第205回放送 '16.05.12
磯田道史「無私の日本人」
吾郎:こんばんは。
外山:こんばんは。ええ、今夜のゲストですが、歴史学者の先生ですよ。
吾郎:う〜ん、ちょっと最近、歴史ブームですね。
外山:ね、ブームですね、本当にね。ここのところ、ちょっと歴史づいてますけど。
吾郎:うん。
今回のゲストは磯田道史さん。課題図書は「無私の日本人」という本で、映画、「殿、利息でござる」の原作本です。つまり映画の宣伝なわけですが、原作者が宣伝で出てくるところがこの番組の醍醐味でもあります。
外山:今夜の課題図書「無私の日本人」。
吾郎:はい。すごく面白かったですよ。また映画も公開されますし。
外山:そうなんです。
吾郎:ね、またお話伺えるのはちょっと楽しみです。ちょっと今日、勉強しましょ。
外山:はい(笑)
ゲストの磯田道史さん登場。紹介のVTRでは、『古文書ハンター』と紹介され、江戸時代以前の様々な記録『古文書』を探して、それを解読されてます。
磯田:古文書って言って江戸時代全の人が書いた、あの…、書付を解読しながら、で、昔の人の様子や暮らしぶりなんかを調べたりしているんですね。しかし、日本人はとっても几帳面な民族なので、ええ…、本当、そんなことまで書くかって言うほど、細かいことまで分かるんですよ。
スタジオに実際にその”古文書”の例として、映画にもなった”武士の家計簿”の実物を持ってきてくださいました。拍子には『入払帳』の文字が。ちなみにこれは私物。古本屋さんを探し歩き、157,500円で購入したものだそうです。高っ!!
吾郎:これ、何が書いてあるかわかんないんですけど。
磯田:これねぇ…
吾郎:読んで下さい。
磯田:読みましょうか。
たとえば、こんにゃく 拾文、蜜柑 拾文(1文=50円程度)とか、そんなことが記載されてます。これを見ていると、先祖を祀るための費用や、親戚の訪問(年に数百回!!)に関する費用など、“儀礼費”に結構な費用がかかっていることが判明したそうです。そこから『武士の家計簿』のストーリーができたわけですね。
そして、今回の映画の宣伝・・・じゃなくて課題図書の話。庶民がお殿様にお金を貸して利息を受け取ろうとする話。これが実話なんだそうです。
磯田:長年、僕は古文書ハンターやってるんですけど、この古文書読んだときは東京大学の図書館で閲覧させてもらったんですけど、泣いちゃってね。
磯田さんが閲覧されたという本は、仙台藩の古文書『国恩記』を活字化した『仙台叢書』という本。小説の内容がそのままこの本に書かれているのだとか。
ここで、磯田さんの半生を振り返ります。わざわざTBSの美術さんが、磯田さんの半生を古文書風に作ったものが登場。・・・いや、だけど、読めないな、これ。
子供の頃から歴史に興味を持った磯田少年は、石仏や石碑の拓本をとることが趣味というような、周りの子供達から見たらかなり変った趣味を持っていたと。13歳で古文書に興味を持ち、おばあさんが蔵から出してきた古文書を解読したいという衝動に駆られ、高校生の頃に古文書解読辞書を見ながら解読していったと。
磯田:これ(古文書解読辞書)覚えるまで(古文書を)読めないから、その日から学校の勉強をやめることにしたんです。これ読めるようになるまで。
吾郎:勉強、大丈夫…やめて大丈夫だったんですか?
磯田:大丈夫じゃなかったですけど(汗)、でも、知りたいのはこっちなので、そうしましたね。
そして、19歳で、読みたい歴史の本がたくさんあったという理由で慶應大学に入学。
磯田:慶應大学入るとね、もう、膨大な本があるんですよ。嬉しくてね。朝から晩まで図書館に籠もって読んだら、2ヶ月目に倒れたんですよ。
外山:ええ!
磯田:救急車が大学の図書館に横付けされて。もちろん、家は帰るんですけど、もう、10時間以上いました。
吾郎:そこまで没頭できると楽しいですよね。
こうして、卒業してからも古文書研究を続けるわけで、とあるギャラリーで、いきなり一人の女性に一目ぼれしたそうです。一週間後、上野の美術館でやっている若冲の展覧会に2人で出向いて、磯田さんがその知識を生かして解説してまわったんだとか。そのトークが面白くて、彼女の方が求婚にOKしたと。
吾郎:でも、すごくない?初めて好きになって一目ぼれして…
磯田:何かここ、食いつきますね。苦手な話なんですけど(汗)
外山:いいですよ。
ここからは現在、されている研究テーマについて;
磯田:さぁ、これから忍者の本を書くぞ!と思ったときに、東北の震災が起きて、ちょっと待て、忍者とかこんな楽しい研究してる場合じゃないかもしれないと。日本各地で起きている地震…、地震の活動期に日本は入ったので、地震や津波を昔の古文書から読み解くっていう研究をやろうと思って。それで、今の熊本の地震なんかについてもですね、結構、役に立つんですよ、古文書の研究っていうのは。
と、手元のフリップを取り出して解説。今も継続中の熊本の地震についてです。気象庁は今回の地震について、「観測史上例を見ない」と言っていますが、古文書を見てみると、400年前に東北で大津波が発生(慶長三陸地震)→8年後に熊本で地震発生していると。このときに、八代,岡(大分竹田市),備後・福山と同じ日に大きな地震が発生しいるとの記録があるんだそうです。
磯田:気象庁は観測史上例が無いと要ってるけども、気象庁が近代的な観測を始めたのは明治20年代からですから、もっと長い期間で見ると、色々な事が分かる。
外山:え、先生、これ(フリップ)、ちなみに、今の作ってきて下さったんですか?
磯田:昨日ね、ドンキホーテに行ってフリップを、夜中の1時に買って。命に関わる大事なことですから、作ってきたんですけど。
吾郎:ありがとうございます。
こうして準備までしてくださるとはありがたいです。でも、今回のゲストの方の古文書に対する情熱みたいなものがものすごーーーく伝わってくる放送でした。語りが熱くて、そういえば本来、この番組って、こういうこだわりがある人にスポットを当てる番組だったなぁ...と。
最後に山田君のハンコで終了でした。
(16.05.22 up)
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