ゴロウデ・ラックス'16年12月放送分

 

'16年12月放送分
第229回放送
16.12.01
第230回放送
16.12.08
第231回放送
16.12.15
第232回放送
16.12.22



♪番組の説明

祝・4年目突入!!『ゴロウ・デラックス』とは…?
SMAPで一番おしゃべり好きの稲垣吾郎がMCを務める業界唯一無二のブックバラエティ
毎週1冊(課題図書)、巷で話題の本からベストセラーまで様々なジャンルの本を深く紹介!!
さらに、
大御所作家先生からまだテレビに出ていないニューキャラまで幅広いゲストをお迎えし、トークする番組。


 

第232回放送 '16.12.22
秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「BLACK TIGER―ブラックティガー―」


今回は、いつものスタジオではなく、ロケ。場所は東京某所という雰囲気ですが・・・

吾郎:こんばんは。
外山:こんばんは。
吾郎:さぁ、今夜は年内最後の放送ということなんですが、ここはどこでしょう?
外山:ここはですね、東京都葛飾区亀有駅前です。
吾郎:うん。
外山:今夜は、この、“両さん”にまつわる方がついに登場してくださいます!

ここで少し映像を引くと、外山さんの隣には、“両さん”(両津勘吉)の像が画面に映りこみました。漫画・こち亀にまつわる方が今回のゲストということになります。

吾郎:わかった。
外山:えっ?
吾郎:(ドラマでもやった)香取慎吾君。おじゃMAPとコラボレーション。

さすがにそれはないですねw


今回の課題図書は、『こちら葛飾区亀有公園前派出署』、つまりゲストはその原作者の漫画家・秋本治さんです。1976年に週刊少年ジャンプで連載がスタートし、単行本全200巻を区切りとして、今年9月に連載終了したばかり。今回は、その秋本治さんの作業場であるアトリエびーだまにお邪魔しました。

吾郎:先生、今、何描かれてるんですか?
秋本:えっとね、西部劇の『BLACK TIGER』っていうやつを描いてます。
吾郎:あ、これからやられるという?
秋本:はい。
吾郎:『こち亀』が終了しても、お休みとか全然無く、こうやって、今、やられてるんですか?
秋本:そうですね、その直後から、これ(BLACK TIGER)のネームに入って。
外山:へぇ・・・
吾郎:へぇ・・・。一年間ぐらいハワイに行ってきてもいいよね?
外山:本当ですね。そういう感じにはならないんですか?
吾郎:そうですよね。
秋本:あんまり休むと、こう…、モチベーションが下がっちゃうんですよね。だから、終わった直後に、次の描いた方が、もう、(勢いで)行くんで。
吾郎:そうですよね。先生が生でね、こう…、“両さん”を描くところを見てみたいので、こちらにちょっと描いて頂いても…
秋本:あ、わかりました。
吾郎:いいですか?

で、実際にさささっと、マジックで“両さん”の横顔を描き上げてくださいました。実際、目の前で見ると感動ですよね。


さて、作業場から、応接室のような部屋に場所を変えてトークです。

吾郎:こち亀の連載、本当に長い間、お疲れ様でした。
外山:ねぇ、お疲れ様でした。
秋本:ありがとうございます。
吾郎:みなさん、一番、お聞きしたいと思うんですけども、このタイミングでなぜ、『こち亀』の連載を終えられたのかな、っていうのは?
秋本:はい、はい。コミックスが今年で200巻を迎えるということで、それと同時に連載が40周年というのもあって、それで、両さんとしてはお祭りが好きなキャラクターなので、じゃぁ、40周年で200巻のおめでたい時に、こう…すっと消えるのが一番、キャラクターに合ってるかなってことで。だから僕自身のっていうよりも、やっぱりキャラクターの幕引きとしては一番の花道になるかなってことで、今年を選びましたね。
吾郎:そっか、キャラクターのことを考えてという…。
秋本:そう。


ここで、秋本さんのこれまでの半生を振り返ると・・・

  1952年  東京都葛飾区亀有に生まれる
  中学時代 自主トレーニングを重ね、同人誌「星」を制作・出版

この中学時代の同人誌の現物を拝見。この当時、同人誌が流行っていたものの、周りに同志がおらず、全て自分ひとりで制作されたのだそうです。ただ、目次には色んな人の作品が連なっているように書かれてるのですが、本当に全て一人で作ったのだとか。いや、中学時代の作品としては、さすがのクオリティです。
高校に入ってからは、今度は仲間が出来、そのお仲間と同人誌を制作。秋本さんのここで掲載されている作品を見ると、どちらかというと劇画調で、とても大人っぽい作品。

  1971年  株式会社タツノコプロに就職(18歳)

タツノコプロがガッチャマンなんかを作っていた頃に、動画の制作に関わっていたそうです。そうやって昼間はアニメーションのお仕事、夜は自宅で漫画を描くという生活。この頃に作られた同人誌には、少女マンガタッチの作品が!

外山:少女マンガ!
秋本:そうなんです。
外山:でも、描いたのはこのときが?
秋本:いや、当時から結構、描いてました。
外山:そうなんですか…。
吾郎:秋本先生、こち亀とかいうイメージからさ、少女マンガっていうと何か、かけ離れた感じがしますけど。
外山:しますね。
秋本:でも、元々、やっぱり独特の世界感ですし、まわりもすごく綺麗ですし、絵が可愛いし、すごく興味があって描いてましたね。だから、(こち亀に出てくる)麗子(というキャラクター)なんかは、結構、少女マンガからきてますよね。
外山:ああ!
吾郎:ああ!
秋本:元々、この髪の感じとか。

