキャラまで幅広いゲストをお迎えし、トークする番組。


 

第292回放送 '18.04.12 24:58〜
【ゲスト】矢部 太郎 【課題図書】「大家さんと僕」

吾郎:こんばんは。
外山:こんばんは。
吾郎:
外山:
吾郎:
外山:
吾郎:
外山:
吾郎:
外山:

  メモ



(18.03.01 up)



 

第291回放送 '18.03.29 24:58〜
放送8年目突入直前!総集編SP!

今回の放送はすでに吾郎さんも外山さんも着席した状態から番組スタート。今回の収録は二人っきりなのです。

吾郎:こんばんは。ゴロウ・デラックス、稲垣吾郎です。
外山:外山惠理です。吾郎さん、何とこの4月でゴロウ・デラックス、8年目に突入です!
吾郎:いやぁ〜、すごいですねぇ【拍手】
外山:【拍手】ねぇ?ありがたいです。
吾郎:早いです。
外山:振り返っていかがです、吾郎さん?
吾郎:いやいやいや、やっぱり旬な作家さんから、大御所の作家さんから、もう、いろんな方の話を聞けるっていうのは本当、楽しいですし。仕事場まで拝見させて頂いたりもして、作品以外を見させて頂くっていうのは本当にもう、贅沢な時間で…。
外山:そうですねぇ。
吾郎:でも、そこ見るとまた、作品のヒントが隠されているよね。
外山:うーん。
吾郎:あ、こういうとこでこういうもの作ってきたんだ、とか。まぁ、それを紹介できるっていうのは、本当に、自分で言うのも変ですけど、いい番組ですよね。
外山:ねぇ〜。本当ですねぇ〜。


というわけで、本日は『8年目突入特別企画 大作家の仕事場大公開スペシャル』として、これまでの放送で、仕事場を取材させて頂いた映像を中止に振り返ります。


西村京太郎さんの仕事場
西村さんの仕事場は、ご自宅の15畳ほどの書斎でした。窓からは新幹線が見える景色が西村さんのお気に入り。原稿はいつも直筆で、特注の原稿用紙に万年筆(PILOT平蒔絵/モンブラン ドネーションペンヨハン・シュトラウス)か、PILOTレックスグリップを使用されてました。



松本零士さんの仕事場
自宅兼仕事場の零時社にお邪魔しました。とにかく物で溢れていて、銃やフィギュア、様々な資料などが山積みに。仕事道具は小学生のころから使っているような道具だそうです。

吾郎:うん、こんなところまで見せて頂いて。
外山:ねぇ。
吾郎:(西村京太郎さんの仕事場で)僕は最後、先生の横にあったマスタングが気になりました。

  注記:米軍の戦闘機P-51 愛称マスタング

スタッフ:(苦笑)
外山:ああ・・・・・・
吾郎:面白いよね、作家さんの書斎って。やっぱりここで生活されていてるんだなぁ、っていうのが漂ってるよね?
外山:そうですねぇ。
吾郎:奥様の声が聞こえてきたりとか。
外山:うん。
吾郎:その辺も何か、垣間見れるっていうのも、(この番組)ならではだと思うし。
外山:そうですねぇ。作家の先生が拘ってる万年筆だったり昔から使ってる原稿用紙だったり、そういうものを大切になさっているっていうね、のが何か素敵だなって思いましたけど、吾郎さん、拘りのものって何かありますか?
吾郎:ペンも使ってるよ、そう言えば。DELTAっていうメーカーの。ドルチェビータっていうイタリアのペンなんですけど。


DELTA ドルチェビータ

外山:またおしゃれですねぇ〜。
吾郎:あ、それは友達にプレゼントして頂いて。G.Iて入ってる。イニシャルが。それはずっと使ってますからね。でも、最近何かあの…、映画の撮影をずっとしてたから、撮影現場、泊りだったから、ちゃんと自分ちの枕を持って行ったりとか。
外山:へぇ〜。
吾郎:自分の家のマグカップを持って行ったりとか。

ここで枕やマグカップはおそらく吾郎さんの自撮りの写真がっ!!!なんて出血大サービスなんだ、今回はっ!!

吾郎:撮影してると、やっぱりほら、長期滞在で、地方に滞在したりするじゃないですか。
外山:結構、長い間いたんですか?
吾郎:今回は一カ月間だったんで、まぁ、その間、何回かちょこちょこ帰ったりはしてたけど。
外山:はいはい。
吾郎:なるべく普段の自分ちの環境に、したいと思って。自分が使ってるマグカップとかさ。枕もそうだし。
外山:枕!枕やっぱり拘ってるんですか?寝やすい?
吾郎:オーダーメイドです。
外山:ああ、オーダーメイド。じゃぁ、大丈夫ですか、首、寝違えたりとかないですか?
吾郎:(笑)。雑な聞き方するね?!
外山:(笑)
吾郎:あ、台本のブックカバーはずっと使ってた。

これも実物の写真が画面に映されてます。藍色のカバーに同じく淡い藍色のハートが皮であしらわれてます。

外山:ええ!!
吾郎:友達に作ってもらった。ま、まだ5年ぐらいなんですけど。皮の。
外山:作ってもらったんですか。
吾郎:そう。
外山:へぇ〜。



浦沢直樹さんの仕事場
仕事場には、浦沢さんの机の前に6人のアシスタントさんの机があり、壁一面の本棚やそれぞれの机の上にはとにかく資料が積まれてます。隣には仮眠室も。また、趣味のギターや映画を見ることができるミニシアターも。

吾郎:もう宝物の山でしたよね。
外山:本当ですねぇ〜。
吾郎:僕なんか特にもう、ガン好きで、銃好きですから。
外山:そうですねぇ〜。
吾郎:大体、漫画家先生のおうちに行くと、最終的に僕の絵を描いてくださるじゃないですか。あれがたまらないです。