同じ同人誌に、ベトナム戦争をテーマにした超劇画タッチの漫画(ベトナム戦記)も収録されてます。

吾郎:へぇ!ああ、すごい!こういうの!
秋本:そう。だから、M16だけど、M16の前のストーナーっていう原型の銃なんですけど…
吾郎:ああ!僕、それ、いま言いたかったんですよねぇ〜!
外山:あははは(笑)
秋本:(笑)。そこまで知ってるんだ!
吾郎:手榴弾の感じとかも。
秋本:昔の感じですね。詳しいですね(笑)
吾郎:パイナップルついてる前なんですね。
秋本:そうです。
吾郎:たまらないですね、これねぇ。


そして、今回の課題図書の『こち亀』の話に。

  1976年 こち亀が月例ヤングジャンプ賞に入選。こち亀の連載開始(23歳)

絵のタッチも連載開始当時からは、少しずつ変化してきています。そういえば、作品の中で、それを自虐的にネタにされていたこともありますね。さきほどの戦争漫画の一ヶ月後の作品だそうで、劇画タッチが少し残っています。最初はギャグ漫画で描くつもりは無かったようで、「こんな変ったお巡りさんがいたら面白いんじゃないか」という発想から描かれたものだそうです。

吾郎:(表情が)悪いですよね、両さん、このとき。
秋本:悪いんです。恐いお回りさん。
外山:すぐに撃っちゃうんですね(笑)
秋本:そう。

ヤングジャンプ賞に入選がきっかけでスタートした連載でしたが、秋本さん自身、ギャグ漫画を描かれたのは初めてということもあり、続けることは難しいと思って、連載の最低限である「10話」を目標にがんばられたんだそうです。だけど、描いてるうちにギャグ漫画も面白いと思うようになったのだとか。

外山:(漫画を)描いてるときは、ちょっと両さんになっちゃうみたいなところはないんですか?
秋本:いや、そこは結構冷静に。
吾郎:両さんっていうキャラクターのマネージャーさんとか。
秋本:そう、そう。彼だったら、これ、できるだろうっていう、つまりそういうことですね。
吾郎:両さんのことが1番好きな人なんだ、近くにいる、マネージャーさんで。
秋本:そうですねぇ〜。

吾郎さんにとって、マネージャーさんってそういう位置づけなのかな・・・。


今回の朗読は、やはりこち亀の漫画から。『突撃!クレーンゲーム』(73巻の8話に収録)を朗読しますが、その配役は・・・

外山:吾郎さんは両さん。ははは(笑)
秋本:(笑)
吾郎:全く両さんっぽくないよ。
外山:どっちかっていうと中川さんっぽい。
秋本:中川ですよね(笑)
吾郎:香取君呼んできた方がいいんじゃないですか?

そのほか、山田君が中川と大原部長のダブルキャストで、外山さんが司会者&麗子のこちらもダブルキャストで朗読をしました。

外山:(笑)
吾郎:・・・先生、すいませんでした。
外山:でも、違うかなと思ったら…
秋本:結構、2枚目の感じですよね。一所懸命寄せて作ってくれて。
吾郎:あははは(笑)


こち亀の連載が終わり;

  2016年12月  グランドジャンプにて新作「BLACK TIGER」の連載開始
  2017年 2月  ジャンプSQにて「Mr.Clice−ミスタークリス−」連載開始
  2017年 2月  週刊ヤングジャンプにて新作「ファインダ−京都女学院物語−」連載開始
  2017年 3月  ウルトラジャンプにて「いいゆだね!」連載開始

と、大忙しです。4作品並行しての連載というのがすごいですね。中でも、「ファインダ−京都女学院物語−」は少女マンガだそうで;

吾郎:そっか、子供の頃、描かれてた少女マンガがここできたんですね。繋がってたというか。
外山:そうですねぇ。
秋本:『BLACK TIGER』はアクションもので、バンバン撃ちあうっていう西部劇なんです。
外山:で、この女性は?
秋本:これが主人公ですね。っていうのも、西部劇だと男の世界という感じなんですけども、そこに女性が入ったら面白いなぁ、と思って。彼女が使う銃は、特別な大口径で、もう、熊でも倒せるぐらいの銃を2丁使いこなして。
吾郎:それはやっぱり口径は44?
秋本:50口径なんです。
吾郎:50口径なんですか?!?!!
秋本:世界最大の銃の口径なんですけど。
吾郎:デザートイーグルを超えるんですか?
秋本:超える、超えますね。
吾郎:色々ミックスされてるんっですね。先生の今までの。
秋本:あ、そうですねぇ。
吾郎:少女マンガであったり、シリアスな、ねぇ、ドンパチ劇であったり。


そしてこの、『BLACK TIGER』第一話の冒頭部分を朗読します。

吾郎:こっから始めるんですね。西部劇とか知らないさ、今の若い子も、子供とかも、絶対夢中になると思う、この作品。
秋本:ああ、そうなんですねぇ。だから若い人に聞いたら、西部劇はちょっと見るとか、好きだっていうのがあったんで、じゃぁ、今回、敢えて西部劇描いてみよってことで描いたんですよ。


最後に再び、作業場に戻って、実際に描かれている様子を見学。さきほどの『BLACK TIGER』は劇画タッチということもあり線を描き込む量が多めですが、1本1本手書きで描かれてます。

と、そこで;

吾郎:何か、お願いがあるんじゃない?
外山:えっ・・・(笑)、言わせます??(笑)
吾郎:ちょっとお願いが。
外山:是非ですね、ゴロウ・デラックスでお願いがありまして、あの、ここにいる稲垣吾郎さんをですね、あの、『BLACK TIGER』に登場させて・・・
吾郎:いやいや、そんなこと・・・僕から言えないよ(笑)
外山:(笑)
秋本:(笑)
吾郎:図々しいじゃないか。
外山:だから、私が言ってるじゃないですか(笑)
吾郎:え、いいですか?
外山:できますか?
吾郎:お願いできますかね?
秋本:何とかやります。
外山:あ。
吾郎:この世界にいけるんですよね?
秋本:だって、すごい銃に詳しいじゃないですか。もう、そのまま行けちゃう感じですね。
吾郎:僕、何、銃、持つんですかね?
秋本:あははは(笑)
外山:あははは(笑)
吾郎:まぁ、やっぱり先生の、今日、一日、お話させて頂いて、先生が僕に持ったイメージでやっぱり銃を選んで頂く…。
秋本:はい。
吾郎:とにかく、銃は持たせて下さい!
秋本:はい。分かりました(笑)