描いて下さるというか、おねだりしてるというか(笑)

吾郎:浦沢直樹さんの絵もいまだにありますよ。
外山:へぇ!!その浦沢先生のギター、レコードだったり、ありましたけど、吾郎さん、コレクションしてるもの?
吾郎:コレクション・・・ねぇ。もちろんワインとかもそうですし。
外山:ああ、そっか。
吾郎:時計もそうですよ。結構、僕、何気に時計してるの知ってます?
外山:知ってます。
吾郎:番組で。たまに言われるんですけどね。


A.LANGE&SOHNE LANGE1


外山:自前なんですか?
吾郎:これ、自前ですよ。何かメカメカしてるものがすごくやっぱりきれいだなと思って。特に好きなのがやっぱりシースルーで、後ろ透けてるんですよ。

と言いながら、時計を外して外山さんに見せる。カメラさんもしっかりズームしてくださり感謝(笑)

外山:へぇ〜。くるくる回ってるのが見えて、かわいい!
吾郎:若い時そのお店の前を通ってて、「ああ、いつかこの時計をしたいな」って思ってたんですよ。
外山:うん。
吾郎:それで2年ぐらい前に購入して。
外山:へぇ!
吾郎:時計は好きです、だから。初めて喋ったかもしれない。
外山:そうですか。
吾郎:ブログに先に書けば良かった(ぼそっ)
外山:ちょっと(コラコラ)。
スタッフ:(笑)
外山:長年愛用しているものは何かありますか?
吾郎:それはソムリエナイフだよね!
外山:ドラマやってる頃から?
吾郎:そう。あのソムリエナイフに関してはもう20年ぐらい…。「ジョサタケ」ね。
外山:ジョサタケ?
吾郎:その話してない?
外山:知らない。
吾郎:JOH SATAKEって刻印してあるんですよ。ソムリエナイフにJOH SATAKEって。それを使うはずだったんです、役柄が。JOH SATAKEってちゃんと刻印してるのに、スタッフさんが間違えて、間に空白を作ってないんですよ。ジョサタケ(JOHSATAEKE)になっちゃって。
外山:(笑)。
吾郎:そう、ジョサタケになってるから監督がおかしいつって、それはもう使えないって言うから、あ、じゃぁ、それはGoro Inagakiが使うよってことになって。
外山:ああ!
吾郎:そのソムリエナイフは20年近くになりますね、もう。



桜庭一樹さんの仕事場
こちらも家のあちらこちらに本の山。部屋だけでなく、玄関やトイレにも。仕事部屋には、壁に手直し中の原稿や、また気になる言葉の数々が書かれた紙が至る所に張り付けられてました。



古井由吉さんの仕事場
この日はなぜか又吉直樹さんが外山さんとロケに行ってたんですよね・・・。なので、正直、あまり記憶に残ってない(汗)



横尾忠則さんの仕事場
ブックバラエティと言っても作家さんだけでなく、芸術家の仕事場にもお邪魔しているのがゴロウ・デラックスならではだなぁ。


吾郎:うん。
外山:横尾さんか…
吾郎:すべて、空間がアートでしたよ。
外山:ねぇ?
吾郎:作業場まで。場所に遊びに行くっていうのは、スタジオから飛び出して、我々とても楽しいですよね。
外山:ねぇ
吾郎:いろんなロケしたくない?だから?
外山:したいです。
吾郎:まぁ、ちょっと、外にも出かけましょうよ、これから。
外山:そうですね。8年目ということで。
吾郎:突入ですよ。本当に。
外山:はい。
吾郎:あまり普段(テレビに)出られない方とかがこの番組は多いから。やっぱり唯一の番組だからね。そのプライドを持って楽しんでいきましょう。
外山:はい。


これからもよろしくお願いしま〜す!


(18.04.01 up)



 

第290回放送 '18.03.22 24:58〜
【ゲスト】Zeebra 【課題図書】「ジブラの日本語ラップメソッド」

吾郎:こんばんは。
外山:こんばんは。今夜なんですが、慶応大学の現代芸術の先生がいらっしゃいます。
吾郎:おお。大学の先生ということは、今回はお勉強の回なんですね?
外山:そうですねぇ。
吾郎:そっかそっかそっか。じゃぁ、ちょっとピシッと襟を正して。お堅い感じなんじゃない?
外山:早速お呼びしましょうか?今夜のゲスト、こ知らの方です。


すると、スタジオ内、少し照明が落ちて、スタンバイしていたDJが音楽を流しはじめ、クラブで流れるような音楽が流れはじめます。

吾郎:何だ何だ?!何の音だ!何が起きたんだ!!

と、スタジオの雰囲気の変化に吾郎さん(という体)

すると、今回のゲストZeebraさんが登場し、いきなりラップを歌い始めました。いきなりインパクトがあるオープニングですが、そんなZeebraさんが書かれた本「ジブラの日本語ラップメソッド」が今夜の課題図書。この本には、Zeebraさんの30年に亘るラップ人生で培ったスキルが惜しみなく解説されています。今夜は実際に、この本に書かれている内容を、講義という形で吾郎さん、外山さん、そして山田君も交えてZeebraさんに講義して頂きます。

外山:Zeebraさんのファンの方がたくさんいらっしゃるので、怒られちゃうかもしれないですけど、やっぱり格好いいですね!
吾郎:格好いい!
Zeebra:いえいえいえいえ。
外山:違うんですね、何かやっぱり、ちゃんとした方がやると。
Zeebra:あははは(笑)
吾郎:どういう意味ですか?ちゃんとしてきた方です。牽引してきた方です。
外山:ねぇ?

外山さん曰く、ラッパーとかいう方に対して、「怖い」というようなイメージを持っていたと。外山さんに限らずそういうイメージはありますよね。ただ、Zeebraさんに言わせれば、ロックも同じように「怖い」イメージがあったのではないかと。

吾郎:確かに音楽のジャンルで生まれるときっていうのは。
Zeebra:他のものに負けちゃいけないから、ちょっと気合い入れなきゃ、張らなきゃいけないんです。はじめのうちは。
吾郎:はじめのうちはね。
Zeebra:市民権も得てくると、ちょっとこうやって丸くなって本書いたりとか?(笑)
吾郎:(笑)

Zeebraさんは、ネガティブなイメージを払拭するための活動をされていて、HIP HOPを楽しむクラブの周辺のごみ拾いをしたりという活動をしていく中で、例えば風営法で規制があったクラブの営業が朝までできるようになったりと、実際、少しずつ変えてきていらっしゃる方なのです。

まず、そのZeebraさんがラップに対する思いやどういう思いで今回の本を書いたのかを書いた部分を吾郎さんが朗読してました。

ちなみにそのHIP HOPUですが、アメリカの音楽業界としてはかなりの売り上げを上げているジャンル(R&BとHIP HOPをあわせると、全体の25%を占めるそう)です。

HIP HOPは「ラップ」「DJ」「ブレイクダンス」「グラフィティアート」という4つの要素を総合した「文化」であると。70年代初頭にニューヨークで生まれたもので、ブロンクスがHIP HOP発祥の地とされてます。そういうのもあって、冒頭の外山さんの「怖い」というイメージがあるのかもしれませんね。
70年代後半にラップのレコードが初めて発売され、80年代に世界的に広がり始めるという歴史があります。

吾郎:80年代後半ぐらいにさ、僕なんかも歌をはじめてさ、それまではポップスとか歌謡曲だったんですけど、始めてやっぱりちょっとこう…HIP HOPっぽいものを入れたりとか、そういうもの、憧れっていうものは結構あったんですよね、メンバーとかの間にも。
Zeebra:うん、うん。
吾郎:その頃のことを思い出しますね、80年代半ばぐらいから後半にかけてというか。


ここからは本格的にZeebra先生によるラップ講座。スタジオに教壇が用意され、Zeebra先生の講義を生徒である吾郎さん&外山さん&そして山田君が受けるという趣向。


LESSON1 魔法の言葉 『韻』とは?

ルールがあるというわけではないようですが、歌詞の行末で踏んでいくことが多いそう。方法は最後の言葉を母音に変えて、同じ母音となる言葉を持ってくるというような方法で韻を踏んでいくそうです。



LESSON2 単語で『韻』を踏もう

例として、
  「ゴロウ」→「オオウ」もしくは「オオオ」でも可
と変換されます。それと同じ母音となる言葉として、「ホノオ(オオオ)」とか、「フォロー(オオオ)」など。そう考えていくと;

  司会はゴロー
  外山さん頼むよフォロー

と韻を踏んだ歌詞が出来上がっていくわけです。


LESSON3 自己紹介ラップ

先ほど挙げた「ゴロー」「フォロー」「炎」「まごころ」という言葉を使って自己紹介ラップを作ってみます。

  この番組の司会はゴロー
  内に秘める燃え上がる炎
  困ったときは外山がフォロー
  ファンに届ける2人のまごころ

これをZeebraさんのボイスパーカッションのリズムに乗せて、吾郎さんが歌ったりしてました。即興でこうしてできちゃう楽しさってありますね。(文章では伝えられなくてすいません(汗))


番組最後にはスタジオに用意された歌のセットで全員でコラボ。

吾郎:初めてですね、歌で共演するの(笑)
外山:あははは(笑)
吾郎:♪困ったときは外山さんフォロー
Zeebra:(笑)
外山:ちょっと頑張っていきましょう。先生、ラップでパフォーマンスするときに大事なこと…

歌い方とかもあるのでしょうけど、見せ方として、マイクの持ち方についてアドバイス。普通の歌のような持ち方をするのではなく、ラップは動き回るので、マイクを持った際の親指は伸ばして、顎に当てて固定するようなマイクの持ち方をするとマイクが動かなくていいのだそうです。確かにそれだけでも随分と格好いいですね!

さて、実際にコラボをするわけですが、Zeebraさんの「Street Derams」という楽曲で歌詞をわざわざゴロウ・デラックスバージョンにアレンジしたオリジナルを用意してきて下さいました。

  ♪(吾郎さんパート)
   俺も東京生まれ団地育ち
   高島平もがき語り明かした
   這い上がったよ超急斜面
   今じゃアイドル上級者へ
   昔はマセガキ 車マセラッティ
   肩書アイドル 消えぬ輝き
   誰が持ってく 今夜のスター
   外山田ゴロウ 選んでみな!
   
  ♪(外山さんパート)
   独身孤独にどっぷり浸かり
   冷凍食品が酒のつまみ
   つまりこれが惠利の定義
   Maybe 今年も1人Lady
  ♪(山田君パート)
   サーターアンダギー まるでファンタジー
   口の中広がるまったり
   沖縄スタイルは そうゆったり
   かりゆしウェア 肌にぴったり
  ♪(全員)
   これがNo,1 TV show!
   不可能を可能にする番組
   それがゴロウ・デラックス ゴロウ・デラックス
   ぜってぇ誰も真似できねぇこんなライブ
   掴めNo.1 ヒップホップドリーム
   胸はれ誇り高き日本人
   声上げな 声上げな 声上げな
   みんな声上げな

最後は全員で決めポーズ。

吾郎:いやぁ、もう、最高!ねぇ?Zeebra、どうでした、僕ら(笑)
Zeebra:全然。
吾郎:すいません、何か。
Zeebra:こうやってだんだんだんだん、上手くなっていくし、ちょっとやると、何かできる感じがしてくるでしょ、少しずつ?
吾郎:気持ちいいよね?
外山:そうですね、みんなでこうやるのもね。


最後の山田君のハンコは、課題図書の表紙にもあったZeebraの写真を見本に作ったものでした。一緒に講義を受けていたのに、いつの間にか今回もハンコ作っていたのね。


(18.03.25 up)