メチャクチャ役得。

そして、さくさくさくっと描いて下さいました。

秋本:こういう感じで稲垣さんが・・・
吾郎:すごいすごい。ええ、名前書いてあるよ!!見て!
外山:あ、これは探す楽しみが。
秋本:そうですね。
外山:ええ
吾郎:すごーい!!すごくない?
外山:すごいですよ。

ってことですが、テレビの画面には、その誌面の様子は映らず。実際、作品を見てのお楽しみ、ってやつですね。2017年2月号のグランドジャンプ(『BLACK TIGER』が表紙です)をチェック!


最後は、山田くんによるウエスタンな秋本先生の消しゴムハンコ・・・これで番組〆かと思ったら、更に秋本先生から吾郎君へのプレゼントが用意されており、“銃を構える吾郎さん”をプレゼントして下さいました。そんなに甘えかしちゃダメですよ!!!

吾郎:すごい!!44マグナム、僕、持ってるじゃないですか。ええ!ありがとうございます。
秋本:いえ。
吾郎:よかった、いい番組だね。
一同:(笑)

番組最後、改めまして;

外山:ゴロウデラックス、来年もよろしくお願いします。
吾郎:よいお年を。

2017年もよろしくお願いします!


(17.01.08 up)



 

第231回放送 '16.12.15
新海誠「小説 君の名は。」

先週の続きで、今回も新海誠さんを迎え、「小説 君の名は。」について語ります。

映画で印象的なのは、その映像の美しさ。

吾郎:光がいいよね。みんなが好きな光だよね、誰もがね。
新海:(映画に出てくる)糸守町っていうのは、架空の場所なんですよ。実は劇中である事件が起こってしまう場所でもあるので(実在の場所というわけにもいかなかった)。アニメーションでは最近、実在の場所を取材することも多いんですけど、糸守町に関しては、僕たちが頭の中にある日本の昔の風景・・・どこかでみたことのあるような、こんな町、日本にあるんじゃないかなっていう風景をスタッフと一緒に架空で組み立てていったんです。

一方で、もう一つの作品の舞台となる東京は実在の街であり、その対比となる糸守町にもリアリティを持たせようと思ったとおっしゃいます。また、主人公たちを取り囲む風景が美しくないと、入れかわったお互いがお互いのことを好きにはならないだろうと、そういうことを考えて、なるべく美しく見えるように描写をしたという新海監督。

特に、瀧と入れ替わった三葉が最初に憧れの東京の街を歩くシーン、1分ほど、台詞がないシーンが続くのですが、これが小説版になると、東京が三葉の目にどのように映ったのか、全て表現する必要が出てきます。
その三葉の心情を書いた部分を吾郎君が朗読。
朗読後;

吾郎:うーん、すごい描写ですね、これは。
外山:ねぇ。
新海:ありがとうございます。読んでいただけるなんて。嬉しいです。
吾郎:いやいやいや。
新海:あの・・・女の子が読んでるみたいな気持ちに、段々、聞いていたら、なってきました。三葉のね、あの…
外山:うん、うん。
新海:…気持ちなので。嬉しいなぁ〜。
吾郎:ここまで、小説だとね、描写を。
新海:そうなんですね。映像の方が手っ取り早いところと、文章じゃないと言えない所とか、やっぱりそれぞれあって。
吾郎:全然、違う作業だよね?アニメーション監督とやっぱり、小説を書くっていうのは。イメージはあったとしても。

小説を書く作業は、映画製作とは別に行われることが多いですが、今回はアニメ映画作りと並行して行われた作業だそう。ただ、実際には、どういうことを考えてこの台詞になっているのか、そこを改めてどういう気持ちなのかを書く必要が出てきて、よりそのキャラクターに対して発見があったようです。


そして、映画に出てきた、“口噛み酒”。神社の巫女である三葉が唾液からお酒を造るというシーンが出てきます。このシーンは、キスのメタファーのつもりで入れたシーンとのだと。この後、瀧が三葉が造ったこの御酒を飲むシーンが出てきます。

新海:(この口噛み酒は)その意味ではラブシーンを表現する1つ。あとはですね、男の子って、ほら、小学生ぐらいのときに、好きな女の子のこう…縦笛をこう盗んで舐めるみたいな・・・子が・・・いた・・・・・・でしょ?
外山:はいはいはい。いました、いました、いました。
吾郎:僕はやってないですけど。監督は?
新海:・・・。僕もやってないですけど、で、その気持ちはちょっと分かる気がしません?
吾郎:まぁ、そうですね。分かる気は!
新海:今、(吾郎君の)声が裏返ってましたけど。
吾郎:(笑)

いや、でも、番組的に同意すべきかすべきじゃないか、ちょっと悩む会話ですよね。

新海:その・・・だから、唾液のようなものって、この、特に10代の男の子たちにとっての、1つのフェチ要素というか。
吾郎:はいはい。
新海:たまらない部分なんじゃないかなと思って。好きな女の子の液体の一部で作られた何か。
吾郎:なるほどね。僕、そこまで考えて…、観てる時、考えてなかったなぁ。
新海:いや、まぁ、考えなくていい…
吾郎:でも、感じるものはありしたよね、観ていてね。
新海:そうなんですよね。僕も多分、無意識のうちに自分の好きなそういう要素が入ってきたりするんでしょうね。
吾郎:はいはいはい。

ここで新海さんから吾郎君にとんでも質問が;

新海:聞いていいですか?吾郎さんのフェチ要素は?