 

第289回放送 '18.03.15 24:58〜
第158回芥川賞・直木賞受賞者が揃って登場SP!【後編】 【ゲスト】石井遊佳・若竹千佐子・門井慶喜 【課題図書】「百年泥」「おらおらでひとりいぐも」「銀河鉄道の父」

今回は前回からの続きで、第158回芥川賞・直木賞受賞者が登場。前回は若竹さんをフューチャーした内容となってましたが、今回は門井さんと石井さんの人となり&作品についてのトークが中心となります。


まずは門井さんの作品「銀河鉄道の父」から。こちらはタイトルからわかるように、宮沢賢治の父親である宮沢政次郎さんが登場する作品です。子煩悩な父・政次郎と、息子・賢治の絆を描いてます。

もともと門井さんは歴史小説の作家さん。「東京帝大 叡古教授」「家康、江戸を建てる」で過去2回、直木賞候補になっています。

外山:歴史小説っていうとちょっと構えちゃうところがあったんですけど、そんなことなくて。
吾郎:そうですね、そんなことなくて。ラブストーリーだよね、もう本当にね、父と息子の。
門井:ああ・・・なるほど。
吾郎:きゅんきゅんきましたね、僕は。同じ男としても。
外山:門井さんご自身も、3人の・・・
吾郎:そっか、そっか。そうなんですよ。
門井:そう…。
外山:しかも男の子ばかり。
門井:そうなんです。
吾郎:なるほどなぁ、って感じ。
外山:ねぇ?
吾郎:映像がこれこそ浮かびましたね。
外山:ねぇ?吾郎さん、(映像化するときには)お父さんなんて・・・
吾郎:あ、いいですね。
石井:お父さん役?(笑)
吾郎:僕が言いたい言葉、言ってくれましたねぇ。
門井:あははは(笑)
吾郎:売り込みの時間ですよ!


さて、そんな映像が思い浮かぶような親子のシーンを吾郎さんが朗読。
質屋を営む政次郎に対し、家業を継ぐことにはまったく興味を示さない賢治は、石の収集のための標本箱を父におねだりする。・・・で、結局父は標本箱を賢治のためにと買ってしまう、そんなシーン。

外山:賢治が結構、こう・・・お金を・・・
吾郎:賢治が言うんだよね?
外山:ね。
門井:実はこの本を書いた後に、読者の方から感想をいただいた時に、意外と多かったのが、「宮沢賢治って貧乏な人かと思ってました」
吾郎:ああ!まぁ、作家さんとかってみんなそういうイメージがね、そういう。

ただ、現実には父親は質屋を営んでおり、裕福な家庭のお坊ちゃんとして生まれたのだそう。宮沢賢治が東京に出てからも、父親に「お金を下さい」と手紙を書いているものが今でも残っているそうで、お金の無心をできていたということが推察されるのだそうです。

門井さんが今回、宮沢賢治のお父さんをメインに小説を書こうとしたのは、お子さんが読んでいた宮沢賢治についての学習漫画を自分も読んでみたことがきっかけだったと。漫画には、息子につらく当たる悪役として描かれていたそうですが、そうではなく父親としては立派な人に見えたと。そこで色々と調べてみたところ、とても面白い人物像が見えてきたそうです。

外山:え、でも、調べるの大変だったでしょうね?
門井:そうなんです。基本的に歴史なので、資料で、文献資料で調べるわけなんですけど、ご存知の通り宮沢賢治に関しては資料っていうのは山ほどある。それだけでも図書館作れるぐらいあるんですけども、一方、政次郎さんに関してはこれがまた何にもない。ただ、賢治の資料の中に、お友達が書いた回想録の中に1行2行ちょこちょこっと政次郎さんのことも出てきたりするんですね。そういうような1行2行の文章をいろんなところから集めてきて、僕は砂金を集めるような作業だと言っておりますが、その砂金で小さな仏像を作るというような感じの作業でした。
吾郎:うわぁ〜。

ということで、このトークの後、門井さんの仕事場にお邪魔して、その資料の数々を見せていただきました。ちなみに段ボール5箱以上は資料を集め、それに加えて自ら設定を書き込んだ年表を作るんだそうです。


さて、門井さんご自身について、お子さんが男の子ばかり3人もいるお父さん。小説は自宅とは別に作業場をお持ちだそうですが、そこと自宅を毎日往復して、きまったルーティーンで仕事をされているそうです。

門井:朝4時に起きまして。
吾郎:真面目そうだもん。
門井:(笑)。4時に起きて、4時半に仕事場に入り、コーヒー淹れてクッキーでも食べながら仕事をはじめ、原稿を書きはじめ、7時ぐらいにいったん終わってうちに帰り、子供たちと一緒に朝ご飯を食べます。
若竹:ふーん。
門井:子供たちが全員学校に行くのが7時50分ぐらいですので、僕はそっから昼寝をするんです。8時15分ぐらいに起きるとまた目がしゃきっとしてまた新たな気持ちで原稿に立ち向かうと。
吾郎:ちゃんとしてる!!!(笑)
外山:朝ごはんの前にすでにお書きになり?
門井:はい。
吾郎:若竹さん、さっきから何か、落書きを書いてるんですか?
若竹:いやいやいや。

見ると手元のノートに、今の門井さんのコメントがそのまま書かれています。

外山:メモですよね?
門井:修学旅行のタイムスケジュールみたいな?
門井:それで、8時15分から何時ぐらいまで?
外山:あははは(笑)
門井:(笑)
吾郎:後で楽屋でやって頂いて・・・。

ちなみに執筆活動は18時ぐらいまで続けられて、21時には寝てしまうのだそうです。・・・という話を聞いて続きをメモし始める若竹さん(笑)。それを見て、石井さんまでメモをし始めました〜。

門井:メモを取って頂くのは大変ありがたいんですが、できれば作品の方で感銘を受けて頂きたい・・・ちょっとそのことが残念でございます。
一同:(笑)


さて、続いては石井さんが書かれた『百年泥』。これは、インドのIT企業で働く日本語教師の主人公が、ある日遭遇した大洪水の後、橋を渡っていると川の泥の中から、そこにあるはずのない主人公の思い出の品や生きた人間が掘り返されるという摩訶不思議な物語。
なお、石井さん自身もインド在住の日本語教師であり、自らの経験をベースに書かれたものでもあります。

吾郎:僕、すごい好きです。
石井:ありがとうございます。
吾郎:はい。気持ちよく振り回していただき。
石井:(笑)。振り回されましたか?
吾郎:ええ。翻弄して頂き。何かファンタジーとリアルの行ったり来たりが気持ちよくて。

話の中に出てきた大洪水ですが、実際にインドに移住した年に体験したことだそうで、洪水の様子もとてもリアルに表現されているようです。かと思えば、会社の重役は通勤に「飛翔」という手段を使うなどと、とんでもない描写で書かれていたりします。

外山:本当に、私、インドの人、飛んでいるのかと思って…。
吾郎:僕も一瞬、ちょっと、ネットで調べようかなと思った。
外山:まさかと思ったんですけど。
吾郎:だってこういう書き方したらそう思っちゃうじゃん!
石井:思うツボですね。やったですね(笑)
外山:本当に不思議なんですよ、ありそうなことだから。
吾郎:僕も今、コマーシャルで羽つけてるんですよ。

さりげなくSuntory「オールフリー」のCMネタをぶっこむ吾郎さん。

外山:あはは(笑)
吾郎:天使の羽ですけどね。
石井:マジックリアリズム。
外山:マジックリアリズムっておっしゃいましたけど、そういう書き方があるんですね?


マジックリアリズムとは
普通の世界が舞台のはずなのに、当然のことのように非日常なことが起きる表現技法


だそうです。

石井:私は現実は荒唐無稽でその現実をとらえるのにとても忠実な叙述の仕方じゃないかと思うんですね。だから、世界をありのままに、けったいなままに書こうとすると、まぁ、こういう(マジックリアリズムの)やり方が要請されてくるという風に私は思うんですね。

小説の中には主人公とと生徒とのやり取りも出てきますが、これもご自身の経験から書かれたもの。連日、教本づくりに追われていたそうで、小説を書く余裕はなかったそうですが、面白いことがあるとメモを取ったりはしていたそう。

石井:ある時ちょっと2〜3カ月暇があったんで、「書いたれ〜」って、必死にその時に書いたらこれですわ。
門井:3カ月でこれを?
吾郎:3カ月でこれを書かれたって。
門井:すごいです。速い!
石井:だから本当に、奇跡です。だから何かが私に書かせてくれたんやと思ってます。
吾郎:次回作は?
石井:そうですね、デビューするまで長かったんで。何十・・・百近く書いてるんですけど。
若竹:すごい!!
石井:書いてたでしょ?あるでしょ?
若竹:いやいやいやいや。
吾郎:でも、百もあったら、材料はあるってことじゃないですか?
石井:そうですね。一応、今、書き直しているものはありますけれども。まぁ、インドのものじゃないですけどね。日本のもので。いずれにせよ同じように荒唐無稽なけったいな世界を。
吾郎:ああ、やっぱりその、マジックリアリズムっていうのは、ご自身の中の…
石井:そうです。荒唐無稽なものじゃないと書く気がしないというか(笑)
若竹:そうなんだぁ〜
吾郎:まぁでも、楽しみですよ。


さて、そろそろ収録も終わりとなりますが、若竹さんの資料に「香取慎吾さんに会いたい」ということが書かれていたそうで、ふと、スタジオにいた長身の金髪男性=山田君を香取さんと勘違いして一瞬、絶叫されてました(笑)

・・・という流れの後、山田君、出てきにくいよねー(笑)。ただ、ハンコの作品は今回も素敵で、今回のゲストの3ショットが描かれた作品でした。


(18.03.18 up)



 

第288回放送 '18.03.08 24:58〜
第158回芥川賞・直木賞受賞者が揃って登場SP!【前編】 【ゲスト】石井遊佳・若竹千佐子・門井慶喜 【課題図書】「百年泥」「おらおらでひとりいぐも」「銀河鉄道の父」

いつものスタジオでのオープニング。

吾郎:こんばんは。
外山:こんばんは。さぁ、今夜は番組恒例、芥川賞・直木賞スペシャルです。
吾郎:今回、芥川賞はですね、お2人のダブル受賞で。
外山:そうです。
吾郎:受賞発表の時に石井さんがインド在住なので、3人そろわなくて、今日は3人揃って来てくれた?
外山:そうなんです!インドから帰って来て下さって。ということで、実際、受賞された3人の方が会うっていうのは今日が初めてなんです。

この収録日は授賞式前と注釈あり。授賞式は2月22日という話なので、その前に収録があったんですね。

吾郎:ああ、それ、貴重ですねぇ。


早速、芥川賞受賞の石井遊佳さん、若竹千佐子さん、直木賞受賞の門井慶喜さんをお呼びします。そうして吾郎さんが花束を渡すのも、もはやゴロウ・デラックス恒例のシーン。ただ、今回はそれだけではなく、ある方の“熱望”でスタジオに金屏風が用意されました!