こんなこと聞くんだぁ。いい質問ですね!(笑)

吾郎:僕のフェチ要素ですか?!何だろうね、唾液・・・唾液・・・
外山:・・・唾液に拘らなくていいと思います、別に(笑)
吾郎:あ、でも、匂いはありますよね。
新海:ああ・・・そうですね。
吾郎:何かその人の匂いっていうか。あるかもしれない。髪の毛の匂い。
外山:ああ。
新海:そうですね。例えばその、指が好きとか、女性のパーツだとどこなんですか?(笑)
吾郎:パーツだと?(汗)…僕にちゃんと興味持ってくださって聞いてるんですか?スタッフに言わされてないですよね?
外山:(笑)
新海:違います、違います。聞いてみたいなと思って。
吾郎:パーツねぇ・・・。喋っているときの口とか見ちゃいますよね。口の動き方とか。唇とか。
新海:ああ、そういわれると、何か見ちゃいますね。
吾郎:それはちょっと僕のフェチかもしれない。
外山:なるほど。


もう1つ、新海さんがこだわりを持って作ったシーンが、星空。今回の糸守町は、新海さん自身の出身が長野県ということもあり、そこのイメージ。

新海:高校時代に好きな子に振られたというか、ずっと好きな子がいて、その子が僕の友達と付き合ってるっていうことが分かった夜があって。その日の星空がものすごく綺麗で、『ああ、こんな世界に囲まれてるんだったら、振られたぐらい、いいか』っていう気もちにさせてくれたりとかして。なので、星空を見上げる人をモチーフに書いてしまうっていうのはあるかもしれないですね。
吾郎:長野?
新海:長野です。
吾郎:僕も長野の佐久平の方によく行くんですけど。
新海:あ、そうなんですか?僕、佐久平の高校だったんですよ。
吾郎:あ、そうなんですか?

おや?こんなところで繋がりが(笑)

新海:佐久平に何しに行かれるんですか?
吾郎:(笑)
外山:あははは(笑)
吾郎:あの…、お友達がいまして。
新海:そうなんですか?友達???
吾郎:僕に、中年のおじさんの友達がいるっていう話。
新海:はい、はい、はい。

って、そんなに有名になってるんですか?(汗)

吾郎:その友達が、まぁ、長野のゴルフ場を経営されてて。
新海:ああ、そうなんですか・・・。
吾郎:僕、趣味でゴルフ始めたんですけど。
新海:はいはい。
吾郎:その、ゴルフ場のクラブハウスの屋根の上から、結構、星空が見えて。
外山:ええ!!
新海:その方と2人で星を見上げてるんですか?
吾郎:見上げてますね。あははは(笑)
新海:(笑)


次に映画の製作過程についての話を。
今回の映画では新海さんは、ビデオコンテ(絵コンテに動き・音・台詞などをつけ、動画状態にしたもの)を作った上で作業に臨まれてます。
実写の場合であれば、2時間の映画であっても、何十時間も撮った上で、編集で切り貼りする作業が可能ですが、アニメの場合、使うか使わないかの映像のために、絵を描くわけにもいかないんだそうな。全カットに対して、何秒何コマで作るかを決めた設計図ともいえるビデオコンテを作成し、その上で、それぞれの担当さんに作業を振るんだそうです。

吾郎:すっごい大変だね。
新海:だから、すごい分業だし、やっぱりアニメーション監督って、宮崎駿さんとか押尾守さんとか、大体、どんなに頑張っても3年に1本だったりしますよね。何でこんなことやってんだろうって偶に思いますけど(笑)。
吾郎:根気が必要だよね。
外山:ねぇ?

そこまでやらないと、分業作業では成立しないんでしょうね。ちなみにそのビデオコンテは声も新海さんが入れてるそうです(@o@)。声まで自分で入れるアニメ監督さんは珍しいそうですけど。

続いては、製作日誌を紹介。スタジオに現物を用意して頂きました。2年間、ほぼ、毎日、記録されてます。その中の一文;

  2014/07/16
   「アナと雪の女王」を観た。素晴しかった。(中略)
   見習わなければならない。

新海:物語を語るテンポ感とか、ギャグの配分とかっていうのは参考にしたと思います。感動したのは、オラフっていう雪だるま。
外山:ああ!
新海:ありますよね。彼がギャグメーカーというか、シーンとシーンの切り替わりに必ずオラフのギャグが入っていて、楽しい気分で次のシーンへどんどん移っていくんですね。そういう感覚っていいなぁ。とにかく観客のことを、本当に大事にしてくれてるんだな。楽しませようという作り手の意思というのがすごく見えて、見習わなきゃな、って思ったんですよね。

映画は参考にするために本当に沢山観られてるそう。

吾郎:今、『少女』という映画も公開中なんですよ。
外山:そうですね!少女、はい。
新海:(笑)


  2015/02/23
   今日、野田洋次郎さんから3曲ラフが上がってきた。
   震えるほどよかった。
   部屋ではとても聴けず、ジョギングに出て
   繰り返し聴いた。


元々、RADWIMPSの音楽が好きだったそうで、映画全体の音楽も担当されているそう。

吾郎:僕、やっぱすごく(映画音楽が)気に入ったから、元々RADWIMPS好きだったし、CDを購入して。
外山:
新海:あ。
吾郎:「三葉の通学」とかタイトルがついてるんだけど、CDだけで、最近、よく車で聴いてたんだけど。
新海:嬉しいです。
吾郎:そんなことって、今まであんまり無かったんで。そうするとまた聴いてるうちに、何だろう、色んな物語が浮かび上がったりとか。
外山:何かいいですね、ドライブのときに聴くと景色が違って見えそう。
吾郎:そうそうそうそう。


  2015/03/16
   口噛み酒トリップまでのCパートを妻に見せたら、
   「ものすごく面白い」と言ってもらえて、
   その夜は週刊誌で「ものすごく面白い映画!」
   と褒められた夢を見た。
   なんか元気になってきたかも。


映画を観た人の反応を知りたいので、最初にまずは身内=今回は奥様に最初に見せたそうです。それに励まされたり、落ち込んだりしながら、更に映画をいいものにしていくんですね。身内の意見って励まされるんでしょうね。


(16.12.25 up)



 

第230回放送 '16.12.08
新海誠「小説 君の名は。」

冒頭、映画の1シーンから始まり、吾郎君のナレーション。

   『それはまるで夢の景色のように、ただひたすらに美しい眺めだった』

吾郎:ゴロウ・デラックス、今夜のゲストは新海誠監督です。

いつもの外山さんとのツーショットではない風変わりなオープニングですが、今回のゲストは映画『君の名は。』の監督さんがゲストということもあり、キャッチーな演出でスタートです。

外山:『君の名は。』
吾郎:はい。ねぇ、今、映画で(公開中です)。ご覧になりました?
外山:観ました。
吾郎:一人で?
外山:・・・。そこですか?
吾郎:いや、一人でしょう?
外山:これはね。
吾郎:僕も一人で観に行きました。もう、すごい感動しましたし。
外山:ねぇ。
吾郎:また観に行きたい。
外山:分かります。もう1回観たい!
吾郎:これさ、これ(小説版を)読んだからまた観たくなる。
外山:そう!
吾郎:ねぇ?
外山:小説読んだら更に観たくなりました。

ここでゲストの新海誠さんをお呼びします。

新海:こんにちは。
吾郎:こんにちは。
新海:お邪魔します。
外山:よろしくお願いします。
吾郎:いやいや、渋谷のヒューマントラストに観に行ってしまいましたよ。朝、午前中に。
新海:あの・・・一人で行かれた?
外山:(笑)

新海さん、年齢は43歳、吾郎君と同い年なんですね。

映画『君の名は。』がとにかく大ヒット。ただ、環境が特に変ったということはなく、「急にもてたりするかと思ったんですが、一切、変わりなく」ということで、ご本人も期待はずれと仰ってましたが、それでも、これだけ映画監督がクローズアップされるという現象は、宮崎監督を初めとするジブリ映画の監督さんやエヴァの庵野さん以外ではちょっと思いつかないかも。


映画の中には、主人公の男の子が住む街として東京の今の景色が出てきます。

外山:普段目にするものが、綺麗なこと。
吾郎:確かに。
外山:うわ、ここ、私、歩いた事ある!!
吾郎:結構、新宿南口とか、やっぱ、あの感じ。あの、間違えてバスターミナルに入っていっちゃう。右車線走っていると。甲州街道からくると。
新海:そうですね、(そのバスターミナルの施設)バスタ新宿って、映画製作中は、まだ無かったんですよ。無かったんですけど、公開するときにはできてるの分かってるじゃないですか。ですから、完成をイメージしてバスタ新宿を書いたりしてるんですよ。
吾郎:あ、そうだったんですか!もう、早速描き上がってる!と思って、僕が間違えて右車線に行って、ターミナル入っちゃったやつ。
新海:あははは(笑)
吾郎:で、まぁ、そもそもなんですけど、この作品は、どうやって生まれたんですか、きっかけ??
新海:シンプルなボーイミーツガールを作りたいと思ったんですよ。男の子と女の子が出会う話。出会う話にしたいと思ったんですけど、でも、そこに捻りを加えて、出会って始まる物語じゃなくて、出会ったところから始まるんじゃないかって物語にしたかったんですよ。だから、出会う前の2人を描きたかったんですね。
吾郎:ふーん。
新海:僕たちが常にそういう状態にいると思うんですよ。明日出会った人と、もしかしたら、特別な。その人が特別な人かもしれないですし、明日すごく大事な人に会うかもっていう少年と少女の物語にしたいと思って。でも、アニメ映画なんで、何らかの形で物語を進めないといけないから、じゃぁ、夢で出会うことにしようと思って、で、夢の中で出会うだけじゃなくて、入れ替わってるっていう話にすると、実際は出会ってないんだけど、話としては転がり始めるなぁと思って。そんな発想で作り始めて行きました。
吾郎:その発想、ねぇ、浮かばないよね?男女が入れ替わるという設定は?
新海:本人に会うんじゃなくて、その人になってしまうということにすれば、例えば、僕が外山さんになったら、吾郎さんを通じて外山さんを知ることになるわけじゃないですか。その、吾郎さんと話していて。あれ、私への扱いがぞんざいだなと思ったら、私ってそういう人間なんだ、みたいな。
吾郎:はいはいはい。
新海:・・・ってことになりますよね?自分自身を知るのって、相手を通じて知っていることが多いと思うんですよ。入れ替わることで、相手の周りの世界とか、人間関係を見ることで、その人に惹かれていっちゃうような、少年少女の話にしたいっていうのはありました。
吾郎:へぇ〜。
新海:入れ替わりたいとか、女の子になりたいとかって思いませんでした?
吾郎:いやいや、あります、あります。だから、女の子に生まれ変わって、自分を見てみたいっていうのはありますよ。
外山:ええ!!吾郎さんを見てみたいんですか???
吾郎:・・・そう。
外山:ちょっとぉ〜。
新海:それ、相当美人だな、みたいな感じですか?
吾郎:あれ、間違った、今?
外山:吾郎さんならではの…。


そして、今回はアニメ監督さんがゲストということで、そのお仕事について。普通の実写映画の監督さんとは同違うのでしょう?