石井:金屏風!
吾郎:金屏風?何で?何で?
石井:はい。
吾郎:石井さんですか?
外山:そうなんです。
石井:えっと、私、インドにいて、あの受賞の電話頂いて、私だけ電話会見なので、電話持って待ってたら、(1月中旬に行われた受賞会見で)受賞されたお二人を見ていたら、金屏風の前でこんなんしてるから、『金屏風!私も金屏風ぅぅぅ!』とか言って。そんなことを(番組スタッフに)申し上げましたら、金屏風をご用意頂いて、ありがとうございます。
吾郎:そっかそっか。

さらにその金屏風前で雰囲気を出すために多数のカメラマンさんも用意されてました。番組スタッフさんだけでなく、収録に立ち会ってるスチールカメラマンさんとかも交じってるのか、それなりの記者を前に3人がフラッシュを浴びている光景が放送されました。
が、なぜか横で見ていた吾郎さんがその3人の前に立って、カメラに向かってポーズを。どうしても自分も入りたかったみたいです(汗)


さて、着席してじっくりトーク。

吾郎:3人がじゃぁ、揃うのは今日が初めてだったんですね?
門井:はい。
石井:そうなんですよ。ふふふ(笑)。もう、めっちゃ嬉しいです。インドからずっとお会いしたくて。
吾郎:さっき会ったばっかりですからね。
石井:そうそうそう。
門井:ただ、受賞会見のときには僕と若竹さんはお会いしてるんですが、何しろすぐに控室に行って、すぐに記者会見始まって、すぐにまた次の場所へって感じだったんで、本当にちょっと挨拶をしただけ、みたいだったんですよね。
若竹:そうですよね。
門井:ほぼ初対面に近いですね、今日は。

というお3人ですが、実は石井さんが生まれたところと、門井さんが今住まわれている場所が近かったり、作品的にも門井さんは宮沢賢治をモチーフにした東北が舞台の話で若竹さんの作品はまさしく地元の東北が舞台の話。加えて、若竹さんと石井さんは小説の勉強をした先生が同じなんだそうです。


受賞をしたと知らせを受けたときの話に戻すと、若竹さんは出版社(河出書房)の会議室で知らせを聞いたそう。

若竹:あの、大福を食べながら(笑)。
吾郎:そっか、門井さんはどちらで?
門井:僕はですね、あの…、ビールなんです。
吾郎:ビール?お酒飲んでたんですか?
門井:そう・・・まぁ、ちょっとだけなんですけど、大体、僕の編集担当者と一緒に、受賞の知らせを待つっていう。僕ら「待ち会」と呼んでますけど。
吾郎:こちら写真・・・
外山:会社の飲み会みたいな雰囲気ですね(笑)

画面に映された写真は、受賞の知らせを聞いた直後に乾杯をしているシーン。ただ、門井さんはこれから会見があるからビールを我慢しているタイミングだったそうです(笑)

ちなみに門井さんは過去2回、候補にはなっています。今回3回目の候補での受賞なので、電話がかかってきたときには相手の方の話し方で、受賞したことはすぐに分かったんだそうです。

一方の石井さんはインドで受賞の知らせを聞いたわけで、ご自身の携帯はうまくつながらなかったのか、旦那様の電話にかかってきたそう。ただ、その電話もやはり聞こえづらい状態だったそう。少し受賞したと理解するまでに間があったようです。


さて、今回の課題図書は「百年泥」「おらおらでひとりいぐも」「銀河鉄道の父」の3作品。
まず、若竹さんの受賞作「おらおらでひとりいぐも」について。これは東北出身の旦那と死別した女性を主人公にした小説で、老いの境地を描いたもの。境遇は若竹さんご自身のものと重ね合わせたものとなってます。

「おらおらでひとりいぐも」というタイトル、これは岩手弁で、「私は私で一人で生きていくわ」っていう感じの意味でしょうか?

吾郎:いや何か、すごく楽しく読ませていただいて、(主人公の)桃子さん、いいですよね。
外山:桃子さん、ねぇ?
吾郎:すごくポジティブですしね。老いに対してもね。
外山:そうですね。
吾郎:こういうことを我々もこれから本当、考えていかなきゃいけないことも多いのかななんて思ったり。


さて、ここで恒例の朗読ですが、タイトルの「おらおらでひとりいぐも」からしてどう読んでいいのかわからないこの小説、文章には岩手弁と標準語が織り交ざっています。特に桃子さんの心の内を書いたところでは「てへんだあなじょにすべが あぶぶぶぶぶっぶぷぷ」なんて表現があったりして、どこで切ればいいのかもわからない。吾郎さん、朗読して一言;

吾郎:すいませんでした。

と謝るしかない感じになってました(笑)。なので、隣に座っている門井さんに

吾郎:門井さん、これ、読めますか?ちょっといいですか、読んでいただいて?

と、吾郎さん無茶ぶりをしてます。

若竹:あははは(笑)
門井:てへんだ〜 なじょにすべが あぶぶぶぶぶ×▽*☆$%…
吾郎:(笑)。僕よりうまい
門井:いやいやいや。
吾郎:一度おしんの父親を演じたというのに。
外山:ああ!


この小説の登場人物はほぼ桃子さんというおばあさんが一人だけ。このおばあさんの脳内の声をダイナミックに表現しようとすると、若竹さん自身が使い慣れた言葉で表現するのがふさわしいと思ったのだそう。

門井:そのことでちょっと伺ってもいいですか?あの…方言は方言としてとても魅力的なのは僕ももちろん分かるんですが、でも、それをこう…文字にするときって、どうしても100%こう…話し言葉を文字にするってできないじゃないですか。
若竹:確かに耳で聞いた音を文字に表すっていうのは、難しいんだけども、でも、どうしてもこの…、言葉の厚みとか温かみを伝えたくて、だからあの、もしも分からなくても、それはしょうがない。ある程度それを犠牲にしても、やはり言葉の何ていうんだろう…
吾郎:リズム感とか・・・
若竹:そう、そうですね。
吾郎:書体の感じとか?
若竹:はい。
吾郎:何か、門井さんがそれを気にされてるのも、逆に門井さんの小説を読むとわかる気がしますよ。すごく見る方に、逆に何だろう、親切にというか。
門井:実はこれは(ご自身の小説は)東北の方に(方言を)指導して下さる人がいらっしゃいまして。そういう意味では、今、“私に聞こえる音”っていう風にすごく印象的なことをおっしゃったんですけども、僕の場合もうちょっと結果としてより書き言葉に近いと言いますか、書き言葉に近い方言になったんじゃないかなと思います。
吾郎:そうですよね。


若竹さんの話をもう少し続けると、若竹さんが小説を書くきっかけは55歳で旦那様を亡くされ、その悲しみを埋めるために息子さんが「小説講座」を探してきてくれたのだそう。元々、小説家になりたいという夢があったそうで、小説講座が本格的にこの道に進むきっかけになったんだそうです。

その小説講座とは、人の作品&自分の作品をみんなで読んでその感想を言い合うという場なのだそう。先生が「こう書きなさい」という講義はしないんだそうです。
ちなみに、石井さんも小説講座に通っていたそうで、異なる地域で開かれている小説講座だったようですが、その先生は同じ方だそう。

外山:共通の先生?
若竹:はい。
門井:そう。兄弟弟子。偶然なんですけど、違うところに通ってたんですけど、えっ、偶然、同じ時期?
若竹:同じ。私、2009年。
石井:さっき聞いてびっくりしました。
外山:同じ先生?
吾郎:根本先生。
石井:そうです。いろんな所で教えていらっしゃって、有名な元編集者で。何か私はなかなか褒めない先生だという印象だったけど、若竹さんは毎回褒められたって。
若竹:うそうそうそ!

授業の後には必ず飲み会があって、そこでさらに自分の作品に対する感想を聞いたりするんだそうです。その根本先生というのは、あちらこちらのカルチャーセンターなどでも講座を開いているそうで、編集者時代には、「博士の愛した数式」(小川洋子著)や「キッチン」(吉本ばなな著)も担当していた方だそう。


若竹さんの今回の作品は、当時、映画「レ・ミゼラブル」に感銘を受け、一斉に皆が自分の思いを叫ぶようなことを小説にできないかという発想なのだそう。
ちなみにその映画が気になり、Youtubeを検索したりしたそう。2chも覗いたりするそうですよ。

外山:次回作とかって、もう、考えたりしてるんですか?
若竹:考えてはいるんですけれども、でもねぇ、これは本当に言うとね、言って安心してやらなくなるから、これだけはごめんなさい(笑)。考えてはいます。
門井:言うと安心しちゃう?
吾郎:言っちゃうから、(自分に)プレッシャーをかけるとかではなくて?
若竹:うん、そうなんですよ、私の場合は。言っちゃうともう言ったから(書かなくて)いいや・・・完成したような気になっちゃうから。
吾郎:真面目!普通逆だもんね。
門井:逆です。
吾郎:ですよね?
門井:はい。
吾郎:言っちゃったらやんなきゃってなるから、言っちゃった方がいいとか。
外山:あははは(笑)
吾郎:まぁでも、次回作、期待して・・・
若竹:ありがとうございます。
吾郎:・・・いいんじゃないかという。その表情から。
若竹:63年で1本の人だから次は100歳頃です(笑)


さて、今回は話の中心は若竹さんの話でほぼ終わってしまいましたが、次週も同じゲストで続けます。今回は2週連続なんですね。これまで1週だけの放送で物足りなかったですが、せっかくなので話がたっぷり伺えるというのは嬉しいです。


(18.03.11 up)



 

第287回放送 '18.03.01 24:58〜
【ゲスト】岸 惠子 【課題図書】「愛のかたち」

オープニング。

吾郎:こんばんは。
外山:こんばんは。さぁ、今夜は芸歴67年の大女優さんをお迎えします。
吾郎:大大大先輩なんですけど。
外山:そうですねぇ。
吾郎:まぁ、今でもお綺麗で。


吾郎さんが大大大先輩というその方は、俳優であり作家の岸恵子さん。この番組は本の番組ですので、作家として登場なわけですが、どうしても女優さんとして認識しちゃいますね。早速登場してトークを開始。それにしても、御年85歳とはびっくりだわ。

外山:吾郎さんは、岸さんとは?
吾郎:ええ・・・
岸:初めて。
吾郎:はい、初めまして。
岸:初めてです、はい。
吾郎:あの・・・僕も金田一さんだったことがありまして(笑)
岸:えっ、本当?
外山:ああ。
吾郎:はい、テレビシリーズなんですけど。その中で僕も『悪魔の手毬唄』を。
岸:あ、あれは私、好きなんです。
吾郎:はい、やらせて頂いたことがあって。そのときにもちろん、市川崑さんの作品も勉強のために色々見させて頂いて。
岸:あ、そうですか。
吾郎:そんな共通点が。
岸:私、見てみたかったわ。
吾郎:ちょっとまた機会があれば。
外山:で、岸さんは、まだパリに住んでいらっしゃるってわけではい?
岸:あの、事務所は持ってます。
外山:ってことは、日本に戻られたのは?
岸:あの2000年です。
外山:2000年に戻ってこられた。結局、43年パリにいました。
吾郎:憧れちゃいますよね。
岸:みなさん、まだ生まれてない?まだお小さかったでしょ?
吾郎:僕が今44なんで、73年に生まれたので。
岸:娘が63年なんですよ。

画面にご家族の写真(娘さん&お孫さん2人、そして岸さんとの4ショット)が流れましたが、さすが岸さんに似てお綺麗だし、お孫さんも男の子なのに可愛らしい。


さて、今回の課題図書は『愛のかたち』。これは恋愛小説で、主人公の女性・化粧品会社のパリ駐在員・渚詩子が、奇妙な弁護士・ダニエル・ブキャナンと出会い、愛の不思議に身をゆだねていくという話。