吾郎:そもそもアニメ監督?
外山:わかんないですよね、アニメ監督…。
吾郎:(実写の)映画監督とも違うし。アニメ監督って、何をするんですか?本当に僕、わかんない。
新海:あははは(笑)。わかんないですよね?
吾郎:うん。
新海:僕の作品に関して言えば、あの、原作・脚本から自分自身からですので、一番最初、映画作りを始めるときには、どちらかというと小説家のような気分から始めます。まぁ、脚本なんですけど、最初に書くのは。そっから先は現場監督ですよ。100人、200人のスタッフがいる中で、背景の絵がものすごく良くて、こっちで描いてもらった人が、キャラクターの絵がものすごく良かったら、どっちを活かそうかみたいなのを考えたりとか。その、本当に現場を管理して、バランスを取っていくっていうのが僕の担当だと思います。


そして、今回の放送では、吾郎君と外山さんがアフレコにチャレンジ!という企画を用意して頂きました。吾郎君が主人公の男の子の瀧君の役を、外山さんが三葉(みつは)ちゃんの役をやることに。

吾郎:アフレコ経験、僕、一回だけあるんですよ。
外山:あるんですか?
吾郎:はい、誰も知らないんだけど。
新海:あはははは(笑)
外山:何、何?!!
新海:なんですか?
吾郎:有名なアニメ。
外山:えっ、何ですか?
吾郎:ワンピース。
外山:えっ、嘘!!
新海:ワンピース。
吾郎:マザコン男爵か何かの役なんだけど。

吾郎君、完全に役名とか忘れてるな、これは。

外山:ええ!!!
吾郎:やりそうでしょ?
外山:今度、見てみよう。そうなんですか?
新海:どうでしたか?楽しかった??
吾郎:あ、いや、難しかったです。うん、しかも何か、監督、結構、厳しいって・・・
新海:いや、厳しくないです。
吾郎:本当ですか?
新海:はい。
吾郎:(主人公の声をやった)神木君が雑誌で言ってたみたいだけど。
新海:あははは(笑)

そして、スタジオのセットの横に、アフレコのためのモニタ画面とマイクが2本、用意されてます。新海さんは、わざわざ吾郎君や外山さんがアフレコするために、主人公の瀧&三葉の声だけを消した映像を用意してくださってます。

まず最初にアフレコに挑戦するシーンは、男の子になった三葉が、瀧君の体で初めて高校にやってきたシーンを。つまり外見=声は男の子だけど、中身は女の子で、吾郎君がそれを演じます。
※滝君は都会の東京っ子、三葉ちゃんはど田舎暮らしで都会に憧れを持ってる女の子。

TAKE1
いきなりタイミングがあわず、監督からストップが。

新海:もう1回いきましょうか。
外山:(笑)
吾郎:ちょっと、今、気持ちを作ってから…。
新海:あの…
吾郎:すぐですね。
新海:そうですね。
吾郎:俺、本当にワンピースやったのかな?


TAKE2
そして、2回目はタイミングはそれなりに合ってましたが;

新海:ちょっとね、年齢感が高すぎます

というリアルなダメ出しが(笑)

新海:もう少し女子高生気分になって頂いて。
吾郎:はい。何か今、普通のオカマのおっさん!

そして、細かに監督に演技指導を頂いて;

新海:もっと囁きみたい
吾郎:あ、ちょっと声、落とした方がいいですか?
新海:そうですね。(『私…』と実演しながら)そういうちょっといやらしい感じとかを。
吾郎:いやらしい?!!一所懸命やったんですけど!
新海:そういう感じでいくと女の子っぽくなっていくかもしれませんね。
吾郎:ちょっとちっちゃい方がいいですね。
新海:そうですね、引っ込み思案な感じのイメージ。緊張してるし、あんまり大きな声を出せないので、そんな感じです。
吾郎:(肩をすくめながら)こういう感じで?
新海:そういう感じになってくると・・・
外山:あはははは(大笑い)
吾郎:覚えてろよ!


そしてTAKE3
演技指導の通り、かなり声が裏返ってましたが;

新海:すばらしいじゃないですか。ねぇ?よかった。
吾郎:(汗)
新海:少女になってました。
外山:うん。
吾郎:本当ですか?これさ、やっぱりさ、年齢的にやっぱ厳しいね。どうしてもね。
外山:そんなことないですよ(笑)。
新海:本当難しいですね。(外山さんに)笑ってるけど!


次のシーンは、外山さんも加わって、別々のシーンなのだけど、交互にシンクロしてまして、入れ替わっていることに気付くシーン。今度は吾郎君は滝君自身=男の子の設定で台詞を言います。声のタイミング、息のタイミングなど、細かく指導を受けてますが;

吾郎:細かいんだね、やっぱりね。
外山:緊張します。
吾郎:見てる方はね。でも、これぐらい細かくしないと分からないよね。
新海:そうですね。ワンピースやったんですよね?
外山:(笑)
吾郎:(汗)
新海:何初めてみたいな顔を・・・
吾郎:やったのかなぁ・・・


まずはTAKE1

新海:タイミングはいいですけど、感情が一切伝わってこない・・・
2人:(爆笑)
外山:感情はどうやって入れればいいんでしょうか?
新海:えっ、アナウンサーでいらっしゃるんですよね?
外山:(笑)

監督から具体的に吾郎君&外山さんに演技指導が。

吾郎:監督、上手いですね。言葉の前に『あっ』とか。それどうやってやるんですか?
新海:この息芝居っていうのはちょっとアニメーション独特でもあるんですけど、でも、息だけで感情を伝える、一つのまぁ、手法ですよね。
吾郎:今回って、特に、これ、息を、息が印象に残ってますね。
新海:そうなんです。
吾郎:さっきの安心したさ、『楽しかったんよ』(という台詞の)とこのああいう息って、すごく印象に残ってますよね。2人とも。
外山:
新海:そうなんですね。喜怒哀楽のどの息なの?っていうのを伝えなきゃいけないので、今言った怒ってるとかイラついてるっていうのを。
吾郎:なるほど、息、大切なんですね。勉強になるわ。


具体的に指導を受けた上でTAKE2

新海:吾郎さんのはいいですね。
外山:(笑)
吾郎:やーい、やーい。
新海:外山さんがまだ感情が…。

そして外山さんの台詞1つ1つを確認しながら実演していると、吾郎君が外山さんに「声、いいじゃないですか」と。

新海:可愛いですよ。なんか…
吾郎:声いいですね。
新海:外山さんの声って、いいなぁって。
吾郎:ねぇ。今、思いました。
外山:あ、そうですか?
新海:はい。
外山:じゃぁ、感情が入ったら、是非、次の・・・あははは(笑)
吾郎:大丈夫、僕らは使われない。絶対無いから。
新海:そんなことないですよ。

えっ、監督、「そんなことないですよ」って言ってくれた!!な、ならば是非にお願いしますぅ!!!