吾郎:ブキャナン、ちょっとミステリアスでね、何をするかわからなくて。
岸:だから最後も結局はこの愛がどこに行くかわからないという。愛って常に移ろうもので、その断片を一番炎が燃えあがっている時を書きたかったんですね。だからどうなったかは問題じゃない。
吾郎:なるほどね、この2人、どうなったの?とか。
外山:その先を読みたいななんて思うんだけど。
吾郎:普通思っちゃうんだけど。
岸:そこは我慢して。
吾郎:でも何か、僕思ったのは、この歳になって恋愛するってことは、こういうことが必要なのかなと思って、ただだらだらお付き合いするとかではなく。
岸:つまらないですよね。
吾郎:あの、もちろん、僕はまだ独身なので。
岸:えっ、ああ、そう?!(@o@)
外山:あははは(笑)
岸:もったいないわね。
吾郎:本当ですか?そうですね、あの・・・
岸:もったいない!
吾郎:それで何か、でも、こういう恋愛をしてみたいなとか。

というわけで、二人のデートを描いた小説の一文を外山さんと吾郎さんで朗読。小説の内容は岸さんご自身の経験したものが反映されてます。


ここからは岸さんの半生について;

1949年 16歳で映画の撮影を見学中にスカウトされ女優の道へ
1953年 代表作「君の名は 第1部」公開。空前の大ヒット


この映画「君の名は」では、岸さん演じる真知子のファッション=真知子巻と呼ばれるスカーフの巻き方が大流行します。ただ、この日、たまたま撮影の時に寒くて、私物のスカーフを巻いて撮影をしたら、それが大流行になったそうです。


1957年 24歳でフランス人監督 イヴ・シァンピと結婚


この結婚したお相手は、監督さんらしくなく、岸さんを普通の女の子として扱ってくれたところに惹かれたんだそう。

岸:深い、大海原みたいな人だったんですよ。寛大で、懐のでかいどんとした方で。「あなたは好奇心も強しい、行動力もあるし、日本だけ見てるのはもったいない。世界中を見なさい、まずヨーロッパを見なさい。それでも日本の方が良かったら帰ってきたら良いじゃないですか。」って言われて、じゃぁ、パリに行ってみようということで。

ただ、時代が時代なので、海外旅行だけでも大変な時代、移住するとなるともう、そえがどういうことなのか想像がつかないですね。

吾郎:もう、違う星に行くぐらいの感覚ですよね、今でいくとね。
岸:そうですよ。
吾郎:常識も通じない、言葉も通じないし。

ここで岸さんの当時のフランス生活を紹介した映像が紹介されます。1974年の映像だそうですが、さすがTBS。
ご自宅の様子も、旦那様が映画監督だけあって、家そのものもそして、調度品も、すべてが映画のセットのような、とても素敵なものとなってます。

吾郎:すごい。何もかもが美しくて憧れてしまいますよ。
岸:いやー、そんなことないですよ。

そうして、パリの生活において、交友関係も豪華で、番組内で、岸さんとウィリアム・ホールデンさん(アカデミー主演男優賞俳優)の2ショットをオードリー・ヘプバーンさんが撮ったという写真が紹介されたり、ジャン・コクトーさんとの写真が紹介されました。
岸さんはパリ時代、ジャン・コクトーさん演出で舞台に立っているそうで、その舞台を三島由紀夫さんが見に来てくれたとか、もう、歴史の教科書に出てくるような話ばかりですわー(笑)


ただ、結婚した相手は執事がいて料理人がいてというような家庭で、家で何もしなくていいという、個人的には羨ましい限りですけど(汗)、岸さんとしてはそれが苦痛になっていったんですね。
一方で、日本に里帰りさせてもらった際に、日本の映画界の監督さんの誘いもあり、女優生活を再開していくことに。それが夫婦間ですれ違いを生むことになります。


1975年 43歳 夫婦間のすれ違いから離婚へ
1983年 51歳 初のエッセイ「巴里の空はあかね雲」で日本文芸大賞エッセイ賞を受賞。この頃、ジャーナリストの活動も開始。
2003年 71歳 「風が見ていた」を出版し小説家デビュー


その後、2作目の小説「わりなき恋」では高齢者の恋愛を描いています。

岸:高齢者の恋愛の話をとことんまで書きました。だって、高齢者の寂しい姿ばっかり見せるじゃないですか。
吾郎:最近、そういうのが多いですね。
岸:もう、消しますよテレビは、私はああいうときは。もう、嫌です。
吾郎:もちろん、いくつになっても人は恋するわけですし。
岸:私は何もしなくなったらさっさと死にたいと思うし。まだまだいっぱい書きたいし。したいこともあるので。
吾郎:ああ、でも、何か、岸さんっぽいね、何か。


さて、そろそろエンディング。

外山:今日はね、岸さんの劇的な人生を振り返ってまいりました。
吾郎:いや、もう、自分は大人しすぎるのかなと。興味あることでも中々一歩を踏み出すって難しいじゃないですか。
岸:踏み出して下さい。面白いことがありますよ。
吾郎:今のこの状態でも楽しいなとか、何かちゃんと石橋を叩いて、ちょっとずつでもいいかなって思っちゃうんですけど。
岸:ああ。人生というもののなかで、ある日突然、あっと普通でないことが起こるんですよ。誰しも、誰しも。それに知らん顔してると、昨日があり、今日があり、明日があるけど。パッと掴んじゃうともしかしたら地獄に突き落とされるかもしれないけど、違う世界が見えてくる。
吾郎:ずっとそれを岸さんはお持ちなんですね。だから僕も本当にこれからだなぁ、って。今、何か。
岸:そうですよ。
吾郎:はい、すごく思いました。
岸:まだ結婚もしていらっしゃらない。

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外山:はははは(笑)
吾郎:そうです、まずそこですね。
岸:もう、びっくりしちゃう、こんなに素敵なのに、お2人とも。
吾郎:まずはそこですね。

最後の山田君のハンコは、真知子巻姿で凱旋門前に立つ岸さんの姿でした。



(18.03.01 up)



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