本番TAKE3

新海:よかったです。お二人とも高校生にちゃんと聴こえました。本当に少年と少女でしたよ。
外山:まだまだですよね。
吾郎:おじさんとおばさんなのにね。
新海:いえいえいえ。


と、番組的には盛り上がってきましたが、時間がきてしまい、本日はこれにて終了。だけど、今回も次週に続きます!単に吾郎君のスケジュール的な部分もあるのかもしれませんが、先日のみうらじゅんさん&宮藤官九郎さんゲストに続き、こうして話が盛り上がってるときにはどんどん2週に亘って放送というのはやって欲しいですね。いや、本当は放送時間を30分ではなく、1時間に拡大して欲しいですけどねー。次週も楽しみです。


(16.12.18 up)



 

第229回放送 '16.12.01
佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」

オープニング。

外山:こんばんは。
吾郎:こんばんは。
外山:さぁ、今夜のゲストなんですが、今、エッセイ本が話題なんですよ。テレビはほとんど出られない方。大御所の方です。
吾郎:そうですよ。ちょっとくれぐれも失礼のないように。
外山:そうですね。
吾郎:ちゃんとしましょう、今日は。
外山:今日は?あははは(笑)

そのゲストとは、佐藤愛子さん、御年93歳になられたばかりの方です。吾郎君との年の差50歳!その佐藤さんの著書「九十歳。何がめでたい」が今回の課題図書です。

吾郎:何か僕らが普段、言えないようなことを代わりに言ってくれて。すっきりするような。
外山:そうですね。
吾郎:でも、勉強にもなりますし。

ここでゲストの佐藤さん登場。

佐藤:どうかお手柔らかに。
吾郎:こちらの方こそ、どうかお手柔らかに。
外山:よろしくお願いいたします。
吾郎:少し、優しい雰囲気の方なので。
佐藤:そうですか?
吾郎:安心しました。本読んでると、何か、会った瞬間、怒られてしまうんじゃないか。
佐藤:ふふふ(笑)
外山:そうですね(笑)。すぱっとね。

佐藤愛子さんは、筆暦60年以上、その間の著書は200冊以上、そして著書「戦いすんで日が暮れて」で第61回直木三十五賞(1969年)受賞作家さんでもあります。
ちなみに、トークバラエティへの出演は30年ぶり(ワイドショーのインタビュー的なのは出演あるのかな?)とかで;

吾郎:なぜこの番組に出演して頂けたんですか?
佐藤:私、あの、『ほん怖』っていうのをね、

えっ、今、『ほん怖』って仰いました?!?!(@o@)

吾郎:はい。
佐藤:よく見てたんですよ。
吾郎:あ、ありがとうございます。心霊とかお化けを検証する…
佐藤:そう。
吾郎:…僕が最も苦手とするちびっこたちとのコミュニケーション。
外山:そうだったんですか?
吾郎:いや、下手なんですよ、僕、子供…
佐藤:いや、そうだろうと思うんですよ。
外山:へえ〜。
吾郎:バレました?
佐藤:バレてる。
外山:あははは(笑)
佐藤:それでもね、真面目にやっておられてね、困ったような、困らないような。しかし頑張ろうと、ってみたいなね。それが私、とっても面白かったんですよ。
外山:へぇ〜。
吾郎:よかったぁ〜。嬉しいですね。

いや、色んな仕事はしておくものだと思っちゃいますね(笑)。あのほん怖の吾郎さんのキャラクターは、ファンから見たら、子供達にとっていいお兄さんキャラクターだと思ってみてますが、ファンじゃない人からも好意的に見てもらえてるというのが分かると嬉しいわ。

女性セブン(今回の課題図書が連載されていた雑誌)の記事によると、最初は中居君の番組にオーファがあったんだそうで、それが吾郎君の番組ならと、今回の出演になったんだそう。

佐藤:楽にお話できるだろうな、という感じがあったんですよ、吾郎さんなら。
外山:ええ。
吾郎:m(_ _)m
佐藤:中居さんの場合はね、あの、見てる分にはとても面白いんですけどね、
吾郎:はい。
佐藤:ウィットがあるし、当意即妙でね。だけど、お相手するのは疲れるだろうなと思うんですよ(笑)
吾郎:ああ!!!その通り!!!!!
外山:あははは(笑)
佐藤:この年になるとね、疲れるっていうのは嫌なんですよ。
外山:
吾郎:僕はあの、癒しますので。
佐藤:はい。よろしくお願いします。

吾郎君には吾郎君の良さというものがあって、それがこうしてちゃんと番組に活かされているんだなぁ〜。


最初の朗読は吾郎君。
本の中で、この年になれば、具体的にいくつだとか関係ないと主張されてます。

吾郎:まぁ、とはいえ11月の5日で、93歳になられるんですよね、本当に・・・おめでとうございます。
佐藤:ふふふふ(笑)。(本の中で)『何がめでたい』って言ってるじゃありませんか!!
吾郎:あははは(笑)

佐藤さんは、2014年発行の『晩鐘』という小説を出されて、絶筆宣言を一度はされたのですが、昨年2015年に週刊誌での連載をスタートされました。

吾郎:でもなんかね、ちょっとのんびりしたいなとか、お断りすることもできたわけじゃないですか?
佐藤:のんびりっていうのがね、どういうことかよくわからないんですよ。

というのも、作品を書いていたときは朝起きると、今日はこれを書こうと、一日が元気よく始まるのだけれども、その生活から離れて”のんびり”という状態になると、寝てても起きてても同じで、いつまでもぐずぐずになってしまうと。

佐藤:そうすると、段々、段々、沈滞してきましてね、精神が。で、うつ病みたいになっていったんですよ。これは老後、のんびりなんてよくないなと思ってるところへ、これ(連載)のお話が来て。じゃぁ、やっぱり元気出てきたんです(笑)
吾郎:よかったし…。
佐藤:やっぱり人間っていうのは死ぬまで、何か、働くっていうか、死ぬまで仕事をしてなきゃいけない。そういう風に神様はおつくりになったんじゃないかと思いますね。
吾郎:それで、みなさんもこのご本で元気になられてるわけですから、読んだ方が。
外山:そうですねぇ。
佐藤:何で元気になるのかよくわからないですけどね、私には、ふふふ(笑)
吾郎:元気になりますよ。
佐藤:それについてはまた、改めて激論を戦わしたいと思いますね(笑)
吾郎:あははは(笑)

時代は遡って、直木賞を受賞されたときのエピソード。
病院に親友の見舞いに行っていた時に、受賞を聞かされたのだそう。ちなみに、その頃は、夫の借金に追われていた時期だったそうで、その親友の“ゼニが入るぞ”という言葉を聞いて、直木賞を受けたのだそう(笑)

吾郎:そこですか?!(笑)
佐藤:「困った!」って感じですね。
吾郎:全く期待とかなかったんですね。候補に入ってて…
佐藤:候補になってましたけど、その前にね、芥川賞候補1回とか、直木賞2回だったか、なってて、全然ダメだったんもんでね、もうそういうもおは私は縁が無いと思って、ほとんど忘れてたって言ってもいいぐらい。

その「加納大尉夫人」という小説で直木賞候補になったが選ばれず、そのときに「こんな値打ちの分からない選考委員がいる賞など私はいらん!」と“憤激”されたそう(笑)。なので、期待も何もしていなかったのだそうです。そんなときに受賞ってするものなんですね。

その受賞作は、佐藤さんの実体験を元に描かれた作品で、夫の借金を背負った女性の話。

吾郎:結局、それがあって、それを乗り越えた…
佐藤:うん、そうなの。それがあったから、悔し紛れに『戦いすんで日が暮れて』という小説を書いたら、それが直木賞もらって、そうするとどっと仕事が来るから、何とか(借金を)返していけたということになるから。やっぱり塞翁が馬と言う話がありますけどね。
吾郎:そのことが元になって小説が生まれたんですね。
佐藤:そうそうそうそうそう。だからそれがなかったら、一人前の作家になれたかどうかは分からないですね。
吾郎:そもそも作家になられたきっかけっていうのは何だったんですか?
佐藤:えっと、戦争中に結婚してるんですけども、私。その、後の(借金した)倒産亭主とは違う亭主がいたんです。
外山:はじめにね。
佐藤:で、あの・・・(夫が)モルヒネ中毒になってたもんですからね、復員して帰ってきたら。私はそのとき思ったんですよ、亭主の出来不出来でね、女の一生の幸福不幸が決まるこんな馬鹿げた話は無いと。で自分ひとりで生きれば悪いのは自分だけですむからね、悪いこともいい事も。だから別れようと思ったんですよ。

それで、当然、どうやって生きていこうかという話になったときに、ちょうど、佐藤さんが結婚生活の愚痴(姑さんの悪口(笑))を手紙に書いたのを読んだ父親(やはじ物書きさんだったそうです)が、佐藤さんに物書きの資質があると見抜いたんだそう。そのことを佐藤さんは母親から聞いて、そんな背景もあって作家になったんだそう。


そして、ここで更に、エッセイの中のネット炎上について書かれた一文を朗読して;

吾郎:本当に、今、そういう世の中・・・炎上してしまったり。
佐藤:そうですね、あれは匿名で。
吾郎:そうです、みんな名前言わないんです。
佐藤:だから、皆、安心して色んな事言えるんでしょうね。やっぱり我々名前を出して言ってますと、言った事に対して責任っていうものがありますけどね。匿名は無責任に言えばいいわけですからね。
吾郎:でも、何か、そこに従わないといけないのかなってみんな思っちゃうよね。
佐藤:あれが五月蝿いから、ちょっとしたいことをやめるとか、言いたいことをやめるっていう人もいると思いますね。



最後にご自宅拝見。作業部屋を見せていただくと、作業をする部屋に、同じくベッドも置かれてます。
夜中に書き直ししたくなったときも、すぐに作業ができるようにという配慮から。
また、原稿はもちろん手書きですが、ドラフト版、修正版、提出版の3回、原稿を書く作業をされているそうです。かなりのボリュームになるわけですが、腱鞘炎で手術したこともあるんだとか。

吾郎:でも、すごく健康的ですよね。運動されてる感じというか。
佐藤:いや、全然。郵便局行くか、ちょっと八百屋さん行ったりするだけですからね。
吾郎:動いてない人の感じが無い。
外山:無いですね。
佐藤:自分の好きなように生きてると、こういうことになってるわけですよ(笑)。嫌なことはしてないわけでね、だから元気なんじゃないですか?
吾郎:ストレスがあると…。
佐藤:したくないことをしなくちゃならないでしょ、生きるってことは?うん、だけど、歳とってくるとね、「したくない」で、それで通るのがね、やっぱり年寄りになると悪い事ばっかりじゃなくて、いい事もあるんです。
吾郎:もうちょっと頑張んないと、我々も。
外山:そうですね、やらないとね。


(16.12.11 up)



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